ヤングの実験とは?わかりやすく解説!光の干渉の性質を証明する方法
19世紀後半、光は「回折」や「干渉」という波特有の性質を示すので、波だとされていました。しかし、光電効果が発見されたことで、「光=粒子」とするほかに説明できないことがわかり、「光は波なのか粒子なのか」という議論が始まりました。
問題の解決には、再現可能な実験を行って明白な結果を示すことが最善です。そこで、波説を支持するイギリスの物理学者・ヤングは、1807年に光の干渉実験を行って光が波であることを示しました。この記事では、ヤングが行った実験とはどのようなものだったのか、わかりやすく解説します。
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【 目次 】
1.ヤングの実験とは
2.ヤングの実験の原理
2-1.波の回折
2-2.ホイヘンスの原理
2-3.ホイヘンスの原理と回折
2-4.ホイヘンスの原理と干渉
3.ヤングの実験と干渉、回折、位相の関係
3-1.ヤングの実験と波長
3-2.ヤングの実験で干渉縞の位置を計算する方法
ヤングの実験とは
ヤングの実験は、上の図のような装置を用意して行います。まず、1本スリットと2本スリット、平面スクリーン、単色光源を用意します。次に、2本スリットの中央を通る垂線上に1本スリットと単色光源を置き、単色光源、1本スリット、2本スリット、スクリーンの順に実験台に平行に並べます。
※スリット…平板に細長い隙間を開けたもの。隙間そのものもスリットと呼び、どちらを指しているかは文脈で判断できます。
スリットの向きは実験台の面に垂直です。また、並べる間隔は2本スリットのスリット間隔よりずっと大きくとります。こうして単色光源を点灯すると、明暗の帯が並んだ縞模様がスクリーンに現れます。
これがヤングの実験の概要です。
ヤングの実験の原理
ヤングの実験を理解するには、回折、干渉という現象と、波長、位相という物理量を把握しておく必要があります。
波の回折
障害物があるとき、波は背後に回り込みます。この現象は波に特有で、回折と呼びます。回折はホイヘンスの原理で説明できます。
・波の回折
ホイヘンスの原理
波とは振動が隣接する場所へ伝わる現象です。そして、波は物体と違って同じ場所を占めることができます。
これを重ね合わせの原理と言います。これらを明確な形で述べて、現象を簡潔に説明できるようにしたのがホイヘンスです。
ある点が振動すると、そこを中心に円形に波が広がっていくから、揺れ方が揃っている部分、つまり波面に着目すると、波面上のすべての点を中心にして「素元波」と呼ばれる新たな円形波が広がるはずであり、これが重なり合って次の波面になるのだと彼は考えました。
そして、この繰り返しで波全体が伝わっていくと説明したのです。
これをホイヘンスの原理と言い、各点から広がる波のことを「素元波」と呼びます。
・ホイヘンスの原理
ホイヘンスの原理と回折
波の行く先に障害物があると、そこには素元波ができません。すると、ほかの場所からの素元波がそのまま伝わり、障害物の背後に波が現れます。これが波の回折です。
ホイヘンスの原理と干渉
複数の振動が揃っているとき、「同位相である」と言います。
位相とは、振動の状態を示す量です。ばねの単振動を考えるときと同じように、波の振動を真横から眺めた等速円運動と重ねたときの回転角度が位相です。振動の中心を位相0として、初めて山になるときの位相は
・等速円運動と波の位相
2つの波が重なり合うとき、同位相のときに最も強め合い、位相がπずれているときに最も弱め合います。この現象を干渉と呼びます。
ホイヘンスの原理は、素元波が重なり合って干渉を起こし、同位相となる場所が新たな素元波を生み出して波面が進んでいくことを述べています。
ヤングの実験と干渉、回折、位相の関係
ヤングの実験でできる明暗の縞模様は、2本スリットから広がる波の干渉として説明できます。このことから、縞模様を干渉縞と呼びます。
干渉縞の実験と予測は、2つの波の位相が揃っていると簡単です。1本スリットの役割は、円形波を作って2本スリットに当てて、そこでできる2つの波の位相を揃えることにあります。
・ヤングの実験
ヤングの実験と波長
干渉縞の計算は、光路差を考えると簡単です。
同位相の2つの光が重なり合う場合、そこでも同位相だと強め合って明るくなります。波長で言い換えると、2つの波が波長の整数倍ずれると強め合うという表現になります。つまり、光路差が波長の整数倍のとき強め合い、そこに明線が生じます。
逆に、位相がπずれているときは、弱め合って暗線になります。光路差で言えば、波長の整数倍プラス
・明線、暗線の条件
ヤングの実験で干渉縞の位置を計算する方法
・光路差の計算
干渉縞の明暗の位置を計算してみましょう。
・2つのスリットをS1,S2としてその間隔をdとし、2つのスリットの中点Mからスクリーンに下ろした垂線の足をOとします。
・ 2つのスリットが並ぶ向きにx軸をとって、Oを原点としたときのスクリーン上の点Pの座標をxとします。ここでは、S2P>S1Pとなる側をx軸の正の向きとしましょう。
・ 2本スリットからスクリーンまでの距離をLとします。d<<Lです。
・S2P>S1Pとして、S1からS2Pに垂線を下ろしてその足をHとします。そして、∠S2S1H=θとおくと、S1P≒HPより、光路差はS2P−S1P≒S2P−HP=S2H=dsinθと求められます。
・d<<Lですから、光路差はLと比べてたいへん小さく、∠S2S1H≒∠PMOとしてよいので、
→すると、
2つのスリットを通る光が同位相の場合、明線の位置は次のように求められます。
・mを0以上の整数、波長をλとして、
・S2P<S1Pの場合も同様にして、x
・原点から暗線までの距離は、明線の式でmをm+
原点から明線までの距離:|x|=
暗線までの距離:|x|=
練習問題
例題と応用問題を1つずつ用意しました。
例題:干渉縞の間隔
明線の間隔を求めてみましょう。
スクリーン中央の明線を0番目として、スクリーン中央からm番目の明線までの距離は、
です。
明線の間隔を⊿xとすると、⊿xはm番目とm+1番目の明線の間隔として求められますから、
と求まります。
この結果から、干渉縞をはっきり観察するためには、スクリーンまでの距離を大きくとって、波長の長い光を使い、2本スリットの間隔を狭くすればよいことがわかります。
応用問題
・スリットの位置がずれた場合
1本スリットSの位置が、2本スリットS1,S2の中央からx軸の正の向きにaだけずれた場合、光路差が0となる位置P0はどこになるでしょうか。また、明線の間隔はいくらでしょうか。ただし、1本スリットと2本スリットとの間隔をbとします。
応用問題解答
・光路差
直感的に、SS1<SS2のとき、ここで生じた光路差を解消して差し引き0とするためには、S1P0>S2P0でなければならないはずです。したがって、光路差が0となる位置は、負の向きにずれるはずです。
では、どれだけずれるかというと、SS1とSS2で生じる光路差分だけずれます。この光路差の計算は簡単で、2本スリットからスクリーンまでの光路差を計算したときとまったく同じ方法を使って、
したがって、全光路差はスクリーンまでの光路差と合わせて、
明線が生じる条件は、
となり、明線の間隔
おわりに
ヤングの実験は光に波の性質があることを証明するものです。しかし、光には粒子の性質もあることが光電効果の実験で証明されました。ヤングの実験は、波と粒子の両方の性質が現れる極微の世界への扉を開けた実験の一つだったのです。
光電効果については、『光電子とは?光電効果による光電子の運動エネルギーについて』をご覧ください。
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