組立除法のやり方と高次方程式の解き方を解説!

数学 2024.2.1
組立除法のやり方と高次方程式の解き方を解説!

組立除法は整式を1次式で割ったときの商と余りを求めるのに便利な方法です。

数学Ⅱで学習する高次方程式の分野で、剰余の定理や因数定理について習いますが、整式を整式で割るような計算がでてきます。

特に因数定理を使った後には、元の整式を因数分解するために、1次式で割ることが多いです。

普通に整式の割り算で計算しても良いですが、組立除法を使うと簡単に計算できます。

手間を省いて効率よく計算できます。
この記事では、組立除法についてまとめます。

 

    1.組立除法:計算方法

    2x3-4x2+5x-3 で割ることを考えます。

    突然ですが、組立除法による計算方法を紹介します。
    なぜ、そのようなことができるかは、後に詳述しますので、確認してください。

    左上に x-33の部分を、その横に割られる整式の係数のみを順番に書き込んでゆきます。
    このとき、左上が -3 でなく、3であることに注意しましょう。

    また、係数を書き込む際に、抜けている次数の係数を抜かさないようにします。
    2x3-4x2+5 なら 2x3-4x2+0x+5 と考えて、2, -4, 0, 5 を順番に書きます。

     

    3 2 4 0 5
             
             

     

    最高次数の係数をそのまま下に降ろして、書き込みます。

    3 2 4 0 5
             
      2      

     

    左上の数字(=3)と降ろした数字(2)の積を2次の次数の係数の下に書き込みます。

    3 2 4 0 5
        6    
      2      

     

    2次の次数の数を縦に足します。

    3 2 4 0 5
        6    
      2 2    

     

    2次の次数を足した結果(=2)と左上の数字(=3)をかけて次の次数に書き込む

    3 2 4 0 5
        6 6  
      2 2    

     

    以上を繰り返して最後まで数字を求める。

    3 2 4 0 5
        6 6 18
      2 2 6 23

    表のすべてが埋まりました。
    こうして求めた数字は、以下のような意味があります。

    一番下の行の一番右に表れた数(=23)が、2x3-4x2+5 を x-3 で割った余りを表す。
    一番下の行の余り以外の数字(=2, 2, 6)が、2x3-4x2+5を x-3 で割った商の係数を表す。

    つまり、2x3-4x2+5 を x-3 で割ると、商は 2x2+2x+6 であり、余りは23となります。
    3次式を1次式で割っているので、商が2次式、余りが定数になります。

    2x3-4x2+5 =(x-3)(2x2+2x+6 )+23

    が成立することにも注目しておきましょう。

    以上が組立除法のやり方です。

     

      2.組立除法の証明:3次式のとき

      なぜ組立除法を使って、商と余りを求めることができるのかについて説明します。

      3次方程式

      P(x)=ax3+bx2+cx+d

      を、

      x-k

      で割ることを考えます。

      このときの商をlx2+mx+n、余りをRとおきます。

      考えるのは元の整式 P(x) の係数である、a,b,c,d と、割る整式 x-k の定数部分 k から、商と余りの情報 l,m,n,R を求められるか、ということです。

      P(x)=ax3+bx2+cx+d を x-k で割った商がlx2+mx+n、余りが R ですので、以下の式が成立します。

      ax3+bx2+cx+d=(lx2+mx+n)(x-k)+R

      右辺を展開して整理すると

      ax3+bx2+cx+d=lx3+(m-lk) x2+(n-mk)x+R-nk

      となります。
      これが恒等式になっていますので、両辺の係数を比較して

      a=l
      b=m-lk
      c=n-mk
      d=R-nk

      となります。a,b,c,d,k から l,m,n,R を求めることが目的ですので、式を以下のように整理しましょう。

      l=a
      m=b+lk
      n=c+mk
      R=d+nk

      ここから、組立除法の方法で係数と余りが求められることがわかります。
      つまり、

      l を求めるためには、a をそのまま使えばよく、

      k a b c d
               
        l(=a)      

        から、mを求めるには、求めたmに対してkをかけて、bを足せばよいのです。

      この操作が、2次の係数を書き込んで、縦に和算をする操作です。

      k a b c d
          lk    
        l(=a) m(=b+lk)    

       

      残りの部分も同様に埋められます。

       から、nを求めるにはmに対してkをかけて、cを足せばよいのです。

      k a b c d
          lk mk  
        l(=a) m(=b+lk) n(=c+mk)  

       

      残りのRも同様です。

       から、Rを求めるには、nkをかけてdを足します。

      k a b c d
          lk mk nk
        l(=a) m(=b+lk) n(=c+mk) R(=d+nk)

       

      以上のような手順から、1次式で割ったときの商と余りを求めることができます。

      この手順を覚えやすいように工夫した書き方が、組立除法なのです。

       

      3.組立除法の応用①:剰余の定理と因数定理

      組立除法は、高次方程式の解を求める際によく利用します。

      高次方程式の解を求めるためには、因数定理を使います。
      剰余の定理と因数定理について説明しておきましょう。

      ※剰余の定理についての記事はこちら

      ※因数定理についての記事はこちら

       

