ベイズの定理とは?証明から例題までわかりやすく解説

数学 2018.12.17

条件付き確率、と聞くとなんだか難しそうに思われますが、基本をしっかり理解していれば決して難しくはありません。
条件付き確率に関する重要定理に「ベイズの定理」があります。
この記事では、条件付き確率とベイズの定理についてまとめます。

条件付き確率の記事はこちら

1.ベイズの定理とは?:条件付き確率

条件付き確率は以下のように説明されます。

全事象Uの中の2つの事象A, Bについて、Aが起こったことがわかったとして、このときBが起こる確率を、Aが起こったときのBの条件付き確率といい、P_A (B) または P( B | A) で表す。

まず、条件付確率を分かりやすく捉えるために次の例を見てみましょう。

【例題】

赤玉4個(1, 2, 3, 4 の番号がついている)と白玉3個(1, 2, 3の番号がついている)が入った袋から、一つずつ玉を取り出すときのことを考える。
取り出した玉は元には戻さない。
① 一回目に赤の3番を取り出した際、二回目に白玉を取り出すような条件付き確率を求める。
② 一回目に赤の3番を取り出した際、二回目に赤の3番を取り出すような条件付き確率を求める。

【解答・解説】

何を求めなければならないか読み取れるでしょうか。
求めるのは二回目の確率です。一回目に取り出した玉は、問題の条件として確定しています
その前提で、二回目に玉を取り出す確率を求めることになります。

①の場合は、一回目に赤の3番を取り出したという前提で二回目に白玉を取り出す確率を求めます。
一回目に赤の3番を取り出しているので、二回目を引く直前には、袋の中に赤玉3個と白玉3個があることになります。
ここから白玉を取り出す確率なので、

ですね。

②の場合は一回目に赤の3番を取り出しているので、二回目の玉を取り出す際に赤の3番は袋の中に存在しません。
ですので、求める条件付確率は 0 になります。

このように、条件付き確率では、前提となる事象が確定しているので、それ以外のことを考慮しません。
つまり、赤玉の3番を一回目に引いていない場合のことは、一切考慮に入れなくて良いのです。

通常の確率は


という式から求めることができます。

条件付き確率も、基本的にはこの定義通りに求められます。

ただし、「Aが起こったときのBの条件付き確率 P_A (B) 」を考える際、Aが起こっていないことを考慮しないので、全事象に当たるのは「Aが起こるような場合の数」です。
また、その中で「Bが起こるような場合の数」を考えるので、「Aが起こってさらにBが起こる確率」を考えることになります。

よって


となります。

【例題】

男子15人、女子25人のクラスがある。
男子のうち12人は猫派で3人が犬派、女子のうち20人が猫派、5人が犬派だったとする。
この中から一人を選ぶことを考える。
選んだ人が女子だった場合に、その人が猫派であるような条件付き確率を求めよ。

【解答・解説】

分かりやすく言い換えると、猫派の女子は何パーセント?という問題です。
25人の女子のうち20人が猫派なので、求める条件付き確率は

男子のことは一切考慮に入れていませんね。
選んだ人が女子であることがわかっているのですから、男子のことは考える必要がないのです。

条件付き確率の式に当てはめれば、
A:選んだ人が女子であるような事象(25人)
B:選んだ人が猫派であるような事象(12人+20人)
A∩B:選んだ人が女子の猫派であるような事象(20人)
条件付き確率の定義通りに解くとすると、

となり、先の式と一致します。

2.ベイズの定理とは?:ベイズの定理

条件付き確率の式からベイズの定理を導きます。



一方、以下の式も成り立ちます。

AかつBという事象と、BかつAという事象は同じことを表しているので、以下の式が成立します。

これがベイズの定理です。
ベイズの定理の式を丸暗記すると大変なので、条件付き確率の定義式から作ってしまいましょう。
慣れると数秒で頭の中で作り直せるので、簡単に使うことができますよ。

