二項定理とは?東大生が公式や証明問題をイチから解説!
二項定理にみなさんどんなイメージを持っていますか?
なんか累乗とかCとかたくさん出てくるし長くて難しい…なんて思ってませんか?
確かに数2の序盤で急に長い公式が出てくるとびっくりしますよね!
今回はそんな二項定理について、東大生が二項定理の原理や二項定理を使った問題をわかりやすく解説していきます!
二項定理の原理自体はとっても単純なので、この記事を読めば二項定理についてすぐ理解できますよ!
二項定理とは?複雑な公式も簡単にわかる!
二項定理とはそもそもなんでしょうか。
まずは公式を確認してみましょう!
(a+b)n=nC0a0bn+nC1abn-1+nC2a2bn-2+…..+nCkakbn-k+…..+nCn-1an-1b+nCnanb0
このように、二項定理の公式は文字や記号だらけでわかりにくいですよね。
(ちなみに、C:組合せの記号の計算が不安な方は順列や組合せについて解説したこちらの記事で復習しましょう!)
そんな時は実際の例をみてみましょう!
例えば(x+2)4を二項定理を用いて展開すると、
(x+2)4=1・x0・24+4・x1・23+6・x2・22+4・x3・21+1・x4・20
=16+32x+24x2+8x3+x4
となります。
二項定理を使うことで累乗の値が大きくなっても、公式にあてはめるだけで展開できますね!
二項定理の具体的な応用方法は練習問題でやるとして、ここでは二項定理の原理を学んでいきましょう!
原理がわかればややこしい二項定理の公式の意味もわかりますよ!!
それでは再び(x+2)4を例に取って考えてみましょう。
まず、(x+2)4=(x+2)(x+2)(x+2)(x+2)と書き換えられますよね?
この式を展開するということは、4つある(x+2)から、それぞれxか2のいずれかを選択して掛け合わせたものを全て足すということです。
例えば4つある(x+2)のなかで全てxを選択すればx4が現れますよね?
その要領でxを3つ、2を1つ選択すると2x3が現れます。
ここでポイントとなるのが、xを三つ、2を一つ選ぶ選び方が一通りではないということです。
四つの(x+2)の中で、どれから2を選ぶかに着目すると、(どこから2を選ぶか決まれば、残りの3つは全てxを選ぶことになりますよね。)
上の図のように4通りの選び方がありますよね?
この「4つの中から1つを選ぶ選び方の組合せの数」を数式で表したのが4C1なのです。
4C1(=4)個の選び方がある。つまり2x3は合計で4つあるということになるので4をかけているのです。
これを一般化して、(a+b)nにおいて、n個ある(a+b)の中からaをk個選ぶことを考えてみましょう。
その組合せの数がnCkで表され、このnCkのことを二項係数と言います。
この二項係数は、二項定理の問題を解く際にカギになることが多いですよ!
そしてこの二項係数nCkにakbn-kをかけたnCk・akbn-kは展開式の(k+1)項目の一般的な式となります。
これをk=0からk=nまで足し合わせたものが二項定理の公式となり、まとめると
このように表すことができます。
ちなみに先ほどのnCk・akbn-kは一般項と呼びます。
こちらも問題でよく使うので覚えましょう!
また、公式(a+b)n=nC0a0bn+nC1abn-1+nC2a2bn-2+…..+nCkakbn-k+…..+nCn-1an-1b+nCnanb0
で計算していくときには「aが0個だからnC0、aが一個だからnC1…aがn個だからnCn」
というように頭で考えていけばスラスラ二項定理を使って展開できますよ!
最後に、パスカルの三角形についても説明しますね!
上のような数字でできた三角形を考えます。
この三角形は1を頂点として左上と右上の数字を足した数字が並んだもので、パスカルの三角形と呼ばれています。(何もないところは0の扱い)
実は、この二行目からが(a+b)nの二項係数が並んだものとなっているのです。
先ほど4乗の時を考えましたね。
その時の二項係数は順に1, 4, 6, 4, 1でした。
そこでパスカルの三角形の五行目を見てみると同じく1, 4, 6, 4, 1となっています。
累乗の数があまり大きくなければ、二項定理をわざわざ使わなくてもこのパスカルの三角形を書き出して二項係数を求めることができますね!