      剰余の定理とは以下のようなものです。

      整式 P(x) を x-a で割ったときの余りは P(a) である。

      先の例で言えば、P(x)=2x3-4x2+5 を x-3 で割ったときの余りは 23 でした。
      この余り(=23)は、P(x) に x=3 を代入すれば求めることができる、というのが剰余の定理で

      P(3)=2×33-4×32+5
      =54-36+5
      =23

      となり、確かに一致します。

      【証明】

      整式 P(x) を x-k で割ったときの商を Q(x)、余りを R とおくと、
      P(x)=(x-k)Q(x)+R
      が成立します。
      この式に x=k を代入すると、
      P(k)=(k-k)Q(k)+R
      =R
      となり、商 Q(x) の値がよくわからなくても、余りだけを求めることができます。
      すなわち、P(x) を x-k で割ったときの余りは P(k) であることがわかります。

       

      より一般的に言えば、以下の定理が成り立ちます。

      整式 P(x) を ax+b で割ったときの余りは

      組み立て除法 計算式

      である。

      この剰余の定理の特殊な場合として、因数定理があります。
      因数定理とは以下のような定理です。

      x-a が整式 P(x) の因数である  ⇔  P(a)=0

      剰余の定理から、整式 P(x) を x-a で割った余りは P(a) です。
      もしも P(a)=0 なら、P(x) は x-a で割り切れることになります。
      つまり、x-a が整式 P(x) の因数であることがわかります。

      このとき

      P(x)=(x-a)Q(x)

      のように因数分解できます。
      高次方程式の解を求める際にはこの因数定理をよく利用します。

       

        4.組立除法の応用②:高次方程式の解き方

        因数定理を用いて高次方程式の解を求めましょう。

        • 例題

        x4-4x3+16x-16=0 の解を求めよ。

        • 解答・解説

        P(x)=x4-4x3+16x-16

        考えるのは、「x にどんな数字を代入すれば、x4-4x3+16x-16=0 になるか」ということです。

        この問題の場合、

        P(2)=24-4×23+16×2-16
        =0

        となります。この2という数字は、カンで探すしかありません。
        一応の指針はあります(後述します)が、それで見つけられるとは限りません。
        問題で出題される場合は、簡単な有理数で見つけられることがほとんどですので、安心してください。

        P(2)=0ですので、P(x) は x-2 で割り切ることができます。
        ここで組み立て除法を使います。

        2 1 4 0 16 16
                   
                   

        2 1 4 0 16 16
          2 -4 -8 16
          1 -2 -4 8 0

        余りが0になりました。
        ここで、余りが0にならなければ、計算ミスをしていることになります。
        組み立て除法から、商が

        Q(x)=x3-2x2-4x+8

        となることがわかりますので、P(x) は以下のように因数分解できます。

        P(x)=(x-2)(x3-2x2-4x+8)

        Q(x) にもう一度、因数定理を適用して
        Q(-2)=0
        となりますので、Q(x) は x+2 で割り切ることができます。

         

        2 1 2 4 8
          -2 8 -8
          1 -4 4 0

        よって以下のように因数分解できます。

        P(x)=(x-2)(x+2)(x2-4x+4)

        ここからは、普通に因数分解できますよね

        P(x)=(x-2)(x+2)(x-2)(x-2)
        =(x-2)3 (x+2)

        ですので、P(x)=0 の解は、x=2,-2 です。

         

          5.組立除法の応用③:因数定理を利用した解の見つけ方

          因数定理を利用する際に、当てはめる数をどのように見つければよいでしょう。
          最終的には勘ですが、一応の指針はあります。

          例えば P(x)=(2x-3)(x2+2x+2) を展開することを考えましょう。

          もちろん P(x)=2x3+x2-2x-6 のように展開できます。

          P(x) の因数に 2x-3 がありますので、

          組み立て除法 計算式 となります。

          この 3/2 をどうやって見つけるかが課題になります。

          展開した後の、最高次数の係数と、定数項の係数について注目しましょう。

          最高次数の項 2x3 は、2x と x2 をかけてできたような項です。
          また、定数項 -6 は、-3 と 2 をかけてできたような項です。
          つまり、因数定理で見つけるべき (2x-3) の係数は、最高次数約数と定数項の約数に表れていると言えます。

          ですので、因数定理において当てはめるべき数は
          組み立て除法 因数定理 定理
          が目安です。

          P(x)=2x3+x2-2x-6

          なら
          組み立て除法 因数定理 
          です。
          よって、考えられる解は計算式 解, ±1, 計算式 解,±3の8個に絞られ、実際に代入してみると

          組み立て除法 計算式

          となるので、

          組み立て除法 計算式

          と、因数分解できます。
          ちなみに、Q(x)=x2+2x+2であり、これ以上因数分解できません。

           

            6.おわりに

            最後までご覧くださってありがとうございました。

            この記事では、組み立て除法の基本と、高次方程式の解き方についてまとめました。
            組み立て除法は高次方程式の解を求める際に、やり方を知っていると時間の短縮になります。
            面倒な整式同士の割り算をしなくても、商と余りを求められますので、非常に便利です。

            慣れると10秒程度しかかかりません。しっかりとマスターしましょう。

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            この記事の執筆者

            ニックネーム:受験のミカタ編集部

            「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。