中和滴定とは!〜中和滴定の手順と計算〜
酸と塩基についての理解を深めることは、化学の分野においては非常に大切です。
酸と塩基の反応は、水素イオンの移動反応により説明されます。
酸と塩基が反応すると、塩と水が生じます。この反応を中和反応と呼びます。
この記事では、中和反応や中和滴定についてまとめます。
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1. 酸・塩基と中和反応について徹底解説!
酸・塩基の定義として有名なものに、「アレニウスの定義」と「ブレンステッドとローリーの定義」があります。
どちらも酸と塩基について説明したものですが、ブレンステッドとローリーの定義の方が、一般的に酸と塩基の関係を定義しています。
アレニウスの定義では、酸と塩基の定義は以下の通りです。
酸 :水中で電離して、H+を生じる物質
塩基 :水中で電離して、OH–を生じる物質
この定義では、水溶液の液性を考えるときには有効ですが、酸の電離の際の物質の変化を正しくとらえてはいません。
例えば、CO2 は水と反応することで酸性を示しますし、NH³ は水と反応して塩基性を示しますから、それぞれ酸性物質、塩基性物質です。
しかし、アレニウスの定義によれば CO2や NH³は酸や塩基ではありません。
そこで考えられたのが、水溶液中だけでなく一般的な酸と塩基の反応を説明した「ブレンステッドとローリーの定義」です。
ブレンステッドとローリーの定義では、酸と塩基を以下のように定義します。
酸 :H+ を与えるもの
塩基 :H+ を受け取るもの
H+ の移動を中心に考えることで、水溶液中だけでなくすべての酸塩基反応を説明できるようになります。
酸から生じた H+ はこの状態のまま存在しているわけではなく、水分子の非共有電子対と配位結合をしてオキソニウムイオン H3O+ として存在しています。
注意しなければならないのは、ブレンステッドとローリーの定義では、H+ のやりとりをする役割で酸と塩基を定義したのであって、水溶液の酸性や塩基性とは関係ないということです。
アレニウスの定義による酸と塩基の水溶液を混合すると、純水と比べて H+ とOH−が多くなります。
水溶液中で過剰となった水素イオンと水酸化物イオンが反応して H2O が生じ、残ったイオンによって塩が生じます。
この「塩」は「しお」ではなく「えん」と読みます。
水酸化ナトリウムと硫酸の反応では、
がイオン反応式です。実際には硫酸の反応は
のようにオキソニウムイオンの状態で存在しています。
水酸化ナトリウムと硫酸を中和させると、2つの式を合わせて、
となります。
式を合わせるときには、水素イオンと水酸化物イオンの数が合うように計算します。
この中和反応では、硫酸ナトリウムが「塩」となります。
イオンの反応式は、電離平衡を形成しています。
硫酸に水酸化ナトリウムを加えてゆくと、水酸化ナトリウムにより発生した水酸化物イオンが水素イオンと反応し、平衡が右側に移動します。
これがH2SO4が存在する限り続きますから、水素イオンがすべて水酸化物イオンと反応するまで加えてようやく、中和が完了します。
つまり、この反応においては、硫酸1molに対して、水酸化ナトリウムを2mol加えることで中和が完了します。
このような点を中和点といいます。
2.中和の公式とは?公式の成り立ちから詳しく解説!