場合によって使い分ければ素早く問題を解くことができますよ。
長くなりましたが、次の項からは実際に二項定理を使った問題を解いていきましょう!
二項定理の練習問題① 公式を使ってみよう!
これまで二項定理がどんなものか説明してきましたが、実際はどんな問題が出るのでしょうか?
まずは復習も兼ねてこちらの問題をやってみましょう。
問題:(2x-3y)5を展開せよ。
これは展開するだけで、公式に当てはめるだけなので簡単ですね。
解答:二項定理を用いて、
(2x-3y)5=5C0・(2x)0・(-3y)5+5C1・(2x)1・(-3y)4+5C2・(2x)2・(-3y)3+
5C3・(2x)3・(-3y)2+5C4・(2x)4・(-3y)1+5C5・(2x)5・(-3y)0
=-243y5+810xy4-1080x2y3+720x3y2-240x4y+32x5 …(答え)
となります。
別解:パスカルの三角形より、係数は順に1, 5, 10, 10, 5, 1だから、
(2x-3y)5=1・(2x)0・(-3y)5+5・(2x)1・(-3y)4+10・(2x)2・(-3y)3+
10・(2x)3・(-3y)2+5・(2x)4・(-3y)1+1・(2x)5・(-3y)0
=-243y5+810xy4-1080x2y3+720x3y2-240x4y+32x5 …(答え)
今回はパスカルの三角形を使えばCの計算がない分楽ですね。
累乗の計算は大変ですが、しっかりと体に覚え込ませましょう!
続いて
問題:(x+4)8の展開式におけるx5の係数を求めよ。
解答:この展開式におけるx5の項は、一般項nCkakbn-kにおいてa=x、b=4、n=8、k=5と置いたものであるから、
8C5x543=8C3・64x5=56・64x5=3584x5
となる。
したがって求める係数は3584である。…(答え)
今回はx5の項の係数のみ求めれば良いので全部展開する必要はありません。
一般項nCkakbn-kに求めたい値を代入していけばその項のみ計算できるので、答えもパッと出ますよ!
ここで、8C5=8C3という性質を用いました。
一般的にはnCr=nCn-rと表すことができます。(これは、パスカルの三角形が左右対称な事からきている性質です。)
Cの計算で活用できると便利なので必ず覚えておきましょう!
二項定理の練習問題② 多項定理を使った係数決定問題!
実際に二項定理を使った問題に触れてみましたが、今度はそれを拡張した多項定理を使った問題です。
二項定理の項が増えるだけなので、多項定理と二項定理の基本は同じですよ。
早速公式をみてみると、
【公式】
最初の!がたくさんある部分は、nCp・n-pCq・n-p-qCrを書き換えたものとなっています。
この意味も二項定理の時と同じで、「n個の中からaをp個,bをq個,cをr個選ぶ順列の総数」を数式で表したのが
nCp・n-pCq・n-p-qCrなのです。
また、p+q+r=n、p≧0,q≧0,r≧0の条件は、二項定理で説明した、「選んでいく」という考えをすれば当然のこととわかります。
n個の中からaを-1個選ぶ、とかn個の中からaをn+3個選ぶ、などはありえませんよね。
この考えが難しかったら上の式を暗記してしまうのも一つの手ですね!
それでは、この多項定理を使って問題を解いていきましょう!
問題:(1+4x+2y)4におけるx2y2の項の係数を求めよ。
解答:この展開式におけるx2y2の項は、一般項{n!/(p!q!r!)}・apbqcrにおいてn=4、p=0、q=2、r=2、a=1、b=4x、c=2y、と置いたものであるから、各値を代入して
{4!/0!・2!・2!}・10・(4x)2・(2y)2=(24/4)・1・16x2・4y2=384x2y2
となる。(0!=1という性質を用いました。)
したがって求める係数は384である。…(答え)
やっていることは先ほどの二項定理の問題と全く一緒ですね!
