浸透圧とは?生物の細胞の仕組みをわかりやすく解説

生物 2022.12.14

「浸透圧」という言葉はスポーツドリンクの広告などで見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。

生物の授業では浸透圧の仕組みを詳しく学習しますが、紛らわしい言葉がたくさん出てきて混乱してしまうかもしれません。

今回は、生物の細胞の働きである浸透圧について、ひとつひとつ、わかりやすく説明していきたいと思います。

		

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1.浸透圧とは

まず、浸透圧とはどんなものなのかを簡単に説明します。

浸透圧とは、2つの濃度が違う水が隣り合わせのときに、濃度を一定に保とうとして水分が移動する力のことで、生物の細胞の働きの中で重要な役割を果たしています。

というのも生物の細胞は、細胞の中と外で物質が移動しており、その時に浸透圧を使っているからです。

例えば生物が生きていくために必要な酸素は、浸透圧を利用して細胞の表面の膜(細胞膜)を通過し細胞に送り届けられています。

細胞膜は必要な物質のみを通すためのフィルターの働きをしており、このような働きをする膜は「半透膜(はんとうまく)」と呼ばれています。

それでは、なぜ2つの濃度の違う水が隣り合わせになると、浸透圧が発生するのでしょうか。

その仕組みを知るためには、まずは半透膜について理解する必要があります。

2.浸透圧が生じる「半透膜」とは何か?透膜の種類を解説

浸透圧は、半透膜である細胞膜の構造によって引き起こされます。

ここでは半透膜や、他の透膜について説明します。

半透膜は、膜に小さな穴がたくさん空いていて、色々なものが膜を出入りできるという特殊な構造をしています。

半透膜は水や小さな物質は通しますが、大きな物質は通さないという性質があります。コーヒーのフィルターやザルのようなイメージです。

ちなみに、半透膜を境にして濃度の異なる溶液同士の間で水などの溶媒(溶液元になる液体のこと)の移動が起こる現象のことを浸透とよんでいます。

また、細胞に使われる透膜は他にもあるので紹介しておきます。

全透膜は、半透膜と違って、水に溶けているどんな粒子でも通してしまう膜です。全透膜では濃度の差が生まれないので、浸透圧は発生しません。全部通してしまうのなら、意味のない膜と思うかもしれませんが、そうではありません。
その膜があるおかげで細胞の形を保つという重要な役割を果たしているのです。植物における細胞壁は全透膜で形成されています。

3.浸透圧が生じる仕組みとは?

半透膜の構造が分かったところで、それでは浸透圧が生じる仕組みについて説明しましょう。

繰り返しになりますが、浸透圧は半透膜で仕切られた2つの部屋に入った液体の濃度が異なるときに発生する力ですので、半透膜があれば細胞でなくても生み出すことができます。

下の図は、容器の中央を半透膜で仕切った装置です。

まずは両側に水だけが入っている状態について説明します。

 

 

水の粒子は半透膜の隙間よりも小さく、左右の部屋を行き来することができるため、濃度は同じになります。この状態では浸透圧は発生しません。

続いて、右側に水の粒子よりも大きい粒子の溶質(例えば塩など)を入れた時について説明します。

 

 

半透膜にあいた穴は、水の粒子は通しますが、大きい粒子は通ることができません。穴を通れない大きな粒子は、その穴をふさいでしまいます。

そのため、右から左に移動する水の粒の数は、左から右に移動する水の数よりも少なくなります。粒子の移動に偏りができたため、水は左から右に流れます。

このような水が移動する力こそが、浸透圧なのです。

4.浸透圧で知っておきたい溶液の呼び方!高張液・低張液・等張液とは?

浸透圧の仕組みが分かったところで、浸透圧が起きた場合の溶液の呼び方がありますので、こちらも覚えておきましょう。ここでは、例として、蒸留水と塩化ナトリウム溶液を比較します。

  • 高張液

2つの溶液を比べた時、浸透圧が高い溶液を高張液と呼びます。

  • 低張液

2つの溶液を比べた時、浸透圧が低い溶液を低張液と呼びます。

  • 等張液

2つの溶液を比べた時、浸透圧が等しい溶液を等張液と呼びます。

 

