共有結合を即理解!わかりやすい図で解説!
原子に関する理論的な分野では「化学結合」の分野がありますが、中でも共有結合は特に試験に出題されやすい箇所になります!
電子の数や電気陰性度、その他の結合様式と比較した問題は有名で、正しく理解すれば大きな得点源になる箇所です。しっかり理屈から理解していきましょう!
1.原子と電子の構造を理解
兎にも角にも、原子構造と電子の関係をH(水素)からAr(アルゴン)までの原子についてしっかり理解しましょう。
むやみやたらに覚えるのではなく、系統立てて理解していけば、覚える内容はぐっと減ります。
共通点として、以下のような特徴があります。
・電子は、原子の周りの電子殻に規則的に配置され、原子から近い順に収容される。
・電子殻は、原子に近い順からk殻、l殻、m殻・・・と名付けられる。
(中高生の範囲では、m殻まで覚えれば良い。)
・電子殻に収容される電子の最大数は、k殻から順に2、 8、 16、 ・・・(2n2)個である。
なおArは電子を18個持っていますので、内側から順に電子が収容されると最外殻のm殻には電子が8個までしか収容されません。
これらをもとに、H~Arまでの電子配置を表にまとめると、表のようになります。
元素を周期表の順番に覚えれば、電子を1つずつ増やしながら電子殻に書いていくだけで出来上がります。
これは紙に何度か書いて練習すれば、すぐに覚えることができます。
電子の個数は規則的に増えるため、覚えることは電子殻に収容される最大数だけです。
(見やすくするため、軌道を破線、内側の電子を小さい黒丸、最外殻を大きな黒丸で示しています。試験では、実線で同じ大きさの黒丸で構いません。)
2.共有結合に関する価電子数を理解する
上の表を覚えたら、次は重要な価電子を覚えましょう。こちらも理屈が分かれば数秒で覚えられます。
価電子とは、原子と原子が化学結合する際に関与する電子のことで、いわば原子と原子の間の橋渡しをしてくれる電子のことです。
価電子数が極めて重要になりますので、ここも表を使って説明します。
まず、上記の電子配置図から、最外殻の電子配置だけを原子記号の周りに書き直したものを示します。
これを電子式と言います。(四角枠は非金属元素を表しています。後述します。)
3.価電子を表す電子式
電子殻はさらに細分化されたもので、電子が2個収納されるポケットがk殻では1つ、l、m殻では4つあります。
電子はこれらのポケットに均等に収納されます。この時、一番外の殻にある電子のことを価電子と呼び、価電子の数を価電子数と言います。
(ただし、一番外の殻に入っている電子の数が最大の時だけは特殊で、この時、価電子数は0とします)
価電子数は最大で8です。酸素やフッ素元素などにみられる電子でポケットがいっぱいになったものを、電子対と呼びます。
水素とヘリウムを除き、それ以外の元素は最外殻に電子が8個収納されて安定した状態になろうとします。(専門用語ではオクテット測といいます。”オクト”は”8″の意味です。)
最外殻が電子で満たされたHeやNe、最外殻電子数が8のArはオクテット測を満たすため、価電子はありません。このように希ガス元素は非常に安定なので、価電子はありません。
それ以外の元素は表のように価電子が族ごと(縦の列ごと)に同じです。注意ですが、下記のような書き方は誤りです。電子は必ず規則的に配置されなければなりません。
(説明のため、電子式に破線で軌道を描いていますが、実際の試験では書く必要はありません。最外殻の電子を黒丸で書けばよいです。)
4.共有結合の仕組みと電子式
ではいよいよ、本題の共有結合について説明します。
共有結合とは、原子同士が電子をお互いに共有して電子対を作り、より安定な状態になる結合のことです。
また、共有結合する元素の組み合わせは、非金属元素+非金属元素になります。これまで電子式を説明してきましたが、すべての元素が共有結合をするわけではありません。
先ほどの電子式の表の、四角で囲った元素が非金属元素になります。実際に、水素元素を例にとって考えましょう。水素の価電子数は1であり、理想的なHeの電子配置と比べて電子が1つ足りない状態です。
そこで、水素原子が2個集まり、それぞれの水素原子が電子を1個ずつ提供して電子対(ポケットに電子が2個入った状態)を作り出そうとします。
こうすれば、H原子の周りに電子が2個いるような状態に似ているため、Heと似た電子配置になり、水素原子はそれぞれ安定な状態になります。
この状態の水素のことを、水素分子と言います。また、共有結合によって生じた電子対のことを、共有電子対と呼びます。
同じように、アンモニア分子でも見てみましょう。
水素、窒素原子は価電子数が1または3です。
アンモニア分子のように、どの原子とも共有結合に関与しない電子対がありますが、このような電子対を非共有電子対と言います。
最後に、酸素分子、窒素分子を見てみましょう。
酸素分子や窒素分子のように、共有電子対を複数持つ分子が存在します。
これらは二重結合、三重結合と呼ばれます。
フッ素と電気陰性度のキーワード
では次に、フッ素分子を考えてみましょう。これまでと同じように考えると、1次結合の以下の形になることがわかります。
さて、この単体のフッ素分子はこの形で正しいのですが、実際には自然界にはこの形ではほぼ存在していません。
理由は、フッ素分子は共有結合していても非常に不安定な物質で、希ガスを除くほぼすべての単体元素と化合してしまうからです。
なぜ、フッ素は不安定なのでしょうか?
