余事象の確率とは?ゼロから余事象を解説!キーワードは「少なくとも」

数学 2019.2.12
余事象の確率とは?ゼロから余事象を解説!キーワードは「少なくとも」

「余事象」は、どのような時に使われる考え方でしょうか?
みなさんは、数学Aの授業で、『「少なくとも」という言葉が問題文に出てきたら余事象を考える』と習ったのではないでしょうか。

確率問題を考えるときには、事象の考え方を意識しておくことが大切です。
その内の一つが余事象です。

この記事では、そんな余事象をはじめ、試行、事象の考え方についてまとめます。

 

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    1.【余事象】考え方の基本①試行と事象

    余事象とは、以下のように説明されます。

    全事象Uの中で、事象Aに対して「Aが起こらない」ような事象をAの余事象といい、事象Aの余事象の表し方であらわす。

    余事象のベン図

    また、余事象事象Aの余事象の表し方の確率 P(事象Aの余事象の表し方)について覚えておかなければならないことは、以下の通りです。

    余事象事象Aの余事象の表し方の確率P(事象Aの余事象の表し方)は、事象Aの確率 P(A)を1から引いたものである。

    よって、以下のことが成り立つ。

    1-P(A)=P(事象Aの余事象の表し方)
    1-P(事象Aの余事象の表し方)=P(A)
    P(A)+P(事象Aの余事象の表し方)=1

     

    では、この「事象」とはどのようなものでしょうか。
    また、「事象」と同じく確率の分野でよく出てくる「試行」とは、なんでしょうか。

    ここからは、これらの基本的な考え方を説明していきます。

    なお、テストで「試行とは何か」とか「事象とは何か」、「同様に確からしいとはどのようなことか、述べよ」などの問題が出ることは、まずありませんので、これからの内容を必死で覚える必要はありません。

    ですから、しっかり理解していれば十分です。

     

    1-1.試行とは?

    試行とは、「同じ条件のもとで繰り返すことができる実験や観測」のことです。

     

    例えば、

    ・1個のさいころを投げる

    ・よく切ったトランプから1枚引く

    などです。

    高校の問題で出てくる観測や実験は、ほとんどが試行と考えて構いません。

     

    一方で、現実世界では、試行でない実験や観測は数多く存在します。

    例えば、経済や政策と言った、同じ条件を二度とそろえることのできない実験は、試行ではありません。

    他にも、交通事故なども試行ではありませんので、これらの確率を出すときには、統計を用いることになります。

    また、このような試行でない実験の多くは、完全な確率を出すことができないので、モデルなどの考え方のもとで行われます。

     

    もしも、理系の研究者になって実験や観察を行うのであれば、その実験に再現性があるか(つまり、試行であるかどうか)が非常に重要です。

     

    2つの試行 T1 と T2 について、試行の結果が互いに他方に影響されないとき、試行 T1 と T2 は独立であるといいます。

     

    余事象の解説①試行と独立な試行

    例えば、1つのさいころを2回ふったとき、1回目の結果が2回目の結果に影響を与えることはありません。

    1回目に1が出たからと言って、次に1が出にくくなるわけではありませんね。

    このようなときに、2つの試行は独立であるといいます。

    余事象の解説②独立でない試行

    逆に、赤玉2個と白玉5個が入っている袋から、玉を1個ずつ連続して取り出すような試行を考えると、どうでしょう。

    1回目に赤玉を取り出した場合と白玉を取り出した場合で、残りの玉が赤玉が多いか白玉が多いかが変わってしまうため、2回目に赤玉を取り出すような確率は変わるはずです。

    このような場合には、2つの試行は独立ではありません。

    試行の独立と、事象の独立はしっかり区別しておきましょう。

     

    1-2.事象とは?

    「事象」とは、試行の結果起こる事柄のことです。

    1個のさいころを投げるような試行では、例えば「2の目が出る」「奇数の目が出る」「3以上の目が出る」といった事象が起こります。

     

    ここで気を付けてほしいのが、例えば、「奇数の目が出る」というような事象と、「2の目が出る」というような事象の違いです。

    「奇数の目が出る」というのが「1の目が出る」「3の目が出る」「5の目が出る」というように分けられるのに対して、「2の目が出る」というのはこれ以上分けられません。

    このように、それ以上分けることができない事象を「根源事象」といいます。

    確率の問題を考える際には、この「根源事象」が重要です。

     

      2.【余事象】考え方の基本②「同様に確からしい」とは?

      1つの試行の結果として起こりうる、全ての根源事象を全部合わせて、全事象といいます。

      そして、全事象のうち、どの根源事象が起こる確率も同じ程度であるとき、「根源事象は同様に確からしい」といいます。

       

      受験で考える問題では、同様に確からしいと考えられる問題ばかりが出題されますが、同様に確からしいかどうかを考えることには意味があります。

      ここでは分かりやすく解説するために、少し極端な例を挙げましょう。

       

      99本のはずれと1本のあたりがある、合計100本のくじから1本を引きます。

      当たりくじを引く確率はいくらでしょうか。

      もちろん百分の一です。

       

      これを、以下のように考える方はいないはずです。

      「くじを引いたときには「あたる」ときと「はずれ」るときの2通りがある。だから当たる確率は二分の一である」

      では、この考え方がなぜ間違っているかを、正確に答えられるでしょうか。

       

      このとき、私たちが無意識に考えているのが「同様に確からしい」かどうかです。

      この場合、「あたりが出る事象」と「はずれがでる事象」は同様に確かではありません。

      見た目には区別できませんが、はずれくじは100本中99本あるからです。

       

