ド・モルガンの法則はベン図を使えば簡単に理解できる!【練習問題付き】
「集合の問題が苦手だ」という方は少なくありません。集合を描いても実感が湧きづらいからでしょう。また、「記号ばかりで何を言っているのかわからない」ということも理由のひとつと考えられます。
そんな時は、「ド・モルガンの法則」を活用し、ベン図を使って可視化するとスラスラ解けるようになります。
この記事では、「ド・モルガンの法則」について詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
【目次】
ド・モルガンの法則とは
ド・モルガンの法則は、集合の分野では代表的な法則です。この法則は、2つの公式からなっています。それを理解することで、集合の内容がよりわかるようになります。
2つの公式
ド・モルガンの法則は、次の2つの公式が該当します。
A⋂Bは集合AとBの共通部分「AかつB」
A⋃Bは集合AとBの和集合「AまたはB」
AはAの補集合「Aではない」
これらの集合に関する記号は重要です。詳しくは「▶【集合】必ず覚えなくてはならない6つの記号と3つの法則」を参考にしてください。記憶があやふやな方は、まずこちらから読んでください。
このド・モルガンの法則の覚え方のコツは、
①補集合の「横線」を「つなげる」「切る」の切り替え
②「⋃」と「⋂」の切り替え
という2つの切り替えを同時に行うことです。
集合が3つ以上の場合でも有効
この法則は、主に2つの集合について出題される傾向がありますが、3つ以上の集合においても成り立ちます。たとえば3つの集合A,B,Cについて、次の式が成り立ちます。
以下のように、集合の数がいくつになっても、同様の法則が成り立ちます。
ド・モルガンの法則はベン図で理解
以上のように、ド・モルガンの法則を式で表現してきましたが、式を見てもあまり実感がわかない、ピンとこないという方も多いのではないでしょうか?式のまま扱うことができるのは慣れてからでいいでしょう。
まず根本的な事を理解するためには、ベン図を通して理解するのが早道です。それは、図という形で可視化できるからです。
では、ベン図ではどのようになるのか、また、なぜド・モルガンの法則が正しいといえるのかについて解説します。
公式1.A⋃B=A⋂Bの解説
ではまず、左辺であるA⋃Bをベン図で表現します。これは、A⋃Bの補集合、つまり「A⋃B以外」ということです。
A⋃BはAとBの和集合(AとBを合わせた部分)となるので、左辺A⋃Bは、AとBの和集合以外の部分を表します。
一方、右辺を見ていきましょう。
まず AとBは、それぞれ「A以外」「B以外」を表します。右辺A⋂Bは、これらの共通部分となるため、結果的に左辺同様AとBの和集合以外の部分を表します。
したがって、左辺と右辺の図が一致しますので、 A⋃B=A⋂Bが成り立ちます。
公式2.A⋂B=A⋃Bの解説
次にド・モルガンの法則の2つ目の公式をベン図で確かめてみましょう。
1つ目の公式と同じように考えます。
まず左辺は、A⋂Bの補集合ですので、「A⋂B以外のところ」を指します。
A⋂Bは「AとBの共通部分(積集合)」です。つまり、左辺A⋂Bは、AとBの積集合以外の部分を表します。
一方右辺A⋃Bは、AとBの和集合です。
つまり、AとBを合わせた部分となるため、結果的にAとBの積集合以外の部分を表します。
したがって、こちらも左辺と右辺の図が一致しますので、 A⋂B=A⋃Bが成り立ちます。
このように、ベン図を利用しながら考えると問題もスムーズに対応できます。
ド・モルガンの法則を使った練習問題
ド・モルガンの法則を知っていることで、それを利用すれば、効率よく解ける問題もあります。
次に、ド・モルガンの法則を利用して解くことができる問題を紹介しましょう。
【例題1】
U={1,2,3,4,5,6,7,8,9}を全体集合とする。Uの部分集合A={1,3,4,6,8},B={2,4,6,7}について、次の集合を求めよ。
(1)A
(2)B
(3)A⋂B
(4)A⋃B
(5)A⋃B
(6)A⋂B
《解説》まずは、ベン図を描いてみましょう。
一番外にある四角形の中に、全体集合にある9つの要素が散らばっています。
まずは、2つの集合A,Bの内容を書き込みますが、AもBもそれぞれ2つの場所に分かれています。
そこで、AとBの共通部分をチェックします。つまり、AとBの両方に含まれる要素を探すということです。
それは4と6の2つになります。それらを図に書き込みます。
次に、集合Aを完成させます。4と6以外をAの左側に書き込みます。
同じように、Bの残りの部分も書き入れていきます。
