数学Bにおけるベクトルの基本とは?成分表示・計算・練習問題も
ベクトルは数学Bで学習する単元で、大学受験をするうえでも非常に大切です。
これまで扱っていた数は足し算、引き算、掛け算、割り算の四則演算が可能でしたが、ベクトルではそうもいきません。
それはなぜでしょうか。
ベクトルを扱うときに、ベクトルの理解が不十分だと、できない計算をしてしまったり、計算方法を間違えたりしてしまいます。
しかし理系の学部に進学するのであれば、ベクトルをしっかり理解することで、行列への理解がしやすくなります(詳しくは大学の線形代数学で学習します)。
この記事では、ベクトルの基礎についてまとめます。
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1.ベクトルの定義とは?ベクトルの基礎知識を解説
「ベクトルとはベクトル空間の元である」というのが、数学上の正しい定義です。
しかし、ベクトル空間の概念をしっかり理解するのは、大学で理系の学部に進学してからであり、線形代数学やベクトル解析の講義を受けてからで十分です。
数学でいう「空間」の定義は、数学に慣れ親しんだ方なら簡単に理解できるのですが、まだ数学に足を踏み入れたばかりの高校生には、難しく感じるものです。
そこで、ベクトルのいろいろな要素を削り、図形的にイメージしやすくしたものが、高校数学のベクトルです。
高校数学においてベクトルとは「向きと大きさをもつ量である」と説明され、通常、矢印で表されます。
大切なのは、ベクトルを規定するものは「向き」と「大きさ」だけであって、その「位置」は関係ないということです。
例えば、A地点からB地点まで、真っ直ぐ(直線で)向かったとき、その道のりを矢印を使って表すことができます。
こうして描かれた矢印は、有効線分といい、Aを始点、Bを終点といいます(有向線分を問題で扱うことはほとんどありません)。
この有向線分から、「位置」の情報を取り除いたものが、ベクトルです。これは、ベクトルが平行移動できることを表しています。
例えば、A地点とは別の位置に、C地点があったとします。そして、AからBに行くときと、全く同じ向きと大きさの地点にD地点があるとします。
このとき、有向線分ABと有向線分CDの向きと大きさは同じです。
しかし、有向線分ABと有向線分CDは「位置」が異なりますから、区別して考えます。
一方、ベクトルに「位置」は関係ありません。
Aを始点Bを終点とするベクトルをベクトルABと言いますが、ベクトルABとベクトルCDは、「向き」と「大きさ」が同じですから、同じベクトルとして考えます。
ベクトルABは、
と書き、
です。簡単な名前をつける意味で、
とあらわすこともあります。始点と終点の位置を表すときは大文字のアルファベット、単にベクトルに名前を付けるときは小文字のアルファベットを使うのが慣例です。
2.大きさも計算できるベクトルの成分表示とは?
ベクトルがどういったものかは前の章で説明しました。
基本的には、
・ベクトルは向きと大きさで表され、位置は考慮しない
・図形上では矢印を使って表記する
ということが理解できていれば、ひとまず大丈夫でしょう。
ベクトルの矢印を直交座標上に置いたとき、x軸方向にいくらだけ進んだか、y軸方向にいくらだけ進んだか、という基準でもベクトルを表すことができるでしょう。
この表記をベクトルの成分表記といいます。
ベクトルの位置は考慮しないということは、平行移動できるということですから、例えば平面座標に置いたベクトルの始点を、原点Oと合わせます。
このとき、
と表します。一般に、x軸方向にa1, y軸方向にa2だけ進むようなベクトル
と表します。
ベクトルには「大きさ」という概念があります。
直交座標系にベクトルを置くことで、成分表示ができるようになり、「大きさ」の計算もできるようになります。
2次元のベクトルでは、平面座標にベクトルを配置した時に、始点から終点までの長さを「大きさ」といいます。
長さなのですから、三平方の定理を使えば、ベクトルの大きさを求められるでしょう。
つまり、
となります。
そして、大きさが1のベクトルを「単位ベクトル」といいます。
「単位ベクトル」という単語は、問題文で突然登場することもあり、大変重要な情報ですから、見逃さないようにしましょう。
3.ベクトルで注意すべき演算の方法とは?足し算、引き算を解説
ベクトルの問題でまず、はじめに注意すべきなのが、演算です。
今まで小学校から扱ってきた数は、四則演算ができ、足し算、引き算、掛け算、そして0以外の数で割り算をすることができました。
しかしベクトルの演算では、これまで通り計算する、というわけにもいきません。
まずは、ベクトルの加算(足し算)について考えます。
なんども言うように、ベクトルは平行移動できますから、
このとき、
となります。この意味を考えると、「地点Aから地点Bに行って、そのあと地点Bから地点Cに行く」ということになりますから、結局、最終的には「地点Aから地点Cに行く」という意味になります。
つまり、
となります。
成分表示で考えれば、
とすると、x成分はx成分同士、y成分はy成分同士を考えて、
となります。成分表示にしたとき、加算や減算では、x成分はx成分同士、y成分はy成分同士で計算し、他の次元には影響を及ぼしません。
次に引き算を考えましょう。
引き算を考えるには、「逆ベクトル」について考えます。
に対して、
の成分で表されるベクトルを「逆ベクトル」といい、
で表します。
ベクトルの引き算は、逆ベクトルを加算すると考えます。
つまり、
です。成分表示で表すと、
です。
図で表すと
となります。
また、ベクトルは実数倍することができます。
つまり、 2
これは単に、x軸方向やy軸方向へ行く距離が2倍や3倍になるだけですから、成分で考えれば、実数をkとすると
です。
これまでのことから、実数k, l と
が成り立ちます。難しく見えるかもしれませんが、つまりは、「足し算と引き算に関しては、これまでの数や変数の演算の通りに計算できる。ただし、成分表示についてはそれぞれの成分で計算する」ということです。
ベクトルの足し算については、次元の異なるものについては定義されていません。
ですから、2次元のベクトルと3次元のベクトルの足し算を行うことは出来ませんし、
のように、実数とベクトルの足し算をすることもできません。
ベクトルの引き算は、逆ベクトルを足すと考えるので、引き算についても同様です。
4.「ベクトルの基本とは」の理解度確認!ベクトルの演習問題
問. 次の計算をせよ。
(以下に解答・解説)
解答・解説
解答は以下の通りです。
足し算と引き算に関して言えば、これまでの変数の計算と同様に計算できます。
例えば③なら
というようになりますね。
5.「ベクトルの基本とは」の終わりに
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、数学Bで学習するベクトルの基本の基本をご紹介しました。
加えてベクトルの足し算と引き算についてもご紹介しました。
この記事では「ベクトルは大きさと向きをもった量である」と紹介しましたが、「ベクトルは多次元量である」という理解の方が役に立つこともあります。
また、ベクトルの内積は高校数学のベクトルで必須ですし、外積を知っていた方がセンター試験で有利です。
ご参考になれば幸いです。
⇒ベクトルについての記事をまとめて見たい方は、「ベクトル関連記事まとめ!〜ベクトル公式からベクトル内積、媒介変数表示〜」の記事を読んでみてください。