半反応式の作り方を解説!酸化剤・還元剤の見分け方と一覧表も!
半反応式は、高校の化学基礎や化学で習う分野ですが、丸暗記に頼って、非効率的な勉強をしている人が多い単元でもあります。
ただし、半反応式では、ある程度の化学式を覚えなければならないほか、電子の流れを理解していないと解くことができないことも事実です。
この記事では、半反応式で覚えるべきこと、また、半反応式の作り方を説明するので、ぜひ効率的に半反応式をマスターしてください!
→反応式の理解に役立つ記事まとめについて知りたい方はコチラ!
【PR】勉強を効率的に継続して、志望校に合格したい方必見!
↓無料ダウンロードはこちら↓
【 目次 】
半反応式のまとめ
1.半反応式とは?酸化還元反応式との関係も説明!
半反応式とは、酸化還元反応の途中を表した、いわば化学式の途中式のようなものです。
酸化還元反応の記事の「電子e–のやり取りによる酸化還元反応の考え方」で、酸化還元反応式を「酸化」と「還元」に分け、それぞれの電子のやり取りを解説しました。
ここで説明に使われている、電子の移動が表された式が、半反応式です。
半反応式は、酸化還元反応式を作る際に必要となるので、ぜひ覚えてください。
2.半反応式の簡単な作り方
半反応式の作り方を簡単にまとめると、以下のような手順になります。
2.両辺のO原子の数を「H2O」を使ってそろえる。
3.両辺のH原子の数をH+(陽イオン)でそろえる。
4.両辺の電荷(プラスとマイナス)の数をe-を使ってそろえる。
多くの生徒が、半反応式の作り方をマスターするのを諦めて丸暗記に走ってしまいますが、本来、この作り方さえ覚えれば、あとは半反応式を自分で作ることができます。
ただし、手順1の反応前と反応後の化学式(何から何ができるか)だけは覚えないといけないため、以下に一覧表を載せます。
【酸化剤】
酸素 | O2 → H2O |
オゾン | O3 → O2 |
塩素 | Cl2 → Cl– |
過酸化水素 | H2O2 → H2O |
希硝酸 | HNO3 → NO |
濃硝酸 | HNO3 → NO2 |
酸化マンガン(Ⅳ) | MnO2 → Mn2+ |
過マンガン酸カリウム | MnO4– → Mn2+ |
二クロム酸カリウム | Cr2O72- → Cr3+ |
熱濃硫酸 | H2SO4 → SO2 |
二酸化硫黄 | SO2 → S |
【還元剤】
水素 | H2 → H+ |
ナトリウム | Na → Na+ |
シュウ酸 | H2C2O4 → CO2 |
シュウ酸ナトリウム | C2O42- → CO2 |
過酸化水素 | H2O2 → O2 |
硫化水素 | H2S → S |
硫化鉄(Ⅱ) | Fe2+ → Fe3+ |
チオ硫酸ナトリウム | S2O32- → S4O62- |
二酸化硫黄 | SO2 → SO42- |
塩酸 | Cl– → Cl2 |
塩化スズ(Ⅱ) | Sn2+ → Sn4+ |
※過酸化水素と二酸化硫黄は、酸化剤・還元剤どちらとしても働きます。
それでは、ここからは、半反応式の作り方にしたがって、具体的に半反応式を解いていきましょう。
3.酸化剤の半反応式をつくる
ここからは、半反応式について具体的見ていきます。
まずは、酸化剤である過マンガン酸イオンMnO4– が、マンガンイオンMn2+ に変化する過程をおっていきましょう。
1.反応前と反応後の化学式を書く。
これは暗記するしかありません。
新しく化学式が出てきたら後回しせずその場で覚えてしまうようにしましょう。
この場合は、MnO4–→Mn2+となります。
2.両辺のO原子の数を「H2O」を使ってそろえる。
左辺の MnO4– はO原子を4つもっていて、右辺の Mn2+ はO原子を持っていません。
ですので、右辺にH2Oを4個加えることによって両辺のO原子の数を揃えます。
この場合は、MnO4– → Mn2+ + 4H2Oとなります。
3.両辺のH原子の数をH+(陽イオン)でそろえる。
