蒸留とは?高校化学で頻出の実験問題を解説!

化学 2019.10.31

高校化学では混合物の分離方法として蒸留分留など様々な方法を学びますが、どのようなものかそれぞれ説明はできますか?

試験では器具や実験の進め方などを問われることがあり、なんとなく理解した気になっていたけれど思い出せない…といったことがあるかもしれません。
この記事では蒸留の原理や実験方法を整理して解説していきます。ひとつひとつ、丁寧に理解していきましょう。

1.そもそも蒸留とは?塩化ナトリウム水溶液の例で解説

蒸留は、「物質と物質を沸点の違いを利用して分離させる方法」のことをいいます。

一般的には、「1つの混合物を沸騰させて、どちらか1つの純物質のみを蒸発させ、分離すること」を指すことが多いです。
純物質や混合物について復習したい方はこちら!

主に、「液体と固体の混合物を分離したいときに利用される」と覚えている人がいるかと思いますが、それは半分間違いで、半分正しい認識です。

「1つの混合物を沸騰させて、1つの純物質のみを蒸発させ、分離する」ためには、「混合物が2つの純物質の混合物であり、蒸発しないほうの純物質の沸点がかなり高い」場合だと都合がいいので、液体と固体の組み合わせが多くなるのです。例を挙げて説明しましょう。

よく使用される例が、塩化ナトリウム水溶液です。

塩化ナトリウム水溶液をフラスコに入れ、沸騰石を加えて沸騰させると、溶液中の水だけが水蒸気となって取り出すことができます。
そしてその水蒸気を冷却することで純粋な水が得られます。

つまり、水=蒸発する方の純物質です。一方の塩化ナトリウムは、蒸発しないほうの純物質です。現在、地上に存在する多くの塩化ナトリウムの純物質は、個体の姿をしています。

これは、塩化ナトリウムの融点が801度、沸点が1,465度と非常に高いため、普通の環境では固体であるということです。理科室で行う蒸留の実験では、1,465度まで加熱することは難しいため、蒸留で水を得ようとしたのに、うっかり塩化ナトリウムまで蒸発してしまうという可能性は低いです。
逆に言えば、そのため、蒸留の実験では塩化ナトリウム水溶液が多く使われています。

このように、異なる物質が混ざってできたものを加熱し、(一般的には1つの)純物質を気化させ、それを冷却して純粋な液体として取り出す操作のことを蒸留とよぶのです。
なお、この時に得られた水のことを蒸留水とよびます。

2.蒸留と間違えやすい分留とは?

高校化学で学ぶ分離方法の中で、蒸留と間違えやすいのが分留です。ここでは、分留とは何か、蒸留と分留の違いを詳しく説明していきます。

分留とは「1つの混合物を沸騰させて、2つ以上の純物質を蒸発させ、分離すること」です。

分留では、原油など、多くの物質が混ざり合った混合物の例を見ることが多いでしょう。油田から出てきた原油は、分留によって、図のように石油ガスやガソリン、灯油、軽油などに取り分けられているのです。

ちなみに、原油の精製では、一度、原油全体が加熱炉の中で350度に熱せられます。
このうち、最も沸点の高い「重油」は、350度でギリギリ蒸発するので、図の右側の「蒸留塔」と呼ばれる装置に入った途端、少し冷めてしまい、液体になります。

しかし、残りの気体は熱で上昇し、蒸留塔の中で1つ上の階に上ります。そして、ここで少し冷めて液体になったものが、250~320度が沸点の「軽油」です。

このように、一度の蒸留で複数の物質を取り出すことを、分留といいます。

ちなみに、分留の実験では、石油の精製のような「冷ますときに分ける方式」ではなく、徐々に温度を上げて、蒸発した物質から順番に取り出していく「温めるときに分ける方式」を使うことが多いです。

3.蒸留の実験手順を理解しておこう!

