カージオイドの面積と曲線の長さの証明
カージオイドは極方程式や媒介変数表示で表すことができます。
極方程式は、数学Ⅲで登場する極座標で表される方程式です。
媒介変数表示は数学Bと数学Ⅲで扱います。
数学Bでは、ベクトル方程式の導入として媒介変数表示の基本を学習します。
数学Ⅲでは、放物線・楕円・放物線などの2次曲線について学び、それらの媒介変数表示を学習します。
通常のxとyを用いて表す関数や図形の方程式よりも、媒介変数表示の方が表しやすい曲線としてサイクロイドやカージオイドを学習するのも数学Ⅲです。
この記事では、そんなカージオイドについてまとめます。
1.カージオイドとは?
カージオイドとは、極座標の方程式
r=a(1+cosθ)
で表される曲線です。
「r=1+cosθ」を座標上に表すとこのようになります。
心臓に似た形であるため、心臓形とも呼ばれます。
極方程式
r=a+b cosθ
で表される曲線(a>0,b>0)をリマソンといい、カージオイドはリマソンの一種であるとも言えます。
a=bとなるようなリマソンをカージオイドといいます。
また、カージオイドはエピサイクロイド(外サイクロイド)の一種でもあります。
定直線状を、円が滑らずに回転してできる、円上の点の軌跡は、サイクロイドといいます。
それにたいして、原点を中心とする円の内側や外側を、別の円が滑らずに回転してできる、円上の点の軌跡をエピサイクロイド(外サイクロイド)やハイポサイクロイド(内サイクロイド)といいます。
- サイクロイド
定直線上を、半径aの円Cが、滑ることなく回転するときの、円C上の点P( x, y ) の軌跡 - エピサイクロイド(外サイクロイド)
原点を中心とする半径aの円Oの外側を、半径bの円Cが、円Oに外接しながら、滑ることなく回転するときの、円C上の点P ( x, y ) の軌跡 - ハイポサイクロイド(内サイクロイド)
原点を中心とする半径aの円Oの内側を、半径bの円Cが、円Oに内接しながら、滑ることなく回転するときの、円C上の点P ( x, y ) の軌跡
エピサイクロイドにおいて a = b であれば、カージオイドになります。
すなわち
です。
直交座標の方程式であれば、
と表すことができます。
これまでカージオイドの極方程式による表し方、エピサイクロイドの一種としての媒介変数表示、直交座標の方程式をご紹介しました。
とはいえ、これまでのことは覚えておくようなことではありません。
ひょっとすると極方程式くらいは書かされることがあるかもしれません。
しかし、大学受験においてカージオイドの式は与えられることがほとんどです(式を見て「カージオイド」の名前を答えるような問題はあるかもしれません)。
重要なのは、極方程式や媒介変数表示で出題された時に、それぞれの計算がしっかりできるかどうかです。
2.【カージオイド】極座標と媒介変数表示
カージオイドの学習とともに、極座標と媒介変数表示について簡単に復習しておきましょう。
極座標は数学Ⅲで学習します。
これまで習ってきたのは直交座標と呼ばれる座標系で、原点からx軸方向、y軸方向にどれだけ距離が離れているかで、点を表します。
直交座標で (2,3)と書けば、x軸方向に2だけ、y軸方向に3だけ離れている点を表すことになります。
それにたいして極座標は、原点(極座標では極といいます)からの距離と、始線とのなす角である点を表します。
媒介変数表示とは、媒介変数を用いて表したような曲線のことです。
例えば、放物線
について考えると、
のように変数tを用いて表すことができます。
このときのtを媒介変数といいます。
xとyの関係を直接、方程式として記述するのではなく、xをtで表し、yをtで表すことで表現します。
tという変数でxとyを媒介しているから、媒介変数表示といいます。
媒介変数表示の表し方は一通りではありません。
3.【カージオイド】極座標と面積
ある曲線が極方程式
r=f(θ)
で表されているとします。この曲線と2直線
θ=α
θ=β
で囲まれた面積Sについて考えます。また点A ( f(α),α ),B( f(β),β ) とします。
曲線上の点P ( r, θ ) ( α≦θ≦β ) に対して、曲線とOA、OPで囲まれた面積をS(θ)とします。
θ を⊿θ だけ増加させたときの曲線上の点をQとするとき、OPQで囲まれた面積⊿Sは、扇形の面積であると近似できます。
OP = r ですから、
となります。⊿θ→0とすると
です。したがって、
により、面積Sが求められることになります。
まとめると以下のようになります。
極方程式
r=f(θ)
と2直線
θ=α
θ=β
で囲まれた面積Sは
で表される。
さて、カージオイドで囲まれる部分の面積について求めてみましょう。
カージオイドの1周期は 0≦θ<2π ですから、
となります。
cosθ や cos2θ は一周期分を積分すると0になりますから、
が導出されます。
もちろんカージオイドは先にも申し上げた通り、媒介変数表示や直交座標の方程式としても表せますから、そこからカージオイドで囲まれた面積を求めることもできますが、極方程式で計算するのが楽でしょう。
4.カージオイドの曲線の長さ
曲線の長さは数学Ⅲで学習します。
媒介変数表示 x=f(t),y=g(t),(a≦t≦b) で表される曲線の長さLは
で表されます。
あるいは、x = t を代入して
x=t
y=f(x)
を変形してゆけば
から
となります。
次に極方程式における曲線の長さの公式を求めてみましょう。
高校の数学の教科書には載っていませんが、極座標の問題にあたったときに知っておくと便利です。
t=θ のとき
ここで
また
ですから
となります。
これが極方程式の曲線の長さの公式です。
出題頻度はそれほど高くありませんので、作り方さえ覚えておけば、問題ありませんが、余裕があれば覚えましょう。
では、カージオイドの曲線の長さを求めましょう。
カージオイドの極方程式は
r=a(1+cosθ ) (0≦θ<2π)
です。
カージオイドは2πで一周しますから、積分範囲は0から2πです。
カージオイドは始線に対して対称ですから、0からπまでの2倍であると考えます。
カージオイドの極方程式
r=a(1+cosθ )
についてa>0 ですし、0からπにおいて
となります。これがカージオイドの曲線の長さです。
5.カージオイドのまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、カージオイドについてまとめました。
ご参考になれば幸いです。
記事の内容でわからないところ、質問などあればこちらからお気軽にご質問ください。
中の人がお答えします。