ベクトルを用いた三角形・平行四辺形の面積の公式と求め方

高校数学で扱うベクトルは、「幾何ベクトル」といいます。
この記事では、高校数学で扱う「幾何ベクトル」について簡単に解説し、ベクトルを用いた、図形の面積のポイントについてまとめます。
ところで、高校で扱う「ベクトル」と大学で扱う「ベクトル」は少し異なります。
大学で学習する「ベクトル」の概念は、高校で扱われるものより広く、一般には「ベクトル空間の元をベクトルという」というように定義されます。
ベクトル空間の定義や空間の定義についての意義を理解するためには、より数学に慣れ親しむ必要がありますので、この記事では幾何ベクトルのみを扱います。
【PR】勉強を効率的に継続して、志望校に合格したい方必見!
↓無料ダウンロードはこちら↓
【目次】
1. 【面積ベクトルのまえに】ベクトルとは
先にも申し上げたように、「ベクトルとはベクトル空間の元である」というのが一般的な定義です。
そして、高校数学で扱うベクトルは「幾何ベクトル」と呼ばれる、ベクトルの概念の一部です。
幾何ベクトルにおいて最も大切なことは「『大きさ』と『向き』を持つ量である」ということです。
端的に言えば、幾何ベクトルは矢印です。
一般に向きと大きさをもった量は、有向線分と呼ばれる矢印で表すことができます。
例えばA地点からB地点へ直線的に向かうとき、AからBへ矢印を引くことができます。
このとき、Aを始点、Bを終点といいます。
有向線分とベクトルの違いは、「位置を問題にするかどうか」であり、ベクトルは位置を問題にしません。
違う位置にあっても、「向き」と「大きさ」が同じであれば、同じベクトルであるとされます。
ですから、(高校で扱う)ベクトルとは、「『大きさ』と『向き』だけをもつ量(平行移動できる)」といって問題ないでしょう。
有向線分ABで表されるベクトルを
と書きます。ベクトルを座標平面上に置いたとき、x座標成分とy座標成分に分けることができ、それぞれの成分を並べて
のように表します。これをベクトルの成分表示と言います。
2次元の座標なら、ベクトルの成分表示は2つの数で表されますが、3次元なら
のように3つの数で表されます。
ベクトルを用いることで、図形問題をシンプルに扱うことができるようになります。
例えば、2点A、Bにおいて、線分ABの中点が
で表されるのは、2次元でも3次元でも、より次元が多くなっても変わりません。
また、円のベクトル方程式は
で表されますが、3次元では球面のベクトル方程式も同様に表されます。
さらに、この後の記事で証明する、△OABの面積が
で表されるのも、平面図形でも空間図形でも同じです。
つまり、ベクトルを用いることによって、図形問題を扱いやすく、シンプルに表現できるようになる、ということです。
2. ベクトルの三角形の面積公式
三角形の面積は、ベクトルを用いて表現できます。
三角形の面積として、一番最初に習うのが
でしょう。図形の性質の単元で、ヘロンの公式についても学習済みです。
三角形のそれぞれの辺をa, b, c とすると、
がヘロンの公式です。
そして、数学Iの三角比、数学Ⅱの三角関数で、△OABについて
で覚えたと思います。
ベクトルではこれに加えて、あと2つの三角形の面積の求め方を学習します。
三角形の面積については、これら合計5つについて知っていれば十分です。
ベクトルを用いて、三角形の面積を表すには、
を利用します。
とおくと、
ですから、
ベクトルの内積が、
で表されます。
よってこのような式になります。ここから、
となります。
ここであることに気が付いた人は、数学の力がある方です。
気が付かなかった方は、これから注意しましょう。
というのも
A=B
→A2 =B2
は成立しても、
A2 =B2
→A=B
は、一般に成立しません。
C2=D
ですから、
だとしても
とは限らないということです。これが成立するためには、
でなければなりません。合わせて、
であることも確認しておきましょう。
つまり、
を証明しなければなりません。
ですから、
となりますから、今回は問題ありません。
よって
となります。
ここから、もう一つの公式を導出しましょう。
とすると、
から、
となります。絶対値を付けるのを忘れないようにしてください。
この公式は、2次元の座標平面上のベクトルにのみ成立するものですが、先にも申し上げたように、
は、より高次元のベクトルでも成立します。
3. ベクトルの平行四辺形の面積公式
三角形OABの面積をベクトルを用いて表せたら、平行四辺形OACBの面積も簡単に導出できます。
平行四辺形の対角線を引くと、合同な三角形が2つ重なっている形となっています。
ですから、先に求めた、
を2倍すれば、平行四辺形の面積となります。
つまり、
が平行四辺形の面積です。
4. ベクトルの円の面積公式
円の面積は、円の半径をrとすると、
で表されます。
円の面積を求めるときには大抵、半径を求めることになりますから、無理をしてベクトル表示にすることはありません。
円の中心と、円上の一点の座標がわかっているときには、半径rが求まりますから簡単です。
円上の3点がわかっているときには、円の方程式を求めることで円の中心を求め、そこから円の面積を求めるとよいでしょう。
どうしてもベクトルを使いたいという場合は、ベクトルを使って円の中心を求めます。
3点を通る円の中心は、その3点を頂点とする三角形の外心(外接円の中心)ですから、3点の座標から外心の位置ベクトルを求めます。
4-1. 演習問題
問. 次の三角形や平行四辺形の面積を求めよ。ただし、
とする。
(1) 三角形OAB
(2) 三角形ABC
(3) 平行四辺形OADB
※以下に解答と解説
4-2. 解答・解説
(1) 公式通りに計算しましょう。
とすると、
ですから、
が答えです。
ただし、今回のようにそれぞれの点の座標がわかっているときには、
を利用した方が簡単に答えを導出できます。
つまり、
です。どちらでも答えは同じですが、内積の計算やベクトルの大きさの計算が必要ない分、計算ミスの危険がなくなります。
(2) 三角形ABCの面積を計算するときには、
を利用します。これらを用いて、
となります。
(3) (1)を理解していれば、簡単なはずです。
平行四辺形の面積は、三角形の面積の倍ですから、
あるいは
となります。
ベクトルと面積のまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、ベクトルと面積についてまとめました。
三角形の面積は、
あるいは
です。また、平行四辺形の面積はこれらを2倍して、
あるいは
となります。ちなみに
ですから、「たすきに掛ける」ことさえ覚えていれば、どちらから引いても構いません。
ベクトルは扱えれば非常に便利な道具です。
また、理系の学部に進もうという学生にとっては、多くの研究においても使う、非常に重要な概念ですから、しっかり勉強しておきましょう。
詳しくは大学に進学して「ベクトル解析」を受講してください。
ご参考になれば幸いです。
⇒ベクトルについての記事をまとめて見たい方は、「ベクトル関連記事まとめ!〜ベクトル公式からベクトル内積、媒介変数表示〜」の記事を読んでみてください。