炎色反応を理解しよう!ゴロ合わせと一覧表でわかりやすく解説
炎色反応とは、特定の金属イオン(例えば、塩化ナトリウム, NaClや硫酸銅, CuSO4)や金属の粉末をバーナーなどで加熱すると、金属の種類に応じて炎の色が変化する、というものです。
この知識はセンター試験で問われたり、大学入試問題の化学で金属分析における簡易の試験方法として問われることがあります。
今回はこの炎色反応について説明したいと思います。
ゴロ合わせだけ覚えたいという方は、そちらだけでも参考にして下さい。
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【 目次 】
1.炎色反応とは
炎色反応とは、金属イオンに炎を当てて加熱すると、特定の色の炎になる現象です。
主に、教科書や大学入試で問われる金属の種類は以下のものが挙げられます。
おもな元素記号と物質名、炎の色をまとめてみました。
実際には他にも炎色反応を示す金属は存在しますが、中学・高校で習う金属はこれだけです。
反対に言えば、たったこれだけの元素記号と元素名、色をリンクして覚えておけば、センター試験の炎色反応の問題は大丈夫でしょう。
2.炎色反応で色が変わるのはなぜ?原理を理解しよう
炎色反応では、物質と色さえ覚えてしまえば簡単な問題は解けますが、上位の大学を狙うのであればなぜこのような現象が起きるかを理解しておいた方が賢明です。
この章では、光、エネルギー、電子をキーワードにして、炎色反応の原理を、なるべく分かりやすく解説します。
例として、NaCl(塩化ナトリウム)を挙げて、説明していきます。
NaClは「Na, ナトリウム」が金属元素です。
NaClを加熱した場合は、黄色の炎色反応を示します。
このとき、原子や電子といった非常に小さな世界では、次のようなことが起きています。
炎色反応の原理①
電子がエネルギーを持った状態になる(励起状態)
Na原子の周りには、電子がいます。
炎で加熱すると、電子たちは加熱され、通常よりもエネルギーを持った状態になります。
すると、エネルギーを持った電子たちはもともといた場所から離れ、少し遠い位置に移動します。(電子が電子軌道を移動するといいます)
この状態を、励起状態と呼びます。
励起状態の電子はエネルギーをたくさん持っているため非常に不安定な状態です。
炎色反応の原理②
電子がエネルギーを放出して元の状態に戻る(基底状態)
そもそも、原子と電子というのは、常に安定な状態にいたいという性質があります。
そこで、エネルギー的に不安定な電子は、元の安定な状態に戻るため、このエネルギーを放出し、もともといた場所に戻ろうとします。
このとき、放出されたエネルギーは光エネルギーとして放出されます。
炎色反応の原理③光エネルギーと炎の色
ここで、光エネルギーというものを考えてみましょう。
光は波であり、粒子でもある、なんて言葉があったりします。
今回ここで説明するのは「波」の方の考え方です。
「光のエネルギー, E]は、「光の速度(光速), c」と「光の波長, λ」と「プランク定数(比例定数), h」から、下記の式で与えられます。
数式が苦手という方は、下記のように考えてください。
炎色反応で説明に使うのは光エネルギーと波長のみだからです。
この式が意味していることは、光エネルギーの量が決まれば、その光の波長は決まるということです。
そして、この光の波長が決定すると色も決定します。
すなわち、「光エネルギーの量が決まれば炎色反応の色も決定する」ということです。
この事から、次のように考えます。
さて、このことを覚えた上で、話を元に戻します。
ナトリウムの電子はとても不安定な励起状態から、安定な基底状態に戻るために光エネルギーを放出しました。
この放出する光エネルギーは、元素によって決まっています。
式に元素ごとに決まった光エネルギーを代入すると、何色に反応するかが決定される、というわけです。
ナトリウムの場合、放出されたエネルギー量から、色が黄色に見える589nmという波長の光が放出され、黄色の炎になるという訳です。
この色の決定方法について、次の章で解説していきます。
3.炎色反応で元素ごとに色が決まっている理由
ナトリウム以外にも炎色反応を示す金属は多くあります。
そして、どの金属に炎を当てた場合でも、電子がどれくらい励起するかというのは決まっているのです。
上記で説明したように、励起状態と基底状態の差が光エネルギーになるので、炎色も金属元素ごとに決まります。
余談ですが、炎色反応と呼ばれるくらいなので、あくまでガスコンロやちょっと火力の強いバーナーの炎で加熱する程度の中での話です。
溶鉱炉のような3000度以上にもなる高温で加熱すると、色は黄色というよりも白色に近くなります。
(溶鉱炉の写真を見ると、大体黄色っぽいく見えますが、筆者が生で見たときは、目がちかちかするくらい光っていました。)
4.炎色反応の覚え方(ゴロ合わせ)
炎色反応について、学校で教えられる代表的な金属イオンとして、Li, Na, K, Cu, Ca, Sr, Baが挙げられます。
これらは、色も合わせて、次のようなゴロ合わせで覚えられます。
リアカー 無き K村 動力 借りるとう するもくれない、 馬力 で行こう!
