平均値の定理はどうやって使う?例題で徹底解説!

数学 2022.4.13
平均値の定理はどうやって使う?例題で徹底解説!

平均値の定理は,定理の内容を理解するのが難しく,また,どのような問題で使い,どのように使うのかも分かりにくいため,苦手とする人が多い定理です。

しかし,定理を座標軸でイメージしながら考えれば,それほど難しい内容ではありません。

また,定理を使う問題とその使い方もパターンがあるため,それを知れば,使いこなせるようになります。

		

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    1.平均値の定理とは何か?

    まずは平均値の定理とはどのような定理なのか説明します。

    平均値の定理

    閉区間 [a,b] で連続であり,開区間 (a,b) で微分可能である関数 f(x) について,

    平均値の定理(*)

    を満たす c が, a と b の間に存在する。

    定理の1行目にある条件は,下の図のように,区間 [a,b] で y=f(x) のグラフが繫がっていなかったり,とがっていたりする場合は,式()を満たす c が存在するとは限らないということです。

    連続でないグラフ

     

    とがっているグラフ

    平均値の定理の意味は分かりにくいのですが,次のような図で考えると理解しやすいです。

    平均値の定理 説明用グラフ

    この図において,式()の左辺

    直線ABの傾き

    は,直線ABの傾きを表しています。

    また,式()の右辺 f'(c) は,点Cにおける接線の傾きを表しています。

    よって,

    平均値の定理(*)

    は,直線ABの傾きと点Cにおける接線の傾きが等しいことを表しています。

    つまり,直線ABと傾きが等しい接線を引ける点Cが,点Aと点Bの間に必ず存在するということです。

     

    ちなみに,平均値の定理は,式()を満たす c が存在することだけを示していて,具体的な c の値の求め方は示していないことに注意が必要です。

     

    なお,平均値の定理の証明は,高校の範囲を超えており,高校の段階では理解する必要はないため,ここでは省きます。

    気になる方は,ネットや本などで調べてみてください。

     

      2.平均値の定理を使う問題と定理の使い方

      次に,平均値の定理を使う問題の代表例として,2つの問題を紹介します。

      どのような問題で平均値の定理が使えるのかと,どのように平均値の定理を使うのかの2点を中心に解説します。

      2-1.不等式の証明

       f(b) – f(a) という形の式が含まれた不等式の証明では,平均値の定理を使うことが多いです。

      まずは,具体的な問題で平均値の定理の使い方を見ていきましょう。

      例題1
      a > 0 のとき,次の不等式を証明せよ。
      例題1
      例題1 解答

      例題1では,証明する不等式の中に,log(a+1) – log a という式があります。

      この式は,f(x) = log x,b= a+1 とすれば,f(b) – f(a) の形になります。

      そこで,平均値の定理を使うことを考えます。

       

      f(x) = log x, b= a+1 として,平均値の定理の式

      平均値の定理 式

      を具体的に計算すると,

      例題1 代入後

      になります。

      この式を,証明する不等式

      例題1

      と比較すると,

      例題1 解答③の式

      を示せばよいことが分かります。

       

      以上を踏まえて,平均値の定理を使った不等式の証明の流れをまとめると,次のようになります。

      なお,(i)(iv)は解答と対応しています。

      平均値の定理を使った不等式の証明の流れ

      (i) 証明する不等式の中に f(b) – f(a) の形ができるように関数 f(x) をおき,関数 f(x) が平均値の定理の条件を満たすことを確認する。

      (ii) 平均値の定理の式

      平均値の定理 式

      を計算する。

      (iii) (ii)で得られた式と証明する不等式を比較して,どのような不等式を示せばよいかを考え

      (iv) 証明する不等式が成り立つことを示す。

       

      2-2.漸化式と極限

      an+1 = f(an) という形の漸化式で表された数列の極限を求める問題でも平均値の定理を使うことができます。

      まずは,具体的な問題で平均値の定理の使い方を見ていきましょう。

       

      例題2
      次のように定められた数列{an}がある。
      例題2
      (1) すべての自然数 n について,an > 3 が成り立つことを示せ。
      (2) 例題2 (2)
      であることを示せ。

      <解答>

      (1) 省略(数学的帰納法を用いて示す)

      例題2 (2)解答

      例題2では,

      a n+1の式

      のように,an+1 = f(an) 型の漸化式が与えられています。

      そこで,平均値の定理を使うことを考えます。

       

      例題2 置き換える式

       として,平均値の定理を使います。

      このとき,ポイントとなるのは,f(3) = 3 であることです。

      これにより,平均値の定理の式の左辺が

      例題2 平均値の定理 左辺

      となり,

      例題2 (**)

      の形を導くことができます。

      (**)を導くことができれば,はさみうちの原理により,

      例題2 求めたい式

      を求めることができます。

      以上を踏まえて,平均値の定理を使って数列の極限を求める流れをまとめると,次のようになります。

      なお,(i)(iv)は解答と対応しています。

       

      平均値の定理を使って数列の極限を求める流れ

      (i) 与えられた漸化式から関数 f(x) をおき,関数 f(x) が平均値の定理の条件を満たすことを確認する。

      (ii) 平均値の定理の式

      例題2 平均値の定理 式

      を具体的に計算する。

      (iii) f'(c) の値の範囲を考え,

      例題2 はさみうちの原理に使う式

      の形を導く。

      (iv) はさみうちの原理を使って,数列の極限を求める。

       

      3.平均値の定理まとめ

      平均値の定理とその使い方を具体的な問題に沿って解説しましたが,いかがでしたか。

       

      この記事で解説した内容は次の通りです。

      ①平均値の定理とその図形的な意味

      平均値の定理

      閉区間 [a,b] で連続であり,開区間 (a,b) で微分可能である関数 f(x) について,

      平均値の定理 式

      を満たす c が, a と b の間に存在する。

      平均値の定理 説明用グラフ

      直線ABと傾きが等しい接線を引ける点Cが,点Aと点Bの間に必ず存在する。

      ②平均値の定理を使う問題

       (1) f(b) – f(a) という形の式が含まれた不等式の証明

       (2)  an+1 = f(an) という形の漸化式で表された数列の極限

       

      平均値の定理を使って解く問題は,そもそも定理を使うことに気付かなかったり,定理の使い方が分からなかったりすることが多いです。
      しかし,繰り返し問題を解くことで,定理を使う問題の形や定理の使い方が分かるようになると思います。

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      この記事の執筆者

      ニックネーム:受験のミカタ編集部

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