触媒とは?性質や化学反応を速める仕組みをわかりやすく解説!

化学 2022.6.10
触媒とは?性質や化学反応を速める仕組みをわかりやすく解説!

自身は変化することなく、化学反応の速度を促進する物質のことを、「触媒」といいます。この物質は、自身は化学式の中で反応にかかわることがないものの、化学式の活性化速度に影響を及ぼします。

少量の触媒を入れた状態で化学反応を行うと、通常時に比べてより速くなるため、工業的にも多くの触媒が利用されています。

今回は触媒の性質をしっかり掘り下げて解説していきます。

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    触媒では何が変化する?~反応熱と活性化エネルギーの差とは?~

    触媒とはある物質の反応に入れることで、自身は反応を起こさないものの、化学反応を促進する物質です。

    わかりやすく言うと、化学反応を起こすきっかけを作り出すものの、その物質自体は一切化学反応に関与しない物質を指します。

    通常の反応と触媒がある反応では、反応前の物質と反応後の物質は何も変化はありません。

    そのため、生成物と反応物のエネルギー差である反応熱も変化しません。

    しかし、触媒があることで、活性化エネルギーには大きな変化が発生します。

    活性化エネルギーの変化

    この図は、左が反応する前の物質(反応物)、右が反応後の物質(生成物)の図になります。

    反応熱は、生成物と反応物のエネルギーの差で示します。活性化エネルギーは、反応前の山の根本のエネルギーから、反応直後の山の頂点のエネルギーの差を示します。

    通常の反応では、エネルギーの山は高い状態ですが、触媒を使用すると、山は低くなっています。触媒の使用により、反応前と反応直後のエネルギーの差が小さくなる=活性化エネルギーが小さくなるのです。

    「高い山を越えるより、低い山を越えるほうが時間がかからない」というイメージ通り、活性化エネルギーが小さくなると化学反応は早くなります。しかし、化学反応によって発生する熱は、化学式前後の分子の数に依存するため、反応の速さによって変化することはないのです。

    触媒はあくまで反応を速めるための物質なので、化学式には明記されません。

      化学平衡は触媒で変化しない~ルシャトリエの原理との関係~

      触媒を使用することで、変化しない点に「化学平衡」があります。

      ここで化学平衡に関しておさらいをしましょう。

      通常の化学反応が起こると、前後の反応が逆に戻ることはありません。反応後の物質が元の反応物質に戻ることはない反応を「不可逆反応」と言います。

      また、反応した後も元の物質に戻ることができる反応を「可逆反応」と言います。可逆反応で反応が表面上は進まない状態を「化学平衡」と言うのです。

      【A】⇔【B】

      この状態を分子レベルで観察をすると、化学反応前から化学反応後の反応の変化と、化学反応後の物質から化学反応前に戻る反応が同じ頻度で起こっている状態なのです。

      同じ頻度で化学反応が起こっているため、表面上は化学反応が進んでいない状態、これを化学平衡と言います。

      触媒はあくまで化学反応の活性化エネルギーに作用するため、化学平衡が発生している物質に、触媒を入れると、化学反応前の反応から後の反応と、化学反応後から化学反応前に戻る反応、両方の反応の活性化エネルギー双方を小さくします。

      その根拠にルシャトリエの原理があります。

      ルシャトリエの原理とは、化学反応が平行状態にあるときに、温度や濃度、体積、圧力といった反応条件を変化させた場合、その変化を打ち消すような方向に化学反応が進み新たな平衡状態ができるというものです。

      例えばこの化学反応が平行状態にあるとき、温度を下げます。

      ルシャトリエの原理から、温度を下げた場合はその変化を妨げる方向、すなわち熱が発生するような方向に化学反応が進みます。上記の化学反応の場合、左から右への反応が進み熱を発生させます。

      触媒は、反応物の温度、濃度、体積、圧力には全く関わることがありません。そのため、触媒を入れたから反応が偏るというような現象は発生しないのです。

      そのため、化学平衡が偏るという現象は触媒では発生しないのです。
      化学反応

      触媒を利用した代表的な反応と有名な反応例

      触媒の働きに関してまとめました。

      では、触媒を実際に利用した反応として有名なものはどのような反応なのでしょうか?

      入試によく聞かれる代表的な反応と触媒とセットで解説いたします。

      オストワルト法は、硝酸をアンモニアから作る方法です。

      工業的な反応として利用され、安価なアンモニアから硝酸を作る方法になります。硝酸はあらゆる金属を溶かす硫酸に続く金属を溶かす強酸で有名です。

      硝酸を作る一連の方法は3つの反応で表すことができます。

      4NH3 + 5O2 → 4NO + 6H2O・・・①

      2NO + O2 → 2NO2・・・②

      3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO・・・③

      このうちの①の反応で白金が使用されます。アンモニアは通常酸素と化学反応がしにくいため、この反応の時に加熱した白金を入れ、一酸化窒素を作る反応に使用されます。
      化学式
      また、過酸化水素水を水と酸素に分解する反応を促進する触媒として、二酸化マンガンも有名です。

      2H2O2=2H2O+O2

      入試で頻出のハーバーボッシュ法でも、触媒として鉄が利用されています。

      窒素と水素が反応する時に二重促進鉄を入れて反応を起こしています。このほか、燃料電池やカイロにも触媒反応は利用されています。

        まとめ

        化学式上では全く変化がないものの、反応を促進する物質を触媒と呼びます。触媒の大きな特徴は、反応熱は変化させず、活性化エネルギーのハードルを低くすることで反応を促進させるということです。

        触媒自体は化学反応に加わることがないため、化学式の中に存在することはありません。

        同じ原子と分子の数がある場合、反応熱は分子数に依存するため、発生する熱量に変化はないです。化学反応における可逆反応における、ルシャトリエの原理からも分かるように、触媒は平衡状態を変化させることもありません。

        平衡状態を左右するのは、熱と圧力、体積といった要素触媒反応は全く絡んでいないからです。

        双方の反応を速めるため触媒を入れた場合は、単純に、化学平衡の状態のままになります。

        触媒反応で有名なものは、硝酸を作るため、アンモニアと酸素を反応させるときに使用される「オストワルト法」の白金触媒や、過酸化水素水を酸素と水に分解する際に用いられる二酸化マンガンです。その他、ハーバーボッシュ法方での窒素と水素の反応の二重促進鉄や、カイロの白金にも使用されています。

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        この記事の執筆者

        ニックネーム:受験のミカタ編集部

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