動脈と静脈の構造の違いは?血液循環のポイント&覚え方【生物基礎】
わたしたちの身体を流れる「血液」。血液は動脈や静脈を通って、全身を循環しています。
生物の授業では、中学校まででも「血液の循環」を学習しますね。
しかし「静脈や動脈などの血管系のはたらき」や「血液の流れのしくみ」には、苦手意識を感じている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな血液の循環について、詳しく見ていきましょう。
「静脈・動脈とは何か」から「血液の循環のしくみ」まで、広くご紹介していきます。
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1.動脈・静脈とは何か?
動脈・静脈とは、心臓に血液を運ぶための役割を果たす血管のことです。
体内に存在する「体液の通り道になる管」のことを、「脈管」と呼びますが、血管はこの「脈管」のうちの1つです。血管の他には「リンパ管」も脈管に含まれます。
リンパ管にはリンパ液が通っていますが、このリンパ管があるのは「脊椎(せきつい)動物」だけです。
わたしたちの体にある体液は、これらの脈管を通って規則正しく流れるとされています。
こういった「血管やリンパ管」に加え、血液の循環に欠かすことのできない心臓などの器官と、その循環するシステムを「循環系」と呼びます。
動脈・静脈それぞれの特徴とはたらき
血管にはそれぞれ、「動脈」「静脈」「毛細血管」といった種類が存在します。
簡単にお伝えすると、心臓から出た血液を運ぶ役割をするのが「動脈」、そこから全身を巡り、心臓に戻る血液を運ぶのが「静脈」です。
心臓から出る血液(動脈血)には、酸素や栄養素がたくさん含まれています。この動脈血が通る血管が「動脈」です。
血液の中の赤血球には「酸素を運ぶ物質」である「ヘモグロビン」も多く含まれています。
動脈血には酸素が多く含まれていますが、ヘモグロビンは酸素を運んでいるときには鮮やかな赤色になります。つまり、動脈血の色は明るく鮮やかな「鮮紅色(せんこうしょく)」となります。
一方、心臓に戻る血液(静脈血)には「全身から拾った二酸化炭素や、不要な物質」が多く含まれています。この静脈血が通る血管が「静脈」です。静脈血には酸素や栄養分が多く含まれていないので、酸素を運んでいないヘモグロビンが多いといえるでしょう。そのため、静脈血の色も暗めの赤色となります。このようなしくみから、静脈血の色は「暗褐色(あんかっしょく)」となります。
静脈のなかでも重要な役割を果たす部分に、「門脈」があります。この門脈は、胃腸や膵臓といった消化管から流れてきた血液が集まり、肝臓に入っていく大切な部分です。
もう1つ、「毛細血管」についてもご紹介しましょう。
毛細血管は目で見ることが難しいほど細い血管で、体のすみずみまで張り巡らされています。酸素や栄養分を、体のすみまで届ける役割を果たしているのが「毛細血管」です。
毛細血管では、体に栄養分を渡したり不要になった物質を受け取ったりされますが、ここで重要といえる存在が「組織液(間質液)」です。
組織液は、毛細血管の壁から染み出た「血しょう」という成分で成り立っていて、体の細胞に酸素や栄養分を供給するとともに、不要な物質を回収します。
毛細血管を通った血液は、静脈を通って心臓まで戻っていきます。このように、毛細血管で「動脈と静脈の端」がつながる血管系を「閉鎖血管系」と呼びます。
2.動脈・静脈の血管の違いを比較
動脈と静脈の血管は役割に違いがありますが、その構造にも違いがあります。
血管は主に「内皮」「筋肉組織」で構成されており、伸縮性と弾性に富む組織で造られている点が特徴的といえるでしょう。しかし動脈と静脈では、構造に多少の違いがあります。
動脈・静脈それぞれの、血管の特徴と違いについて見ていきましょう。
動脈・静脈の血管の特徴と違い
動脈は心臓から出た血液が流れる血管。そのため血圧に耐える必要があり、伸縮性や弾性のある作りとなっています。
静脈は「心臓に戻る血液」が流れる血管。動脈に比べると弾性の少ない組織でできています。動脈に比べると、筋肉組織や弾性線維が多くない点が特徴的といえるでしょう。
また静脈は「心臓から血液が送り出される動脈」とは違い、静脈血の流れは動脈血に比べると緩やかです。そのため静脈には、血液の逆流を防ぐための「静脈弁」が存在します。これは、手足の静脈で発達しやすいとされています。
なお、静脈は英語でVein(ヴェイン)といいます。弁(べん) in Veinと覚えましょう。
毛細血管の特徴
毛細血管は非常に細い血管であるとお伝えしました。しかしこの毛細血管にも、内皮細胞はしっかり存在します。ちなみに、筋肉組織である「平滑筋」は存在しないとされています。
毛細血管の内皮細胞には隙間があります。
体のすみずみまで栄養分や酸素を届ける毛細血管ですが、この「隙間」があることで、血管と組織の間で確実に栄養素・酸素などの物質をしっかりと交換できるようになっているのです。
3.動脈血・静脈血とは?血液の循環を解説
心臓から送り出された動脈血と、心臓に戻る動脈血。
これらの血液は一定のルートをたどって体内を巡っており、一般的に「体循環」「肺循環」といった言葉を使って、血液の流れを分類します。
ここからは、血液の循環についてご紹介していきます。
血液は全身をどのように流れているの?
