化学平衡とは何か?ルシャトリエの原理も含めてわかりやすく解説!

化学 2020.7.22
化学平衡とは何か?ルシャトリエの原理も含めてわかりやすく解説!

化学反応には、可逆反応と不可逆反応があります。
可逆反応とは正反応と逆反応が常に起こっており、放っておくと正反応と逆反応の反応速度が同じになる反応です。
このときの状態を「化学平衡の状態」「化学平衡」といいます。

この記事では、化学平衡について詳しくまとめます。
是非最後までご覧ください。

1.化学平衡とは?

化学平衡とは、可逆反応において正反応と逆反応の速度が釣り合っている状態を指します。
ここでは化学平衡を理解するうえで重要な可逆反応と不可逆反応、反応速度について解説していきます。

1-1.可逆反応と不可逆反応

化学反応には可逆反応と不可逆反応があります。
可逆反応とは、化学反応において

のようにA→Bの右向きの反応と、A←Bの左向きの反応、両方向の反応が起こりうる反応のことです。このときの右向きの反応を正反応、左向きの反応を逆反応といいます。

反応で生成された物質がさらなる反応によって消費されたり、反応が起こる範囲外に除外されたりするときは、逆反応が起こらないため、不可逆反応になります。

正反応と逆反応の反応速度が一致すると、見かけ上の変化がなくなります。
このような状態を平衡状態といいます。
特に、液体から気体に蒸発する速度と、気体から液体に凝縮する速度が釣り合った化学平衡を、気液平衡と呼びます。

気液平衡については「蒸気圧とは?求め方を詳しく解説」にまとめてありますので、併せてご覧ください。

1-2.反応速度とは?

化学反応には「反応速度」、という反応が進む速さを表す尺度があります。
物質を構成する分子は常に熱運動しており、エネルギーを持っています。
化学反応に必要なエネルギーを持った分子どうしが衝突することで、分子間の結合の組み換えが起こり、反応が起こります。

そのため、分子の衝突回数が多いほど、分子のもつエネルギーが大きいほど、反応速度は速くなります。
反応速度に影響を及ぼすのは、「濃度」、「温度」、「触媒」、気体が関与する反応なら「気体の圧力」などです。

それぞれの要素は以下のように反応速度に影響します。

  • 濃度が高くなると、その物質の分子の数が多くなり、分子同士の衝突回数が増えるため反応速度が速くなります。
  • 番温度が高くなると、活性化エネルギーよりも大きいエネルギーをもつ分子の数が増加するため、反応速度が速くなります。
  • 触媒を入れると、活性化エネルギーが小さくなるため、反応速度が速くなります。
  • 気体の圧力はその濃度と比例するため、気体の圧力が大きくなればなるほど、反応速度が速くなります。(気体の状態方程式を参照)

(参考)気体の状態方程式PV = nRT より

これらの関係は、後で説明する「ルシャトリエの原理」でも使いますので、しっかり理解しておきましょう。

2.化学平衡と関わりの深い反応速度式

ここでは反応速度式だけでなく、化学平衡の法則圧平衡定数についても解説していきます。

2-1.反応速度式とは?

反応速度と反応物の濃度の関係を表す式を、反応速度式(あるいは単に速度式)といいます。

例えば水素とヨウ素(気)から、ヨウ化水素を生成する反応

において、それぞれの濃度(モル濃度)を

とすると、①の反応速度 v1 は生成前の物質のモル濃度の積に比例するため、

となります。このときの比例定数 k1 を速度定数と呼びます。
①の反応は可逆反応であり、逆反応は以下のように起こります。

②の反応速度 v2 は、比例定数 k2 を用いて

と表すことができます。
このように、反応式における係数(2HI)は、反応速度式においては累乗の値になります。

 

2-2.化学平衡の法則(質量作用の法則)

化学平衡の状態において、可逆反応の間には化学平衡の法則(質量作用の法則)が成り立ちます。
この法則は平衡状態では平衡定数が一定になることを意味します。ここでは平衡定数の求め方を解説します。

十分に時間が経過し、化学平衡となったとき両方向の速度が一致し, v1=v2 となるため、

となり、一定の値をとります。このときの

は温度だけで決まる値であり、この値が平衡定数(濃度平衡定数)と呼ばれます。

この法則を用いると、可逆反応

においては、各物質A、B、C、Dの濃度を[ A ], [ B ], [ C ], [ D ] とすると、この反応が平衡状態にあれば、平衡定数Kを用いて次の式が成立します。

 

2-3.圧平衡定数

さらにA、B、C、Dがすべて気体ならば、それぞれの気体の分圧を用いて圧平衡定数を求めることができます。
気体iについての状態方程式は

となるため、

です。左辺はすべて定数であるため、これを K_P として

と表すことができます。

この値を圧平衡定数といいます。
圧平衡定数も、濃度平衡定数と同じく、温度によって決まる値です。

3.ルシャトリエの原理が化学平衡の最重要ポイント

ここでは化学平衡を理解するうえで重要なルシャトリエの原理を用いた問題を紹介します。

3-1.ルシャトリエの原理とは?

