DNAの構造を徹底解説!~塩基の種類から発見の歴史まで~

生物 2022.12.26

「DNA」という言葉は、日常でも耳にすることがありますよね。

しかし、「遺伝子」「染色体」など、似たような使い方をされる言葉との違いが分からないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、DNAとは何かから、DNA発見の歴史まで、詳しく解説していきます。

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1.DNAとは?「遺伝子」や「染色体」「ゲノム」との違いと構造

DNAとは何でしょうか。

DNAの正式名称はデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)といい、生物の遺伝子を伝達する物質です。

1-1.DNAと遺伝子・染色体・ゲノムの違い

DNAは遺伝子の伝達物質だと言われます。

では遺伝子とは何かというと、生物の体のつくりなどの設計図情報だと考えてください。

DNAという物質が、遺伝子という情報を載せているということです。

 

また、同じくDNAとよく混同されるものに「染色体」があります。

染色体というのは、DNAが細胞分裂などに備えて形を整えられたもののことを指し、DNAとタンパク質で作られています。

染色体は、普段、細胞内の核の中にありますが、酢酸カーミンや酢酸オルセインなどによって色が付きやすく、これらによって染色すると簡単に観察できます。

このように、染色しやすいため「染色体」と呼びます。

タマネギの芽などを染色した実験を覚えている方もいるかもしれません。

 

「DNA」「遺伝子」「染色体」の関係をまとめると、以下のようになります。

 

また、近年よく聞く「ゲノム」との関係が分からないという人も多いと思います。

「ゲノム」とは、その生物を作るのに必要な遺伝子のセットのことで、生物の種類ごとに何個セットなのかが変わります。

例えば、人間について考えてみると、脳を作る遺伝子、手足を作る遺伝子、感覚器官を作る遺伝子…と、様々な遺伝子がセットになっていないと、人間をきちんと形作ることができません。

ただし、遺伝子のセットとは言っても、遺伝子はDNAに書かれていて、そのDNAは染色体としてまとまっているので、問題を解くときなどは「染色体の1セット」と覚えておいても大丈夫です。

 

「DNA」「遺伝子」「染色体」と「ゲノム」の関係をまとめると、以下のようになります。

1-2.DNAの構造

DNAは2本の鎖状の形をしていて、2重らせん構造という構造をとっています。

 

DNAを拡大して見ていくと、「ヌクレオチド」という部品でできていることがわかります。

このヌクレオチドがDNAの基本的な構成単位です。

 

上の図のように、ヌクレオチドは「塩基+糖(デオキシリボース)+リン酸」で1つながりになっています。

 

このようなヌクレオチドが多数(縦に)つながっているものを、ヌクレオチド鎖といいます。

 

このヌクレオチド鎖が2本集まり、向かい合わさるように並び、塩基同士が結合してらせん状になったものが、DNAというわけです。

次の章から、このヌクレオチドについて詳しく見ていきましょう。

 

2.DNAをつくる「ヌクレオチド」の構造と塩基の種類

ヌクレオチドの構成要素は、「塩基+糖(デオキシリボース)+リン酸」でした。

 

ヌクレオチドのうち、塩基と糖(デオキシリボース)の部分のことを、ヌクレオシドといいます。

ヌクレオチドと間違えやすいので注意しましょう。

 

つまり、ヌクレオシド+リン酸=ヌクレオチドということです。

 

このうち、「塩基(えんき)」には4種類あり、「どの塩基を持ったヌクレオチドが、どんな順番で並んでいるか」によって、DNAが遺伝情報を伝えることができます。

ちなみに、この塩基は、DNAの中で唯一アルカリ性(=塩基性)の部分である、と言う意味で、塩基と呼ばれています。

 

塩基は、以下の4種類です。

アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)

この4種類は、必ず覚えましょう。

 

これらの組み合わせによって、DNAに遺伝子が記載されていることになります。

 

ここで、さきほどのヌクレオチド鎖の図を見てください。

 

塩基は4種類あるにもかかわらず、アデニン(A)はチミン(T)とのみ結合し、グアニン(G)はシトシン(C)とのみ結合しているのが分かるでしょうか。

 

実は、塩基は、それぞれ結合できる相手が1種類のみに決まっていて、その相手専用の結合部分を持っています。

このことを、塩基の相補性といいます。

⇒ヌクレオチドについて知りたい方はこちら!

3.DNA構造の研究の歴史

それでは、ここからは、DNAの構造が研究されてきた歴史について解説します。

DNAの研究についても、入試に出題されることがあるので、一通り理解しておきましょう。

 

19世紀のメンデルによる遺伝の法則の発見から、20世紀中頃までの間に多くの研究が行われ、遺伝子の本体がDNAにあるということが分かっていました。

⇒メンデルの遺伝の法則について知りたい方はこちら!

 

その後、遺伝の研究では、2つの大きな発見が行われます。

シャルガフの研究

20世紀中盤、アメリカの科学者シャルガフは、色々な生物の組織を使った実験を行い、DNAを調べていきました。

 

そして、生物のDNAを構成するヌクレオチドのうち、塩基の数の割合に注目しました。

すると、生物によってアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)4種類の数の割合はバラバラであったものの、1個体の中のアデニン(A)とチミン(T)の数、グアニン(G)とシトシン(C)の数は一致しているということを発見しました。

1949年のことです。

さきほど、アデニン(A)はチミン(T)、グアニン(G)はシトシン(C)としか結合しないということを説明しましたから、この組み合わせごとに同じ数であるということは納得できますね。

これを、シャルガフの法則といいます。

 

ワトソンとクリックの研究

シャルガフの法則が発見された後、アメリカの生物学者であるワトソンと、イギリスの科学者クリックが、今度はDNAの分子構造に関わる発見をしました。

 

2人は、DNAの分子に、レントゲン写真などで使われるX線を当てて撮影する実験を行いました。

すると、アルファベットのXのように、何かが交差しているかのような影が見えたそうです。

 

また、当初、2人はシャルガフの法則から、アデニンはアデニン、チミンはチミンというように、塩基は同じ種類ごとに結合していると考えられていました。

しかし、その他の研究からこの仮定を検討し直し、アデニン(A)はチミン(T)、グアニン(G)はシトシン(C)と結合すると考えるようになりました。

 

これらの結果から、ワトソンとクリックは、1953年、DNA分子は二重らせん構造をしているというモデルを発表しました。

 

DNAの構造のまとめ

今回は、DNAの構造について解説しました。

DNAは私たちの身体の設計図である遺伝情報を持っているにもかかわらず、発見されたのは意外と最近です。

しかし、その重要性から研究の進歩が速く、すでに私たちの生活に根付いています。

この記事をしっかりと読んで、受験だけではなく、遺伝テクノロジーに関わるニュースも理解できるようにしておきましょう!

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この記事の執筆者

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