細胞の構造と働きをマスターしよう!【画像を使って徹底解説】

生物 2022.12.25

細胞とは、生物の基本単位です。

生き物の種類は様々で、私たち人間のように、たくさんの細胞でできる多細胞生物もいれば、アメーバやミドリムシ等のように、1つの細胞だけで生命を維持している単細胞生物もいます。

細胞が生命を維持するには、エネルギーを作ったり、増殖したり、不要な物を排出したり、と様々な機能を持たなくてはなりません。

この記事では、そんな細胞と細胞の働き、構造について解説していきます。

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1.細胞の種類と構造とは?

細胞とは、生物の基本単位であり、全ての生物は細胞でできています。

 

この細胞には2種類あり、それぞれ、体をつくっている体細胞と、精子や卵など生殖に関わる生殖細胞です。

このうち、一般的に「細胞」とだけ言う場合、体細胞を示していることが多いです。

この記事では、体細胞について見ていきます。

 

体細胞を構成するものには、細胞小器官などと呼ばれるものがあり、それぞれ役割分担をして生命維持ができるようになっています。

このような細胞の構造のうち、高校の生物の知識として必要となるものは以下の通りです。

 

※クリックで図を拡大できます。

細胞の構造は、原形質と後形質(こうけいしつ)に分けられます。

後形質とは、細胞壁と細胞液(のちに説明する液胞の中身)のことで、その他の構造は全て原形質です。

また、原形質はさらに核とそれ以外に分けられ、この核以外の部分をまとめて細胞質と呼びます。

そして、この細胞質は細胞膜・細胞質基質と、細胞小器官に分けられます。

ミトコンドリアや葉緑体など、こまごまとした器官は細胞小器官です。

 

細胞はひとつひとつで自分自身を維持、増殖できるようになっています。

そのための役割を細胞小器官が互いに分担し、時には協力もして、細胞が維持されています。

細胞小器官は、膜が一重なのか二重なのか、細胞小器官の中さらに小さい器官の名前は何かなどを含め、テストや入試で問われることがあります。

 

以下で、細胞の構造を一つひとつ見ていきましょう。

 

2.細胞の構造紹介①遺伝子の貯蔵庫「核」

大抵の生物の細胞には、動物細胞にも、植物細胞にも、中心に「核」と呼ばれる部分があります。

核は、染色体(DNAとタンパク質からなる)を持ち、遺伝情報をつかさどっています。

 

核の構造

核は、核膜という二重の膜で覆われていて、ところどころに空いた核膜孔で核内外の物質の輸送を行います。

核膜の内部には核液という液体が入っており、そこに染色体(DNA+タンパク質)と核小体が浮かんでいます。

核小体は、遺伝物質の一種であるRNAや、細胞小器官の「リボソーム」が使うタンパク質を作るところです。

 

核の機能

核は、遺伝情報(DNA)の保持と伝達を担っています。

核の中にあるDNAは、普段は細い糸のような状態で存在していますが、細胞分裂をする時に凝縮し、染色体になります。

染色体は酢酸カーミンや酢酸オルセインなどの塩基性色素でよく染まるため、そのような実験を覚えている方も多いかもしれません。

 

真核細胞と原核細胞

先ほど、大抵の生物の細胞には核が存在すると言いましたが、核が存在しない細胞からなる生物もいます。

核のある細胞を真核細胞、ない細胞を原核細胞といいます。

原核細胞は、細胞内に染色体をもってはいるものの、それが核膜に覆われていないため核という形にまとまっていません。染色体が細胞の中に漂っているような状態です。

主に細菌類やラン藻類などが原核生物にあたります。

 

3.細胞の構造紹介②エネルギーを作る「ミトコンドリア」

ミトコンドリアの構造

ミトコンドリアは2重の膜があり、外側を外膜、内側を内膜と呼びます。

また、内膜はひだ状に入り組んだ形をしており、そのうち内側に飛び出た山折りの部分をクリステといい、逆に引っ込んだ谷折りの部分をマトリックスといいます。

マトリックスという構造内にはミトコンドリアDNAという独自の遺伝情報があります。

このDNAは、通常の生物のDNAと違って環状の構造をしています。

この独自のDNAを持つということから、ミトコンドリアは太古の昔には別の生物(細菌)で、細胞と共生していたが、進化の過程で細胞内に取り込まれたものなのではないか、と言われています。

 

