無限等比級数とは?基本からわかりやすく解説!
無限、という概念は数学上、意外に厄介です。文字の意味だけをとらえれば、「限りが無いこと」ということになりますが、数学では1次の無限大、2次の無限大など無限大の程度の違いもあり、実際の取り扱いは文脈によるところが大きでしょう。単に「とても大きい数」という意味で扱うこともあります。無限等比級数は、そんな無限を扱います。この記事では、無限等比級数についてまとめます。
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1. 無限等比級数の基礎①等比数列
無限等比級数を扱う前に、数学Bで扱った基礎的な等比数列について復習しておきましょう。
※等比数列に関する記事はこちらからご覧ください。
等比数列とは、文字通り「比が等しい数列」です。
たとえば、以下のような数列 an は等比数列です。
an = 3,6,12,24,48,96,192,………
多くの場合、等比数列を扱う場合には「無限数列」を設定します。
数列には有限数列と無限数列があり、項の個数に限りがあるものを有限数列、項の数に限りが無いものを無限数列といいます。
数列 an の法則はすぐにわかると思います。
前の項に2をかけたら、次の項になっていますね。
つまり、「前の項と次の項の比が常に2になっているような数列」なので、等比数列といいます。
このとき、 an は「初項が3で、公比が2であるような等比数列である」といいます。
等比数列を考えるときには、この「初項」と「公比」2つさえわかれば、等比数列がただ一つに定まります。
つまり、その等比数列に関する式を2つたてて、連立方程式を解けば、等比数列の一般項が求まるということになります。
初項が a 、公比が r であるような等比数列 an の一般項は
an =arn-1
です。
2. 無限等比級数の基礎②等比数列の和
数学Bで数列を学習したとき、非常に多くの公式があり苦労したのではないでしょうか。
しかし、数列の公式は(最終的には頭に入れなければなりませんが)、覚えるというより、なぜそうなっているかを理解する方が大切です。
Σを使った和の公式を求めるのは骨が折れますが、その他の数列の公式を導くことは、そう難しくありません。
等比数列の和の公式も、簡単に導くことができます。
等比数列の一般項は
an =arn-1
です。
つまり、等比数列 an の n 項目までを書き並べて表すと以下のようになります。
an=a, ar, ar2, ar3, ar4……… arn-1
等比数列 an の n 項目までの和を Sn とすると
Sn=a + ar + ar2 + ar3 + ar4 +⋯……+ arn-1
となります。この Sn を求めたい!
というわけです。
Sn に公比 r をかけます。
rSn=ar + ar2 + ar3 + ar4 + ar5 +⋯……+ arn-1 + arn
ここで、Sn と rSn に共通する項が多く見られるのに気づくでしょうか。
Sn-rSnを考えると、真ん中の項がごっそり消えてくれます。
というように計算することで、等比数列の和の公式を求めることができます(ただし公比は1でないとします)。
等比数列の一般項が「rn-1」なのに対して、和の公式で使っているのが「rn」ですので、苦労された方もいるのではないでしょうか。
このような理屈がわかっていれば、迷うことはありません。
等比数列の和の公式を求める際には、「公比 r をかけている」ので、和の公式では rn となるのです。
3. 無限等比級数
ここからは無限級数の説明に入っていきます。
さて等比数列の和では、第1項から第 n 項までの和を考えました。
つまり有限な等比数列の和です。
無限数列の和を「無限級数」といいます。記号を使って表すと、
となります。先の
Sn=a + ar + ar2 + ar3 + ar4 +⋯……+ arn-1
は無限級数の部分和といいます。
さて、ここで考えてみましょう。一番初めの数列 an、
an = 3,6,12,24,48,96,192,………
の部分和 Sn です。
S1=3
S2=3+6=9
S3=3+6+12=21
S4=3+6+12+24=45