Li (赤) Na (黄) K (紫) Cu (緑) Ca (橙) Sr (紅) Ba (黄緑) で行こう!
皆さんの親世代から続く語呂合わせです。
最後のBaだけが若干引っかかりますが、覚えましょう。
声に出して覚えると同時に、手で元素記号と色を書くと効率的に覚えられます。
5.身の回りにある炎色反応の例
ここで、身近にある炎色反応の例を、いくつか挙げていきます。
身近な炎色反応①花火
花火は代表的ですね。
花火の色とりどりの色は、炎色反応を用いたものです。
硝酸ナトリウムや硝酸銅といった化合物を、火薬で爆発させて燃やします。
すると、炎色反応が起き、黄色や紅色に見える、というものです。
花火を見た時は、「あぁ、Srの発光はきれいだな、あ、今銅が発光した!」などとしみじみ思いましょう。
身近な炎色反応②ガスの炎と味噌汁
自宅で親が作る味噌汁をよく観察してください。
味噌汁が吹き零れた時、ガスの炎の色は黄色に発光します。
これは、お味噌に含まれる塩分(NaCl)のナトリウム塩が炎色反応によって黄色に発光しているからです。
身近な炎色反応③トンネルのランプ
最近は徐々に減ってきているそうですが、道路のトンネルに設置されているランプにナトリウムランプというものがあり、黄色に発光します。
これも、炎色反応を利用したもので、気化したNaをランプの中に封入しておき、電気を流すことでエネルギーを与え、黄色に発光させているものです。
6.ちょっと踏み込んで~電子配置図と炎色反応~
さて、ここまでは、炎色反応について、高校や中学校の化学の教科書に記載される事項を中心に説明してきました。
しかし、ネット等で調べるとすぐに検索に出てくる通り、実はこの説明は厳密には不足しています。
ただし、間違いではありません。そこについて触れたいと思います。
中学・高校で習う電子配置図はウソ・ホント?
中学校や高校の理科では、電子配置図について、中心に近い殻から順に2個、8個、…という風に電子が入り、最も遠い電子殻を最外殻電子と呼ぶという風に習います。
これは、100年以上前の研究ではホントでした。
しかし、その後の研究から、電子が入る殻というのはもっと複雑で、軌道という考え方を提案してやっと説明ができるということが解明されました。
軌道についての考え方は、進学校や化学に明るい先生が興味がある学生に教えるくらいでしょうが、大学に入ると理系学生は恐らく勉強することになります。
決して難しいものではなく、今まであいまいに説明されていたものがより論理的に説明されます。
気になる方は、「電子・軌道」などで調べればたくさんの情報が出てきますので、見てみてください。
なぜ全ての金属は炎色反応を示さないのか?
結論から言えば、「全ての金属は炎色反応を示すが、人間の目には違いが分からない」というのが結論です。
人間の目に見える光の範囲というものは、とてもとても狭い範囲です。
赤色から紫色くらいまでしか見えません。
でも実際には、もっとたくさんの色(人間には見えないので、色というと語弊があるかもしれませんが)があります。
そのため、人間が見える赤色から紫色に色づいてくれる、主に1族2族金属が、炎色反応を示す、という風に習うのです。
炎色反応についてまとめ
炎色反応とは、金属を炎で加熱すると、金属の種類に応じて固有の炎色になる現象のことである。
炎色反応の原理は、金属が加熱されたことによって電子がいつも以上にエネルギーを持った状態になり、多くなった分のエネルギーを光エネルギーとして放出することで、金属ごとに決まった色が見えるというものである。
炎色反応のゴロ合わせとしては、
Li (赤) Na (黄) K (紫) Cu (緑) K (橙) Sr (紅) Ba (黄緑) で行こう!
(リアカー 無き K村 動力 借りるとう するもくれない、 馬力 で行こう!)