ニューロン(神経細胞)とは?構造や仕組みを理解しよう!
今回はニューロンの構造や仕組みについて解説していきます。構造や仕組みは図をイメージすることが大切です。
またニューロンの働きは、刺激による情報の流れを電位とともに理解する必要があります。特に興奮の伝導と伝達は紛らわしいので、それぞれの意味や違いを勉強していきましょう!
【目次】
1.ニューロンと神経系の役割
私たちの全身には神経系とよばれる神経のネットワークがはりめぐらされています。
神経系は、「情報を伝える」「情報を処理する」役割を担っています。
たとえば「飛んでくるボールを手でとる」場合を考えてみましょう。
この一連の反応では、まず目で受け取られた外界の光の情報が「感覚神経」とよばれる神経を通って脳へと伝えられます。そして、800億個以上のニューロンをもつ脳で、伝えられた情報が処理されて、視覚が成立します。
さらにこの視覚をもとに、ボールを取るよう適切に筋肉を動かす指令が脳から出され、その情報は「運動神経」とよばれる神経を通ってからだの筋肉に伝えられます。このような情報の伝搬、情報の処理が、神経系の担う役割です。
そして、ニューロン(神経細胞)は神経系を構成する中心的な細胞の名称です。
ニューロンは細く長い構造をしており、受容器からの感覚神経を中枢神経に伝え、中枢神経で情報を処理する役割をもちます。
2.ニューロンの構造
では、個々のニューロンはどのような構造をしているのでしょうか?
ニューロンは、大きく細胞体・樹状突起・軸索からなります。
この構造は非常に重要なので、しっかり覚えておきましょう。
樹状突起:細胞体から細かくのびた樹の枝状の構造で、隣接するニューロンからの情報を受け取る部分。
軸索:細胞体からのびる長い1本の突起。隣接するニューロンや効果器に信号を与える。長さは1mm~1m程度。腰のあたりから足にかけてのびる坐骨神経を構成するニューロンは、最長で1mの軸索をもつ
3.ニューロンによる情報の伝わり方
特徴的な構造をもつニューロンですが、どのようにして情報を伝えるのでしょうか?
そのしくみを解説していきます。
膜電位
生きた細胞の内側と外側の間には、「膜電位」とよばれる電位差があります。
具体的にいうと、細胞の外側に対して細胞の内側は数十mVの-(マイナス)*になっていて、この電位差が膜電位です。
*細胞の外側の電位を基準(0)にしたときの細胞の内側の電位
この理由は少し難しいですが、簡単に説明しておきます。理解が進んで余裕のある人は読んでみてください。
細胞膜には、ナトリウムポンプやカリウムチャネルなど、イオンの移動にかかわる構造が存在します。ナトリウムポンプはナトリウムイオン(Na+)を細胞の外に汲み出し、同時にカリウムイオン(K+)を細胞内に流入させます。また、カリウムチャネルはカリウムイオンを通過させる通路のような構造で、細胞内に流入したカリウムイオンは細胞外へと流出します。
これらのイオンが汲み出されたり、流入・流出したりすることで、細胞の内側と外側の間でイオンのアンバランスが生じており、その結果、細胞の内側と外側の間で電位差が生じています。これが膜電位です。
静止電位と活動電位
ニューロンや筋肉の細胞は、刺激を受けたときに膜電位を変化させる特殊なしくみをもっていて、興奮性細胞とよばれます。
そして、この膜電位を変化させるという特性が、「情報を伝える」というはたらきにおいて重要なポイントとなります。
興奮性細胞では、刺激をしていない状態(静止状態)の膜電位を「静止電位」といいます。ニューロンの場合、静止状態で細胞の内側が外側に対して-60mV~-90mV程度になっており、これが静止電位です。
では、ニューロンが刺激を受けるとどうなるのでしょうか?