5.浸透圧のはたらきとは?細胞が収縮・膨張するしくみ

溶液の呼び方について説明をしましたが、それぞれの溶液の場合に浸透圧はどうなるのか、整理してみましょう。

色々な言葉があり混乱しますが、ポイントは細胞の浸透圧は、「水を引き込む力」であることです。

  • 高張液に入れた場合

細胞の浸透圧よりも、外液の浸透圧が大きい状態ではどのような変化がおこるでしょうか。

この状態は、野菜を塩漬けにした状態と考えるとイメージがしやすいです。野菜を塩漬けにすると、シナシナになっていきます。

細胞も同じように、水分が抜けて細胞は小さくなっていきます。浸透圧は水を引き込む力ですので、細胞の浸透圧は高張液に入れる前に比べて大きくなります。

 

  • 低張液に入れた場合

細胞の浸透圧が、外液の浸透圧よりも大きい状態ではどのような変化がおこるでしょうか。

この状態は、野菜を水漬けた状態と考えるとイメージがしやすいです。野菜を水に漬けると、水に漬ける前よりも水を吸ってシャキシャキになっていきます。

細胞も同じように、水分を吸って大きくなっています。浸透圧は水を引き込む力ですので、細胞の浸透圧は低張液に入れる前に比べて小さくなります。

体積との関係が反対なので、戸惑うかもしれませんが、困ったら「水を引き込む力」と思い出してください。

 

6.動物細胞と植物細胞の浸透圧による変化とは?

浸透圧が発生すると「水を引き込む力」のため、体積が変化しますが、動物細胞と植物細胞で発生する現象が異なります。

最後に溶液ごとの、動物細胞と植物細胞の変化について説明します。

  • 高張液に入れた場合

・動物細胞は水が出ていき体積が減少します。

・植物細胞は動物細胞と同様に水が出ますが、細胞壁があるので状態が変わってきます。

・細胞壁は硬いのであまり変化しないのに対し、細胞膜は縮んでしまうため細胞膜と細胞壁の間に隙間ができます。これを原形質分離とよびます。

  • 低張液に入れた場合

・動物細胞は水を吸収しますが、一定量を超えると細胞膜は膨張に耐えられなくなり破裂して細胞質が外に出てしまいます。これを原形質吐出とよびます。

・植物細胞は水を吸収しますが、動物細胞と違って細胞壁があるので同じように破裂はしません。理由は細胞壁が硬いためです。

  • 等張液に入れた場合

・動物細胞は浸透圧が釣り合っているため見かけ上の変化はほとんどありません。

・植物細胞は細胞膜と細胞壁の間に隙間ができそうできない、原形質分離を起こす寸前の状態です。この状態を限界原形質分離とよびます。

7.「浸透圧とは何か」のまとめ

浸透圧についてこれまで説明をしましたが、まとめると次のようになります。

 

  • 浸透圧とは、生物の細胞の活動の中でおこる、2つの濃度が違う水が隣り合わせのときに、濃度を一定に保とうとして水分が移動する力のことで、生物の細胞の働きの中で重要な役割を果たしている。
  • 浸透圧が起きるには、半透膜が必要。生物の中で半透膜は細胞膜にあたる。
  • 半透膜は、膜に小さな穴がたくさん空いていて、色々なものが膜を出入りできるという特殊な構造をしている。
  • 半透膜を隔てて濃度の異なる液体を入れると、片側は大きい粒子が邪魔になり、半透膜を通した水の流れが悪くなるため濃度の薄い側から濃い側に水が偏る。これが浸透圧が発生するメカニズムである。
  • 溶媒の移動によって体積が増える溶液を高張液、溶媒の移動によって体積が減る溶液を低張液と呼ぶ。
  • 浸透圧は「水を引き込む力」である。
  • 高張液に入れた場合は浸透圧が大きくなり、体積は小さくなる。
  • 低張液に入れた場合は浸透圧が小さくなり、体積は大きくなる。
  • 浸透圧が発生したときの動物細胞と植物細胞の発生する現象は異なる。

 

初めは見慣れない言葉も多く、悩むことも多いかもしれませんが、図やポイント、イメージを抑えるだけでも理解がしやすくなると思います。

授業が分からなくなったり、問題を解いていて「あれ?」と思ったときは、このページで復習してくださいね!

細胞・細胞分裂についてのまとめ記事が読みたいという方は「細胞・細胞膜の働きの勉強に役立つ記事まとめ!構造や働きまで網羅」も併せてお読みください。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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