電気親和力ってなに?イオン化エネルギーや電気陰性度との違いも含めて解説!
電子親和力、イオン化エネルギー、電気陰性度について、なにがどう違うのかを解らないという受験生が多いのではないでしょうか。
概念としてはそれほど難しいものではないのですが、それぞれの数値の大小について納得するには、電子軌道のエネルギー準位の理解が必要であり、高校化学の教科書レベルから逸脱してしまいます。
この記事では、電子親和力について予備知識も含めて解説します。
また、イオン化エネルギーや電気陰性度についてもまとめます。
1.電子親和力とは
電子親和力とは、原子や分子が電子を1つ取り入れるときに放出されるエネルギーのことです。
以上のように説明するとわかりにくいかもしれませんが、「電子親和力」という字面に注目したほうが理解しやすいです。
少し言い換えれば「電子(負電荷)とどれだけ仲が良いか」、これが「電子親和力」です。
電子は負電荷を持っていますから、電子と仲がよいということは、電子親和力が大きいほど陰イオンとしての存在することが安定である(=陰イオンになりやすい)ことを表しています。
電子親和力を「陰イオンから電子を引き離すのに必要なエネルギー」と理解するのもよいでしょう。
2.電子親和力の予備知識:電子配置
先に電子配置と周期表について復習しておきましょう。
原子は、原子核とそれを取り巻く電子から出来ています。
周期表をみると、それぞれの原子に原子番号がついていますが、適当に番号を付けたわけではありません。
原子番号は、原子核の含まれる陽子の数と対応しています。
そして、電気的に中性を保つには、同数の電子が原子核を取り巻くことになり、電子は電子殻と呼ばれる空間を運動しています。
電子殻には原子核に近い方からK殻、L殻、M殻、N殻…と名前がついており、それぞれ2, 8, 18, 32個の電子を配置することができます。
高校化学では「K殻から順番に配置されていく」と習いますが、実際には違います。
以下は大学の内容なので、深く理解する必要はありません。
K殻には1s軌道、L殻には2s軌道、2p軌道、M殻には3s軌道、3p軌道、3d軌道、N殻には…があり、以下のように最大収容電子数が決まっています。
周期表はこの電子殻軌道に電子が入る順番に従って整理されています。
電子は、電子軌道のエネルギー準位の低い順(つまり楽には入れるところから)配置されていきます。
(以上が大学の内容です。以下は高校範囲なのでしっかり理解しておきましょう)
原子の最も外側の電子殻に存在する電子を最外殻電子(価電子)とよび、他の原子との結合に使われます。
価電子の数が等しい原子同士は、互いによく似た化学的性質を示します。
周期表ではこれらが縦に並ぶように配置しています。
最大数の電子で満たされた電子殻を閉殻といい、閉殻となった電子殻は非常に安定しています。
18族元素(希ガス)が他の原子と反応しにくいのは、閉殻である価電子数が0の状態だからです。
また、17族元素(ハロゲン)は、他の原子から電子を一つもらうと安定するため電子を受け取りやすく、1族元素は電子を1つ与えれば安定しますから電子を放出しやすい性質をもっています。
3.電子親和力(グラフ付き)と原子番号
電子親和力の大きさは、周期表や原子番号を用いて説明されることが多いです。
先にも説明した通り、電子親和力は「電子を1つ取り入れるときに放出されるエネルギー」であり、「電子親和力が大きいほど、1価の陰イオンとして安定である」ことを表しています。
つまり、フッ素 や塩素 、臭素 、ヨウ素 などの17族元素は、電子親和力が大きくなります。
実際に同一周期では(つまり周期表を横に見れば)、原子番号が大きくなれば電子親和力も大きくなってゆき、17族元素(ハロゲン)で極大となります。
18族元素(希ガス)は、電子のやり取りがない状態で既に、電気的に安定な状態ですので電子親和力が非常に小さくなります。
実際に下図をみると、希ガス元素であるヘリウムHe、ネオンNe、アルゴンArの電子親和力は小さくなっているのが確認できます。
次は同族元素で電子親和力を比較してみましょう。
