高校化学で出題される同素体の性質、同位体との違い

化学 2020.2.25

化学の問題を解くときには、出題される物体の性質や色、精製方法をしっかり覚えておく必要があります。

溶けるのか沈殿するのか、電気を通すか通さないか、空気中で自然発火するかしないか、保存方法はどうするか、などです。同じ原子や分子でも結晶構造が違えば性質は違いますし、似たような性質を持つような物質も多く存在します。

重要なのは、性質の似た物質を、どのような方法で区別するかということです。同素体の区別も入試で度々出題されます。
この記事では、同素体についてまとめます。

1.【同素体の説明の前に】単体と化合物について

同素体の説明の前に、高校化学における物質の分類について復習します。
細かい部分ですが、しっかり押さえておきましょう。

すべての物質はまず、混合物と純物質に分類されます。
2種類以上の物質が混じりあったものを「混合物」、混合物を分離・精製して得られる各物質を「純物質」と言います。

世の中にあるほとんどの物質は「混合物」です。最も身近な混合物の一つとして「空気」が挙げられます。空気は、酸素 O2 や窒素 N2、二酸化炭素 CO2 などが含まれます。
この酸素 O2 や窒素 N2、二酸化炭素 CO2 などが「純物質」です。

純物質はさらに「単体」と「化合物」に分類されます。
1種類の元素だけでできているものが「単体」で、2種類以上の元素から出来ているのが「化合物」です。

先の例でいえば、酸素O2 や窒素 N2「単体」、二酸化炭素 CO2「化合物」です。

2.そもそも同素体とは

「単体」の中には、同じ元素から出来ているのに、分子結晶構造の違いなどから、性質の異なるものがあります。
例えば、宝石の「ダイヤモンド」と、鉛筆の芯の材料に使われる「黒鉛」は、共に炭素Cからなる単体です。しかし、ダイヤモンドは非常に硬く電気を導かないのに対して、黒鉛は柔らかく電気をよく導きます。

このように、同じ元素からなる単体で、性質の異なる単体同士を「同素体」と言います。同素体の性質は、入試でもよく出題されるので、しっかり覚えておきましょう。
入試でよく問われる同素体は、硫黄S、炭素C、酸素O、リンPです。この4つの単体の同素体のそれぞれの性質については後でまとめましょう。

3.同素体と同位体の違いについて

同素体とよく混同されるのが「同位体」です。同素体と同位体で、似ているのは名前だけで、実際は全く違う概念です。
「同位体」というのは、「原子番号が同じで質量数の違う原子」のことです。

同素体:同じ元素からなる単体で、性質の異なるもの(化学的性質が異なる)
同位体:同じ原子番号で、質量数の異なるもの(化学的性質はほぼ同じ)

つまり、「同位体」というのは原子構造に関する話で、「同素体」というのは原子同士が結合してできた分子に関する話です。

同位体についても簡単にまとめておきましょう。
原子の中心には正の電荷をもつ原子核があり、その周りを負の電荷をもつ電子が取り巻いています。

電子と原子核は、正電荷と負電荷に働く引力により結びついています。
原子核は、電荷をもたない中性子と、正の電荷をもつ陽子で構成されています。
原子核がもつ正電荷は、陽子の正電荷によるものですが、陽子の数は原子によって違います。

例えば水素原子の陽子の数は1で、ヘリウム原子の陽子の数は2です。陽子数が2の水素原子は存在しません。
この陽子の数は、原子番号と対応していて、元素記号の左下に書きます。これまでの説明のように、原子は電子と中性子と陽子によって構成されていますが、電子の質量は陽子や中性子に比べて無視できるほど小さく、陽子と中性子の質量はほぼ等しいです。

そのため、原子の質量は、陽子の数と中性子の数の合計(=質量数)にほぼ比例するのですが、同じ原子番号(陽子の数は同じ)であっても中性子の数が異なる原子が存在します。

このように、同じ原子番号で(中性子の数が異なるために)質量数が異なるものを、互いに「同位体」と呼びます。同位体はアイソトープと呼ばれることもあり、同位体の化学的性質はほぼ等しいです。
一方、「同素体」は化学的性質が全く異なるので、この点も違いとして認識しておきましょう。

同位体については、以下の記事にまとめてありますので、合わせてご覧ください。
▲同位体とは?同素体との違い・覚え方も早稲田生が紹介

4.それぞれの同素体の性質(S・C・O・P)