ミトコンドリアの機能

ミトコンドリアは、真核生物に存在する構造で、好気呼吸(酸素による呼吸)を担っています。

そのため、ミトコンドリアは呼吸に必要な酵素(こうそ)を含んでいます。

ミトコンドリアが好気呼吸を行うことで、細胞の活動に必要なエネルギー(ATP)が産生されます。

 

4. 細胞の構造紹介③光合成に必須の「葉緑体」

葉緑体の構造

葉緑体は、光合成を行う植物に存在します。

葉緑体は2重膜でできていて、顕微鏡で見ると緑色をしています。

また、葉緑体も、ミトコンドリアと同様に、独自のDNAを持つことが知られています。

葉緑体の内側の部分はストロマといい、チラコイドという薄い袋状の構造が並んでいます。

葉緑体のDNAは、環状の構造をしていて、ストロマに存在します。

チラコイドの膜には、緑色の色素であるクロロフィルを大量に含むからで、この色素が光合成をする際に活躍します。

チラコイドは互いにつながっていて、内部空間が通じていると考えられています。

多数のチラコイドが重なったものをグラナといいます。

 

葉緑体の機能

光合成が最もよく知られた主要な機能です。

葉緑体は光合成により、デンプンやグルコースなどの有機物を合成します。

それ以外にも、窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞の代謝の重要な機能を担っています。

 

ここで、細胞小器官のうち、2重の膜を持つものや、独自のDNAを持つものについてまとめてみましょう。

この区別を覚えておきましょう。

 

5.細胞の構造紹介④液胞

液胞は、動物細胞にも存在していますが、あまり発達しておらず、おもに植物細胞で見られます。

 

液胞の構造

液胞は、その名の通り、膜の中に細胞液という液体を含んだ構造です。

液胞の膜は細胞小器官であり、原形質に属しますが、中身の細胞液は後形質に属します。

細胞液には無機塩類、糖、色素(アントシアンなど)が貯蔵されています。

 

液胞の機能

浸透圧の調整や、細胞内の各物質の濃度調節を行います。

 

6.細胞の構造紹介⑤全てを包み込む「細胞膜」「細胞壁」「細胞質基質」

細胞膜の構造と機能

細胞膜は、動物細胞や植物細胞で、細胞質を包み込んでいる膜のことです。

細胞膜は選択的透過性という性質を持っていて、細胞に必要な物質のみを細胞内に入れ、不要な物質を外に出す役割があります。

また、細胞の外からの情報をキャッチする役割もあります。

 

細胞壁の構造と機能

細胞壁は、主に植物細胞で、細胞膜のさらに外側にあり、細胞質を囲んでいます。

セルロースやペクチンを主成分とし、細胞の形を守る役割があります。

物質を通すための穴が大きいので、液体に溶けているほとんどの物質を透過する全透性を持った全透膜です。

 

細胞質基質の構造と機能

細胞質基質は、細胞膜の内側を満たす液体の部分を指します。

タンパク質の合成など、様々な化学反応の場になっています。

細胞内に流れ(原形質流動)を作り、物質の輸送、細胞小器官の配置、細胞と細胞の間の信号を伝えることなどを行います。

 

7.細胞の構造紹介⑥その他の細胞小器官

ここからは、入試などでの出題頻度は低いですが、覚えておくといい細胞小器官について解説します。

 

ゴルジ体

ゴルジ体は、扁平(へんぺい、ひらべったいこと)な袋状の膜が重なってひだのように見えるのが特徴です。

周りにある丸い形状のものは、ゴルジ小胞と呼ばれるものです。

動物細胞では、赤血球を除くすべての細胞に存在しますが、植物細胞では小さく、観察しにくくなっています。

ゴルジ体は、物質の濃縮・分泌などを行います。

細胞外に排出される物質は、いったんゴルジ体に集められ、小胞に包まれて輸送されます。

 

色素体

色素体は、主に植物細胞に見られる構造で、葉緑体もこの一種です。

葉緑体のほかには、

・カロテノイド色素を含み、黄色または赤色をしている有色体

・色素を含まない白色体(はくしょくたい)

・色素を含まず、デンプンの合成を行うアミロプラスト

があります。

 

中心体

ほとんどの動物細胞に存在し、植物細胞では、藻類の細胞や、コケ植物・シダ植物の細胞の一部にのみ存在します。

中心体は、2つの中心粒とよばれるものの周りに、糸状構造が放射状に分布しています。

細胞内では、中心体は核の近くにあり、細胞分裂時に紡錘糸を形成する働きをします。

また、単細胞生物などでは、鞭毛(べんもう、ミドリムシのしっぽのようなもの)や繊毛(せんもう、ゾウリムシの表面の産毛のようなもの)の形成に関わります。

 