周期表を縦に見たとき、基本的には原子番号が小さい方(つまり周期表では上の方)の電子親和力が大きくなります。
この原則をそのまま適用すれば、すべての元素の中でフッ素F(元素表では第2周期)の電子親和力が一番大きくなりそうですが、実際には塩素Cl(元素表では第3周期)の方が電子親和力が大きくなります。
フッ素と塩素に限らず、同族元素を比較した場合、第2周期の元素と第3周期の元素では、一般的に第3周期の元素の方が電子親和力が大きくなります(リチウムとナトリウムは例外)。
※2族と18族の電気親和力はどちらも負になるため、省略します。
(数値は改訂版フォトサイエンス化学図録より(巻末資料))
これは、原子がクーロン力(静電気力)により、電子を引き留めているからです。
第2周期(リチウムLiからネオンNe)と第3周期(ナトリウムNaからアルゴンAr)までの電子配置を考えると、第2周期ではL殻に電子が配置され、第3周期ではM殻に電子が配置され始めます。
クーロン力Fは
(q₁,q₂:2つの電荷量、r:2つの電荷の距離、k:比例定数)
で表されます。
ここで重要なのは、「クーロン力は距離が近いと大きくなる」ということです。
先に申し上げた「周期表を縦に見たとき、基本的には原子番号が小さい方(つまり周期表では上の方)の電子親和力が大きく」なるのは、
同族では原子番号が大きいほど電子殻が大きくなり(高校化学での話であり、大学の範囲では同族で原子番号が大きくなっても電子核の大きさは変わらない場合があります)、
クーロン力の公式のrが大きくなることにより電子を拘束する力(静電気力)が弱くなるからです。
しかし、第2周期と第3周期の同族原子では電子親和力の関係が異なり、原子番号の小さい第2周期の原子より、原子番号の大きい第3周期の同族原子のほうが電子親和力は大きくなります。
これは、原子核が大きくなり電子を拘束する力が弱くなることよりも、原子核が電子を拘束する力(静電気力)の影響が強くなり、エネルギー的に不安定になるため、第2周期と第3周期を比較すると一般的に、第3周期の電子親和力の方が大きくなるのです。
4.「イオン化エネルギー」「電気陰性度」と電子親和力との違い
イオン化エネルギーとは「気体状の原子から電子1個を取り去って、1価の陽イオンにするのに必要な最小のエネルギー」です。
イオン化エネルギーが小さいと言うことは、つまり「陽イオンになるために必要なエネルギーが少ない」ということですから、イオン化エネルギーが小さいほど陽イオンになりやすいと言えます。
逆にイオン化エネルギーが大きいと、陽イオンになりにくくなります。
イオン化エネルギーは周期表の右上に行くほど大きくなり、ヘリウムHeで最大となります。
同一周期で考えると、希ガスは安定しているためイオン化エネルギーが一番大きくなります。
イオン化エネルギーについての記事も併せてご覧ください。
電気陰性度は電子親和力と字面が似ていますが、概念は異なるため注意しましょう。
電気陰性度とは、「原子が結合するときに、それぞれの原子が相手の電子を引き付ける強さを数値化したもの」です。
「原子が結合するとき」に定義される値ですから、ヘリウムHeやネオンNe、アルゴンArなどの希ガス原子は他の原子とほとんど結合しないため、定義されていません。
周期表の右上の元素ほど電気陰性度が大きく、フッ素が最大となります。
電気陰性度には「ポーリングの電気陰性度」「マリケンの電気陰性度」「オールレッド・コロウの電気陰性度」というように、いくつかの定義があるのですが、これらの定義を詳しく知っておく必要はありません。
高校で学習するのは「ポーリングの電気陰性度」です。
重要なのは、高校範囲で出てくるようなHe、Ne、Arなどの希ガスに対して電気陰性度が定義されていないこと、周期表の右上ほど電気陰性度が大きくフッ素が最大であること、です。
電気陰性度についての記事も用意してありますので、併せてご覧ください。
5.電子親和力のまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、電子親和力についてまとめました。
ご参考になれば幸いです。