【タンパク質の合成】わかりやすい図で合成過程を理解しよう!

生物 2022.12.14
【タンパク質の合成】わかりやすい図で合成過程を理解しよう!

タンパク質の合成は、高校の生物で習う中でも、かなり苦手な人が多い分野です。

重要語も多く、転写や翻訳などの考え方も複雑で、難しいと感じてしまいがちです。

本記事では、そんなタンパク質の合成の過程について、できる限り分かりやすく解説します!

		

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    1.タンパク質の合成とは?わかりやすく解説!

    タンパク質の合成とは、一言で言うと、生物の体を構成するタンパク質が、細胞の中で作り出される過程のことです。

    一言でタンパク質といっても、実は、生物の体を構成するタンパク質には、様々な種類があり、種類ごとに違う役割を持っています。

    例えば、眼球の中の透明な水晶体(レンズ)を形作るタンパク質は、クリスタリンといいます。

    また、よく肌の調子を整えるとしてテレビ番組などで取り上げられるコラーゲンもタンパク質で、皮膚や骨を構成しています。

    さらに、タンパク質の中には酵素(こうそ)と呼ばれるものがあり、これらは、生物の体の中で化学反応を促進し、エネルギーを取り出したり、必要な物質を作ったりするのを助けています。

    代表的な酵素には、消化に携わるアミラーゼやカタラーゼがあります。

     

    このように、タンパク質には様々な種類がありますが、その違いは、タンパク質の構造にあります。

    タンパク質の基本単位はアミノ酸で、20種類のアミノ酸がどのように、いくつ並んでいるかによって、タンパク質の種類が決まります。

    つまり、細胞がタンパク質を作るには、この配列をしっかりとコピーしていかなければ、その種類のタンパク質が作れないということになります。

    そして、この「アミノ酸をどのように、いくつ並べるか」という設計図を持っているのが、DNAです。

    ⇒DNAについて詳しく知りたい方はこちら!

     

    つまり、遺伝子が、タンパク質の設計図であるというわけです。

    遺伝子=生物の設計図

    生物を構成する物質=タンパク質(など)

    ということを考えると、

    遺伝子=生物を構成するタンパク質(など)の設計図

    であるということが理解できますよね。

     

    ただし、DNAには、タンパク質をつくるためのアミノ酸の配列が、そのまま書いてあるわけではありません。

    次の章から、DNAにはどのようにタンパク質の設計図が書かれ、そして、その情報をもとに、どうやってタンパク質が合成されていくのかを見ていきましょう。

     

      2.タンパク質の合成過程①RNAとは?

      2-1. そもそもRNAとは?

      RNAとは、リボ核酸とも呼ばれるもので、DNAからタンパク質の設計図(遺伝情報)を写し取る働きをします。

      それをもとに、タンパク質が合成されるのです。

      ちょうど、何かの型を取って石膏像を作るときのシリコンのような役割をするものだとイメージしてください。

      タンパク質の合成におけるRNAの役割

      RNAは、DNAと同じ核酸ですが、二重らせんではなく、1本のヌクレオチド鎖でできています。

      また、塩基の種類もDNAと異なり、チミン(T)がない代わりに、ウラシル(U)が存在します。

      RNAの構造は1本のヌクレオチド鎖

      ⇒DNAの構造やヌクレオチドについて知りたい方はこちら!

       

      2-2. RNA(リボ核酸)の種類と働き

      RNA(リボ核酸)には、mRNA(メッセンジャーRNA;伝令RNA)、tRNA(トランスファーRNA;運搬RNA)rRNA(リボソームRNA)の3種類があります。

      mRNAは、DNAの遺伝情報を写し取り、リボソームに伝える役割を果たします。

      tRNAは、「トランスファー」「運搬」という名前の通り、タンパク質を構成するアミノ酸をリボソームまで運びます。

      rRNAは、タンパク質と結合してリボソームを構成します。

      この3種類のうち、タンパク質の合成に関わる分野で重要なのはmRNA(メッセンジャーRNA;伝令RNA)ですので、覚えておきましょう。

       

      ※厳密にはtRNA、rRNAもタンパク質の合成過程に関わりますが、tRNAは「タンパク質を構成するアミノ酸を運搬する」、rRNAは「リボソームを構成する」ということが分かれば大丈夫です。

       

      3.タンパク質の合成過程②セントラルドグマとは?