このまま続けていくと、どんどん大きな数になっていくはずです。つまり、どこかの値に近づいていくことがありません。
もし部分和が、ある値に限りなく近づいていくことを「収束する」といいます。
収束しないことを「発散する」といいます(発散には広義には振動も含まれます)。
そして、部分和が発散するとき、「無限級数が発散する」といいます。
一部がどんどん大きくなっていくなら、当然全体もどんどん大きくなっていきますよね。
ですから、この無限等比級数は発散します。
では、無限等比級数が収束する場合というのは、どのような場合でしょうか。
結論から言えば、無限等比級数に限らず、無限級数については以下のことがわかっています
対偶をとると
となります。
すなわち、無限級数が収束するかどうかは、元の数列 an による、ということです。
ただし
ことに気を付けましょう。
無限等比級数に話を戻しましょう。等比数列の和は
でした。このとき、元の数列 an が発散するか0に収束するかは、公比 r に依存しているのがわかるでしょうか。
たとえば
an= 3,6,12,24,48,96,192,………
のような、公比が2の等比数列であれば、an は発散しますよね。
一方
のような、公比が 1/2 の数列であれば、元の数列の項はどんどん0に近づいていきます。つまり、an は0に収束します。
無限等比級数に限っては、部分和がわかっています。
この数式を眺めてみて、収束や発散にかかわりそうな部分はどこでしょう。
rn であることがわかりますか。
もしも rn が発散すれば、Sn 全体も発散します。
一方、rn が収束すれば、Sn は収束します。
たとえば、rn が0に収束すれば、
となり、n に依存しない値になりますね。
では、その rn の収束・発散はどのようにして決まるでしょう。
もちろん、公比 r の値によって決まります。
先も申し上げた通り、公比が2なら発散して、公比が 1/2 なら収束します。
もっと言えば、
① -1 < r < 1 であれば limn→∞rn = 0
② r ≦ -1, 1 < r であれば limn→∞rn は発散する
③ r = 1 であれば limn→∞rn = 1
となりますね。
ではそれぞれの場合 Sn はどうなりますか。
①の場合は先にも申し上げました。
です。
②の場合
から、発散します。
③の場合、すなわち r = 1 であれば、数列 an は
an = a, a, a, a, a, a…………
となります。この第 n 項までの部分和 Sn は
Sn = na
です。これは n が無限大になれば発散します。
①~③より、無限等比級数の収束・発散に関して以下のことが言えます。
a ≠ 0 のとき、無限等比級数
a+ar+ar2+ ar3+ar4+⋯……+ arn-1+⋯……
の収束発散は、次のようになる
・-1< r <1 のとき、収束して、その和は 、
である。
・r<-1 ,1<r のとき、発散する。
無限級数の性質のまとめ
4. 例題
無限等比級数
が収束するような実数 x の値の範囲を求めよ。ただし、x ≠ -1 とする。
解答・解説
まず、この無限等比級数のもとになっている数列について考えます。
初項が x、公比が
の無限等比級数です。
無限等比級数が収束するための条件は、公比が-1から1までの数であることでしたから、求める条件は
から
x<-2, 0<x
となります。
ただし、無限等比級数が収束するための条件は、実はもう一つ隠されています。
それは「初項が0である」ことです。
公比がいくらであっても、初項が0なら、元の数列は0に収束するので、無限等比級数も収束します。
ですから、求める条件は、初項 x = 0 という条件も含めて
x<-2, 0≦x
が答えになります。
この初項の条件を忘れる人が多いので、初項が文字で表されているときには注意しておきましょう。
5. 無限等比級数のまとめ
最後までご覧くださってありがとうございました。この記事では無限等比級数についてまとめました。
無限等比級数は、言葉の定義があいまいな受験生が多いですが、あいまいでもなんとなく解けてしまう分野でもあります。
とはいえ、数学をはじめとする理系分野で重要なのは「定義」です。
しっかり言葉の意味を頭に入れておきましょう。
それさえできていれば、自然と導かれる公式も多いです。