ベンゼンとは?構造式の書き方や性質を解説!芳香族化合物の例も紹介

化学 2022.12.26
ベンゼンとは?構造式の書き方や性質を解説!芳香族化合物の例も紹介

ベンゼンを含む芳香族化合物については、有機化学分野で出題されやすいポイントです

ですが、性質や構造式・反応など覚えるものが多く、なかなか理解できずに困っている人もいるのはないでしょうか。

そこで本記事では芳香族化合物、とくにベンゼンについて、性質から構造式の書き方まで徹底解説します。ベンゼンから出発するさまざまな反応も詳しく説明するので、ぜひ勉強の参考にしてみてください。

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    1.そもそもベンゼンとは?

    ベンゼンとは、ベンゼン環と呼ばれる特徴的な構造を持った化合物です。そして、ベンゼン環を含んだ化合物をまとめて「芳香族化合物」と呼んでいます。

    ここでは、性質や構造式をはじめ、ベンゼンの特徴を紹介していきます。

    1-1.ベンゼンの性質

    「C6H6」で表されるベンゼンは、特殊な環状構造を持っている化合物です。炭素6個がつながって作られているこの構造はベンゼンの大きな特徴で、「ベンゼン環」と呼ばれています。

    ベンゼンは以下のようにさまざまな性質を持っていますが、これらはベンゼン環に由来するものです。

    • 二重結合と単結合が交互に存在する
    • 二重結合と単結合が交互に存在する
    • 安定性が高い

    とくに重要なのが、ベンゼン環を作る炭素同士の結合において、二重結合と単結合が交互に繰り返されている点です。こちらの性質により、ベンゼン環では「共鳴」という現象が起こり、炭素結合の安定性が高まっています。

    また、ベンゼンは工業的に有用ですが、有毒性があるといわれている化合物です。発がん性が認められたという報告もあるため、徐々に工場現場では使われなくなっています。

    1-2.ベンゼンの構造と構造式の書き方

    特殊な環状構造「ベンゼン環」を持っていることもあり、ベンゼンの構造式には複数の書き方があります。

    ここでは、ベンゼンの構造および構造式とその書き方を紹介します。

    • 化学式、示性式

    ベンゼンの化学式は「C6H6」で表されます。6個の炭素によってベンゼン環が形成されており、それぞれの炭素に水素が一つずつ付いています。

    したがって全体では、炭素が6個、水素が6個存在しています。

    • 構造式

    ベンゼンの構造式は、炭素が六角形の環状構造を作り、各炭素から水素が生えているような書き方で示されます。

    ベンゼンは二重結合と単結合が交互に存在する化合物です。つまり、ベンゼン環を作る炭素同士は、二重結合と単結合を一つずつ形成しているのです。

    炭素には結合に使える手が4つあるので、残った一つが水素と手をつなぎます。

    ちなみに、二重結合と単結合が互い違いになっているので、構造式はその順番を入れ替えた2パターンが存在します。

     ベンゼン構造式

     

