ヌクレオチドとは?ヌクレオシドとの違いと遺伝での役割を解説
「ヌクレオチドとは何か?」というのは、高校の生物基礎で遺伝を学ぶ上で、重要なポイントです。
よく似た言葉にヌクレオシドがあり、違いが分からないという人も多いでしょう。
ヌクレオチドとヌクレオシドは、互いに関連のある化合物です。
ここでは、そんなヌクレオチドとヌクレオシドについて、その違いと役割を解説していきます。
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1.ヌクレオチドを知る前に:タンパク質と核酸
まずは、ヌクレオチドについて説明するために必要となる、「タンパク質」と「核酸」についての知識を確認しましょう。
ヒトのからだの約65%は水です。
次に多いのは、筋肉や皮膚をつくっているタンパク質で、約15%あります。
このタンパク質の合成に関わったり、遺伝情報を保持したり次世代に伝達したりする役割を果たしているのが、核酸(かくさん)と呼ばれる物質です。
核酸には、遺伝の分野でよく聞くDNA(デオキシリボ核酸)と、高校の生物で習うRNA(リボ核酸)の2つがあります。
2.ヌクレオチドとは核酸(DNA, RNA)の構造の単位である
ヌクレオチドとは、上で説明したようなDNAやRNAといった核酸を構成する基本単位です。
DNAもRNAも、塩基(えんき)と糖からなる構成単位が、リン酸を介して一次元的に連なる構造をしています。
この[核酸塩基+糖+リン酸]という単位をヌクレオチドと言い、リン酸を含めない[核酸塩基+糖]の部分をヌクレオシドと言います。
ヌクレオチドは英語ではnucleotideと書きます。
語尾の「tide」は、「結ばれた」という意味なので、「リン酸が結ばれたものがヌクレオチド」と覚えるといいでしょう。
英語でも、ネクタイなどのtieは動詞で「結ぶ」という意味ですよね。
ちなみに、ここからは受験に出ることはありませんが、核酸塩基と糖とリン酸が一つずつ結合したものをモノヌクレオチド、2個のモノヌクレオチドがリン酸基部分で結合したものをジヌクレオチドと言います。
2分子以上のモノヌクレオチドが規則的に重合したものをオリゴヌクレオチド、非常に多くのモノヌクレオチドが重合して高分子化合物となったものをポリヌクレオチドと言います。
核酸は、ポリヌクレオチドです。
2-1.DNAとRNAの違い―糖がリボースか、デオキシリボースか
ヒトなどの生物の遺伝情報を伝達しているのが、DNAと呼ばれる物質です。
DNAは二重らせん構造をしていて、高校の生物基礎では、遺伝に関する様々な範囲で出題されます。
詳しくは、DNAに関する以下の記事をご覧ください。
⇒DNAについて詳しく知りたい方はこちら!
一方でRNAは、DNAと同じ核酸ですが、二重らせんではなく、1本のヌクレオチド鎖でできています。
また、RNAでは塩基の種類もDNAと異なり、チミン(T)がない代わりに、ウラシル(U)が存在します。
RNAは、高校の生物基礎では、おもにタンパク質の合成についての範囲で出てきます。
⇒タンパク質の合成&RNAについて詳しく知りたい方はこちら!
そして、このDNAとRNAはどちらも核酸であり、ヌクレオチドからできていますが、それぞれを構成するヌクレオチドの種類が少し違っています。
ヌクレオチドのうち、糖の部分が「リボース」という糖であるものをリボヌクレオチド、糖の部分がデオキシリボースのものをデオキシリボヌクレオチドと呼びます。
リボヌクレオチドが重合したものがリボ核酸(RNA)、デオキシリボヌクレオチドが重合したものがデオキシリボ核酸(DNA)です。
回りくどく説明しましたが、つまり、リボ核酸(RNA)を構成するヌクレオチドは糖の部分がリボースになっていて、デオキシリボ核酸(DNA)を構成するヌクレオチドは、糖の部分がデオキシリボースになっているということです。
より詳しく説明すると、リボース(C5H10O5)もデオキシリボース(C5H10O4)も、「五炭糖」(ペントース)と呼ばれる炭素原子を5つ持つ単糖です。デオキシリボースは、リボースより酸素原子が1つ減少した構造をしています。
「デオキシ(脱酸素)された」リボースというのが、名前の由来です。
2-2.核酸塩基
核酸塩基とは、核酸を構成する成分の中で、唯一アルカリ性(=塩基性)である部分のことです。
一般的に、「塩基」と略されます。
遺伝に関わる塩基には、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)があります。
先ほども述べたように、アデニン、グアニン、シトシンは、DNAとRNAに共通の塩基ですが、チミンはDNAに特有の、ウラシルはRNAに特有の塩基です。
つまり、DNAのヌクレオチドに含まれる塩基は
アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)
の4種類であり、
RNAのヌクレオチドに含まれる塩基は
アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)
の4種類です。
この塩基同士が結合することで、DNAやRNAが形作られます。
例えば、DNAは以下のように形作られます。
ここで、結合した塩基をよく見てください。
上の図のように、塩基は、必ず決まった相手と対をなします。
これを、塩基の相補性と言い、相補性に従った結合を相補的な結合と言います。
DNAでは、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)が相補的に結合します。
RNAでは、アデニン(A)とウラシル(U)、グアニン(G)とシトシン(C)が相補的に結合します。
相補的に結合した2つの塩基を、塩基対と呼ぶこともあります。
DNAとRNAでは、アデニンと相補的な塩基が異なることを覚えておきましょう。
3.ヌクレオチドの組み合わせと役割
それでは、ヌクレオチドがつながってできたDNAやRNAに、どのようにして遺伝情報が記録されるのかについて説明します。
遺伝情報(遺伝子)は、どの塩基を持つヌクレオチドが、どういう順で並んでいるかによって、DNAやRNAに記録されています。
上の図はDNAを構成するヌクレオチド鎖ですが、このように、DNAやRNAは、多数のヌクレオチドが結合してできています。
このとき、多数のヌクレオチドの組み合わせが、そのDNAが持つ遺伝情報を表しています。
例えて言うなら、QRコードやバーコードが、白と黒の四角形の組み合わせで、ウェブサイトのURLや商品の情報を表しているようなものでしょうか。
まとめ
今回、覚えてほしいことは、以下の通りです。
きちんと覚えているかどうか、思い出してみてください。
- ヌクレオチドとヌクレオシドの構造と違い(リン酸を含むものがヌクレオチド)
- ヌクレオチドは、核酸(DNA、RNA)の構造の単位である
- デオキシリボ核酸(DNA)のヌクレオチドが含む塩基は、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)
- リボ核酸(RNA)のヌクレオチドが含む塩基は、アデニン(A)とウラシル(U)、グアニン(G)とシトシン(C)
- 塩基の相補的な結合
- 塩基の並び方が、遺伝情報を表している
どれも遺伝を学ぶ上で基本となる項目なので、きちんと押さえておきましょう!