接触法とは?反応式・濃硫酸の工業的製法と頻出の計算問題について解説!

化学 2022.12.14
接触法とは?反応式・濃硫酸の工業的製法と頻出の計算問題について解説!

この記事では、濃硫酸の工業的製法である接触法について詳しく説明します。
接触法は計算問題としても出題されますので、反応の流れはもちろんのこと、具体的な計算問題の解き方まで見ていきますので、しっかり習得してください。

		

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    接触法の仕組み

    接触法とは、濃硫酸を大量に作る製法です。作成の流れは以下のようになります。

    1. 硫黄または黄鉄鉱を燃焼させる。
    2. 1で得たSO2を酸素によって酸化させる。
    3. 2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、希硫酸に溶かす。

    それぞれの工程について詳しく説明します。

    1. 硫黄または黄鉄鉱を燃焼させる。

    まずは硫黄、または黄鉄鉱を燃焼させてSO2を取り出します。

    それぞれの反応式は以下のようになります。

    ・S+O2→SO2

    ・4FeS2+11O2→2Fe2O3+8SO2

    昔は、黄鉄鉱からSO2を取り出していました。

    しかし、現在は工業廃棄物から脱硫装置を使って硫黄を取り出すことができるので、硫黄の燃焼で、SO2を生成しています。

    2. 1で得たSO2を酸素によって酸化させる。

    次に1で得たSO2を、空気中の酸素によって酸化させることでSO3を得ます。
    反応式は以下のようになります。

    ・2SO2+O2→2SO3

    この反応は活性化エネルギーが非常に高く、反応がとても進みにくいので、触媒として酸化バナジウム(V2O5)を入れ、活性化エネルギーを下げることで、反応を進みやすくします。

    また、この反応は可逆反応で、正反応(SO3が生成する反応)が発熱反応なので、逆反応(SO2に戻る反応)が起こりにくく、かつ正反応が進みやすい温度(200~600C°)に調整する必要があります。

    3. 2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、希硫酸に溶かす。

    最後に、2, で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、これを希硫酸で薄めて濃硫酸にします。

    発煙硫酸とは、濃硫酸に過剰にSO3を吸収させたもので、常にSO3の蒸気を出しているのでこの名前が付けられています。

    ここで、SO3を水に溶かせばいいのでは?と思う人もいるでしょう。
    SO3を直接水に吸収させると、多量の発熱が起こって水が沸騰してしまいます。すると、生じた水蒸気にSO3が溶け、空気中に分散してしまいます。

    そこで、発熱をできるだけ抑えるために、濃硫酸にSO3を溶かし、濃硫酸中の水にSO3をゆっくり吸収させます。その後、希硫酸で薄めることで所定の濃度の濃硫酸を作ります。

    つまり、ここでの反応式はSO3と水との反応となるので、以下のようになります。

    ・SO3+H2O→H2SO4

      接触法の反応式

      以上1〜3の3つの反応を、中間生成物を消すことで、1つの反応式にまとめることができます。

      硫黄を用いた場合は、

      ・2S+3O2+2H2O→2H2SO4

      黄鉄鉱を用いた場合は、

      ・4FeS2+15O2+8H2O→2Fe2O3+8H2SO4
      となります。

      濃硫酸の性質

      濃硫酸は無色で粘性が大きく、密度が大きい液体です。押さえておきたい性質は次の4つです。

      1. 脱水作用
      2. 不揮発性
      3. 吸湿性
      4. 酸化作用
      以下に、それぞれ詳しく説明していきます。

      1. 脱水作用

      スクロース(ショ糖)などの有機化合物中から、HとOを2:1の割合で奪います。
      ・(ex.)C12H22O11→12C+11H2O

      2. 不揮発性

      粘性が大きく、沸点が高いことから、揮発しにくく、その性質を応用して揮発性の酸の生成に用いられます。
      ・(ex.)NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl

      3. 吸湿性

      実験などで作成した気体の水分を吸収する、乾燥剤として用います。
      ただし、塩基性や還元性を持つ気体とは反応してしまうため、使用できません。

      4. 酸化作用

      熱濃硫酸は強い酸化作用を持ちます。半反応式は、H2SO4+2H++2e→SO2+2H2Oです 。

        接触法の計算問題

        入試において接触法は、反応の流れだけではなく、計算問題としても出題されます。例えば、以下のような問題です。
        実際に手を動かして考えてみましょう。

        問題

        硫黄1kgを完全に硫酸に変えたとすると、98%硫酸は何kgできますか。ただし、分子量はH=1、O=16、S=32とします。

        解説

        できる硫酸中の硫黄は、すべて原料の硫黄に由来しているので、硫黄1molからは硫酸が1molできることになります。

        硫黄1kg=1000gは、1000÷32=31.25mol。
        硫酸の分子量は、1×2+32+16×4=98なので、31.25molの硫酸の質量は、31.25×98=3062.5g
        98%の硫酸を作るので、その質量は、3062.5÷0.98÷1000≒3.13kgとなります。

        ただし、一つ一つの式でいちいち答えを出していては時間がかかり、計算間違いもしやすくなりますので、できる98%硫酸の質量をx(kg)として、下のように一気に式を立てて求めることが必要です。
        1×103/32×98=x×103×98/100

        物質量の計算が苦手だ…という人は、「物質量の求め方とは?単位や計算問題も解説!」「物質量の理解に役立つ記事まとめ!〜物質量からモル濃度まで〜」の記事を読んで、復習してみてくださいね。

          まとめ

          この記事では、濃硫酸を大量に製造する方法である接触法について詳しく説明しました。
          また、濃硫酸の性質や接触法で問われる計算問題についても見ていきました。

          接触法は、各段階の反応や全体の反応式はもちろんのこと、できる硫酸の性質や計算問題なども出題されますので、きちんと整理しておく必要がありますよ。

          この記事を参考に、丁寧に覚えてくださいね。

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          この記事の執筆者

          ニックネーム:受験のミカタ編集部

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