最後にAやBの外部の取り巻きの部分を書き入れます。すでに書き入れた数字以外のものが該当します。
これで、9つの要素を全部書き込めました。ここから、この図を見ながら問題を解いていきます。
そこで重要なことは、記号で書かれている場所がどこのことかを丁寧に押さえることです。そのコツは、言葉に直してみることです。
【解答】
(1)Aは、「Aではない」ものです。ですから、A={2,5,7,9}となります。
【注意】答えるのは集合ですので、{ }で要素をくくった書き方をしなければなりません。
(2) Bは、「Bではない」ものです。ですから、B={1,3,5,8,9}となります。
(3) A⋂Bは、AとBの共通部分です。つまり、(1)と(2)の答えの共通部分が答えです。ですから、 A⋂B={5,9}
(4) A⋃Bは、AとBの和集合です。(1)と(2)の答えを「合わせた」ものが答えです。ですから、 A⋃B={1,2,3,5,7,8,9}
(5) A⋃Bは、A⋃Bの補集合です。A⋃Bは、AとBを合わせたものなので、その補集合は、AとBを合わせた場所以外の部分だから{5,9}
[別解]ド・モルガンの法則より、A⋃B=A⋂B。これは(3)と一致するので、{5,9}
(6) A⋂Bは、AとBの和集合。つまり、(1)と(2)の答えを「合わせた」ものとなります。したがって{1,2,3,5,7,8,9}
[別解]ド・モルガンの法則より、A⋂B=A⋃B。(4)と一致するので、{1,2,3,5,7,8,9}
【例題2】
全体集合U={1,2,3,4,5,6,7,8,9}の部分集合A,Bについて、A⋂B={2,8}, A⋃B={1,2,5,8,9}であるとき、集合Aを求めよ。
《解説》これもベン図を利用して解きます。
まず、A⋂Bは、ド・モルガンの法則によって、A⋃Bなります。これは、A⋃Bの補集合なので、AやBの外側の部分となります。そこが{2,8}となります。
とくに、A⋃Bはわかりづらいです。これは、「Aと、Bでないところを合わせたもの」と考えますので、次のようにベン図で解説していきます。
通常、AとBの集合があれば、全体集合は4つの区域に分かれます。A⋃Bは、そのうちの3か所が合わさった場所です。ですから逆に補集合をとることによって、上の図の白いところが調べられるのです。
ちなみに白い部分は「Aではないが、Bである」ところです。つまり、「AではないかつBである」ということで、A⋂Bとなります。
したがって、A⋂B={3,4,6,7}。これらをベン図にしてみると次のようになります。
この図を見ると、実はA以外のものがわかっていることに気づくでしょう。
つまりAは、これらの補集合をとれば良いのです。
したがって、
A={1,5,9}
となります。
このような問題は、式ばかりを見ていてもピンとこないので、図に書いて、分かる要素をどんどん書き込んでいくようにしましょう。
【例題3】
全体集合をU={x|xは20以下の自然数}とし、その部分集合A={x|xは2の倍数}、B={x|xは18の約数}について、A⋂Bを求めよ。
《解説》AやBの要素が具体的に書かれていないので、まずはその書き換えから始めます。
U={1,2,3,…,20}
A={2,4,6,8,10,12,14,16,18,20}
B={1,2,3,6,9,18}
このようにするとわかりやすくなります。
次に、求める集合がどこにあたるかを考えます。
ド・モルガンの法則により、A⋂B=A⋃Bとできるので、A⋃Bの補集合をとればいいとわかります。
A⋃BはAとBを合わせればよいので、
A⋃B={1,2,3,4,6,8,9,10,12,14,16,18,20}
となります。
求める集合は、その補集合となるので、
{5,7,11,13,15,17,19}
が答えとなります。
まとめ
集合を理解する上で、ド・モルガンの法則は時として効率よくわかりやすい集合に切り替えて考えることができたり、すでにわかっている集合を用いて考えられるようになったりと、便利な法則です。
問題は式として表現されていることがほとんどですので、それを言葉に言い換えたり、ベン図を利用して視覚的に解いたりすることが有効な方法です。
今まで集合が苦手だったという方や、式を見てもちんぷんかんぷんだったという方は、ここでまとめられた方法を用いて解く練習をしてみてください。以前よりもスムーズに解けるようになっていれば幸いです。
記事の内容でわからないところ、質問などあればこちらからお気軽にご質問ください。
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