酸と塩基が中和するためには、水溶液中の水素イオンの物質量と、水酸化物イオンの物質量が一致する必要があります。
ですから、中和点を公式化するなら、
「酸が出しうるH+ の物質量」=「塩基が出しうるOH−の物質量」
となります。
とはいえ、公式というほどの式でもないので、しっかりと原理を理解しましょう。
例えば、10倍に希釈した希硫酸 10ml を 0.10ml/l の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ、8.0ml で中和したときの、薄める前の希硫酸のモル濃度を求めてみます。
希釈する前の希硫酸の濃度を x mol/l とします。
10倍に希釈すると、濃度は x/10 mol/l となります。
この希硫酸を 10ml=0.01l 使いますから、希硫酸の物質量は
となります。希硫酸1 mol につき、水素イオンは2 mol でますから、「酸が出しうるH+ の物質量」は、
です。
この希硫酸に加えたのは、0.10ml/l の水酸化ナトリウム 8.0ml ですから、その物質量は
です。水酸化ナトリウム1 mol にたいして、水酸化物イオンは1 mol でますので、「塩基が出しうるのOH−物質量」は、
となります。よって
が成立しますから、xを求めると
x=0.40mol/l
が求めるモル濃度です。
中和反応の完了は、あくまで水素イオンと水酸化物イオンも物質量が一致したときです。
酸や塩基の強弱は関係ありません。
3. 中和滴定とは?図を交えた解説で理解しよう
上記のように、濃度が不明な酸(もしくは塩基)であっても、中和反応を利用することで、その濃度を求めることができます。
上の問題では、中和反応を利用して、濃度がわかっている水酸化ナトリウムとの中和点を測定することで、希硫酸の濃度を求めました。
このような操作を中和滴定といいます。
中和滴定では、溶液に指示薬を入れておくことで、その指示薬の色の変化を見ます。
指示薬はpHの変化により色が変化しますが、強酸、強塩基、弱酸、弱塩基の組み合わせにより、使わなければならない指示薬が変わります。
中和点付近で色が大きく変化しなければ、滴定の終了点がわかりづらく、中和完了のタイミングがわからないからです。
指示薬としてよく使用されるのは、フェノールフタレインとメチルオレンジです。
メチルオレンジの変色pH域は3.1~4.4であり、より酸性側で赤、より塩基性側で黄色になります。
ですから、中和点のpHが3.1~4.4付近になるような(つまり塩基性になるような)場合にはメチルオレンジは使えません。
一方、フェノールフタレインの変色pH域は8.3~10.0であり、より酸性側で無色、より塩基性側で赤に変色します。
そのため、中和点が8.3~10.0付近になるような(つまり酸性になるような)場合には、フェノールフタレインを使ってはいけません。
【画像:酢酸(などの弱酸)に水酸化ナトリウム(強塩基)を滴定した場合の滴定曲線】
【画像:酢酸(などの弱酸)にアンモニア(などの弱塩基)を滴定した場合の滴定曲線】
【画像:水酸化ナトリウム(強塩基)に塩酸(などの強酸)を滴定した場合の滴定曲線】
【画像:アンモニア(などの弱塩基)に塩酸(などの強酸)を滴定した場合の滴定曲線】
強酸と強塩基を混ぜた場合は、中和点の液性が中性になり、指示薬の変色pH域とは重なりませんので、フェノールフタレインとメチルオレンジ、どちらを使っても構いません。
しかし、弱塩基に強酸を滴下した場合は、中和点の液性が酸性になりますから、フェノールフタレインは使えず、通常メチルオレンジを使います。
逆に、弱酸に強塩基を滴下した場合は、中和点の液性が塩基性になりますから、メチルオレンジは使えず、通常はフェノールフタレインを使用します。
4. 中和滴定の手順について
中和滴定の実験の様子は、受験で出題されることもあります。
例えば、食酢の濃度決定を水酸化ナトリウムを使って行う場合、水酸化ナトリウムは空気中のを吸収するため、純度が100%であるという保障がありません。
そのため、空気中で安定で純度が高いシュウ酸の結晶を使った水溶液で、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を決め、その水酸化ナトリウムを使って、食酢の滴定を行います。
このような実際の実験の様子も、余裕があれば知っておきましょう。
シュウ酸水溶液を用いて、水酸化ナトリウムの濃度を求めるときの滴定は以下の手順で行います。
①シュウ酸の標準溶液を調整する(詳しい手順は割愛します)
②標準溶液を一定体積とり、コニカルビーカーに分取します。一定体積を分取するためには、ホールピペットを使います。
③弱酸+強塩基ですから、指示薬としてフェノールフタレインを数滴加えます。
④水酸化ナトリウム水溶液をビュレットに入れ、先端まで溶液を満たします。ビュレットの下に②のコニカルビーカーを置き、滴下を開始します。
⑤色が変化するまで滴下し、ビュレットに入れた水酸化ナトリウムの減少量で、加えた水酸化ナトリウム水溶液の体積を測ります。
⑥計算により、水酸化ナトリウムの濃度を算出します。
コニカルビーカーは使用前に洗剤で洗い、水道水でよくすすいだ後、蒸留水で数回すすぎます。
水にぬれていても、中に入る溶液の物質量は変化しないため、このまま使用して構いません。
しかし、溶液の濃度にかかわる、ホールピペットやビュレットは、同様の操作を行った後、中に入れる溶液で数回、共洗いしなければなりません。
また、メモリがあるガラス器具は、メモリが不正確になるため加熱乾燥できません。
これらのことも注意しておきましょう。
5. まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます!
この記事では、中和滴定についてまとめました。
中和滴定は、化学の中でも重要度の高い分野です。きちんと理解して得意分野にしましょう!
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