もうひとつベイズの定理に関する定理を紹介します。

標本空間(全事象)が、事象 B1 と事象 B2 に分割されるとき、
事象Aについて、P(A)=P(B1)*PB1 (A)+P(B2)*PB2 (A) が成立する。

これは、
P(A)=P(A∩B1)+P(A∩B2)
と、すでに紹介した
P(B)*P_B (A)=P(B∩A)
を組み合わせた式です。

「標本空間(全事象)が、事象 B1 と事象 B2 に分割されるとき」を分かりやすく考えるために、「トランプを赤と黒に分割するとき」に置き換えて説明していきます。
例えばトランプのセット(ジョーカーを除く)から1枚引くとき、事象を次のように定義しましょう。
A :絵札を引く
B_1:赤札を引く
B_2:黒札を引く
P(A)=P(A∩B1)+P(A∩B2)
この式から、以下のことが分かります。

絵札を引くような確率は、赤い絵札を引く確率と黒い絵札を引く確率を合わせたものになる。

3.ベイズの定理とは?:ベイズの定理とは

ベイズの定理は以下のように表されることを既に紹介しました。

そして、トランプの例を出して、事象が二つに分割される場合のベイズの定理についても紹介しました。
P(A)=P(B_1)*PB1 (A)+P(B_2)*PB2 (A)
この2つの式を組み合わせると、以下のような式が成立します。

標本空間(全事象)が、事象 B_1 と事象 B_2 に分割されるとき、事象Aについて、

これもベイズの定理です。

結局、ベイズの定理とは何を求める式なのでしょう。

ある試行を行った結果、事象Aが起こったとしましょう。
このとき、事象Aが起こった原因を確率的に求めようとするのが、ベイズの定理です。

例えば、ある製品の部品が Bという工場と、B2 という工場から生産されているとします。
ある日、一つの部品を取り出すと不良品でした(事象A)。
ベイズの定理で求める、PA (B1 ) とは、「見つかったある不良品が工場 B1 から生産された確率」ということになります。
ベイズの定理が
ですので、

P(B1 ):B1の工場からその部品を仕入れている割合
PB1 (A):B1 の工場で、普段どの程度の不良品が生産されるかに関する割合
P(B2 ):B2の工場からその部品を仕入れている割合
PB2 (A):B2 の工場で、普段どの程度の不良品が生産されるかに関する割合
が分かっていれば、ある不良品がどの工場で生産されたものであるかを確率的に求めることができます。

ベイズの定理において、P(B1 ) をB1 の事前確率、PA (B1 ) をB1 の事後確率といいます。

4.ベイズの定理とは?:モンティ・ホール問題

ベイズの定理と密接に結びついた問題として有名なのが、モンティ・ホール問題です。
モンティ・ホールが司会を務めるアメリカのゲームショー番組がもとになっています。

【モンティ・ホール問題】

目の前に3つのドアがあり、すべて閉まっている。1つのドアの後ろには新車(当たり)が、残りの2つのドアの後ろにはヤギ(はずれ)がおり、プレイヤーは当たりのドアを選ぶと新車をもらうことができる。

まず、プレイヤーがドアを1つ選択し、その後、司会者であるモンティが残っている2つのドアのうちはずれのドアを1つ開ける。そこでプレイヤーは、自分が選ぶドアを、最初に選んだドアから残っているドアに変更してもよい、と告げられる。

プレイヤーはドアを変更すべきだろうか。

「ドアを変えても変えなくても当たる確率は2分の1なので、変更するメリットはない」と答えてしまいそうになりますが、答えは「変更すべき」です。
結果から言えば、変更しない場合に比べて、変更した場合、当たる確率は2倍になります。
モンティ・ホール問題は感覚的な答えと、数学的な結果が異なることから、大論争を引き起こしました。
ここでは詳しく触れませんが、興味がある人はぜひ調べてみてください。

5.ベイズの定理とは?:おわりに

最後までご覧いただきありがとうございました。
数学の公式は、意味を理解すると途端に覚えやすくなります。
ただ覚えるだけではなく、なぜそのような式になるかをきちんと理解するようにしましょう。
頑張ってください。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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