コロイド溶液の性質を解説!粒子の大きさが関係している?
コロイド溶液の性質として、チンダル現象、ブラウン運動、電気泳動、透析などがあります。これらは問題を解くために覚えておかなければなりません。
また、親水コロイド、疎水コロイドと保護コロイド、凝析と塩析など似たような単語も多く、苦手意識を持っている受験生も多いでしょう。
この記事では、コロイドとは何か、また、コロイドの性質についてまとめます。
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1.コロイドとは(粒子の大きさなど)
水溶液はさまざまな状態が存在しています。
中でも、私たちがよく見る水溶液として、食塩水があります。
NaClを水に溶かすと、ナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl–に電離します。
溶液に溶けている物質を「溶質」、溶質を溶かしている液体を「溶媒」と言いますが、このとき溶媒である水 H2Oの分子と、溶質であるナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl–の大きさは非常に小さいです。
分子やイオンの大きさを比較すると、ほとんど同じくらいなので、光がそのまま透過します。
そのため、水に溶けた食塩は見えなくなります。
このような溶液のことを「真の溶液」といいます。
溶液は「真の溶液」だけではありません。
例えば、デンプンやタンパク質などの水溶液をみると、溶質の大きさが大きく、その直径は 10-7m ~ 10-9m 程度です。
この程度の大きさの粒子をコロイド粒子といい、コロイド粒子が分散した状態をコロイドといいます。
10-7m ~ 10-9m という大きさは、ろ紙は通れるけれどセロハンなどの半透膜は通れない大きさです。
溶質と溶媒の大きさが異なることによって、「真の溶液」とは異なる性質を示すことになります。
このとき、コロイド粒子を分散させている物質を分散媒、分散しているコロイド粒子を分散質といいます。
分散質や分散媒にはさまざまな状態があり、それによってさまざまなコロイドが知られています。
コロイドはその流動性によって、以下のように分類できます。上記のように様々なコロイドがありますが、受験で多く出題されるのはコロイド溶液です。
デンプン水溶液のように、流動性のあるコロイドを「ゾル」といいます。
特に気体のコロイドを「エアロゾル」といいます。
また、豆腐やこんにゃくのように流動性を失ったコロイドを「ゲル」、ゲルを乾燥させて水分を除いたものを「キセロゲル」といいます。
ゲルはゾルを冷却して作ります。
キセロゲルの代表としては、乾燥剤などに使われるシリカゲルが挙げられます。
2.コロイド溶液の性質
コロイドが液体中に分散したものをコロイド溶液といいます。
コロイド溶液の性質として、知っておく必要があるのは、以下の4つです。
- チンダル現象
- ブラウン運動
- 電気泳動
- 透析
以下の小見出しで、それぞれ見ていきましょう。
2-1.チンダル現象
コロイド溶液に強い光を当てると、チンダル現象を観測できます。
チンダル現象とは、空気中の光の進路がはっきりと観測できる現象です。
通常、光の進路を確認することはできません。
例えば、レーザーポインターで壁のある点を指しているとき、壁に映ったポインターの点を見ることはできますが、レーザーポインターから壁に向かって伸びている直線を見ることはできないはずです。
しかし、木漏れ日が直線で見えたり、舞台でスポットライトが直線で見えたり、雲の切れ間から光が放射状に地上に伸びているのが見えることがありますね。
これらは身近なチンダル現象の例です。
通常、光の進路が見えないのは、光が直進する性質を持っていて、(自分の目に直接向かってくる光以外は)発せられた光は目に入ってこないからです。
しかし、コロイド粒子は直径が大きく、光を乱反射させるため、光が目に入り観測できるのです。
2-2.ブラウン運動
ブラウン運動は、溶媒中に浮遊するコロイド粒子が不規則に運動する現象です。
溶媒(水溶液の場合は水)の分子は、絶えず熱運動をしています。
熱運動している分子は互いにぶつかり合いますが、コロイド溶液の場合はコロイド粒子にも不規則に衝突します。
この分子の衝突により、コロイド粒子は不規則に運動しているのが観測できます。
これがブラウン運動です。
2-3.電気泳動
コロイド粒子には、表面が+または-に帯電しています。
このコロイド粒子の性質によって起こる現象が、電気泳動です。
U字管にコロイド溶液を入れて直流電圧をかけると、コロイド粒子の表面の帯電によって、その反対符号の電極へ、コロイド粒子が移動していきます。
+に帯電しているコロイドは-の電極へ、-に帯電しているコロイドは+の電極へ移動します。