    • ケクレ構造式

    ベンゼン環の構造式は書き方が複数あるのですが、ケクレ構造式はその一つです。

    ケクレ構造式

    ケクレ構造式で書く場合は炭素と水素を省略し、ベンゼン環をシンプルな六角形の線図で表現します。二重結合の部分のみ二重線で表記するので、構造がわかりやすいでしょう。

    ベンゼンや芳香族化合物のさまざまな反応過程を説明するのに都合がよいので、広く使われています。

    • ロビンソン構造式

    ロビンソン構造式は、ケクレ構造式の欠点を補うために生まれた書き方です。ロビンソン構造式

    構造式では二重結合と単結合をはっきりとわけて書いていますが、実際にはベンゼンが持つ炭素結合はすべて等価です。

    そのため、ベンゼン環を表す六角形の中に丸を書き、すべての結合が等しいことを表現しています。

    1-3.芳香族化合物の例

    ベンゼン環を持つ化合物「芳香族化合物」としては、以下のものが代表的です。

    • ナフタレン
    • フェノール
    • トルエン
    • 安息香酸
    • ニトロベンゼン

    ナフタレン 、フェノール 、トルエン 、安息香酸 、ニトロベンゼン構造式

    それぞれの芳香族化合物について説明します。

    ナフタレン

    ナフタレンはベンゼン環が2つつながってできた芳香族化合物で、化学式は「C10H8」で表されます。ナフタレンの大きな特徴は、「分子結晶」を作る性質があることです。

    分子結晶とはドライアイスやヨウ素など、分子同士が分子間力によってきれいに整列し、結晶となったものです。

    分子結晶には固体から気体に状態変化する昇華性があり、ナフタレンも同様の性質をもっています。

    フェノール

    フェノールはベンゼン環の水素原子の一つがヒドロキシ基(-OH)に置き換わった芳香族化合物です。「C6H5OH」で表され、室温で固体、特有の薬品臭を持つなどの特徴があります。

    フェノール樹脂やエポキシ樹脂をはじめ、以下のように幅広い化学品の原料・中間体として活用されています。

    • 染料
    • 界面活性剤
    • 殺菌剤
    • 農薬
    • 医薬

    トルエン

    ルエンは、ベンゼン環の水素原子の一つがアルキル化され、メチル基に置き換わった芳香族化合物です。

    「C6H5CH3と表現される化合物で、ベンゼンと塩化メチルを混ぜることによって作られます。

    トルエンは、ニトロ化が進むと「2,4,6-トリニトロトルエン」という化合物になります。こちらは通称「TNT」と呼ばれる爆薬の原料なので、非常に危険性が高いです。

    安息香酸

    安息香酸「C6H5COOH」は、ベンゼン環の水素の一つがカルボキシル基(-COOH)に変換されたもの。主に防腐剤や保存料の用途で販売されている芳香族化合物です。

    安全性が高いため、米国では「Generally Recognized As Safe」物質として扱われています。安息香酸の代表的な用途は以下の通りです。

    • 医薬品製剤原料
    • 食品保存料
    • 化粧品防腐剤
    • 不凍液の防錆剤

    ニトロベンゼン

    ニトロベンゼンはベンゼンの水素原子がニトロ基(-NO2)に置換された芳香族化合物で、「C6H5NO2と表現されます。アニリンやベンジジン、アゾ色素などの化合物の合成に利用できるので、染料や香料の製造現場で活躍中です。

    純度の高いニトロベンゼンは無色ですが、一般に流通しているものは黄色がかった色のものが多いです。こちらの黄色は不純物が混ざったことによる発色が原因といわれています。

      2.代表的な反応と生成物

      ベンゼンで起こる反応は、以下の2種類に大別されます。

      • 置換反応
      • 付加反応

      ベンゼンは安定性が高いので、ベンゼン環が壊れるような付加反応よりも、置換反応のほうが起こりやすいのが特徴的です。

      ここからは、ベンゼンにおける代表的な置換反応と付加反応をいくつか紹介します。

      2-1.ハロゲン化

      ハロゲン化は、ベンゼンの持つ水素原子が塩素等のハロゲン原子と置き換わる代表的な置換反応です。

      ハロゲン化

      塩素に置換されてクロロベンゼンが生じる反応例は、以下の式で表されます。

      C6H6+Cl2→C6H5Cl+HCl

      このように、ベンゼンに対して塩素を加えることで反応が進行します。

      また、上の反応式には含まれていませんが、反応を効率的に行うために、触媒として塩化鉄(Ⅲ)を用いるのが一般的です。塩化鉄(Ⅲ)は以下のように、塩素から塩素原子を引き抜こうとします。

      Cl(+)ーCl(-)+FeCl3→Cl(+)ー[FeCl4](-)

      そうすると塩素が単体で存在するよりも不安定になり、反応性が増します。これによってベンゼンとの反応が進行し、最終的にクロロベンゼンが生じます。

      C6H6+Cl(+)ー[FeCl4]-→C6H5Cl+H(+) +[FeCl4](-)→C6H5Cl+HCl+FeCl3

      2-2.ニトロ化

      ニトロ化は、ベンゼンの水素原子がニトロ基(-NO2)と入れ替わり、ニトロベンゼンが生じる置換反応です。反応式は以下の通り。

       

