ホイヘンスの原理とは?作図しながら回折・反射・屈折の理解を深めよう!

物理 2022.10.14
		

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重ね合わせの原理

波とは振動が隣接する場所へ伝わる現象で、波が伝わる物質や空間を媒質と呼びます。波は他の波と無関係に進むので、複数の波が同じ点に達したとき、その点の振動は一つひとつの波の足し合わせになります。これを「波の重ね合わせの原理」と言います。ホイヘンスの原理はこの経験的事実を基にしています。

ホイヘンスの原理とは

波の振動の状態(位相)が同じ点をつないだ面を「波面」と言い、波面が球面の波を「球面波」、平面の波を「平面波」と呼びます。水面の波では、球面波は円形、平面波は直線です。また、波が生じる場所を「波源」と言い、特に点の場合は「点源」と呼びます。

どこをとっても性質が同じである「一様な媒質」を考えましょう。媒質の一点が振動すると、取り囲む媒質に同じ速さで振動が伝わり、球面波となります。同じことはすべての点で成り立ちますから、波が伝わる現象を媒質の各点から広がる球面波で説明できそうです。ホイヘンスはこの球面波を「素元波」と名付け、波面の進み方を次のように説明しました。

ある瞬間の波面を考えると、その各点が波源(点源)となって、速さも振動数も同じ素元波が進行方向に広がります。広がった素元波は波の重ね合わせの原理によって新たな波面を作ります。この波面は素元波の共通接線になっていて「包絡面」と言います。球面波からできる包絡面は球面、平面波からできる包絡面は平面です。続いて包絡面上の各点が波源となって新たな素元波が生じ、次の波面を作ります。このように考えると、波面が進んでいく様子を無理なく説明することができます。また波面は素元波の共通接線ですから、波面と波の進行方向は常に垂直です。

波の進行方向と波面について、次のように考えることもできます。
無限に続く波面を考えると、ある素元波の周囲には、波面に沿って無数の素元波が対称に存在します。その対称軸は波面に垂直ですから、波面はこの向きに進み、新たな波面は元の波面に平行になります。

波面が途切れる場合には、波面の端付近で対称性が崩れて波の進行方向が曲がり、回折現象が起こります。
なお、素元波は現象を理解するために導入された仮想の波ですので、現実に観測することはできません。

ホイヘンスの原理を用いて回折・反射・屈折の理解を深めよう!

それでは、図を用いて回折現象と反射・屈折の法則を説明してみましょう。

ホイヘンスの原理と回折

波の進路に障害物があると、波はその背後に回り込みます。波に特有なこの現象を「回折」と呼びます。回折はホイヘンスの原理で説明できます。

障害物では波面の進行が止められるので、そこで生じる素元波との重ね合わせによって消えるはずの波が残り、障害物の背後に回り込む波面が現れます。回り込む度合いは、障害物の大きさと波の波長との関係で変わります。

ここでは、隙間を通り抜ける波を考えてみましょう。
すき間の幅が波長程度以下の場合は大きく背後に回り込み、波長よりも幅が広い場合にはあまり回り込まなくなります。このことは、すき間の一端と中央で生じた素元波の重ね合わせを考えると説明できます。

障害物の陰にある点Pを考えます。すき間の幅をdとすると、すき間の一端Aと中央Bから同時に点Pに届く素元波の経路差は

 

となります。ここで、θは元の波の進行方向とBPがなす角です。波の波長をλとすると、d<λのときは波が打ち消し合う経路差になりませんが、d>λのときは打ち消し合いが起こります。これが、波長に比べてすき間が狭い場合には回折が強く、広い場合には弱い理由です。

このような回折現象の特徴を利用して光に波の性質があることを示した実験として「ヤングの実験」があります。ヤングの実験については「ヤングの実験とは?わかりやすく解説!光の干渉の性質を証明する方法」を御覧ください。