      生物の体内で行われるタンパク質の合成は、DNA→RNA→タンパク質という順で遺伝情報が伝えられていきます。

      この遺伝情報の一方向的な流れを、生物の基本的法則性として、「セントラルドグマ」と呼びます。

      セントラルドグマの「セントラル」は中心と言う意味で、「ドグマ」とは、宗教における「教義(その宗教の考え方をまとめたもの)」と言う意味です。

      つまり、遺伝情報がDNA→RNA→タンパク質へ伝えられていく流れを、教典→聖職者→信者などに伝えられていくセントラルドグマ(中心教義)に例えたわけですね。

      この流れはあくまで一方通行で、信者個人の考えが教典に書かれることがないように、「タンパク質に新しい遺伝情報が書かれてそれがDNAへと逆流する」ということはありません。

      ⇒セントラルドグマについて詳しく知りたい方はこちら!

       

        4.タンパク質の合成過程③転写と翻訳

        先ほど見たタンパク質の合成の際の「DNA→RNA→タンパク質」という遺伝情報の伝達は、それぞれ、「転写」と「翻訳」というRNAの働きによって行われます。

        タンパク質の合成のセントラルドグマの図(転写、翻訳)

        ここからは、この「転写」「翻訳」の流れに沿って、タンパク質の合成の過程を見ていきましょう。

         

        4-1. 転写:DNAからRNAへ

        タンパク質の合成過程における「転写」とは、DNAが持つ遺伝情報を、RNAが写し取ることを言います。

        DNAは遺伝子の記録された設計図のようなものであるということは、すでに習ったと思います。

        そして、DNAは二重らせん構造をしていて、2本のヌクレオチド鎖からできており、ヌクレオチド鎖の塩基の配列によって遺伝情報を記録しているのでしたね。

        ⇒DNAの構造について復習したい方はこちら!

         

        転写では、まず、DNAを構成する2本のヌクレオチド鎖の塩基の結合部分が切り離され、1本ずつに分かれたヌクレオチド鎖になります。

        そして、このうち1本のヌクレオチド鎖(鋳型鎖:いがたさ)の塩基の配列に従って、RNAのヌクレオチドが並んでいきます。

        このとき、RNAのヌクレオチドは、塩基がDNAのヌクレオチドの塩基と相補的に結合するように並んでいきます。

        つまり、

        DNAの遺伝情報がmRNAに転写される図

        DNAならばアデニン(A)にはチミン(T)が相補的に結合しますが、ここではRNAなので、アデニン(A)にはウラシル(U)が結合します。

        ちなみに、チミン(T)には、DNAの場合と同じくアデニン(A)が相補的に結合します。

        そして、DNAのヌクレオチドの配列と相補的に結合するように並んだRNAのヌクレオチド同士が連結してヌクレオチド鎖になり、1本のRNAとなります。

        このようにDNAの塩基配列を転写したRNAが、mRNAです。

        転写は、DNAが存在する、細胞内の核の中で行われます。

         

        4-2. 翻訳:RNAからタンパク質へ

        タンパク質の合成過程における「翻訳」とは、RNA(mRNA)が写し取った遺伝情報をもとにアミノ酸を並べていき、タンパク質を作ることを言います。

        先ほど、タンパク質はアミノ酸でできていることと、アミノ酸の配列によって、どの種類のタンパク質になるかが決まるということを説明しました。

        ついに、DNAの遺伝情報をもとにタンパク質が組み立てられます。

         

        転写は核の中で行われましたが、転写が終わったmRNAは、核膜孔を通って細胞質の中へと出ていきます。

        そして、mRNAは細胞内のリボソームと結合し、このリボソームが、mRNAの塩基配列に従って、アミノ酸を並べていくという役割を持っています。

        ⇒細胞の構造や細胞小器官について復習したい方はこちら!