      ニトロ化

      C6H6+HNO3→C6H5NO2+H2O

      ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸の混合物を加えることで、ニトロ化反応が進行します。上記の式からわかるように反応後は水が生成されるので、ニトロ化は水が失われる「脱水反応」です。

      濃硫酸はH(+)を自ら放出し、ほかのものから水を奪う力があります。そのため、濃硫酸から出たH(+)とHNO3が反応して水を奪い、ニトロニウムイオン(N(+)O2)が生成されるのです。

      HNO3+H(+)→N(+)O2+H2O

      こうしてできたニトロニウムイオンは反応性が高いので、水素原子を押しのけてベンゼンにくっつきます。

      C6H6+N(+)O2→C6H5NO2+H(+)

      2-3.スルホン化

      スルホン化とは、ベンゼンの水素原子をスルホ基(-SO3H)にする置換反応です。以下の反応によって、ベンゼンがベンゼンスルホン酸に変換されます。

      スルホン化

      C6H6+H2SO4→C6H5SO3H+H2O

      スルホン化は、ベンゼンに濃硫酸を加えて80℃ほどに加熱する、または常温で発煙硫酸を加えることで生じる反応です。

      上記の反応式の通り、反応後に水が発生する脱水反応に分類されます。ある硫酸から出たH(+)により、ほかの硫酸から水を奪い取ります。

      H2SO4+H(+)→HSO3(+) +H2O

      そうして生じたHSO3(+)がベンゼンに攻撃を仕掛けるので、最終的にベンゼンスルホン酸が生成されるのです。

      C6H6+HSO3(+)→C6H5SO3H

      2-4.アルキル化

      アルキル化とは、ベンゼンの水素原子がアルキル基に置換される置換反応です。アルキル基としてはメチル基、エチル基などが挙げられます。

      アルキル化

      たとえば、ベンゼンに塩化メチルを加えると、アルキル化によりトルエンが生成されます。

      C6H6+CH3Cl→C6H5CH3+HCl

      このとき、塩化メチルだけでなく、触媒として塩化アルミニウムも加えます。

      ちなみに、塩化エチルを加えた場合はメチル基ではなくエチル基に置換され、エチルベンゼンが生じます。

      2-5.水素付加

      水素付加は、ベンゼンの持つベンゼン環に水素を付加する付加反応です。

      水素付加

      ベンゼン環は安定なので、ちょっとやそっとの力では破壊できません。しかし、特殊な条件で反応を行うと高い反応性を持つラジカルが生じ、ラジカルの力でベンゼン環を開環させられるのです。

      水素付加を行うには、高温高圧下かつニッケルや白金、パラジウムなどの触媒を加え、ベンゼンと水素を反応させます。

      C6H6+3H2→C6H12

      ベンゼンの水素付加によって生成される生成物は、シクロヘキサンと呼ばれています。

      2-6.塩素付加

      塩素付加は、水素ではなく塩素をベンゼンに付加する付加反応です。

      塩素付加

      塩素付加では触媒の代わりに、光を反応に用います。ベンゼンに光を当てながら塩素を加えると以下のような反応が生じ、塩素が付加されるのです。

      C6H6+3Cl2→C6H6Cl6

      塩素が付加されたベンゼンは、ヘキサクロロシクロヘキサン(ベンゼンヘキサクロリド)という化合物になります。

      まとめ

      本記事ではベンゼンおよび芳香族化合物について、性質や構造式、代表的な反応を紹介しました。

      ベンゼンは炭素6個がつながってできる特殊な環状構造「ベンゼン環」を持つ化合物です。

      付加反応が起こりやすかったり、書き方が複数存在したりしているといったベンゼンの特徴は、このベンゼン環によって生じていることを覚えておくと良いでしょう。

      今回はベンゼンの構造式の書き方についても紹介しましたが、難しいと感じた人もいるでしょう。

      構造式の書き方やルールについては「構造式の書き方!化学の基本として知っておきたいルールとは?」で詳しく解説しています。

      構造式に苦手意識のある人は、こちらの記事で復習してみてはいかがでしょうか。

       

       

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      この記事の執筆者

      ニックネーム:受験のミカタ編集部

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