ホイヘンスの原理と反射

ある媒質(媒質1)を進む波が別の媒質(媒質2)との境界面に達すると、波の一部は媒質2に進み、残りは境界面から離れる向きに媒質1を進みます。前者を屈折現象、後者を反射現象と呼びます。境界面に向かって進む波を入射波、屈折した波を屈折波、反射した波を反射波と言い、境界面の法線に対してそれぞれの進行方向のなす角を、入射角、屈折角、反射角と言います。また、波の進行方向を示す線を射線と言います

波が反射するとき、入射角と反射角が等しくなります。これを「反射の法則」と言います。ホイヘンスの原理を使うと、この法則を図を用いて説明できます。

境界面に入射する波の波面をABとし、Aを境界面上の点とします。波の速さをv、この瞬間からBが境界面上の点Dに達するまでの時間をtとすると、点Aを中心とする反射波の素元波は半径vtの半円形になります。点Dからこの半円に接線を引いて接点をCとすると、DCが反射波の波面になります。なぜなら、AD上の各点から出た素元波がすべてDCに接するからです。

ΔABDとΔDCAを見ると、それぞれ∠Bと∠Cが直角の直角三角形です。BD=CA=vt,AD=DA(斜辺共通)ですから、ΔABDとΔDCAは合同です。したがって、図より、入射角と反射角が等しくなります。

平面鏡を使うと、直接見えない陰の部分の様子を正確に見ることができます。光が来る方向にものがあるように見えることと反射の法則との組み合わせで、このようなことができるのです。

ホイヘンスの原理と屈折

波が屈折するとき、入射角と屈折角の正弦の比が一定になります。これを「屈折の法則」と言います。屈折の法則は次の式で表現できます。

入射角をⅈ、屈折角をr、媒質1,2での波の速さをそれぞれv1,v2、波長をλ1,λ2とすると、

 

n12を媒質1に対する媒質2の屈折率と言います。波の振動数は、媒質1でも媒質2でも同じです。ホイヘンスの原理を使うと、この法則を図を用いて説明できます。

境界面に入射する波の波面をABとし、Aを境界面上の点とします。この瞬間からBが境界面上の点Dに達するまでの時間をtとすると、点Aを中心とする屈折波の素元波は半径V2tの半円形になります。点Dからこの半円に接線を引いて接点をCとすると、DCが屈折波の波面になります。なぜなら、AD上の各点から出た素元波がすべてDCに接するからです。

ΔABDとΔDCAを見ると、それぞれ∠Bと∠Cが直角の直角三角形です。∠BAD=ⅈ、∠CDA=r,BD=v_1 t,AC=v_2 t,AD共通(斜辺共通)ですから、より、となります。入射波の振動数をfとすると、素元波の振動数は変わりませんから、媒質1と媒質2を進む波の振動数も変化しないので、v1=fλ1,v2=fλ2となり、が得られます。

身近な屈折現象は光に見られます。「光の屈折の全てが誰でも分かる!タメになる内容満載の記事!」をご覧ください。

作図問題で理解度確認!

ホイヘンスの原理を使って問題を解いてみましょう。

反射の法則との関連問題

ホイヘンスの原理を使って、入射角が30度の波の反射波の射線を描いてください。

解答

図のようになります。

屈折の法則との関連問題

媒質1、媒質2での波の速さをV1 , V2とし

とします。

(1)ホイヘンスの原理を使って入射角が30°の波の屈折波の射線を描いてください。
(2)屈折角が90°になるときの入射角は何度でしょうか。屈折の法則から求めてください。

解答

(1)図のようになります。

(2)でr=90°とすると、sin⁡90°=1ですから、となります。これを満たす90°以内の角度はⅈ=45°です。この角度を越えた入射波は屈折することなくすべて反射されます。

この現象を「全反射」、全反射が起こり始める角度を「臨界角」と呼びます。全反射は光ファイバーなどに応用されています。

まとめ

素元波という仮想の波を導入したホイヘンスの原理は、自然現象を説明する「モデル」として大成功を収めた例です。「モデル」とは見通しを良くするための思考の道具のことで、縮小・拡大模型とは違います。
このような例を探して、物理ではどのように自然現象のポイントを見出して現象を理解しようとしているのかを見ていくと、直感的な理解力を伸ばすことができるでしょう。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。