蒸留に関して試験によく出題されるのが、実験での操作手順です。実験装置、操作、注意すべき事項など、入試でよく出題されるもの中心に説明していきます。

まず、実験装置ですが、混合物の入った枝付きのフラスコに温度計を差し、リービッヒ冷却器と三角フラスコに繋ぐという構成となっています。

操作としては、以下のような単純なものです。

【実験手順】
① 枝付きのフラスコに混合物を入れ、を取り出したい物質の沸点まで熱する
② 沸騰したら気体をリービッヒ冷却器で冷やし、三角フラスコに抽出した物質を集める

【フラスコに関する注意点】

A.温度計の下端部を、枝付きフラスコの枝分かれしている部分に合わせる。これは、蒸発した気体の温度が一定か確かめるためです。溶液につけたりすると、溶液の温度を測っていることになってしまいます。冷却器に向かう蒸気の温度を正確に測るためであり、その温度が目的の物質の沸点とほぼ一致して入れば、その冷やされて取り出された液体は純物質と判断することができます。

B. フラスコに入れる混合物の液量は2分の1以下にする。液体がブクブクと沸騰してリービッヒ冷却器まで流れ込み、蒸留水に混ざってしまうことを防ぐためです。

C. 沸騰(ふっとう)石を入れる。これは、「突沸」を防ぐためです。突沸とは、液体が沸点を過ぎても沸騰しないままで、何かの刺激により急に沸騰する現象のことです。沸騰石内の空気が気泡とになることで、つねに液体内に刺激を生み、突沸を防ぐことができます。

D. 枝付きフラスコを加熱するときは金網を敷く。こちらは基本的な注意点ですが、枝付きフラスコを直接加熱してしまうと、フラスコが熱により破損する可能性があるため、金網を敷かなければいけません。

【リービッヒ冷却器に関する注意点】

E. リービッヒ冷却器を通す冷却水は「下から上」に流す。上から下に流すと、水が重力に従って出ていくため、冷却器に溜まってくれません。下から上に流すことで、つねに冷却器に水をいっぱいにし、効率よく冷却します。

【取り出す液体に関する注意点】

F. 蒸留の始めと終わりに出てくる液体は捨てる。蒸留の始めの液と終わりの液体は、不純物を含んでいることが多いためです。

G. 液体を受ける三角フラスコなどは密閉しないこと。その他の接続部のように密閉したくなりますが、冷却器を通って出てくる液体を溜める最後の部分は、ゴム栓などで密閉してはいけません。密閉すると装置内に圧力がかかった状態となり、などの恐れがあるためです。

4.蒸留についての練習問題

蒸留については、試験では分離の手法や実験の注意事項を問われることが多いので、これまで説明した内容を忘れず抑えておきましょう。

【問題1】蒸留を行う際の注意点①~③について答えてください。
① 沸騰石をフラスコに入れる理由は何か。
② 温度計の位置はどこが適切か。
③ 冷却水を流す際に注意する点は何か。【問題2】次の①②はどのような分離方法が最も適切ですか。
① 水とエタノールの混合物の分離
② 石油を重油、軽油、灯油、ガソリンなどに分離する

 

 

  • 問題1の回答

高校化学の蒸留に関する問題では、このように実験の注意事項を問う問題が多いです。3項目を復習しておきましょう。
① 突沸を防ぐため② 温度計の下端をフラスコの枝付近に合わせる③ 下から上に冷却水を流す。

  • 問題2の回答

化合物、混合物の分離方法について問う問題も出題されます。今回は蒸留、分留だけですが、ろ過やクロマトグラフィーなど他の分離手法も含めて出題されると混乱しがちなため、まずは理解できているところを埋めるようにしましょう。
① 蒸留② 分留

5.蒸留のまとめ

ここまで蒸留について、文章が多くなってしまいましたが、できるだけ分かりやすく解説をしてきました。まとめると次の通りです。


蒸留は、「物質と物質を沸点の違いを利用して分離させる方法」のことをいう


蒸留とは「沸点の違いに着目して分離すること」であり、個体や液体を問わない。分留とは蒸留の一種で、「たくさんの混合物を蒸留し、それぞれ分別していくこと」をさす。


蒸留装置は、混合物の入った枝付きのフラスコに温度計を差し、リービッヒ冷却器と三角フラスコに繋ぐという構成。枝付きのフラスコを取り出したい物質の沸点まで熱し、沸騰したら気体をリービッヒ冷却器で冷やし、三角フラスコに抽出した物質を集めていく。


蒸留の注意事項は多数あり、試験の問題として出やすいので内容をよく読んで理解しておこう。

蒸留という一つの手法でも、様々な覚える事項があり、大変だと思ってしまうかもしれませんが、注意事項などは理由も書いているので、関連付けて覚えると意外と頭に入りやすいです。

テスト前に一通り読むだけでも理解度が違うと思いますので、この記事を活用してくださいね!

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この記事の執筆者

ニックネーム:もも

早稲田大学2年
得意教科:数学