有性生殖のメリットとは?植物と動物の例を使ってわかりやすく解説

生物 2019.9.27
有性生殖のメリットとは?植物と動物の例を使ってわかりやすく解説

有性生殖と無性生殖、生き物には2つの増殖方法があります。

中でも、地球上のほとんどの生き物は有性生殖を使って子孫を残しています。その方法になにか特殊なメリットがあるのでしょうか。

今回は、そんな有性生殖とそのメリットについて解説していきます。

 

    1.有性生殖とは?同形配偶子・異形配偶子の接合も解説

    有性生殖は、雌雄の配偶子によって新個体が形成される生殖法を指す言葉です。

    言いかえると、2つの個体間あるいは細胞間で全ゲノムに及ぶDNAの交換を行うことにより、両親とは異なる遺伝子型個体を生産することをいいます。

     

    有性生殖①減数分裂

     

    この対義語に、無性生殖があります。無性生殖は、ゲノム交換を伴わない生殖方法です。

    無性生殖に関する記事はこちらを参考にしてください。

     

    有性生殖②有性生殖の配偶子形成の過程と接合

    有性生殖では、一般の細胞とは別に、精子や卵といった生殖のための特別な細胞(配偶子)をつくられ、親の遺伝子を半分ずつ受け継ぐことが特徴です。

    この配偶子以外の普通の細胞は体細胞とよばれ、区別されています。

    ここで、この配偶子は減数分裂を経てできることも、しっかりと抑えておいてください。

    減数分裂に関する記事はこちらを参考にしてください。

     

    この配偶子ですが、雌雄の配偶子が接合することで新しい個体ができます。

    たとえば、高等生物の多くは、精子と卵子が受精します。

    この時、精子と卵子が配偶子、受精が接合に当たると考えると用語がごちゃまぜにならずに、すんなり覚えられますよ!

    接合の方法には、上の図のように、2種類あります。

    同じ形の配偶子が接合することを同型配偶子接合、異なる形の配偶子が接合することを異形配偶子接合といいます。

    同型配偶子接合は、クラミドモナス、アオミドロ、ゾウリムシなどの生物で行われており、異形配偶子接合はアオサ、ミルなどの生物で行われています。

    先ほど紹介した受精は、異形配偶子接合の一種で、有性生殖を行う生き物の多くが受精という形をとっています。

      2. 有性生殖と無性生殖の特徴を比較

      有性生殖は、無性生殖と比べると、生殖効率が悪く、全く同じものが作れないというデメリットがあります。

      つまり、配偶子をわざわざつくる必要があることや、雌雄が出会わないと子孫を残せないなどのデメリットがあるのです。

      しかし、地球上のほとんどの生き物は有性生殖をおこなうことから、時間とエネルギーをつかって、全く同じ個体が作れないリスクを負ってでも、有性生殖を行うメリットがあることも事実です。

      そのメリットこそが多様性です。

      有性生殖③メリットデメリット

      有性生殖では、子孫の遺伝子は、両親のものを半分ずつ受けつぐので、いろいろな組み合わせができることが特徴でした。

      これによって、子孫のの形質はさまざま。親や兄弟とすべての形質が同じになるわけではありません。

      一見すると不利なようにも見えますが、この多様性のおかげで、種としての適応力が高まっていることにこそ、意味があります。

      個体により少しずつ形質が違うので、様々な環境に適応していくことができ、突然の環境変化にも対応できる個体が生まれる可能性が高まります。

      一つ例を挙げて考えてみましょう。

       

      有性生殖の例①鎌状赤血球症

      例えば、生物Aという種がいたとします。現在の環境ではとても繁殖力・生命力の強い生物種だと仮定します。

      もし、この生物Aが無性生殖をした場合、生物Aの集団は同じ形質になり、現在の環境下では生存にかなり有利になります。

      しかし、気候変動が起き

      たらどうでしょうか。
      同じ遺伝的特性しか持たないということは、すべての個体の弱点が一緒であるということです。
      何らかの事情で、気温や水温が1℃変わるだけで、生物Aのすべての個体の生存が難しくなるかもしれません。

      また、感染性の病気が流行った場合はどうでしょうか。
      生物全体がその病気にかかりにくい場合は問題ないですが、かかりやすかった場合は、その種は絶滅の危機に瀕する可能性もあります。

      有性生殖④多様性というメリット

      逆に、もし、この生物Aが有性生殖をしていた場合、現在の環境下では貧弱な個体が生まれることもしばしばあるかもしれません。

      突然変異が起こる可能性もあります。

      しかし、有性生殖では、逆に気候変動や感染症に適応できる個体が生まれる可能性があります。
      このことが、長い目で種の保存という観点で見れば、種の生存を助ける場合があるのです。

      ヒトの鎌状赤血球症が、この良い例です。

      有性生殖⑤鎌状赤血球症とマラリア

      鎌状赤血球症とは、遺伝性の貧血病で、赤血球の形状が鎌状になり酸素運搬機能が低下して起こる貧血症のことを言います。

      別名は鎌状赤血球貧血症です。

      ほとんどがアフリカ系の人々に発症し主にアフリカ、地中海沿岸、中近東、インド北部で見られる突然変異に由来する症例です。

      激しい運動や高地などの低酸素状態で、貧血や黄疸症状がみられ、 貧血、発熱、息切れなどが悪化し、長管骨、腹部、胸部などに痛みを伴うと、鎌状赤血球症の疼痛発作が疑われます。

       

      しかし、マラリアという赤血球に寄生する寄生虫症に対しては、この鎌状赤血球の遺伝的特性が、非常に有利に働きます。

      マラリアは、感染すると、高熱や頭痛、吐き気などの症状が出ます。
      悪性の場合は脳マラリアによる意識障害や腎不全などを起こし死亡する重篤な事態に至る病気です。

      ところが、鎌状赤血球症の患者は、その形状からマラリアの寄生がされにくく、寄生された場合でもその赤血球が壊されてしまうことで、マラリアの感染を防ぐことができるのです。

      つまり、「マラリアに強い」特性を持つ鎌状赤血球という遺伝的多様性が、人類絶滅の危機を遠ざけたといえます。

       

      有性生殖の例②花弁の色

      他にも、植物の例を挙げると、花の色がそれにあたります。

      有性生殖⑥花の色と虫

       

      花のなかには、複数の花弁の色を持つものがあります。

      これは同じもののコピーを作る無性生殖ではできません。
      花弁の色の違いは、私たちの目を楽しませてくれるだけでなく、1つの生存戦略でもあるのです。

      例えば、赤の花と黄色の花と青の花があったとします。私たち人間はその色の違いが分かりますが、虫はその種類によって見える色が異なるといわれています。

      花の色の多様性を生むことで、花粉を運んでくれる、あるいは受粉させてくれる虫の種類が増えて、今日までさまざまな色の花をもつ植物が生き残ってきたのです。

       

      3.有性生殖のまとめ

      今回は、有性生殖とそのメリットについて、例を交えて解説していきました。

      実際の例を使って勉強すると、頭に入りやすくなるだけでなく、定期試験や入試で同じ実例を用いた問題が出ることも多くあります

      興味がわいた人は、ぜひ色々調べてみてくださいね。

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      この記事の執筆者

      ニックネーム:受験のミカタ編集部

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