媒介変数表示とは?数B・数Ⅲで必要なベクトルや楕円の媒介変数表示
媒介変数表示は高校数学では2回登場します。
1回目は数学Bのベクトルで、2回目は数学Ⅲの平面上の曲線です。
ベクトルの範囲では「ベクトル方程式」、平面上の曲線では主に二次曲線の媒介変数表示や、サイクロイドやカージオイドなどを扱います。
どちらの範囲であっても媒介変数表示の本質は変わりません。
この記事では、数学Bと数学Ⅲのベクトルの媒介変数表示についてそれぞれまとめます。
【目次】
1.数学B:ベクトルの媒介変数表示の基本
数学Bで学習する媒介変数表示の基本について、まとめます。
数学Bでは直線を媒介変数で表すだけですので、実はあまり媒介変数表示の必要性がないのですが、媒介変数表示の概念を理解するために、この記事でも扱います。
高校数学における媒介変数の本質は、「直線や曲線は点の集まりである」ということです。
ベクトル方程式とは、その名の通りベクトルを使った方程式です。
y軸に平行でない直線の方程式は一般的に
y=ax+b
で表されます。この式の変数はxとyであり、xの値が決まればyの値がただ一つに決まり、このxとyの値をすべてグラフ上にプロットしてゆけば、直線になります。
一方、定点 に対して、 でないベクトル に平行な直線を考えます。
この直線上の任意の点を とおくと、と は平行です。
つまり、
となる実数tが存在します。すなわち、
というベクトル方程式を立てられます。この式の意味をよく考えてみましょう。
この式が直線を表すのは、もとの条件から明らかですが、式そのものを見ても、このベクトル方程式が直線であることがわかります。
は点Pの位置ベクトルですので、グラフ上で点Pの位置がどこにあるかを表します。
そしてそれは、 ですから、原点から点Aまで移動し、そこから の方向にいくらか進んだところにある、と読み取れます。
いくら進むかは変数tの値によります。
tの値が決まれば、点Pの位置が決まりますし、tがあらゆる値を取ることで、ベクトル方程式 が直線全体を表すことになります。
先の直線の方程式
y=ax+b
と
を比べてみましょう。
直線の方程式でxの値が決まればyの値が決まるのと同じように、ベクトル方程式ではtの値が決まれば、p ⃗ の位置が決まるという共通点がありますね。
と並べれば、両者が直線を表すことがわかるでしょう。
そしてなにより重要なのは、繰り返しになりますが「tの値が決まれば点Pの位置が決まり、tがあらゆる値を取ることで、ベクトル方程が直線全体を表す」ということです。
点Aの座標を ( x_1,y_1 )、点Pの座標を ( x,y )、d ⃗=( l,m ) とおくと
となります。
ここで、x_1,y_1,l,m が定数であることを確認してください。
tの値がきまれば、点Pの座標であるx, yの値が決まりますね。
ここからtを消去すると、
となり、直線の方程式になりますね。
この
が直線の媒介変数表示の1つであり、tを媒介変数といいます。
なぜ媒介変数表示というのでしょう。
それはtがxとyの値を媒介する変数だからです。
「媒介」とは「両方の間に立って橋渡しをすること」です。
をみるとxとyは直接的に関係のある値ではありませんが、tという変数を間に挟むことで、関係のある値になっています。
つまり、xとyをtが媒介しているのです。
ですからtを媒介変数と言い、媒介変数によって表された直線ですから、直線の媒介変数といいます。
2. 数学Ⅲ:曲線の媒介変数表示
数学Bでは、ベクトル方程式から直線の媒介変数表示について考えました。
ですが、それだけでは媒介変数表示の有用性について、あまり実感がないと思います。
数学Ⅲでは、通常の方程式では表しにくいような曲線が出てきます。
サイクロイドが有名ですが、媒介変数表示の本質は変わりません。
媒介変数表示は一般的に
と表されます。xとyを媒介変数tが橋渡しします。
そして、「tの値が決まれば、曲線上の点の座標を表すxとyの値が一つに決まり、この点をすべて集めることで、曲線全体を表す」のです。
数学Ⅲでは、円や楕円、双曲線、放物線など2次曲線の媒介変数表示が紹介されています。