小胞体

細胞質基質中に広がる細胞小器官で、袋状の部分と管状の部分があります。

表面にリボソームが付着した袋状の部分を粗面小胞体、付着していない管状の部分を滑面小胞体といいます。

細かいリボソームが付着していて、表面がザラザラと荒っぽいから粗面小胞体、と覚えましょう。

粗面小胞体はリボソームで合成されたタンパク質を取り込み、ゴルジ体へと輸送する働きをしています。

滑面小胞体は、脂質を合成するための酵素を持っています。

 

リボソーム

直径が25㎚(ナノメートル)ほどしかない小さな粒で、リボソームRNAとタンパク質でできています。

先ほど説明した粗面小胞体の表面に付着していたり、細胞質基質中に漂っていたりします。

細胞質基質では、タンパク質の供給を行っています。

 

リソソーム

リボソームよりも大きな小胞で、光学顕微鏡で観察できるほどの大きさのものもあります。

細胞内消化を担っています。

 

8.動物細胞と植物細胞の違い

初めの図でも見ましたが、動物細胞と植物細胞では、構造に違いがあります。

しばしば問題に出される範囲ですが、整理して考えれば難しくありません。

 

以下の表を見ながら、頭の整理をしましょう。

※クリックで図を拡大できます。

 

上の図で、原核生物や赤血球には核がありませんが、ここでは省略します。

 

必ず覚えなければならないのは、葉緑体と細胞壁は植物細胞にしかないということです。

 

葉緑体が光合成に必要な細胞小器官であることは、すでに説明したとおりです。

そのため、葉緑体は光合成をする植物細胞にしか存在しません。

例外として、葉緑体をもっていて光合成できる動物も地球上には存在しますが、「光合成をできる生き物は葉緑体を持っている」のルールに則って考えれば、混乱しませんよ。

 

また、細胞膜は動物細胞、植物細胞どちらにも存在しますが、細胞壁は植物細胞のみに存在します。

動物細胞は能動的に動くため、固いセルロースを含む細胞壁がないと考えると考えやすいですよ。

 

9.細胞が発見されてきた歴史

さいごに、細胞が発見されてきた歴史について振り返りましょう。

入試では、まれに出題される程度ですが、覚えていて損はありません。

 

ロバート・フックによる細胞の発見

「細胞」というものがあることを発見したのは、イギリスの物理学者ロバート・フックです。

フックは、コルクが水に浮くことを不思議に思い、自作の顕微鏡でコルクの観察を行ったところ、小さな部屋のようなものが集まって出ていることを発見しました。

そして、1655年、この小さな部屋をcell(細胞)と名付けました。

ただし、皆さんがご存知のように、コルクは植物として生きている状態ではなく、中身がなくなり、乾燥してカラカラになったものです。

そのため、フックが発見したのは細胞そのものではなく、細胞同士を区切っていた細胞壁のみだったと言えます。

 

シュライデンとシュワンによる細胞説

フックの研究では、「コルクには細胞がある」ことを発見したのみで、その後、レーウェンフックなどによる研究が続きました。

その中で、1838年、シュライデン(現在のドイツ出身の植物学者)が、「植物は細胞が集まってできている」ということを発見しました。

また、1839年には、シュワン(現在のドイツの動物学者)が、「動物も細胞が集まってできている」と発見しました。

この2人が提唱した考え方を、「細胞説」といいます。

 

ウィルヒョーによる細胞説

1858年、ウィルヒョー(フィルヒョーとも呼ばれる。ドイツの生物学者)が、「すべての細胞は細胞から生まれる」と、細胞分裂についての考え方を提唱しました。

これにより、細胞は生物を構成する単位として広まっていきました。

 

細胞のまとめ

今回は、細胞の構造と働きについて、画像を使って徹底解説しました。

細胞内の様々な細胞小器官が、互いに役割分担し、協調して1つの細胞を維持しています。

動物細胞や植物細胞では、生物が生きていくために必要なものが違うため、それに合わせて細胞小器官を持っていると覚えましょう。

定期テストや入試でもよく出題される範囲なので、問題も解きつつ知識を定着させていってくださいね。

細胞・細胞膜の働きについてのまとめ記事が読みたいという方は「細胞・細胞膜の働きの勉強に役立つ記事まとめ!構造や働きまで網羅」も併せてお読みください。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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