メンデルの法則とは?優性・分離・独立の法則や遺伝用語を図でわかりやすく解説

生物 2022.12.26
メンデルの法則とは?優性・分離・独立の法則や遺伝用語を図でわかりやすく解説

メンデルの法則は遺伝を学ぶにあたってきわめて重要です。
特に難しいものではありませんが、遺伝分野の基礎となる内容ですので、しっかりと内容を把握しておきましょう。

この記事では、そんなメンデルの法則をわかりやすく解説します。

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    1.メンデルの法則とは

    メンデルの法則とは、19世紀のチェコの司祭であったメンデルによって発見された、いくつかの法則のことです。
    有名な法則に「優性の法則」「分離の法則」「独立の法則」の3つがあり、これらは、遺伝学を誕生させるきっかけになりました。

    ただし、これら3つの法則はそれぞれ別個のものではなく、すべて同じ実験から導かれたものです。

    そこで、この記事ではメンデルが行った実験を追うようにして、法則の内容を紹介していきます。

      2.メンデルの法則①優性の法則

      司祭のメンデルは、修道院の庭でエンドウ豆を使った交配実験を行っていました。

      彼が最初に着目したのは、同じエンドウでも、背の高いものと低いもの、豆の表面がしわになっているものと真ん丸でツルツルのものなど、種類があったことです。

      このような、生物種における形や色、大きさなどの特徴のことを、「形質」と呼びます。

      また、ここでの「背の高いエンドウ」と「背の低いエンドウ」のように、対立した形質を、対立形質といいます。

      遺伝子によって発現(見た目に現れること)されます。

      対立した形質を、対立形質といいます。

       

      メンデルは、背の高いエンドウ同士、背の低いエンドウ同士を、数年にわたって掛け合わせ続けました。

      すると、しだいに、背の高いエンドウ同士を親に持つエンドウは背が高いものばかりになり、背の低いエンドウ同士を親に持つエンドウも、背の低いものばかりになりました。

      実はこの時、メンデルが掛け合わせを始めてから数年たったエンドウは、背の高い遺伝子のみを持つエンドウか、背の低い遺伝子のみを持つエンドウしかいなくなっていました。

      つまり、実際には背が高いけど、背の低い遺伝子も隠し持っているようなエンドウが、数年にわたる掛け合わせの後に、いなくなったのです。

      このように、ある形質(ここでは、背の高さ)に注目したとき、片方の遺伝子しか持っていない個体や系統(親子、孫などのグループのこと)を、純系といいます。

      純系ができたのち、メンデルは、背の高いエンドウと、背の低いエンドウを掛け合わせました。

      このように、遺伝子型の異なる個体を掛け合わせることを、交雑といいます。

      また、純系同士の交雑によって生じる雑種を、一遺伝子雑種といいます。

      すると、背の高いエンドウの純系と背の低いエンドウの純系を親に持つ、第1世代の子供のべてが背の高いエンドウになりました。

       

      F1世代の構造図

       

      ここでメンデルは、遺伝によって伝えられる形質には強いものと弱いものがあることを知り、強い形質(この場合は背が高くなる形質)を優性と呼んだのです。

      次にF1同士を掛け合わせてみると、そこから生まれた第2世代(F2)は背の高いエンドウと低いエンドウの両方になりました。

      この結果から、背が低くなる形質は消えてなくなったのではなく、高くなる形質に隠れていたのだと気づきます。この隠れていた弱い形質のことを、メンデルは劣性と呼びました。

       F2世代での対立形質の性質構造

       

      このことから、メンデルは、ある1つの形質(ここでは、背の高さ)に関する遺伝子は、各個体の中に2つあり、それらは、それぞれ父母から1つずつ子供に受け継がれたもので、2つのうち優性の形質が表れるのではないかと考えました。

      もしも、1つの遺伝子しか受け継がれなかったら、F1は優性の遺伝子しか持っていないということになるので、F2で劣性形質が表れたことの説明がつかないためです。

      そうすると、子世代ではすべての個体が優性形質と劣性形質の遺伝子を持ち合わせていることになるので、すべての個体で優性形質があらわれたのだと納得できます。

      F2世代での対立形質の性質

       

      もう少し分かりやすくまとめてみましょう。

       

      ある形質について、優性の遺伝子をY、劣性の遺伝子をyとすると、P(親世代)の純系のエンドウの遺伝子は、背が高いほうがYY、背が低いほうがyyとなります。

      ここから生まれるF(第1世代)では、すべてYyという組合せになるので、優性であるYの遺伝形質のみが発現し、すべてが背の高いエンドウになりました。

           メンデルの法則の実験におけるP1世代の構造図

       

      ところがF(第2世代)になると、以下のように、YYYyyYyy4通りの組み合わせがありえます。つまり、優性Yを含むものが3通りあり、これらは優性形質が発現します。そして、劣性のyのみからなるものが1通りあり、この個体は劣性形質が発現します。

       

      メンデルの法則の実験におけるF2世代の構造図

       

      ところで、ここまで見てきたように、ある形質に関する遺伝子は、生物の中に2つ存在し、それがYYだったり、YyyYだったり、yyだったりするわけです。

      このうち、同種の遺伝子が組み合わされたYYとyyをホモ接合と呼びます。ホモとはギリシャ語で「同じ」という意味です。最初に作られたPのような、純系の遺伝子の組み合わせはホモ接合であるといえます。

