たすきがけのやり方・計算方法は?因数分解の簡単な解き方を解説
たすきがけ(たすき掛け)は、「聞いたことはあるけど実際の使い方が分からない」「たすきがけ自体の説明が少なく、どういうふうにやるのか分からない」と感じる人は多いでしょう。
たすきがけは因数分解を行う際でしか登場しないため、忘れがちな計算方法です。しかし覚えておくと、二次方程式や二次関数の多くの問題もスラスラ解けるようになります。
この記事を読むと、たすきがけの基礎から問題を解く上でのコツまでマスターできるようになります。ぜひ最後まで読んで、たすきがけのやり方をマスターしましょう。
なお、因数分解が苦手な方、考え方がわからない方は「▶︎因数分解のやり方を分かりやすく解説!たすき掛けや公式を使った解き方のコツを紹介!」をご覧ください。
・たすきがけの考え方が理解できる
・たすきがけを使って複雑な式の因数分解ができる
・たすきがけを使わない場面を見分けることができる
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▶素因数分解とは?素因数分解のやり方を練習問題と解説でマスターしよう!
【目次】
1.たすきがけとは?【因数分解の計算方法】
2.因数分解でのたすきがけのやり方・計算手順
2-1.かけてaになる整数を左に並べる
2-2.かけてcになる整数を右に並べる
2-3.それぞれ斜めにかけ算
2-4.出た答えを足し算してbになれば正解
3.文字が2つ以上ある式のたすきがけのやり方
3-1.同類項をまとめる
3-2.2文字以下の部分を因数分解
3-3.式と数をたすきがけして完了
4.たすきがけを使わない因数分解の方法
5.たすきがけを使って因数分解してみよう!
6.まとめ
たすきがけとは?【因数分解の計算方法】
たすきがけとは、二次式を因数分解するために用いる計算方法のことを意味します。
例えば、
acx2+(ad+bc)x+bd
という式を因数分解すると、
(ax+b)(cx+d)
と表すことができますね。
しかし、因数分解をする際に計算ミスをしてしまう場面が存在します。そんな時、因数分解の答えをわかりやすく導く計算方法のことをたすきがけと呼んでいます。
因数分解でのたすきがけのやり方・計算手順
実際に「ax2+bx+c」で表される二次式の因数分解を行う際に用いる、たすきがけのやり方を学習しましょう。
ここでは、「3x2+5x-2」という実際の二次式を用いながら、たすきがけのやり方を4つのステップに分けて解説していきます。
かけてaになる整数を左に並べる
たすきがけの最初のステップとして、x2の係数aに着目し、かけてaになる整数の組み合わせを考えます。
「3x2+5x-2」の場合、x2の係数は3です。かけ合わせて3になる整数の組み合わせは、
「3と1」、「-3と-1」・・・①
の2組ですね。この数字は忘れないように、上から順に左に並べておきましょう。
かけてcになる整数を右に並べる
続いて定数項cに着目し、かけてcになる整数の組み合わせを考えます。
「3x2+5x-2」の場合、定数項は-2です。かけて-2になる整数の組み合わせは、
「1と-2」、「-1と2」・・・②
の2組ですね。この数字は忘れないように、今度は上から順に右に並べておきましょう。
それぞれ斜めにかけ算
ここまでのステップが完了したら、かけてaになる整数の組み合わせと、かけてcになる整数の組み合わせを、それぞれ斜めにかけ合わせていきます。今回は①と②の組み合わせを考えます。
なお、①と②の組み合わせは本来2×2=4通りありますが、すべての組み合わせでたすきがけが成功するとは限りません。以降の説明は、たすきがけが成功する「3と1」「-1と2」という組み合わせについて考えていきますので、ご了承ください。
それでは、以下のように書き出しましょう。
そして、斜めにかけ算した結果を書きます。
出た答えを足し算してbになれば正解
最後に、かけ合わせた2つの数を足します。足した結果がax2+bx+cにおけるbの数字と同じ結果になれば、たすきがけは成功です。
ここまでの手順で考えた「3と1」「-1と2」という組み合わせを計算した結果が以下のようになります。
斜めにかけ算して得られた-1と6を足し算すると、
-1+6=5
となり、これは3x2+5x-2におけるxの係数5と等しいため、たすきがけは成功していると言えます。
そして、並べた数字を左右で括弧に括り、因数分解の最終的な形に直しましょう。
以上から、答えは
(3x-1)(x+2)・・・(答)
となります。
なお、画像内で「因数分解の最終的な形は( )内に数字や記号が収まる」との記載がありますが、これは例外もあります。マイナスが括弧外にくる場合や、2乗になる場合もありますが、一旦は括弧内に数字が収まると覚えておきましょう。
仮に、別の組み合わせでたすきがけをしてみましょう。例えば「3と1」「1と-2」ではどうでしょうか?