ニューロンを刺激すると、刺激を受けた部分で細胞内外の電位が逆転し、細胞の外側に対して内側が+となる現象が起きます。
細胞の外側に対して内側が+となりますが、数ミリ秒*で元の静止電位に戻ります。
*1ミリ秒は1000分の1秒
下のグラフで確認しましょう。
グラフ縦軸の「膜外・膜内」とは、「細胞膜の外・細胞膜の内」という意味なので、「細胞の外側に対する細胞の内側の電位(mV)」をさしています。
静止電位の状態から電位が逆転するようすが見てとれるでしょうか。この一連の電位の変化を「活動電位」といいます。
そして活動電位が発生するとき、ニューロンは興奮していると表現できます。このグラフは頻出なのでしっかりと頭に入れておきましょう。
活動電位が発生するしくみ
なぜこのような電位の逆転現象が起こるのでしょうか?この説明でポイントとなるのは「ナトリウムポンプ」と「ナトリウムチャネル」です。
ナトリウムポンプは細胞内のナトリウムイオン(Na+)を細胞外に汲み出すはたらきをしていて、常時稼働しています。
一方、ナトリウムチャネルは、ナトリウムイオン(Na+)を濃度勾配に従って(濃度の高い方から低い方へ)通過させる通路のようなものですが、静止時には閉じています。
ニューロンが刺激を受けると、このナトリウムチャネルが瞬間的に開きます。
そうすると、細胞の外側に存在するナトリウムイオンが細胞内に流入することになります。
正の電荷をもつナトリウムイオンが流入するので、細胞外に対して細胞内が+となります。その後、ナトリウムチャネルは閉じ、ナトリウムポンプなどのはたらきによって静止状態へと戻ります。
重要な部分なのでしくみをきちんと理解しておきましょう。
4.ニューロンにおける活動電流と興奮の伝導
ニューロンが刺激を受けると、興奮が発生(活動電位が発生)することがわかりました。
ニューロンの役割は「情報を伝えること」なので、受けた刺激(情報)を伝えなければなりません。
最初に挙げた「飛んでくるボールを手でとる」例では、まず目で見た「飛んでくるボール」の情報が脳に伝えられていました。
この場面を具体的にいうと、目の網膜で光を受け取り、その刺激によって視神経が興奮し、そしてこの興奮が脳へと伝えられていく、という流れになります。
では、興奮はどのようなしくみで伝えられていくのでしょうか?
こでポイントになってくるのが「活動電流」です。
少し難しいかもしれませんが、大事なところなのでしっかりおさえておきましょう。
下図は、軸索に活動電位が発生したようすを模式的に示したものです。
刺激を受けた部分で活動電位が発生します。ナトリウムイオンが流入することで、細胞の内外の電位差が逆転し、内側が+、外側が-になるのでしたね。
ここから先がポイントです。
電流は+側から-側へ流れます。上図をよく見ると、活動電位が発生した興奮部と、そこに隣接する部分が+と-になっています。
ということは、興奮部と隣接部との間に電流が流れることになり、この電流を「活動電流」といいます。
*初めに興奮がおこった箇所(図の中央部分)はしばらくの間反応がおこらない不応期となる。つまり、しばらくの間は興奮しないので、興奮が逆向きに伝わる(中央部に戻ってくる)ことはない。
隣接部に電流が流れると、これが刺激となって隣接部が興奮し、隣接部でも活動電位が発生します。
そうすると、さらにその隣接部との間に+と-の電位差ができて活動電流が流れ、これが刺激になって活動電位が発生します。
この繰り返しによって、長くのびる軸索に興奮が伝わっていくのです。
このように、ニューロン内を興奮が伝わっていくことを「興奮の伝導」といいます。
5.ニューロンの接続部分におけるシナプスと興奮の伝達
ニューロンはつながり合ってネットワークをつくっており、また、ニューロンを伝わる情報は最終的に筋肉などに伝えられていきます。
シナプスとは?
ニューロンが隣接する別のニューロンや筋肉などに興奮を伝えることを、「興奮の伝達」といいます。
ニューロンどうしやニューロンや筋肉などがつながる接続部分が「シナプス」です。実は、この接続部分は物理的にはつながっておらず、わずかなすき間があります。
軸索を通って伝えられてきた興奮は、軸索の末端部分から隣接するニューロンや筋肉などに伝えられるのですが、シナプスにすき間があるため活動電流は流れません。
では、どのようにして興奮を伝えるのでしょうか?
ここでは「神経伝達物質」とよばれる化学物質によって興奮を伝えます。
これを「興奮の伝達」といいますが、興奮の伝達に関しては「神経伝達物質とは?ニューロンとの関係や種類、覚え方をマスターしよう」をご覧ください。
神経系の構成に関してもまとめてあります。
興奮の伝導と伝達
さて、「興奮の伝導」と「興奮の伝達」というよく似た現象を学習しましたが、その違いはしっかりと理解できているでしょうか?
もう一度簡単におさらいしておきましょう。
興奮の伝導は、電気的なしくみによってニューロン内を興奮が伝わることをさしています。
一方、興奮の伝達は、神経伝達物質とよばれる化学物質によって、隣接する別のニューロンや筋肉などに興奮が伝えられることをさしています。
6.ニューロンのまとめ
ニューロンについて、その構造や情報を伝搬するしくみについて紹介してきました。
ニューロン各部の名称はもちろん、そのはたらきである情報を伝えるしくみ、つまり「興奮の伝導」と「興奮の伝達」のしくみをしっかりと頭に入れることが大事です。
最後までお読みいただきありがとうございました。