偶関数と奇関数の見分け方と定積分

数学 2022.12.26
偶関数と奇関数の見分け方と定積分

関数には、その性質によって様々な分類が考えられます。
その分類の一つとして、偶関数と奇関数があります。

偶関数と奇関数が問題の主役になることは稀ですが、知っていると計算が楽になったりすることもあります。

この記事では、偶関数と奇関数についてまとめます。

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    1.偶関数と奇関数のグラフ

    偶関数と奇関数は以下のように紹介されることが多いと思います。

    偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる

    偶関数 奇関数

    奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる

    偶関数 奇関数

    偶関数の簡単な例としては

    y=x2

    が挙げられます。
    他にも、

    y=x4
    y=x6

    などが偶関数です。他にもありますが、それは後にご紹介します。

    一方、奇関数の代表的な例は

    y=x
    y=x3
    y=x5

    などです。

    さまざまな偶関数・奇関数がある中でこれらの例を挙げたのは、名前の由来から覚えた方が楽だからです。

    先の定義

    偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
    奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる

    をそのまま覚えようとすると、「どちらがy軸に対象だったか、原点に対象だったか」と悩んでしまうと思います。

    しかし、偶関数・奇関数の例として挙げた関数を見ると、法則があることに気づくでしょう。
    偶関数として挙げた関数の、xの指数部分を見ると、すべて偶数になっていますね。
    一方、奇関数として挙げた関数のxの指数部分は、すべて奇数になっています。
    これが由来です。

    つまり、簡単な関数として

    y=xn

    を考えたときに「nが偶数のときに、関数が共通して持つような性質」が「y軸に対して対称」であり、このような性質を持つような関数を「偶関数」と言いましょう、ということです。

    しかし、この「y軸に対して対称」というのは、他の関数も持つような性質ですから、それらも含めて、偶関数と言います。

    また同様に、「nが奇数のときに、関数が共通して持つような性質」が「原点に対して対称」という性質であり、このような性質を持つような関数を「奇関数」と呼びます。

    このような手順で覚えておけば、どちらがどちらだったか迷うことはないでしょう。

    y=x2

    y=x3

    のグラフは思い浮かべられるはずです。

    ですから

    偶関数 → y軸に対して対称
    奇関数 → 原点に対して対称

    というように覚えるのではなく、

    偶関数
    → y=xn のnが偶数の関数
    → y=x2 はy軸に対して対称な関数
    → 偶関数はy軸に対して対称な関数
    奇関数
    → y=xn のnが奇数の関数
    → y=x3 は原点に対して対称な関数
    → 奇関数は原点に対して対称な関数

    とすれば、間違いは起こらないはずです。

     

      2.偶関数と奇関数の定義

      先に紹介した

      偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
      奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる

      は、偶関数と奇関数の見分け方として、間違っているわけではありません。

      しかし、偶関数と奇関数の定義、といえば数式で表されなければ数学らしくありません。
      偶関数と奇関数の定義は以下のようになります。

      偶関数と奇関数の定義

      f(-x)=f(x)
      を満たすような関数 f(x) を偶関数という。
      f(-x)=-f(x)
      を満たすような関数 f(x) を奇関数という。

      難しそうな書き方をしていますが、

      偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
      を数式で表すとf(-x)=f(x)であり、

      奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる
      を数式で表したものがf(-x)=-f(x)です。

      つまり、「y軸に対称」というのは、「すべての x = a にたいして、x = ‐a の値を比べたときに、そのときのyの値である f(a) と f(-a) が等しくなる」ことを表しています。

      具体的に言えば、

      y=x2

      で、x = 2 のときのyの値である4と、x = -2 のときのyの値である4が一致します。

      これが全ての実数に対して言えれば、「y軸に対して対称である」ことが言えるはずです。

      それを表した式が、

      f(-x)=f(x)

      である、と言うわけです。

      同様に「原点に対称」というのは、「すべての x = a にたいして、x = ‐a の値を比べたときに、そのときのyの値である f(a) と f(-a) は正負が入れ替わった値である」ことを表しています。