まずは全身の血液の流れを、簡単にお伝えします。
心臓から送り出された血液が、それぞれの動脈を通過すると、体の末梢にある毛細血管に到着します。そこで血液から、酸素を体の末梢に届けるとともに、二酸化炭素や不要な物質を受け取ります。
その後血液は静脈を通過し、心臓へ再び戻ります。心臓へ戻った血液は肺に送られ、肺でガスの交換が行われます。ガス交換によって酸素がたくさんになった血液は、心臓に送られてまた全身へ供給されていきます。
これが、血液の循環する一連の流れです。
これから、「肺循環」「体循環」という言葉を使って、より詳しく血液の流れをご紹介していきます。
肺循環(小循環)って?
肺循環とは、体から戻ってきた血液が右心室に到達し、そこから肺を通過してまた心臓にもどる循環のことです。
全身から戻ってきた静脈血は、心臓にある「右心室」という部分に送られます。その静脈血はそこから「肺動脈」を通り、両方の肺に到達します。
そこで血液中の二酸化炭素を体の外に排出し、酸素を受け取る「ガス交換」を行います。
これにより、静脈血が「酸素を多く含んだ動脈血」に生まれ変わるのです。その後、肺静脈を通過した動脈血は左心房へと運ばれます。この一連の循環を、「肺循環」といいます。
体循環(大循環)って?
体循環とは、心臓にある「左心室」から送り出される血液の循環のことです。
左心室からは、酸素が含まれる動脈血が送り出されます。
その後、それぞれの動脈を通過して、体にある筋肉や内臓・毛細血管に血液が行きわたります。そこで血液は酸素や栄養素を受け渡し、不要になった老廃物や二酸化炭素を回収します。
こうして静脈血となった血液は、心臓の右心房に戻っていくのです。
この一連の流れを、体循環といいます。
4.心臓の構造と動脈・静脈
体内で血液が循環するのに欠かせない「心臓」。
心臓は大きな血管とつながる、血液循環において重要な役割を果たす部分です。そんな心臓の構造と、動脈・静脈とのつながりを見ていきましょう。
心房・心室は肺血管と繋がる大切な部位
心臓は4つの部屋で構成されており、「右心室・右心室」と「左心房・左心室」という部位から成り立っています。このつくりを「2心房2心室」と呼ぶことがあります。
このうち心房は、全身や肺から血液が心臓に戻ってくる際に通過する血管があります。これが「大静脈」と「肺静脈」がつながっています。
一方心室には、心臓から全身や肺に血液を送り出す際に重要となる「肺動脈」と「大動脈」がつながっています。
心房・心室には弁がある
心臓には血液の逆流を防止するための「弁」が付いています。弁は、右心室・左心室それぞれの入口と出口に存在します。
「右心室入り口」つまり、右心房と右心室の間には「三尖弁」、「右心室の出口」には「肺動脈弁」があります。また、「左心室入口」にある弁は「僧帽弁」、「左心室出口」には「大動脈弁」が存在します。
上記の「心房と心室の境にある弁(三尖弁と僧帽弁)」は房室弁、「心室と動脈の境にある弁(肺動脈弁と大動脈弁)」は半月弁とよばれることもあります。
5.「動脈と静脈」まとめ
今回は、静脈・動脈のはたらきや構造をはじめ、血液の循環についてお伝えしました。
血液はわたしたちの身体に、酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を果たしています。
そして血液が循環する際は、心臓や血管のはたらきによって一定のルートをたどっていることがお分かりいただけたと思います。
心臓や血管の構造やはたらきは、複雑に感じて悩むことも多いのではないでしょうか。
そんなときは、重要なポイントをおさえてルートや構造を知るだけでも、理解が進むかもしれません。
今回ご紹介した内容を、「血液の循環」の理解に役立てていただければ幸いです。