その理由は電気陰性度の観点から説明することができます。電気陰性度とは、分子中の原子が電子を引き付ける力の強さのことを指します。
そのため、希ガス元素は考慮しません。分子中の原子が電子を引き付ける強さ、とは、言い換えれば、プラスの電気(原子中の陽子)が、マイナスの電気(電子)を引き付ける強さと同じです。
従って、同じ周期の元素では(周期表の横列)、右側に行くほど陽子の数が増えるためプラスの力が増え、電気陰性度は大きくなります。
同じ族では(周期表の縦列)、下に行くほど電子の位置が原子から遠くなり、遠くの電子に対してかかるプラスの力は弱くなるので、電気陰性度は小さくなります。
話を戻して、このフッ素の電気陰性度は元素中で最も大きいです。つまり、フッ素自身が強い正の電気を帯びているような状態であるため、自然界に存在する他の分子と化学反応を起こしてしまい、より安定な構造体に化学変化してしまうからです。
試験では、電気陰性度はフッ素が最大であることと、同周期・同族の電気陰性度の大小関係を問われることが多いです。
希ガスは含まれないことに注意しましょう。練習問題を反復して解けば、ほぼワンパターンであることに気が付きますので、得点源になりやすいです。
5.共有結合と他の化学結合との比較
共有結合について説明しましたが、試験ではその他の化学結合と比較した問題が出題されやすいです。
共有結合はもっとも強い化学結合であり、共有電子対で結合することが特徴です。
結合の組合せは非金属元素同士になります。上述の周期表の中では、Li, Be, Na, Mg, Alと希ガス以外の元素が対象です。
分子間結合は分子間相互作用によるファンデルワールス力という比較的弱い力で互いを引き付けています。
ちょっと踏み込んで:電気陰性度と分子間力
分子間力とは、分子間に働く相互作用の力のことです。試験や練習問題では、水分子やフッ化水素などのハロゲン元素系の分子で発生する水素結合がよく例に挙げられます。
今回は水分子について、電気陰性度の観点から踏み込んで考えてみましょう。
水分子の電子式で、電気陰性度を考えます。酸素原子は水素原子よりも電気陰性度が高いため、酸素原子と水素原子の間の共有電子対は、酸素原子寄りに引っ張られます。
すると、酸素原子の周りには電子がほんの少しだけ密集する一方水素原子の周りには電子がほんの少しだけまばらに存在する状態になります。すると、酸素原子の周りはわずかに電気的に負に帯電した状態になり、水素原子の周りはわずかに正に帯電した状態になります。
このように1つの分子内で電気的な偏(かたよ)りが生じます。すると、水分子中の酸素原子は、他の水分子の水素原子と電気的に引き付けあおうとします。
これは、共有結合している分子で、電気陰性度が高い原子が水素原子の電子を引き付け、電気的な偏りが生じた時に発生するもので、水素結合と呼ばれます。水素結合も分子間相互作用の1つで、ファンデルワールス力の仲間のようなものです。
水素結合は、ファンデルワールス力よりかは強いですが、金属結合よりも弱いです。
その証拠に、水で作った氷を金づちで叩くと、簡単に割れます。一方、純粋な金属をハンマーで叩いても、よくてへこむ程度です。これは結合の強さがそのまま表れた結果であると言えます。ちなみに、共有結合であるダイヤモンド(炭素のみで成る巨大な分子)はハンマーで叩いても傷付きません。
このことから、共有結合は最も結合が強いことが分かります。
さらに詳しく電気陰性度について知りたい場合は下記のページを参考にしてみてください!
(→電気陰性度とは?覚え方や周期表・極性との関係が誰でもわかる!)
6.まとめ
いかがだったでしょうか。
化学結合は理論科学の範囲のため、初めから諦めそうになりますが、系統立てて順番に理解していけば、決して難しいものではありません。むしろとても合理的で、例外がありません。
中高生の範囲で問われる結合の種類は限られていますので、実際に電子式を書きながら覚えていきましょう。
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