      具体的に言えば

      y=x3

      で、x = 2 のときのyの値である8と、x = -2 のときのyの値である‐8は正負が入れ替わった値です。

      これが全ての実数に対して言えれば、「原点に対して対称である」ことが言えるはずです。

       

      3.偶関数と奇関数の見分け方

      偶関数と奇関数の見分け方は、これまで申し上げた通りです。

      偶関数は、
      偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる

      f(-x)=f(x)

      となるような関数です。

      奇関数は
      奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる

      f(-x)=-f(x)

      となるような関数です。

      ですから、偶関数(あるいは奇関数)であることを証明するためには、この数式の方を使います。

      問. 次の証明をせよ。
      (1) f(x)=sin⁡x が奇関数であることを証明せよ
      (2) f(x)=|x| が偶関数であることを証明せよ

       

      解答・解説

      (1)
      奇関数であるためには

      f(-x)=-f(x)

      を満たせばよいので、それぞれ確認してみます。

      f(-x)=sin⁡(-x)
      =-sin⁡x

      一方

      -f(x)=-sin⁡x

      となり、

      f(-x)=-f(x)

      ですので、f(x)=sin⁡x は奇関数であることが証明できました。

      (2)
      偶関数であるためには

      f(-x)=f(x)

      を満たせばよいので、それぞれ確認します。

      f(-x)=|-x|
      =|-1| |x|
      =|x|

      となり一致するので、f(x)=|x| が偶関数であることが証明されました。

       

        4.偶関数と奇関数の定積分への応用

        偶関数か奇関数かを見極めることは、定積分で役立つことがあります。
        というのも

        偶関数 奇関数

        という定積分を考えたときに、f(x) が偶関数や奇関数だったとき、どうなるでしょうか。

        たとえば、f(x) が奇関数だったとき(f(x)=x や f(x)=x3 など適当な奇関数を思い浮かべてください)です。

        積分区間が‐a から a までですので、この定積分は、「奇関数 y=f(x) と x = -a, x = a で囲まれた面積」を表すことになります。

        このとき、y軸よりも右側(x軸の正方向)にある部分の面積と、y軸よりも左側(x軸の負方向)にある部分の面積が一致します。

        軸より下にある部分の面積は負の値で表れますので、両者が打ち消しあって、定積分の値は0になります。

        実際に

        偶関数 奇関数

        となります。
        このことから、積分区間が [ -a, a ] のとき、奇関数を定積分すると、定積分の値は必ず0となることがわかります。

        偶関数も同様に考えましょう。

        偶関数はy軸に対して対称ですので、奇関数のように打ち消しあうわけではありません。
        しかし、y軸の右側(x軸の正方向)とy軸の左側(x軸の負方向)にある部分の面積が一致することは同じです。

        ですから積分区間 [ -a, a ] で、偶関数を定積分するときには、[ 0, a ] を定積分して、それを2倍すればよいことがわかります。

        まとめると

        偶関数 奇関数

        です。
        これは単純なようで非常に便利な性質です。
        例えば以下のように利用できます。

        偶関数 奇関数 グラフ

        偶関数 奇関数

        となります。地道に計算するより、ずいぶん早く計算できるのではないでしょうか。

        積分区間が [ -a, a ] のときには、奇関数の計算をそもそもする必要がありません。
        そのうえ、偶関数は [ 0, a ] として2倍するので、計算時間が短縮できます。

         

          5.偶関数と奇関数のまとめ

          最後までご覧くださってありがとうございました。
          この記事では、偶関数と奇関数についてまとめました。

          偶関数と奇関数はしっかり理解していれば、覚えることは一つもありません。

          そして定積分に応用することで、場合によっては計算時間を短縮することができ、非常に便利です。
          しっかりマスターしましょう。

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          この記事の執筆者

          ニックネーム:受験のミカタ編集部

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