近似式とは?練習問題で微分の応用を理解しよう!

数学 2022.12.26

今回は関数の近似式について解説していきます。
関数の近似式は、実は現実の世界でもよく使われています。

大学受験においては、数学Ⅲの微分の応用で学習しますが、あまり丁寧に教わることが少ないことから「近似式ってなんだったっけ」「そんなもの習ったかな」という受験生も少なくありません。

しかし理系の学部に進みたいのであれば重要な単元になるのでしっかりと押さえましょう!
テイラー展開やマクローリン展開など、一部大学数学の分野も扱いますが、予習だと思ってご覧ください。

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1.近似式とは?

関数の近似式はある関数を別の関数で表すことができないかという試みです。

例えば、コンピュータに計算をさせるときに、非常に計算量と計算時間がかかるような関数 f ( x ) があったとして、それが局所的には一次関数 g ( x ) に非常に近い関数だったとしましょう。
その場合、関数f ( x ) を使って数値を求めるより、1次関数 g ( x ) を使った方が、計算が高速化されます。
このような場面に近似が使われます。

では、どのようにして近似できるでしょう。
実はすでに近似の考え方は高校数学の所々に出てきています。

関数 f ( x ) の x = a における微分係数 f ‘ ( a ) は、


で表されました。

これは、関数 f (x ) 上の点P( a, f ( a ) ) とQ( a + h, f ( a + h ) ) について考えたときの、平均変化率のことでした。
つまりyの増加量f ( a + h )-f ( a ) に対するxの増加量

 において、
xの増加量hを限りなく0に近づけたような値を、x = a における微分係数といったのです。

PQの距離が遠いと、線分PQと関数f ( x ) は全く別の関数です。

しかし、「hを限りなく0に近づける」と、2点P、Qは近づいてゆき、直線PQは関数y = f ( x )の接線に近づいてゆきます
h → 0 のとき点Pと点Qはほぼ同一の点になり、直線PQは関数y = f ( x ) の接線であるとみなすことができます。
このとき、点Pの付近に限って言えば、連続かつ微分可能な(つまり滑らかな)曲線であれば、関数y = f ( x ) はその接線に限りなく近いといえます。

つまり、連続かつ微分可能な曲線は、ある点の付近では、その点における接線に近似できます。

ですから、微分係数の定義式のhが0に十分近いときには

となりますので、計算すると

f(a+h)≒f(a)+f'(a)h

となります。これが1次の近似式です。

この式をみると、関数f ( a ) から、その付近の値であるf ( a + h ) を予測していることになります。
その際に使うのが、微分係数 f ‘ ( a ) です。
微分係数f ‘ ( a ) は x = a の点における接線の傾きです。

つまり


となっています。

それにxの増加量であるhをかけることで、yの増加量を求めることができます。

f ( a ) にたいして、yの増加量であるf ‘ ( a  ) h を足すことで、f ( a ) から少しずれた点の値f ( a + h ) を近似することができます。

もちろん近似値ですので実際の値とはずれがありますが、hが小さければ、それなりに精度の良い近似が可能です。

 

2.近似式の練習問題を使って解説!

問1:
h ≒ 0のとき、sin⁡(a+h) の1次近似を利用して、sin⁡31°の近似値を求めよ。

 

解答・解説:
近似値を利用した計算は、三角関数や対数関数のような、手計算で求められない関数を求める際に使います。
今回においては、h ≒ 0 のときの sin⁡(a+h) の一次近似式を求めます。

f(a+h)≒f(a)+f'(a)h

ですから、

sin⁡(a+h) ≒ sin a + hcosa

となります。

を代入すると

となります。実際の値は

sin⁡ 31°=0.5150・・・・・・

ですので、小数第3位までは一致しています。

 

3.近似式とは?例題を使って解説!

近似値の式

f(a+h) ≒ f(a) + f'(a)h

において a = 0 のとき、h を x に書き換えると

f(0+x) ≒ f(0) + f'(0)x  ⇔  f(x) ≒ f(0) + f'(0)x

という近似式が得られます。

もとの近似式ではaの付近について考えました。
a = 0 について考えていますので、x = 0 付近では関数自体をこのように近似できます。

ですから、x ≒ 0 のとき

f(x) ≒ f(0) + f’ (0)x

と、近似できます。

 

 

 

 

 

解答・解説:

ですから、

と、近似できます。

このように計算してゆきます。近似式を使えるように、目標を定めて計算してゆきましょう。

この問題では

ですので、「8.1」を「1 + ○」の形になるように変形してゆきます。

近似式を適用して、

これが求める近似値です。
実際の値は
ですので、よい近似値になっていますね。

 

4.テイラー展開とマクローリン展開について解説!

ここまで説明したことが高校数学の範囲です。
これ以降は大学数学の範囲ですが、簡単に触れておきましょう。

先ほどまでは、曲線状のある点付近における近似を行いました。
では、関数全体を近似してしまうことはできないか、と考えたのがテイラー展開やマクローリン展開です。テイラー展開は x = a 付近の近似、マクローリン展開はx = 0 付近の近似を行いますが、近似値ではなく関数を導出します。

考える点から遠くなればなるほど近似の正確さは落ちますが、それでも次数を増やしてゆけば、ある程度の近似は可能です。
先に考えたのは、

f(x) ≒ f(0) + f'(0)x

という1次式に近似する方法でした。

しかし、すべての関数を1次式で表してしまおうというのは、無理があります。
そこで、2次式を使って表せないかを考えます。

f(x) ≒ f(0)+ f'(0)x+ ax2

のように近似できるとすると、

f'(x)= f'(0) + 2ax
f”(x) = 2a

ですから、

a = f”(0)/2

 

です。これを代入して

 

と、2次式の近似ができました。これは1次式で近似するよりも精度の高い近似式です。
同様に考えてゆくと、3次、4次と次数を増やしてゆけば、より精度の高い近似が可能ですね。
これをより一般化したものが、マクローリン展開です。

これがマクローリン展開の式です。x = 0 付近の近似を行っています。
x = 0 付近では次数を増やすことで、非常に正確な近似が可能になります。

そして、このマクローリン展開をより一般化したものがテイラー展開です。

テイラー展開では、x = a 付近の近似を行えますので、より多くの場面に対応することができます。

 

5.おわりに

最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、近似式についてまとめました。

近似式は高校教科書での扱いが、そう多い分野ではありませんが、現実に多く利用されている範囲です。

理屈さえわかっておけば対応できますので、復習しておきましょう。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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