数列の極限と無限等比級数をわかりやすく解説!数学Ⅲ分野の苦手意識をなくそう
極限の単元は主に数学Ⅲで扱いますが、数学Ⅱでもまれに登場します。
数学Ⅱで微分の定義をしたときに、極限が出てきたことを覚えていますか?
数学Ⅲでは数列の極限をはじめ、さまざまな極限を扱います。
この記事では、数列の極限についてまとめます。
1.無限数列と極限
まず、無限数列の極限について復習しておきましょう。
項が限りなく続くような数列
を無限数列と言います。逆に、項が有限であるような数列を有限数列と言います。
数列の表現としては、数列の第n 項を
と表し、数列全体のことを
と表します。
例えば、数列 の一般項を
としたときに
というように表します。
nを限りなく大きくすることを
この数列
これを数学の記号で表すと
となります。このとき、αを「数列の極限値」と呼びます。
先の数列
であれば、nを限りなく大きくして行くと、
というように書きます。
2.【極限の性質】数列の収束と発散
数列には収束する場合と、収束しない場合があります。
収束する場合には極限値を求めることができることがありますが、収束しない場合には極限値は存在しません。
一般に数列 が収束しない場合、「数列が発散する」と言います。
数列が発散する場合には正の無限大に発散する場合、負の無限大に発散する場合、振動する場合などが考えられます。
正の無限大に発散するような数列は、
などが考えられます。これは、n=∞のときanが限りなく大きくなります。
このことを、「数列が正の無限大に発散する」といい、
と書きます。
同様に、
を考えれば、「負の無限大に発散する」ことがわかるでしょう。
この数列はnの値が大きくなればなるほど、数列の値が小さくなります。
このような性質を持つ数列を、負の無限大に発散する数列と言います。
では、振動するような数列とはどのような数列でしょうか。
例えば、
を考えましょう。
この数列はnの値が大きくなっていっても、正の無限大に発散しませんし、負の無限大に発散することもありません。
このような数列を振動するといいます。
3.極限値の性質
極限の性質として以下のものが挙げられます。
数列
のとき、kを定数として
となります。
また、
のとき
は成立しますが、
は発散することもあれば、収束することもあります。
よく不定形と呼ばれる形ですから、この形が数列の極限で出てきたら、どうにか工夫して不定形でない形にしてから計算しましょう。
「無限大」というのは、「どれだけ大きい正数を指定しても、それより大きい正数になり得る」ことを表す記号です。
定まった数ではないのでそれ自体は計算することができません。
無限大に定数を足しても、それより大きい数を指定できるので、無限大であると言えます。aを実数として
です。これはaがどんな小さな負の数の時でも、無限大はそれを凌駕するくらい大きい正数をとることができるからです。
同じ理由で
という式も成立します。
これは、積についても同じことが言えます。
無限大にどんな小さな正の実数をかけても、無限大になります。これが負の数であれば、
となります。このような「 -∞」を無限小ということがあります。
無限大同士の積も無限大になります。
しかし、無限大同士の差や商を計算することはできません。
先にも申し上げたように、「無限大」とは「どんな大きな正の数よりも大きな正の数を取り得る記号」です。
定まった数ではないので、無限大同士で、どちらがどれくらい大きいとか、どちらがもう片方の何倍である、という比較をすることができないのです。
そのため、
のとき
は成立しますが、
はで発散することもあれば、収束することもあるのす。
また、極限の大小関係として、
のとき、
ならば
つまり、数列同士を比較して常に片方の数列が大きいならば、収束した先もその数列の方が大きい、ということです。
さらに
で
のとき
が成立します。
これを「はさみうちの原理」といいます。
はさみうちの原理は極限に関する重要な原理のうちのひとつです。試験でも極限値を求める際にしばしば利用するので、注意しましょう。
大雑把に説明するとはさみうちの原理とは、「同じ極限値を持つような2つの数列に挟まれた数列は、同じ極限値に収束する」というものです。
数列の極限だけでなく、関数の極限においても「はさみうちの原理」は適用されます。
関数に関する「はさみうちの原理」は
である関数について、
のとき、Aが定数ならば
が成立する、というものです。
4.【極限の性質】無限等比級数とは
数学Ⅱで数列を扱ったときに、その数列の和についても扱ったと思います。
無限数列の和を「無限級数」と言います。数列の記号を使って表すと、
です。
この数列
気を付けておきたいのは、先に申し上げた「数列が収束する」ことと「無限級数が収束する」ことは別物であるということです。
数列が収束しても、無限級数が収束するとは限りません。
たとえば、
について考えてみましょう。
この数列は1に収束しています。
この数列の無限級数Sn を考えると、
となります。nが大きくなると無限級数も大きくなり、この無限級数は発散します。
無限級数については以下のことがわかっています。
この対偶をとると
すなわち、無限級数が収束するかどうかは、元の数列 an によるということです。
ただし先にも申し上げたとおり、
ことに気を付けましょう。
無限等比級数については、もとの数列 an が等比数列です。
等比数列の部分和については数学Ⅱで学習した通り、
です。この無限等比級数が収束するかどうかは、
rn
が収束するかどうか、つまり公比の値によって決まることがわかりますね。
無限等比級数の収束・発散については以下のことが言えます。
①
②
③
5. おわりに
最後までご覧くださりありがとうございました。この記事では、数列の極限についてまとめました。
数列の極限については数学Ⅲで詳しく学習するので、主に理系の学生が勉強します。
問題によっては非常に難解な捨て問も存在しますが、基本的には、順番に考えていけば解ける問題が多いです。
苦手意識を持たずにしっかり取り組んでみてください。
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