主に大学入試で出題される同素体は、硫黄S、炭素C、酸素O、リンPの4種類です。

順番に並べて「SCOP(スコップ)」で覚える方が多いと思いますが、重要なのはそれぞれの同素体の性質です。元素名だけ覚えてもほとんど意味がありませんので、その性質まで合わせて覚えましょう。まずは簡単にそれぞれの性質についてまとめます。

元素 同素体と性質
硫黄 S 【斜方硫黄 S8
形状:環状
状態:黄色・塊状
溶解性:CS2に解ける
常温で安定
【単斜硫黄 S8
形状:環状
状態:淡黄色・針状
溶解性:CS2に解ける
常温で放置すると斜方硫黄になる
【ゴム状硫黄 Sx(多数のS原子で構成されている)】
形状:鎖状
状態:褐色・ゴム状
溶解性:CS2に解けない
常温で放置すると斜方硫黄になる
炭素C 【黒鉛】
状態:黒色・不透明
硬さ:やわらかい
電導性:あり
共有結合結晶
【ダイヤモンド】
状態:無色・透明
硬さ:非常に硬い
電導性:なし
共有結合結晶
【フラーレン C60
球状のサッカーボール型の分子
酸素 O 【酸素 O2
空気中に約20%含まれる
製法:酸化マンガン(Ⅳ)を触媒として過酸化水素を分解
【オゾン O3
特異臭の気体
酸化作用が強く有毒
成層圏のオゾン層が有害な紫外線を吸収
製法:酸素中での放電
リン P 【黄リン P4
分子構造:正四面体分子
外観:淡黄色・ろう状固体
毒性:猛毒
発火性:空気中で自然発火(水中に保存)
溶解性:CS2に解ける
【赤リン Px
分子構造:網目状分子
外観:暗赤色・粉末
毒性:毒性小(無毒とも)
発火性:空気中で自然発火しない
溶解性:CS2に解けない
マッチに使用される

 

硫黄の共通の性質として、以下の2点も覚えておきましょう。
・水に溶けない
・空気中で燃えて二酸化硫黄になる S+O2→SO2

炭素については、ダイヤモンドと黒鉛の結晶構造の違いについて押さえておきましょう。
共に共有結合結晶ですが、共有結合結晶は一般に融点が非常に高く、水や溶媒に溶けず、硬いのが特徴です。他にはSi、SiO2 などが挙げられます。
黒鉛が柔らかく、電導性があるのは共有結合結晶としては例外的な性質です。

ダイヤモンドは4個の価電子がすべて共有結合につかわれています。
一方、黒鉛の結晶は、4個の価電子のうち3つが共有結合に使われていて、平面上で共有結合をしています。そして、その平面が重なって、平面同士が分子間力によって結びついています。そのために、例外的な性質をもつのです。

リンの共通の性質として、以下の点も注意しましょう。
・燃えるとどちらも 4P+5O2→P4 O10

こうしてできた十酸化四リン(五酸化二リンとも)は吸湿性が強く、乾燥剤として使われます。
また、十酸化四リンは潮解性を持ちます。大学入試では「黄リンはリンの同素体である」として問題ありませんが、実際は黄リンは白リンに不純物が混ざったもので、同素体ではありません(白リンはリンの同素体です)。
大学入試で説明される黄リンの性質は、ほとんど白リンの性質です。純粋な白リンは無色ですが、日光に当たると赤リンに変化し、黄リンになります。

例題

次の空欄に適切な言葉を埋め、問に答えよ。
リンの同素体には、有毒な( あ )と、無毒な( い )がある。
①( あ )は通常、水中に保存される。
②どちらも空気中で燃焼すると、( う )を生成する。
③さらに( う )が温水と反応すると、リン酸に変化する。①の理由を答えよ。②③は化学反応式を示せ。

 

 

解答・解説

(あ)黄リン (い)赤リン (う)十酸化四リン(五酸化二リン)となります。上の表を参考にしてください。
リンの見分け方は様々ですが、毒性や色に注目すれば問題ありません。

①の理由として、黄リンが水中に保存されるのは、空気中で自然発火するためです。
②の反応式は 4P+5O2→P4O10 リンは燃焼することで、十酸化四リンが生成されます。
③の反応式は P4O10+6H2O→4H3PO4 十酸化四リンは水と過熱することでリン酸 H3PO4 となります。これもよく出てくる物質ですから、合わせて覚えましょう。

 

おわりに

最後までご覧くださってありがとうございました。この記事では、同素体の性質の違いについてまとめました。ご参考になれば幸いです。

 

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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