      「当たる確率は二分の一である」と考えてしまった人は、根源事象が「あたりを引く」「はずれを引く」の2種類だと思ってしまっているのです。

      しかし、実際の根源事象は「はずれ1を引く」「はずれ2を引く」…「はずれ99を引く」の99通りあるわけです。

      「あたりを引く」「はずれ1を引く」「はずれ35を引く」…など、くじ1本1本を区別し、それぞれを引くことを1つの事象として扱わなければなりません。

      これらの、くじ1本1本の事象こそが、同様に確からしい事象だからです。

       

      ただし、もしも、当たりくじが1本、外れくじも1本ならば、「あたりを引く」「はずれを引く」という2つの事象は、同様に確からしいと言えます。

      インチキがなければ、50%ずつの確率でどちらかが出てくるはずですよね。

       

      このように、根源事象を考えて確率を求める場合は、「すべての根源事象は同様に確からしい」かどうかをよく確認してください。

      場合の数・確率のテストの際に「玉を区別するかどうか」「コインを区別するかどうか」で悩んだことがある受験生は多いと思います。

      場合の数の問題では「見た目に区別できないものは、区別しない」ことが多い一方、確率の問題では「見た目に区別できなくても、それぞれ区別して考える」ことが多いです。

       

      その理由が、確率では「全ての根源事象が同様に確からしい」(=この場合は、「あたり」「はずれ」どちらにせよ、くじを1本引くということ)ことが重要だからです。

      問題が複雑になると、同様に確からしくないような根源事象で計算してしまうような受験生も多いので、常に頭に置いておきましょう。

       

      3.余事象の確率

      ここで、改めて余事象について考えましょう。

      余事象とは、以下のような事象でした。

      全事象Uの中で、事象Aに対して「Aが起こらない」ような事象をAの余事象といい、事象Aの余事象の表し方であらわす。

       

      余事象について考えるような問題は「少なくとも」というキーワードが出てくることが多いです。

      ですので、「少なくとも」が出てきたら「余事象を考える」と機械的に覚えてしまっても構いません。

       

      他には、排反の事象などでも、余事象を考えることがあります。

      排反事象についてまとめます。

      2つの事象があり、その両方が同時に起こることはあり得ないとき、この2つの事象は互いに排反であるといいます。

      また、互いに排反であるような事象を排反事象といいます。

      例えば、1つのさいころを1回ふったとき、「2の目が出る」という事象と、「5の目が出る」という事象は同時に起こらないので、この2つの事象は排反です。

      余事象の解説③排反事象

      そして、余事象を考えるのは、全事象がちょうど排反な2つの事象に分けられるときです。

      たとえば、「偶数の目が出る」と「奇数の目が出る」というときや、「3以上の目が出る」と「3未満の目が出る」場合などです。

      このようなときは、「偶数の目が出る確率」と「奇数の目が出る確率」を考えるよりも、「偶数の目が出る確率」と「1-(偶数の目が出る確率)」を考えたほうが早いからです。

       

        4.余事象の確率を使う練習問題

        最後に、余事象の確率を使った練習問題を解いて見ましょう。

         

        問題

        赤玉5個と白玉6個の合計11個の玉が入っている袋がある。
        4個の玉を同時に取り出すとき、少なくとも2個は白玉であるような確率を求めよ。

        (※以下に解答と解説↓)

         

         

         

         

         

         

         

        解答・解説

        確率の基本は

        余事象の考え方④確率の基本

        です。

        先にも申し上げたように、見た目の区別が付かないようなものでも、すべて区別(前事象の数の中に含める)しなければなりません。

         

        全事象は11個の玉から4個の玉を取り出すので、

        余事象の例題①全事象

        通りです。

         

        ここで、「少なくとも2個が白玉である確率」というのは、「白玉2個、赤玉2個」「白玉3個、赤玉1個」「白玉4個、赤玉0個」となる確率を全て足した確率です。

        一方、「少なくとも2個が白玉である」の余事象である「白玉が1個以下」は、「白玉1個、赤玉3個」と「白玉0個、赤玉4個」のことです。

        余事象を考えた方が、考えなければならない事象の数が少ないので、余事象を考えましょう。

         

        「少なくとも」という言葉の本質は「余事象を考えた方が考える事象の数が減る」ということです。

        考える事象の数が変わらないなら、余事象を考えるメリットはありませんので、「いかに楽に解くか」を意識しましょう。

         

        「白玉1個、赤玉3個」となる取り出し方は

        余事象の例題②赤玉

        「白玉0個、赤玉4個」となる取り出し方は、

        余事象の例題③

        ですから、「白玉が1個以下」であるような確率は

         

        余事象の確率の例題④まず余事象を出す

         

        です。

        さきほど見たように、1-P(事象Aの余事象の表し方)=P(A)であるため、

        求める確率は

        余事象の確率の例題⑤最後に1から余事象を引く

        となります。

         

          余事象の確率のまとめ

          最後までご覧くださってありがとうございました。

          この記事では試行と事象、そして余事象についてまとめました。

          余事象を考えるのは、簡単に問題を解くためですから、簡単にならなさそうなら余事象を考える必要はありません。
          逆に「少なくとも」というキーワードがなくても、問題が簡単になるなら余事象を考えましょう。

          ぜひ、余事象をマスターして、時短に役立ててください。

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          この記事の執筆者

          ニックネーム:受験のミカタ編集部

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