無性生殖のメリットとは?植物と動物の例を使ってわかりやすく解説
有性生殖と無性生殖、生き物には2つの増殖方法があります。
無性生殖は有性生殖に比べるとマイナーな生殖方法ではありますが、有性生殖と切り替えて使用する生物がいるほど根強い生殖方法です。
今回は、そんな無性生殖とそのメリットについて解説していきます。
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1.無性生殖とは
無性生殖は、生殖の方法のひとつで、配偶子の接合によらない生殖を指す言葉です。
言いかえると、1つの個体が単独で新しい個体を形成する方法、雌雄の配偶子の関わらない生殖方法です。
ただし、生殖細胞が単独で新個体となる単為生殖は減数分裂および組み替えを伴うため、無性生殖の扱いのみならず、有性生殖に含むこともあるので、要注意です。
無性生殖には、大きく分けて4つの種類があり、それぞれ、分裂、出芽、栄養生殖、胞子生殖と呼ばれています。
分裂
分裂は、体がほぼ2等分されてなかまをふやす方法で、無性生殖といえば、この増え方を先ず思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
ゾウリムシやアメーバなどの単細胞生物や、イソギンチャクなどの多細胞生物もこの増殖方法を使用しています。
出芽
出芽は、体に生じたふくらみがやがて分離し、なかま増やす増殖方法です。比較的ポピュラーな増殖方法です
こちらも、出芽酵母と呼ばれる、酵母菌や、多細胞のヒドラ、サンゴなどに代表される生物が使用しています。
栄養生殖
植物が種子によらず、栄養器官からなかまをふやす増殖方法です。
使用している植物は、イモ、むかご、イチゴなそのランナー、レンコンなどの地下茎、不定芽、さし木などです。
農業ではこれを応用して、良い品種を栄養生殖で増やすことで品質を安定させています。
胞子生殖
雌雄の区別のない生殖細胞をまいて、なかまをふやす増殖方法です。
カビ、キノコ、コケ植物、シダ植物や、ワカメやコンブ等の海藻がこの増殖方法を使用しています。
2.無性生殖のメリット
無性生殖は有性生殖と比べ、生物種内での多様性が生まれにくいのがデメリットです。
しかし、有性生殖よりも、時間がかからず、減数分裂も行わないためエネルギーが節約でき、雌雄が出会わなくても増殖できて生殖効率が良いため、多くの単細胞生物や比較的寿命の短い生物種は無性生殖で増殖、あるいは、有性生殖と併用する傾向があります。
分裂:プラナリアの例
再生能力が高いことで有名なプラナリアは、分裂で増えることができます。
ナイフなどで2つに切ると、その断片がそれぞれ再生して別の個体になることで注目を浴びました。この外傷を利用して別個体を作るというのは、分裂が可能な生物ならではの生存戦略です。
出芽:出芽酵母の例
酵母には、出芽酵母と分裂酵母という種類がいます。
それぞれ、読んで字のごとく、無性生殖の出芽と分裂という方法を利用した無性生殖での増殖が可能な生物です。
このうち、パンの発酵や酒の醸造に使用されているのが、出芽酵母です。これらの食品は、酵母の株によって、味が変わるということもあるため、企業は株の維持のために無性生殖である出芽を利用した同一個体を増やす方法を利用しています。これにより、長年に渡り、一定の品質の商品を提供できるようになっています。
この出芽は、親の個体に小さいこぶのようなものができ、それが大きくなり、切り離されることで別個体ができる仕組みです。
分裂は大きさが一緒になりますが、出芽は親の大きさと子の大きさが異なることがポイントです。合わせて押さえておいてくださいね。
栄養生殖:イチゴの例
栄養生殖でも増えることのできるイチゴはランナーと呼ばれるランナーは地上をはう枝(走出枝)から出る新株が親株と全く同じ遺伝子を持った、無性生殖の栄養生殖でできたクローン株です。
これを利用すれば、大きい実のなる株、美味しい実がなる株などのみを増やすことができます。
これを利用した農業の品質管理も行われています。また、自宅の家庭菜園でもこれを利用すれば美味しい株だけを増やすことができますよ。
胞子生殖:ワカメ・コンブなどの海藻類の例
胞子生殖といえば、カビやキノコを思い浮かべる人が多いかと思います。
しかし、ワカメやコンブなどの海藻も胞子生殖を行う生物です。
しかし、海の中に胞子をまいても潮の流れにのって生育に不適切なところに流されてしまったり、一箇所に固まりすぎてしまうリスクがあります。
そこで、ワカメやコンブなどの海藻の胞子には鞭毛がついていて、自分で移動する方向を決めることができます。これによって、能動的に新個体の生育場所をきめられるようになっています。
雌性単為生殖:ミジンコの例
例えば、ミジンコはカニやエビのなかまの甲殻類で、通常は雌のみで生活しています。
池や湖で春から夏の時期に増殖しますが、増殖力が強いこと、また、雌のみで増殖することで有名な生物です。
環境が変化し、えさの不足、過密、日照時間の減少など、生存条件が悪くなると、その環境ストレスが引き金となって、雌のミジンコの単為生殖の結果オスのミジンコが生まれるような遺伝子制御機構を持っていいます。
この結果、遺伝子の多様性が生まれ、過酷な環境を生き延びることが出来る適応力のある個体が生き延びることで、種が生き延びる仕組みになっています。
専門的な内容になりますので、ここでは紹介は省きますが、この、遺伝子制御の仕組みは、種の生存戦略として非常によくできているだけではなく、ミジンコの環境因子による雄雌産み分けの仕組みという長年の科学者たちの疑問を解き明かしたもので、生物学分野でも、分子生物学分野でも、とても面白い発見なので、興味がある人は調べてみるとより理解が深まりますよ。
3.まとめ
今回は、無性生殖とそのメリットについて例を交えながら解説していきました。
例や農業利用などの例を使って紹介しましたが、他にもたくさんありますので気になる人は調べて理解を深めるのもオススメです。