可逆反応が平衡状態にあるとき、温度や濃度、圧力など、平衡を定める条件を変化させた場合、平衡状態が崩れます。
しかし十分に時間が経過すると、平衡が移動し、新しい条件に対応した平衡状態になります。
このとき平衡は、外部条件の変化を和らげる方向に移動します。

この原理をルシャトリエの原理と言います。

例えば

のような発熱反応があったとき、圧力を一定に保ちながら温度をあげると、温度の上昇を和らげる方向に平衡が移動します。
つまり、吸熱方向(左方向)に平衡が移動します。
温度や圧力、濃度を変化させた場合の平衡の移動は以下の通りです。

  • 温度変化

温度を上げる→吸熱方向に平衡が移動
温度を下げる→発熱方向に平衡が移動

  • 圧力変化

圧力を上げる→気体分子の数が減少する方向に平衡が移動
圧力を下げる→気体分子の数が増加する方向に平衡が移動

  • 濃度変化

濃度を上げる→その物質の濃度を下げる方向に平衡が移動
濃度を下げる→その物質の濃度を上げる方向に平衡が移動

また、この分野でよく出題されるのが「触媒を加えた場合」です。

先述した通り、触媒は活性化エネルギーを小さくすることで、反応速度を上げる物質です。
そのため、触媒を加えたことによって変化することは正反応と逆反応の速度です。
よって、触媒を入れても平衡は移動しません。

 

3-2.ルシャトリエの原理を用いた問題

ここでは入試で問われやすいルシャトリエの原理を用いた問題を紹介します。

  • 問題

において、「圧力と温度を一定に保ったまま」窒素 N2 やアルゴンArなど、反応に関係のない気体を加えるとどうなるでしょう。

 

 

  • 解説

全体の圧力と温度を一定に保ったまま気体を加えるには、気体容器のピストンを押すなどして、容器の内容量を大きくしなければなりません。
すると、平衡に関わる気体の分圧の和は減少することになり、圧力を下げた場合と同じ方向に平衡が移動します。

そのため、気体分子の数が増加する方向に平衡が移動し、この問題は「平衡は左に移動する」が答えとなります。

4.化学平衡を用いた練習問題

  • 問題

体積V [ L ] の容器中に NO2 をn [ mol ] 採取し、平衡に到達させるとn [ mol ] のうち αn [ mol ] が N2O4 に変化した。

(1) このときの平衡定数Kはどのように表されるか。
(2) 温度と圧力を一定に保ち、NO2 を加えたとき、平衡はどうなるか述べよ。
(3) 温度と圧力を一定に保ち、アルゴンを加えると、平衡はどうなるか述べよ。
(4) 温度と容器の体積を一定に保ち、アルゴンを加えると、平衡はどうなるか述べよ。

 

 

 

  • 解答・解説

(1) n [ mol ] あった NO2のうち αn [ mol ] が N2O4に変化したので、残った NO2は (1-α)n [mol] です。
一方N2O4は、平衡の式から減少した NO2の半分の物質量が生成されるため、 [mol] が平衡後に存在することになります。
よって平衡定数Kは

となります。

(2) NO2を加えると濃度が上がるため、NO2の濃度が下がる方向へ平衡が移動します。
よって、平衡は右に移動します。

(3)温度と圧力を一定に保ち、反応に関係のない気体を注入すると、NO2やN2O4の分圧が減少します。
すると、気体分子の数が増加する方向に平衡が移動するため、平衡は左に移動します。

(4) 温度と体積を一定にして平衡に無関係な気体を加えても、平衡に関係ある気体の体積も物質量も変化しません。
すなわち、濃度(mol / L)の変化がないため、平衡は移動しません。

5.化学平衡まとめ

この記事では、化学平衡について、反応速度式やルシャトリエの原理を踏まえて解説しました。

練習問題に取り組む際は、ぜひ、解説を読んで「なぜそうなるのか」も覚えてくださいね。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。