2の過程でH2Oを加えたことにより、いま右辺には8つのHが存在することになります。
それに対し、左辺はHを持っていないため、左辺にH+を8つ加えてやります。
この場合は、MnO4– + 8H+ →Mn2+ +4H2O となります。
4.両辺の電荷(プラスとマイナス)の数をe-を使ってそろえる。
ここまでをクリアできたら、あとは両辺の電荷をそろえるだけです。
電荷の調べ方は、各辺についている+または-の数を数えることです。
今回の例をとって説明しましょう。
左辺の電荷は MnO4 についている-と、8つのHにそれぞれひとつずつついている+で計+7です。
右辺はMnについている2+により計+2です(H2Oに電荷は無いため今回の計算には影響しません)。
よって左辺の方がプラスの電荷を5個多く持っているため、5個のe–を用いて両辺電子の持つ電荷(酸化数)を0にします。
この場合は、MnO4– + 8H+ +5e–→Mn2+ +4H2Oとなります。
以上でMnO4–の半反応式の完成です。
4.還元剤の半反応式をつくる
続いて、還元剤の半反応式の作り方を説明します。
還元剤である 過酸化水素H2O2 が O2 に変化する過程の半反応式を作っていきましょう。
工程は酸化剤のときとあまり変わりません。
1.反応前と反応後の化学式を書く。
この場合は、H2O2→O2となります。
2.両辺のO原子の数を「H2O」を使ってそろえる。
酸化剤・還元剤どちらの場合も、O原子の数が揃っている場合は足す必要はありません。
今回はそのパターンであるため、このままの形になります。
この場合は、H2O2→O2となります。
3.両辺のH原子の数をH+(陽イオン)でそろえる。
左辺と右辺のもつH原子の数を比べます。
今回は左辺は2つ、右辺は0個です。
よって右辺にH+を2つ足してあげて、両辺のH原子の数を一致させます。
この場合は、H2O2→O2 + 2H+となります。
4.両辺の電荷(プラスとマイナス)の数をe-を使ってそろえる。
この項目も、前項の時と同じように電荷を調べていきます。
今回は、H2O2 と O2 は電荷0であり、2H+ のみが電荷+1ずつ、計+2であるため、右辺にe–を2つ加えることによって電荷を0にしていきます。
この場合は、H2O2→O2 + 2H+ +2e–となります。
以上で H2O2 の半反応式の完成です。
5.半反応式を作るコツは?
酸化剤の半反応式は、電子(e–)が左辺に来るのに対し、還元剤は電子を右辺に配置します。
ですから、「この化学式は酸化剤」「これは還元剤だ」と一目見てわかるようになっていれば、求めた半反応式が合っているかどうかを判断することができます。
この、「酸化剤か還元剤か」というのは、酸化数によって判断することができます。
酸化数については、酸化還元反応についての記事をご覧ください。
これに加えて、以下の2点を覚えてください。
・化合物中のアルカリ土類金属の酸化数は+2
また、よくあるミスとしては、数字の書き間違いが挙げられます。
これを防ぐ方法は、とにかく慎重に考えることです。
大きい数字が出てこないからこそ、計算スキルを過信しがちになり、ミスを犯すことが多くなります。
電荷の数ばかりに目が行ってしまい原子自体の数を見落とし、結果的に計算ミスになることもよくあります。
そのため、たとえ焦っていたとしても、とにかく数合わせは手を抜かずにやる
ことが、正確さを極める一番の近道です。
→反応式の理解に役立つ記事まとめについて知りたい方はコチラ!
半反応式のまとめ
半反応式の作成は、最初の化学式と手順さえ覚えてしまえば見た目以上に簡単です。
見かけに圧倒されてしまっていたままではもったいない単元と言えます。
そのため、きちんと理解すれば確実に点数を稼ぐことができるのです。
しかし、だからこそ少しの計算ミスが命取りになってしまう単元でもあります。
きちんと仕組みを理解して、計算を丁寧に行うようにしてください。
→反応式の理解に役立つ記事まとめについて知りたい方はコチラ!