たすきがけをすると以下のようになりますね。
赤字の部分が「3x2+5x-2」のxの係数「5」になっていないので、この組み合わせは適切ではありません。
このように組み合わせが適切でないと分かった場合、3つ目のステップに戻ってほかの組み合わせについて考えてみましょう。
文字が2つ以上ある式のたすきがけのやり方
たすきがけは、例題で扱ったような簡単な式だけでなく、2つ以上の文字が含まれる式を因数分解する際にも役立ちます。
この章では、xとyという2つの文字が含まれる式の因数分解をする際のたすきがけの使い方を学んでいきます。ここでは、「2x2-5xy+3y2+5x-7y+2」という複雑な式を用いながら、たすきがけの使い方を考えていきます。
同類項をまとめる
2つ以上の文字が含まれる式を考える際のポイントは1つの文字で整理するということです。今回の式は、xとyという2つの文字が混在しているうえ項の数が多く、このままでは非常に扱いづらい形になっています。
そこで、まずyを定数だと考えてxについて整理してあげることで、「xの二次式」ととらえてみましょう。式の各項をxの次数でくくると、
=2x2+(-5y+5)x+3y2-7y+2・・・③
と表すことができます。
2文字以下の部分を因数分解
同類項をまとめた後は、文字数が少なく取り掛かりやすいところから因数分解をして整理していきます。
xについて整理した式「2x2+(-5y+5)x+3y2-7y+2」を見てみると、定数項にあたる「3y2-7y+2」の部分がyについての二次式であることがわかりますね。この部分について、たすきがけを使いながら因数分解してみましょう。
まず初めに、y2の係数3に着目します。「かけて3になる2つの整数」の組み合わせは「3と1」、「-3と-1」となります。
続いて、定数項2に着目します。「かけて2になる2つの整数」の組み合わせは「1と2」、「-1と-2」となります。
この中から、「3と1」、「-1と-2」という組み合わせを考えてみましょう。この組み合わせを選んで斜めにかけ算し、結果を足し合わせてみます。今回の場合、
3*(-2)=-6
と
1*(-1)=-1
の2数を足し合わせた結果、
-6+-1=-7
となり、xの係数-7と値が一致します。
よって、
3y2-7y+2=(3y-1)(y-2)・・・④
と表現できることがわかります。
また、③と④から、
=2x2+(-5y+5)x+(3y-1)(y-2)・・・⑤
となることがわかります。
式と数をたすきがけして完了
最後に、x2の係数と定数項としてあらわされる式をたすきがけすることで、因数分解が完成します。
⑤式について、x2の係数2に着目します。「かけて2になる2つの整数」の組み合わせは「2と1」、「-2と-1」となります。
続いて、定数項「(3y-1)(y-2)」に着目します。「かけて(3y-1)(y-2)になる2つの数」の組み合わせは「3y-1とy-2」、「-3y+1と-y+2」となります。
この中から、「2と1」、「3y-1とy-2」という2つの組み合わせを選んで斜めにかけ算し、結果を足し合わせてみます。
今回の場合、
2*(-y+2)=-2y+4
と
1*(-3y+1)=-3y+1
の2数を足し合わせた結果、
(-2y+4)+(-3y+1)=-5y+5
となり、xの係数と値が一致します。
以上より、
=(2x-3y+1)(x-y+2)
と因数分解できることがわかります。
ここまでが、文字が2つ以上ある式のたすきがけのやり方です。初めのうちは複雑な式の処理に慣れないと思うので、問題をたくさん解いて自力でできるようにしましょう!
たすきがけを使わない因数分解の方法
ここまで、たすきがけを使った因数分解の方法を考えてきました。
しかし、二次方程式の解の公式に当てはめることで、たすきがけを使わずとも因数分解を行うことができるので、その方法をご紹介します。二次方程式の解の公式に自信がない方は、「▶【高校数学】二次方程式の解の公式とは?証明と問題、その解き方を解説します」を読んでみてください。
前述で使用した「3x2+5x-2」の因数分解について考えてみます。
「3x2+5x-2=0」という二次方程式の解を、公式を用いて考えると、
x=-2,1/3
となります。これは、「3x2+5x-2=0が、x=-2, 1/3を解に持つ、x2の係数が3の二次方程式」であることを意味します。
つまり、
=3(x+2)(x-1/3)=0
整理して(x+2)(3x-1)=0
よって、3x2+5x-2の因数分解が(x+2)(3x-1)となることを、二次方程式の解の公式を用いて示すことができました。
二次式の因数分解を行う際、たすきがけを用いたほうが良い場面と、二次方程式の解の公式を応用させたほうが良い場面があります。自力で何度も練習する中で2つの方法を使い分けるのがベストですが、数字が小さい・文字が少ない場合はたすきがけ、数字が大きい・文字が多い場合は解の公式と考えておくとよいでしょう。
たすきがけを使って因数分解してみよう!
では早速、問題を解いてみましょう。たすき掛けを習得するにはなるべく多くの問題を解くことが鍵です!
練習問題1
x2+4x+3 をたすき掛けを使って因数分解せよ。
解答&解説
x2の係数は1、定数項は3です。
掛け合わせて1になるのは「1と1」、「-1と-1」
掛け合わせて3になるのは「1と3」、「-1と-3」ですね。
たすき掛けがうまくいくのは以下の組み合わせです。
赤字の部分がx2+4x+3のxの係数4になっていることを確認してください。
よって答えは
(x+1)(x+3)・・・(答)
となります。
練習問題2
4x2-5x-21 をたすき掛けを使って因数分解せよ。
解答&解説
x2の係数は4、定数項は-21です。
たすき掛けがうまくいくのは以下の組み合わせですね。
赤字の部分が4x2-5x-21のxの係数-5になっていることを確認してください。
よって答えは
(4x+7)(x-3)・・・(答)
となります。
練習問題3
6x2+17x+5 をたすき掛けを使って因数分解せよ。
解答&解説
x2の係数は6、定数項は5です。
たすき掛けがうまくいくのは以下の組み合わせですね。
赤字の部分が6x2+17x+5のxの係数17になっていることを確認してください。
よって答えは
(2x+5)(3x+1)・・・(答)
となります。
まとめ
因数分解におけるたすき掛けのやり方が理解できましたか?たすき掛けは因数分解の基本であるため、たくさんの問題を解いて、たすき掛けに慣れておきましょう!
因数分解についてもう少し詳しく復習したい方は「▶因数分解の理解に役立つ記事まとめ!〜因数分解から重解まで〜」も併せてご覧ください。