蒸気圧とは?求め方を分かりやすく解説

化学 2022.12.25
蒸気圧とは?求め方を分かりやすく解説

蒸気圧は新課程になってから、センター試験にも出題されるようになりました。

以前はさほど出題されることもなく、軽視されていましたが今ではそうもいきません。
そのため蒸気圧についても、しっかりと理解できるように解説をしていきましょう。

実は気体に対する問題ができていれば、難しく考える必要はありません。

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    1.そもそも蒸気圧とはなにか?

    まずは、蒸気圧とは何かについて解説していきます。

    蒸気圧 解説画像

     

    そもそも液体は気体になると、体積がものすごく大きくなります。

    水蒸気は約1700倍にも大きくなることで有名で、この時の圧力を蒸気圧と呼んでいるのです。

    ただ、受験に関係するのは飽和蒸気圧の方になります。
    基礎的な部分から考えていきましょう。

    コップに水を入れて、部屋の中で放置していると水は減っていきます。

    これは水が蒸発していくからです。

    ずっと放置していれば、コップから水はなくなります。

    これは部屋の広さと、空気が循環しているのが原因です。
    では、もっと狭い閉じた空間ではどうなるのでしょうか。

    四角形と水の図

    密閉された空間で水を放置しておくと、やはり水は蒸発していきます。

    ただし、空間が密閉されているので、いつかは水が蒸発できない状態になってしまうのです。

    言い換えれば、閉じた空間を水の分子が埋め尽くしてしまう、と考えていいでしょう。

    この状態を気液平衡と呼んでいます。

    当たり前のことかもしれませんが、この基本的な部分を疎かにしていると、認識の齟齬が起きる可能性が高くなるので注意しておきましょう。

     

    では、飽和蒸気圧とは何を指すのでしょうか。

    密閉空間においては、蒸発できる水分子の量に限界があります。
    つまり、温度で一定であるのなら、圧力にも限界があると言えるのです。

    ここで1つ疑問になるのが、なぜモルを使わずに圧力なのか、です。

    モルとは物質の単位量のことです。
    分子の量で飽和蒸気圧が決まるのならば、モルの出番ではという考えはわかります。

    しかし、モルを使ってしまうと、密閉空間の体積に影響を受けてしまうのです。

    先ほどの話に戻ってしまいますが、密閉する空間が大きくなればなるほど、水分子が限界に達する量も大きくなります。
    つまり、モルで求めてしまうのは、現実的ではありません。

    ここで圧力の公式を考えてみましょう。

    P=nRT/V 

    という式になっています。

    Pは圧力でnは物質量(mol)、Rは気体定数、Tは温度、Vは体積を示します。

    ちなみに気体定数Rの値は一定で8.314 J/mol K(8.314×103 Pa L3/mol K) です。

     

    ここでn/Vについて考えましょう。結果からいうとn/Vは一定と考えることができます。

    詳しく説明します。液体を含む空間を考える場合、液体はいつでも気体に変化します。
    つまり、体積であるVが大きくなると、その分気体の物質量であるモルも液体が気体に変化することで大きくなるので、Vが増加する分を打ち消すことができます。なので、n/Vは一定と考えることができるのです。

    よって、水が蒸発をする限界量である飽和蒸気圧は、体積と物質量の影響を考えずにすむようになっているのです。

    要は汎用性の問題だと考えていいでしょう。

     

      2.蒸気圧曲線を知ろう

      次に蒸気圧曲線について考えていきましょう。

      蒸気圧曲線

      飽和蒸気圧の問題では、良く図が提示されます。

      この図は蒸気圧曲線と呼ばれるものです。

      受験勉強をしていると、また新しい図が出てきたと思われるかもしれませんが、そうではありません。
      この図は液体、気体、固体の状態を表す状態図の、液体と気体部分のみを切り取ったものだからです。

       

      では、どうして図が使われるのでしょうか。

      これはある温度において飽和蒸発量の限界値は、状態図における蒸気圧曲線によって決まるからです。
      つまり、温度がきまれば圧力の限界値を決めることができるので、覚えておくといいでしょう。

       

      蒸気圧を超えると、それ以上水分子が気体になることはできません。

      ここで受験の時に使うポイントが、密閉空間の中の状態はどうなっているのかです。

      すべて気体になってしまっているのか、または気体と液体が共存している状態なのかで判定をします。
      この時に使うことになるのが状態図なのです。

       

