神経伝達物質とは?ニューロンとの関係や種類、覚え方をマスターしよう

生物 2022.12.26

神経伝達物質は、高校の「生物基礎」では発展の内容として、「生物」では細胞や動物の範囲で出てくるキーワードです。

みなさんは、興奮したときに「アドレナリン全開だ!」と言ったり、体調が悪いときに「自律神経が乱れている」と言ったりするのを耳にしたことはあるでしょうか?
これらは、必ずしも科学的に正しい言い方ではありませんが、神経伝達物質や自律神経系のはたらきに関する言葉です。

この記事では、そんな神経伝達物質について解説します。

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1.【神経伝達物質の前に】交感神経・副交感神経を復習!《生物基礎》

神経伝達物質とは、その名の通り、神経細胞を伝って私たちの体のあちこちに運ばれる化学物質のことです。
化学物質といっても、私たちの体の中で作られるものなので、通常であれば健康に害をもたらすことはありません。

さて、神経伝達物質の説明をする前に、まずは「ニューロン(神経細胞)」について説明します。

ニューロン(神経細胞)とは、神経伝達物質を放出・受容することによってさまざまな器官に情報を伝達する細胞で、グリア細胞(神経膠細胞)とともに、人体の中の「神経系」を構成しています。

人体および動物の体の構造を思い出してください。
人体の最小単位は「細胞」ですが、細胞は集まって「組織」を作り、組織は集まって「器官」を作り、器官はその役割ごとに「器官系」というグループに分けられ、それらを総合して人間の「個体」となっています。

この「器官系」のうち、情報を伝達する機能を持つグループが「神経系」です。

「神経系」には、中学校で習った運動神経や感覚神経などの末梢神経系(まっしょうしんけいけい)、脳や脊髄の中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい)などがあります。

 

 

外からの刺激を受容する(例えば、火にかけたヤカンを触って「熱い」と感じる)感覚神経は感覚ニューロンからなり、筋肉を動かす命令を伝える(例えば、「手をヤカンから離せ」という命令を手の筋肉に伝える)運動神経は運動ニューロンからできています。

また、感覚神経と運動神経の間にあり、判断をして命令を下す脳や脊髄を中枢神経といい、それらは介在(かいざい)ニューロンからできています。

 

このとき、上の図の「自律神経系」に注目してください。
自律神経系は、体内の環境を整えるための神経系です。

体内の環境を整えるはたらきには、自律神経系によるものとホルモンによるものがあり、間脳の視床下部(かんのうのししょうかぶ)でコントロールされています。
例えば、消化、心臓の脈拍の速さ、汗などです。これらはどちらも、無意識的なはたらきです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、脳や脊髄から、身体のさまざまな器官に延びています。

 

 

交感神経と副交感神経は大体同じ臓器に分布し、普段は、この2つのはたらきが釣り合い、バランスをとって体の調子を整えています。このバランスのとれた状態を「拮抗的(きっこうてき)」といいます。

しかし、状況によっては、片方が優位にはたらく場合もあります。

 

交感神経は、おもに興奮状態や緊張状態で強くはたらきます。
例えば、緊張して心臓が速く動くのは、交感神経の働きで拍動が促進されているからです。また、驚いて鳥肌が立つのは、皮膚の立毛筋が収縮されているからです。

逆に、副交感神経は、リラックスした状態で強くはたらきます。
小さいとき、夜中にトイレに行ったのに、お化けが怖くて緊張し、尿が出なかったということはありませんでしたか?
童話の「モチモチの木」で、主人公はおじいさんに励まされてやっと排尿することができますが、これは、お化けに緊張(=交感神経)してぼうこうの働きが抑制されていたところに、おじいさんの励ましによってリラックス(=副交感神経)してぼうこうの働きが促進されたということです。

 

これらの交感神経、副交感神経のはたらきは、「ヒトも原始時代は、ほとんどが野生動物のように狩りをして生きていた」ということを頭に置くと、覚えやすくなります。

興奮状態や緊張状態で強くはたらく交感神経は、獲物を追うときや、猛獣から逃げるときなどの「戦闘モード」の神経です。
これらの場面では、どんな情報も見逃さないように多くの光を集めるため動向を拡大し、早く走るために全身へ多くの酸素を運ぼうと心臓の動きが速くなり、体が熱くなりすぎないように汗をかくはたらきが有効です。逆に、そんなときに排尿をしていたら獲物に逃げられてしまうので、ぼうこうのはたらきは抑制されます。