        ※リボソームを構成するrRNAは、ここでタンパク質の合成に関わることになります。

        ※このとき、アミノ酸を運んでくるのがtRNA(運搬RNA)です。

         

        アミノ酸は、生物が食べたタンパク質が分解して作られ、体内に取り込まれます。

        アミノ酸⇔タンパク質という関係を覚えておきましょう。

         

        転写が終わったmRNAには、DNAの遺伝情報(ヌクレオチドの塩基配列で表される)が、それぞれ相補的な結合をするヌクレオチドの塩基配列に置き換わって写し取られています。

        実は、この塩基の配列は、3つで1組になっています。

        つまり、塩基3つの配列が、アミノ酸の種類1つを指定しているということです。

        例えば、mRNAの塩基がCUUという配列なら「ロイシン」というアミノ酸、AUAなら「イソロイシン」というアミノ酸というように、アルファベットが3つあるごとに、1つのアミノ酸と対応しています。

         

        もしも、塩基1つに対して1つのアミノ酸を指定することしかできなければ、A,U,C,Gそれぞれに対応する4種類のアミノ酸しか扱うことができなくなってしまいます。

        そのため、塩基3つをセットとすることで、4×4×4=64通りの配列を可能にしたのです。

        mRNAの遺伝情報が翻訳され、アミノ酸が連なってタンパク質が合成される図

        そして、mRNAの塩基配列に基づいて並んだ隣り合うアミノ酸同士が結合(ペプチド結合)し、折りたたまれて立体構造をとり、タンパク質が合成されます。

        この過程が「翻訳」です。

        A,U,C,Gの配列が、ロイシン、イソロイシンなどアミノ酸の配列に「翻訳」される、と覚えましょう。

         

        4-3. 遺伝暗号「コドン」

        タンパク質の合成において、アミノ酸の種類を指定するmRNAの3つの塩基配列は、“暗号”と見立てられて、コドン(遺伝暗号)と呼ばれます。

        どのコドンがどのアミノ酸を表す暗号であるのかを示した表を、「コドン表」または「遺伝暗号表」と呼びます。

        タンパク質の合成におけるアミノ酸の配列とタンパク質の種類(コドン表)

        ▲遺伝暗号表

        タンパク質を構成するアミノ酸は20種類ありますが、塩基は4種類(RNAではA、U、G、C)しかありません。

        そのため、20種類のアミノ酸を指定するためには、64種類(4×4×4)の組み合わせが可能となる塩基3個ずつの暗号を使い、数個の暗号が同じアミノ酸を指定するという方法を取っています。

         

        コドンには、タンパク質合成の開始を指定する開始コドンと、停止させる働きのある終止コドンが含まれます。

        開始コドンAUGは、メチオニンを指定するコドンです。

        終止コドンにはUAA、UAG、UGAの3つがあり、対応するアミノ酸がないため、タンパク質合成を停止させるコドンとして働きます。

        これらのコドンがあれば、タンパク質の合成の開始と終止の合図となります。

        コドン表を覚える必要はありませんが、DNAとRNA、タンパク質の合成の過程に関わる重要なほうですので、しっかりと理解しておきましょう。

         

          タンパク質の合成のまとめ

          この記事では、タンパク質の合成の過程について、RNA、セントラルドグマ、転写、翻訳、コドンを見てきました。

          混乱しやすい分野ではありますが、この記事でしっかりと理解し、定期的に復習すれば、得点源になるはずです。

          間違えやすい部分に注意して、学習を進めましょう。

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          この記事の執筆者

          ニックネーム:受験のミカタ編集部

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