      では、実践をしてみましょう。

      例題
      2Lの容積のある密閉空間に、水(分子量18)を1.8g入れて放置します。数時間経過した後に、空間内に水滴はあるのでしょうか。ただし、定数Rは8.3×103、密閉空間の温度は80℃とします。
      また、この問いにおける蒸気圧を4.7×104Paとします。

       

      まずは、すべて気体になっていると考えて計算して見ましょう。

      ここで使う公式は

      PV=nRT

      これを変形して

      P=nRT/V

      という形です。

      では、実際に公式に代入をしていきましょう。

      nの値は1.8g/18 Rの値は8.3×103 Tの値は80+273 Vの値は2

      となります。

      式にすると

      1.8/18×8.3×103×(80+273)/2

      これを計算すると、約14.6×104となります。

       

      3.判定するための材料を知ろう

      先ほどの話は、仮説を立てて圧力を計算し、蒸気圧曲線と見比べることで正しいかどうかを調べるというものでした。

      この時に大きく分けると、圧力の値が2パターンあります。

      仮説の蒸気圧よりも、小さいか、大きいか、です。

      つまり、図と照らし合わせた時に、曲線のどの位置にくるのかを考えなくてはいけません。

      曲線より下、仮説の圧力が小さい場合は気体の状態にあると考えられます。

      この場合は、仮説が証明された形です。
      密閉空間の気体の圧力は、入れられた液体すべてが蒸発したものだと判別できます。

       

      次に圧力の値が大きい場合を考えていきます。

      仮として導いた圧力が蒸気曲線の値よりも上回っているのなら、容器内の液体はすべて蒸発して気体になります。

      圧力が増すと、一部が液体に戻って気液共存の状態になるのは、説明した通りです。

      つまり、密閉空間の圧力は、そのまま飽和蒸気圧の圧力と等しく、気液が共存する状態になります。

       

      では、実践をしていきましょう。

      先ほどの例題をから続けます。

      問題から、仮の蒸気圧を導くところまでやりました。

      PV=nRTの式より、P=nRT/Vとして求めたものです。

      仮の圧力として求めたものが、14.6×104でした。

      さらに問題文から、飽和蒸気圧がわかります。

      4.7×104Paです。

      この2つを比較してみると

      14.6×104 > 4.7×104Pa

      ということがわかりました。

      この場合、飽和蒸気圧よりも仮の圧力の方が大きいので、気液共存の状態になっているのが、わかります。この時の密閉空間内における気体の圧力は、飽和蒸気圧と同じになっていると考えられるのです。

      ここで、さらに液体化している水の量を求めてみましょう。

      液化している水の量を求めるための計算式は

      (最初に入れた水の量)×{(仮の飽和蒸気圧)-(正式な飽和蒸気圧)}/(仮の水蒸気圧)

      で求めることができます。

      つまり

      1.8×(14.6×104-4.7×104Pa/14.6×104)

      という形です。

      これを計算すると、約1.2という数字が出ます。

      つまり、液体化している水の量は、1.2gとなるのです。

      ここで疑問になるのが、最初に入れた液体として残った分は引かないといけないのか、というものです。

      この場合、液体の体積は気体に対して極小と言えるので、無視しても問題ありません。

      ここまでを、まとめておきます。

      ・飽和蒸気圧の問題では、密閉空間内に最初に入れた液体がすべて気体となったと仮定をします。
      ・気体の状態方程式に従って、仮となる圧力を計算してください。
      ・仮の圧力と飽和蒸気圧を比較して、仮の圧力の方が大きい場合は気液共存の状態になり、液化しています。
      ・液化した質量の求め方は、
      (最初に入れた水の量)×{(仮の飽和蒸気圧)-(正式な飽和蒸気圧)}/(仮の水蒸気圧)です。
      ・反対に圧力が低い場合は液化していません。

       

        4.蒸気圧のまとめ

        蒸気圧の求め方なども加えて解説してみました。

        話が混雑するところもありますが、基本的なことから順を追って理解していけば大丈夫です。

        一般的な受験では、先にも示した通りに計算をして、図からどの状態にあるのか判別できれば正解できるはずです。

         

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        この記事の執筆者

        ニックネーム:受験のミカタ編集部

        「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。