リラックスした状態で強くはたらく副交感神経は、家で家族と過ごすときなどの「まったりモード」の神経です。この時は安全なので、からだは胃やぼうこうのはたらきを促進し、消化や排せつをします。

2. 神経伝達物質とは?ニューロンや神経系との関係を基本から解説《生物基礎》

さきほど紹介した自律神経系などを含む神経系では、神経細胞(ニューロン)と呼ばれる細胞が、情報の伝達を担っています。

体中に張り巡らされた交感神経も、副交感神経も、感覚神経なども、種類の違いはありますが、すべてこのニューロンでできているというわけです。

 

ニューロン同士は、隣り合うニューロンとわずかな隙間を空けて隣接しています。この隙間を含め、ニューロンが隣接する軸索の末端から隣のニューロンの細胞体までの部分のことをシナプスと呼びます。

特に、隙間の部分はシナプス間隙(かんげき)と呼ばれます。
片方の軸索末端からは「神経伝達物質」という化学物質が放出され、これによって、隣のニューロンに情報が伝わります。

 

このように、神経伝達物質の行き来によって、ニューロンから別のニューロンに情報が伝えられることを「伝達」といいます。

 

交感神経のニューロンの末端からはノルアドレナリンという神経伝達物質が放出され、副交感神経のニューロンの末端からはアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。

つまり、ノルアドレナリンは興奮・緊張の情報を、脊髄から体の各器官に伝える神経伝達物質であり、アセチルコリンはリラックスの情報を伝える神経伝達物質ということです。

 

ここで、覚え方を確認しましょう。

なお、生物基礎の範囲で「神経伝達物質」を扱うのは、ここまでです。

ここからは、生物(いわゆる専門生物)の範囲となります。

3.ニューロンによる興奮の伝達と神経伝達物質の関係とは?《生物》

さきほど、片方の軸索末端からは「神経伝達物質」という化学物質が放出され、これによって、隣のニューロンに情報が伝わると述べました。
また、ニューロンと隣のニューロンの隣接する部分を「シナプス」、ニューロンとニューロンの間を「シナプス間隙」と呼ぶことも確認しました。

このとき、ニューロンの軸索末端の中身部分には、ミトコンドリアと多数の「シナプス小胞」が含まれています。

 

シナプス小胞には、神経伝達物質が含まれており、このシナプス小胞が片方のニューロンの軸索末端から分泌されて飛び出し、別のニューロンの受容体に受容されると、興奮が伝達されたことになります。

分泌された神経伝達物質は、すぐに別のニューロンの軸索に取り込まれるか、分解されてしまいます。
そのため、分泌された神経伝達物質が長時間残り続けるということはありません。

 

なお、「ノルアドレナリン」「アセチルコリン」は、それぞれ「興奮」「リラックス」を促進するため、「興奮性の神経伝達物質」と分類されます。

「ノルアドレナリン」が「興奮・緊張を伝える」という役割を持っているため、紛らわしいですが、「興奮性の神経伝達物質」というときは、「どんな刺激であれ、刺激を強めに伝えるためにはたらく」という意味です。

 

一方で、「刺激を弱めに伝えるために働くタイプ」の「抑制性の神経伝達物質」も存在します。

余裕がある人は、以下の表を見て覚えておきましょう。

興奮性 アセチルコリン
グルタミン酸
など
抑制性 グリシン
γ-アミノ酪酸(がんまあみのらくさん)
など

※γ-アミノ酪酸はGABA(ギャバ)ともいう。

 

覚え方は、以下の通りです。

 

4.神経伝達物質まとめ

この記事では、神経伝達物質を中心に、ニューロンや情報の伝達について解説しました。
聞きなれない単語が多く出てきて覚えにくいし理解しにくいと感じる方も多いでしょう。
この記事のように、身近なことに結びつけながら考えたり、覚え方を用いて覚えたりして、神経伝達物質に関する問題に慣れていってください。
しっかりと復習し、得点源にしましょう!

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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