代表的な媒介変数表示は覚えていた方がいいこともありますが、基本的には媒介変数表示を必死で覚える必要はありません。
重要なのは、「媒介変数の本質を理解しているか」と「与えられた媒介変数表示を扱うことができるか」です。
数学Ⅲの教科書には、円、楕円、双曲線、放物線、サイクロイドの媒介変数表示が載っていると思いますが、これは一例にすぎません。
例えば、双曲線の媒介変数表示は、媒介変数を θ として
です。しかし、
も計算してみれば、双曲線を表すことがわかります。
このように、ある曲線を表すような媒介変数表示は1通りではありません。
そういう意味で、「この媒介変数表示は○○の曲線を表す」と覚えることには意味がありません。
教科書で紹介されている、曲線の媒介変数表示を以下にまとめます。
2-1. 曲線の媒介変数表示まとめ
曲線の媒介変数表示① 円
円の曲線はθ を媒介変数として次のように表すことができます。
曲線の媒介変数表示② 楕円
楕円の曲線はθ を媒介変数として次のように表すことができます。
曲線の媒介変数表示③ 双曲線
曲線の媒介変数表示④ サイクロイド
サイクロイド曲線はθ を媒介変数として次のように表すことができます。
円、楕円、双曲線の媒介変数表示は、媒介変数 θ を消去すれば、それぞれの曲線の方程式になります。
サイクロイドを見ると、媒介変数 θ を消去することは、面倒なことが分かります。
三角関数の逆関数を使えば、媒介変数を使わずにサイクロイドを表すこともできますが、媒介変数表示の方が有名です。
2-2. 楕円の媒介変数表示から標準形を作る
楕円の曲線はθ を媒介変数として次のように表わすことができます。
したがって、媒介変数 θ を消去すると
となり、楕円の標準形になります。円や双曲線も同様に計算できます。
このように媒介変数を消去することで、曲線の実態がわかることもあります。
3. 曲線の媒介変数表示の例題
問題
次の媒介変数表示は、どのような曲線を表すか求めよ。ただしtは媒介変数とする。
(※以下に解答と解説↓)
解答・解説
実際に曲線の媒介変数表示が、どのような曲線を表すかを調べるときには、xやyの変域に注意しましょう。
以下のように計算してゆきます。
①を t2 について整理すると
これを②に代入すると
ですから、これを③に代入すると
この式を整理すると、以下のようになります。
x2+4y2=4
これは楕円の方程式ですので、求める曲線は「楕円 x2+4y2=4」となります。
………とすると、減点されてしまいます。
というのは、x, yの変域を考慮していないからです。
③のように変形した時点で、x ≠ ‐2としなければなりません。
に x = 2 を代入すると式が成立しませんので、この曲線はx = 2を含みません。
楕円 x2+4y2=4 はx = ‐2のときy = 0 ですから、求める曲線は ( ‐2, 0 ) を含みません。
さらに、③の右辺は0以上でなければならないので、-2<x≦2という条件が付きます。これは、上記の楕円の方程式におけるxの取りうる範囲と一致します。
以上より、答えとしては「楕円 x2+4y2=4 (-2<x≦2)」となります。
このように、媒介変数表示の計算問題は、表す曲線の範囲が限定されることがあります。
特に気を付けるのは「分母≠0」「根号の中 > 0」「2乗 > 0」などです。
これらの計算には常に気を配って、xやyの範囲が限定されないか確認してください。
4.媒介変数表示のまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、数学Bと数学Ⅲの媒介変数表示についてそれぞれまとめました。
特に間違えやすいのは、最後にご紹介したようなxやyの定義域や値域が限定されるような問題です。
それさえできれば、媒介変数表示の問題は解けるでしょう。
数学の計算する際の注意力が問われますので、しっかり計算しましょう。
⇒ベクトルについての記事をまとめて見たい方は、「ベクトル関連記事まとめ!〜ベクトル公式からベクトル内積、媒介変数表示〜」の記事を読んでみてください。