偶関数と奇関数の見分け方と定積分
関数には、その性質によって様々な分類が考えられます。
その分類の一つとして、偶関数と奇関数があります。
偶関数と奇関数が問題の主役になることは稀ですが、知っていると計算が楽になったりすることもあります。
この記事では、偶関数と奇関数についてまとめます。
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1.偶関数と奇関数のグラフ
偶関数と奇関数は以下のように紹介されることが多いと思います。
偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる
偶関数の簡単な例としては
y=x2
が挙げられます。
他にも、
y=x4
y=x6
などが偶関数です。他にもありますが、それは後にご紹介します。
一方、奇関数の代表的な例は
y=x
y=x3
y=x5
などです。
さまざまな偶関数・奇関数がある中でこれらの例を挙げたのは、名前の由来から覚えた方が楽だからです。
先の定義
偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる
をそのまま覚えようとすると、「どちらがy軸に対象だったか、原点に対象だったか」と悩んでしまうと思います。
しかし、偶関数・奇関数の例として挙げた関数を見ると、法則があることに気づくでしょう。
偶関数として挙げた関数の、xの指数部分を見ると、すべて偶数になっていますね。
一方、奇関数として挙げた関数のxの指数部分は、すべて奇数になっています。
これが由来です。
つまり、簡単な関数として
y=xn
を考えたときに「nが偶数のときに、関数が共通して持つような性質」が「y軸に対して対称」であり、このような性質を持つような関数を「偶関数」と言いましょう、ということです。
しかし、この「y軸に対して対称」というのは、他の関数も持つような性質ですから、それらも含めて、偶関数と言います。
また同様に、「nが奇数のときに、関数が共通して持つような性質」が「原点に対して対称」という性質であり、このような性質を持つような関数を「奇関数」と呼びます。
このような手順で覚えておけば、どちらがどちらだったか迷うことはないでしょう。
y=x2
や
y=x3
のグラフは思い浮かべられるはずです。
ですから
偶関数 → y軸に対して対称
奇関数 → 原点に対して対称
というように覚えるのではなく、
→ y=xn のnが偶数の関数
→ y=x2 はy軸に対して対称な関数
→ 偶関数はy軸に対して対称な関数
奇関数
→ y=xn のnが奇数の関数
→ y=x3 は原点に対して対称な関数
→ 奇関数は原点に対して対称な関数
とすれば、間違いは起こらないはずです。
2.偶関数と奇関数の定義
先に紹介した
偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる
は、偶関数と奇関数の見分け方として、間違っているわけではありません。
しかし、偶関数と奇関数の定義、といえば数式で表されなければ数学らしくありません。
偶関数と奇関数の定義は以下のようになります。
偶関数と奇関数の定義
を満たすような関数 f(x) を偶関数という。
f(-x)=-f(x)
を満たすような関数 f(x) を奇関数という。
難しそうな書き方をしていますが、
偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
を数式で表すとf(-x)=f(x)であり、
奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる
を数式で表したものがf(-x)=-f(x)です。
つまり、「y軸に対称」というのは、「すべての x = a にたいして、x = ‐a の値を比べたときに、そのときのyの値である f(a) と f(-a) が等しくなる」ことを表しています。
具体的に言えば、
y=x2
で、x = 2 のときのyの値である4と、x = -2 のときのyの値である4が一致します。
これが全ての実数に対して言えれば、「y軸に対して対称である」ことが言えるはずです。
それを表した式が、
f(-x)=f(x)
である、と言うわけです。
同様に「原点に対称」というのは、「すべての x = a にたいして、x = ‐a の値を比べたときに、そのときのyの値である f(a) と f(-a) は正負が入れ替わった値である」ことを表しています。
具体的に言えば
y=x3
で、x = 2 のときのyの値である8と、x = -2 のときのyの値である‐8は正負が入れ替わった値です。
これが全ての実数に対して言えれば、「原点に対して対称である」ことが言えるはずです。
3.偶関数と奇関数の見分け方
偶関数と奇関数の見分け方は、これまで申し上げた通りです。
偶関数は、
偶関数:偶関数のグラフはy軸に対して対称となる
f(-x)=f(x)
となるような関数です。
奇関数は
奇関数:奇関数のグラフは原点に対して対称となる
f(-x)=-f(x)
となるような関数です。
ですから、偶関数(あるいは奇関数)であることを証明するためには、この数式の方を使います。
(1) f(x)=sinx が奇関数であることを証明せよ
(2) f(x)=|x| が偶関数であることを証明せよ
解答・解説
(1)
奇関数であるためには
f(-x)=-f(x)
を満たせばよいので、それぞれ確認してみます。
f(-x)=sin(-x)
=-sinx
一方
-f(x)=-sinx
となり、
f(-x)=-f(x)
ですので、f(x)=sinx は奇関数であることが証明できました。
(2)
偶関数であるためには
f(-x)=f(x)
を満たせばよいので、それぞれ確認します。
f(-x)=|-x|
=|-1| |x|
=|x|
となり一致するので、f(x)=|x| が偶関数であることが証明されました。
4.偶関数と奇関数の定積分への応用
偶関数か奇関数かを見極めることは、定積分で役立つことがあります。
というのも
という定積分を考えたときに、f(x) が偶関数や奇関数だったとき、どうなるでしょうか。
たとえば、f(x) が奇関数だったとき(f(x)=x や f(x)=x3 など適当な奇関数を思い浮かべてください)です。
積分区間が‐a から a までですので、この定積分は、「奇関数 y=f(x) と x = -a, x = a で囲まれた面積」を表すことになります。
このとき、y軸よりも右側(x軸の正方向)にある部分の面積と、y軸よりも左側(x軸の負方向)にある部分の面積が一致します。
軸より下にある部分の面積は負の値で表れますので、両者が打ち消しあって、定積分の値は0になります。
実際に
となります。
このことから、積分区間が [ -a, a ] のとき、奇関数を定積分すると、定積分の値は必ず0となることがわかります。
偶関数も同様に考えましょう。
偶関数はy軸に対して対称ですので、奇関数のように打ち消しあうわけではありません。
しかし、y軸の右側(x軸の正方向)とy軸の左側(x軸の負方向)にある部分の面積が一致することは同じです。
ですから積分区間 [ -a, a ] で、偶関数を定積分するときには、[ 0, a ] を定積分して、それを2倍すればよいことがわかります。
まとめると
です。
これは単純なようで非常に便利な性質です。
例えば以下のように利用できます。
となります。地道に計算するより、ずいぶん早く計算できるのではないでしょうか。
積分区間が [ -a, a ] のときには、奇関数の計算をそもそもする必要がありません。
そのうえ、偶関数は [ 0, a ] として2倍するので、計算時間が短縮できます。
5.偶関数と奇関数のまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、偶関数と奇関数についてまとめました。
偶関数と奇関数はしっかり理解していれば、覚えることは一つもありません。
そして定積分に応用することで、場合によっては計算時間を短縮することができ、非常に便利です。
しっかりマスターしましょう。