コロイド溶液に色がついているとき、移動したコロイド粒子によって、U時間の左右で、色の濃淡ができます。
例えば水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3 は+の電荷をもつコロイドであるため、-の電極に引き寄せられ、陰極側の色が濃くなり、陽極側の色が薄くなります。
電気泳動で覚えておきたいのは以下のようなコロイド粒子です。
+の電荷をもつコロイド :水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3
-の電荷をもつコロイド :粘土、硫黄Sのコロイド
2-4.透析
透析とはコロイド溶液に不純物の分子やイオンが含まれているときに、不純物を取り除いてコロイド溶液を精製する操作のことです。
前述したとおり、コロイド粒子は大きいので、半透膜を透過しません。
この性質を利用して、不純物の分子やイオンを取り除きます。
不純物が含まれたコロイド溶液をセロハン膜などの半透膜の袋に入れます。
これを流水中に浸しておくと、不純物である分子やイオンがセロハン膜の外に出ていきます。
透析はこのようにコロイド粒子の分離に用いられます。
3.コロイドの分類
コロイドにはいくつかの種類があります。ここではコロイドの種類やその種類で問われやすい現象を解説していきます。
3-1.疎水コロイドと親水コロイド
コロイドは水和性によって、「疎水コロイド」と「親水コロイド」に分類することができます。
両者は、水分子との親和力が大きいが小さいかによって分類されます。
3-1-1.疎水コロイドと凝析
疎水コロイドは水分子との親和性が低く、表面が同じ電荷であるため、反発しながら分散しています。
疎水コロイドは先に紹介した、水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3 や粘土、硫黄などの無機物質に多いです。
疎水コロイドの溶液に、「少量の電解質」を加えると、電解質から電離した陽イオンと陰イオンができます。
すると、コロイド表面の電荷と反対符号のイオンがコロイドに引き寄せられ、コロイド同士が反発する力を弱めます。
その後、疎水コロイド同士が集まって沈殿します。
この現象を「凝析」といいます。
このとき重要なのは電荷の価数ですから、-の電荷をもつコロイドなら例えば、Na+よりも Al3+の方が効果的に凝析させることができます。
3-1-2.親水コロイドと塩析
親水コロイドは、水との親和性が高いため、表面にたくさんの水分子を引き付けて、水中で安定しています。
親水コロイドは、デンプンやタンパク質、セッケンなどの有機化合物に多いです。
親水コロイドの溶液に、「多量の電解質」を加えると、コロイドを取り巻いている水和水が、電離した陽イオンや陰イオンに水和して引きはがされます。
コロイドを安定させていた水和水が除かれ、親水コロイドが集まって沈殿します。
この現象を「塩析」といいます。
3-2.墨汁を例に学ぶ保護コロイド
墨汁はアモルファス炭素の疎水コロイドです。
いざ使うときに凝析して使えないと困りますが、疎水コロイドは少量の電解質で凝析してしまいます。
そこで墨汁にはニカワという親水コロイドを加えて、凝析を起こしにくくします。
このように、疎水コロイドに親水コロイドを加えると、凝析しにくくなることがあります。
このような働きをする親水コロイドを「保護コロイド」といいます。
保護コロイドには他にも、インキに加えるアラビアゴムなどがあります。
疎水コロイドに親水コロイドを加えると、親水コロイドが疎水コロイドのまわりを覆い、その周りをさらに水和水が取り巻きます。
これにより、水溶液中で安定し、凝析しにくくなります。
3-3.コロイドの構造による分類
コロイド分子の構造による分類も可能です。
分子コロイド・会合コロイド(ミセルコロイド)・分散コロイドです。
デンプンやタンパク質などの高分子化合物は、分子量が非常に大きく、1個の分子も大きいです。
このような大きな分子がコロイドであるようなものを、分子コロイドといいます。
分子コロイドは親水基を持っているため、親水性をもちます。
会合コロイドは、小さい分子が集まって(会合して)できたコロイドです。
セッケンなどが代表的で、会合コロイドも親水性を持ちます。
分散コロイドは、水に溶けない粒子によるコロイドです。
金や泥、水酸化鉄(Ⅲ)、硫黄など無機物質によるコロイドであるため、疎水性をもちます。
4.コロイドまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、コロイドについてまとめました。
ご参考になれば幸いです。
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