      一方、YyyYのような組み合わせをヘテロ結合と呼びます。ヘテロとはギリシャ語で「異なる」という意味です。

      また、こうした遺伝子の組合せを遺伝子型、目に見える結果として現れる形質を表現型と呼びます。

      つまり、遺伝子には優性遺伝子と劣性遺伝子があり、劣性遺伝子と優性遺伝子が同時に存在する場合は、優性遺伝子の形質が発現します。これが優性の法則です。

      優性の法則

      F1(子世代)では、P(親世代)の対立形質のうち、どちらか一方の形質だけがすべての個体に表れる。

      3.メンデルの法則②分離の法則

      続いて、3つの法則のうち分離の法則について説明します。

       

      メンデルの分離の法則とは、YyyYの遺伝子型を持つ個体が配偶子(卵や精子、精細胞など)を作るとき、対立遺伝子であるYyが別々の配偶子に分離するという法則です。

      このとき、Yy11で分かれます。遺伝子が2つで1組のペアになっているので当然ですよね。

       

      配偶子と遺伝子の関係

       

      分離の法則

      対立遺伝子を持つ個体では、配偶子形成において、対立遺伝子は11に分離する。

       

      メンデルはエンドウ豆の背の高さだけではなく、種子のしわの有無、子葉の色の違いのようなほかの形質の差にも着目して同様の実験を行い、同様の実験結果を得ることができたので、遺伝子による形質は分離されるものであると考えました。

       

      また、優性の法則と分離の法則があるために、F2の表現型における優性形質と劣性形質の比率は3:1となります。さきほど見たように遺伝子型には4つの組み合わせがありえ、そのうち優性遺伝子が含まれる組み合わせが3種類ですから、表現型においては優性:劣性の比率は3:1となります。

      メンデルの法則②分離の法則の実験図

       

      広義では、このF2における表現型の比が31になることについても分離の法則の内容に含まれます。

       

      また、優性の法則と分離の法則から、ある個体の遺伝子型を調べることができます。

      調べたい個体に、劣性ホモの遺伝子型をもつ個体を交配させると、子供世代の発現型の割合が、親の遺伝子型の割合と一致することを利用しています。

      メンデルの法則に基づく検定交雑の図

       

      これを検定交雑と言います。

        4.メンデルの法則③独立の法則

        ここまでは、「背の高さ」という1つの形質にだけ注目してきましたが、メンデルの独立の法則は、複数の形質に注目したときに見られる法則です。

        独立の法則とは、複数の形質に注目したとき、それぞれの形質の遺伝には相関関係はなく、それぞれの形質が独立して、優性の法則と分離の法則を現すというものです。

         

        メンデルの法則③独立の法則

        複数の形質に注目したとき、それぞれの形質は独立している(互いに影響していない)。

         

        こちらも、エンドウ豆の例で見ていきましょう。エンドウ豆には、背が高い・低いといった他にも、できた豆の表面が丸くてツルツルのものと、しわがあるものという対立形質があります。メンデルは、これらの形質に注目しました。

        背が高くしわのある豆と、背が低くしわのない豆をかけ合わせたときに、子世代に受け継がれる背の高さ・しわの有無という形質は、それぞれ独立して遺伝します。

        つまり、「背が高いエンドウは豆がしわになりやすい」とか、「背が低いエンドウには豆の表面がツルツルのものがほとんど無い」といったことは起こらないということです。

         

        ただし、分離の法則が成り立つためには、注目した形質に関わる遺伝子が、別の染色体に含まれるということが条件です。

        背の高さに関する遺伝子をYy, 豆の表面に関する遺伝子をXxとし、この2つの形質に注目すると、ある個体からできる配偶子は、YXが含まれたもの、Yxが含まれたもの、yXが含まれたもの、yxが含まれたものの4種類になります。

         

        独立の法則

         

        ちなみに、優性の法則についての実験では、エンドウ豆の背の高さという一点のみに着目しましたが、このように1種類の対立形質のみに着目してつくられた雑種を一遺伝子雑種と呼びます。
        これに対して、独立の法則についての実験では、背の高さに加えて豆の表面のしわの有無にも着目しましたが、このように2種類の対立形質に着目してつくられた雑種を二遺伝子雑種と呼びます。

        つまり、着目する対立形質がn種類であれば、それによって作られる雑種をn遺伝子雑種と呼ぶということです。

          5.【不完全優性】メンデルの法則には例外もある?

          後年の研究によって、メンデルの法則に従わない例も知られるようになりました。

          それは、不完全優性と呼ばれるものです。このタイプの遺伝のポイントは、対立形質のどちらの遺伝子も強さが同じで、優性・劣性がないという点です。

           

          マルバアサガオには、赤い花を咲かせる遺伝子rと白い花を咲かせる遺伝子wがあります。

          これらの花をかけ合わせると、Fはすべてrwの遺伝子型をもつことになります。このとき、どちらも優性ではないので、花の色は赤と白の中間色であるピンクになるのです。

          このような、両方の形質が混ざり合った雑種を中間雑種と呼びます。

           

          次に、中間雑種であるF同士をかけ合わせて生まれるFの遺伝子型は、rrrwwrww4種類になり、このとき花の色はrrが赤、rwwrがピンク、wwが白となります。

           

          メンデルの法則の例外:不完全優性の図

           

          この場合、メンデルの優性の法則および分離の法則に従っていません。

          このような場合を不完全優性と呼びます。

            メンデルの法則のまとめ

            メンデルの法則は、遺伝の基礎となる内容で、遺伝の中では比較的簡単です。

            しかし、どれがどこに遺伝するかということは複雑なため、テストなどでは、余白に図を書いて考えることが必要になるでしょう。

            この記事にある図を一度はノートに書き写し、テスト本番でも自分で作図できるように準備しておくことをおすすめします。

             

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            この記事の執筆者

            ニックネーム:受験のミカタ編集部

            「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。