では、こちらの問題だとどうなるでしょうか?
問題:(2+x+x3)6におけるx6の項の係数を求めよ。
まず、こちらの問題でよくあるミスを紹介します。
誤答:この展開式におけるx6の項は、一般項{n!/(p!q!r!)}・apbqcrにおいてn=6、p=4、q=0、r=2、a=2、b=x、c=x3と置いたものであるから、各値を代入して
{6!/4!・0!・2!}・24・x0・(x3)2=(720/24・2)・16・1・x6=240x6
となる。
したがって求める係数は240である。…(不正解)
一体どこが間違えているのでしょうか。
その答えはx6の取り方にあります。
今回の例だと、x6は(x)3・x3と(x)6と(x3)2の三通りの取り方がありますよね。
今回のように複数の項でxが登場する場合は、この取り方に気をつける必要があります。
以上のことを踏まえると、
解答:この展開式におけるx6の項は、一般項{n!/(p!q!r!)}・apbqcrにおいてn=6、a=2、b=x、c=x3と置くと
(p,q,r)=(0,6,0),(2,3,1),(4,0,2)の三パターンが考えられる。
(p,q,r)=(0,6,0)の時は各値を代入して、
{6!/0!・6!・0!}・20・x6・(x3)=(720/720)・1・x6・1=x6
(p,q,r)=(2,3,1)の時は
{6!/2!・3!・1!}・22・x3・(x3)1=(720/2・6)・4・x3・x3=240x6
(p,q,r)=(4,0,2)の時は
{6!/4!・0!・2!}・24・x0・(x3)2=(720/24・2)・16・1・x6=240x6
となる。したがって求める係数は、1+240+240=481…(答え)
このようになります。
複数回xが出てくると、今回のように場合分けが必要になるので気を付けましょう!
また、分数が入ってくるときもあるので注意が必要ですね!
分数が入ってきてもp,q,rの組み合わせを書き出せればあとは計算するだけです。
以上のことができれば二項定理を使った基本問題は大体できますよ。
ミスなく計算できるよう問題演習を繰り返しましょう!
二項定理の練習問題③ 証明問題にチャレンジ!
では最後に、二項定理を使った証明問題をやってみましょう!
難しいですがわかりやすく説明するので頑張ってついてきてくださいね!
問題:等式nC0+nC1+nC2+……+nCn-1+nCn=2nを証明せよ。
急に入試のような難しそうな問題になりました。
でも、二項定理を使うだけですぐに証明することができます!
解答:二項定理の公式でa=x、b=1と置いた等式(x+1)n=nC0+nC1x+nC2x2+……+nCn-1xn-1+nCnxnを考える。
ここでx=1の場合を考えると
左辺は2nとなり、右辺は、1は何乗しても1だから、nC0+nC1+nC2+……+nCn-1+nCnとなる。
したがって等式2n=nC0+nC1+nC2+……+nCn-1+nCnが成り立つ。…(証明終了)
以上で証明ができました!
“問題文で二項係数が順番に並んでいるから、二項定理を使えばうまくいくのでは?”という発想に持っていきたいですね。
一旦(x+1)nと置いて考えたのは、xの値を変えれば示すべき等式が=0の時や=3nの証明でも値を代入するだけで求められるかもしれないからです!
似たような等式を証明する問題があったら、まず(x+1)nを二項定理で展開した式に色々な値を代入して試行錯誤してみましょう。
このように、証明問題と言っても二項定理を使えばすぐに解けてしまう問題もあります!
数2の範囲だとあまりでないかもしれませんが、全分野出題される入試では証明問題などで、急に二項定理を使うこともあります!
なので、二項定理を使った計算はもちろん、証明問題にも積極的にチャレンジしていってください!
二項定理のまとめ
二項定理について、理解できましたでしょうか?
分からなくなったら、この記事を読んで復習することを心がけてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
がんばれ、受験生!
記事の内容でわからないところ、質問などあればこちらからお気軽にご質問ください。
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