多項定理とは?公式と使い方・順列を使った証明方法を解説

数学 2024.12.17
多項定理とは?公式と使い方・順列を使った証明方法を解説

多項定理の公式はn!/p!q!r!であり、この公式に当てはめれば簡単に係数を求めることができます。高校数学の中で苦手に感じる単元の1つに多項定理がありますが、公式を使いこなせるようになることで、だんだんと解けるようになるでしょう。

この記事を読めば、難しいと感じやすい多項定理の応用の問題も自由に解けるようになるかもしれません。練習問題も出題しているので、必ず解けるようにしましょう!

この記事で分かること
・多項定理の公式を導出できるようになる
・多項定理の公式の理解を深められる
・多項定理を使った代表的な問題の解き方が分かる

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    多項定理とは?【展開後の項の係数を求める問題】

    二項定理では、(a+b)と2つの項の式を展開しましたが、これが3項以上になった場合に、展開式について成り立つ定理が多項定理です。とくに展開をした式での特定の項の係数を求める時に利用します。まずは多項定理とは何かについて紹介します。

    多項定理の公式:n!/p!q!r!

    多項定理の公式は次のとおりです。

    (a₁+a₂+a+・・・+am)nの展開式におけるap₁₁ap₂₂・・・apの項の係数はn!p₁!p₂!・・・pm!(ただしp₁+p₂+・・・+pm=n)
    特に(a+b+c)3の展開式におけるapbqcrの項の係数は3!p!q!r!

    ここで、p+q+r+nの条件が成立します。多項定理が扱われた問題では、特定の項の係数が問われることが多く、この公式の係数部分であるn!p!q!r!の部分が特に重要です。

    公式を使って係数を求める

    多項定理の公式をまとめると以下のようになります。

    多項定理の公式

    たとえば、(a+b+c)3の展開式におけるab2の項の係数は、p=1, q=2, r=0として、
    3!1!2!0!
    61・2・1
    = 3

    となります。

    【応用編】定数項の求め方

    定数項とは文字がついていない項のことです。例えば、2a³のような項は定数項でなく、数字のみの項を指します。多項定理を利用するには、一般項を求め、文字部分を消すために文字の係数の値を絞り込みます。具体的な定数項を求める問題を用いながら解説します。

    《例1》

    (x2+2x+3)3の展開式における一般項を求めよ

    《解答・解説》

    (a+b+c)3の展開式におけるapbqcrの項の係数は3!p!q!r!であるから、
    apbqcrの項は3!p!q!r!apbqcrと表現できる。

    (x2+2x+3)3の展開式の場合、a=x2,b=2x,c=3とおくと、展開式の一般項は、3!p!q!r!(x2)p(2x)q3rとなることに注意する。
    この項を計算すると、
    3!p!q!r!x2p・2q・xp・3r
    =3!p!q!r!・2q・3r・x2p+q
    (このことから、x2p+qの項の係数が3!p!q!r!・2p・3rであるといえる)

    この考え方を利用すると、展開式の定数項を知ることもできます。

    《例2》

    (x-1+ x
    )6の展開式における定数項を求めよ。

    《解答・解説》

    この展開式の一般項は、


    6! p!q!r!
    xp(-1)q( x)r

    =
    6! p!q!r!
    xp(-1)qxp-r

    ここで、定数項はx0の項であることに注意をして

    p-r=0
    p=r

    ここで、p,q,rは0≦p≦6,0≦r≦6,p+q+r=6をみたす整数より

    p=0,r=0,q=6
    p=1,r=1,q=4
    p=2,r=2,q=2
    p=3,r=3,q=0

    の4つの場合があり、定数項はこれらの各係数の総和である。

    したがって、定数項は

    6!0!6!0!(-1)6+6! 1!4!1!(-1)4+6! 2!2!2!(-1)2+6! 3!0!3!(-1)0
    =1+30+90+20
    =141

      多項定理の公式の証明

      多項定理を利用すれば、展開式の特定の項を早くかつ無駄なく調べられます。それでは次に、多項定理がなぜ成り立つのかについて、展開式の考え方と、一般的な形について、証明を交えて解説します。

      問題を公式に当てはめる

      (a+b+c)nの展開式を、違った角度からとらえてみましょう。

      まずは(a+b+c)3の展開式を例に、展開する際に、どのようなことが行われているのかについて考えていきましょう。

      (a+b+c)3
      =(a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)

      =aaa+aab+aac+aba+abb+abc+aca+acb+acc
        +baa+bab+bac+bba+bbb+bbc+bca+bcb+bcc
        +caa+cab+cac+cba+cbb+cbc+cca+ccb+ccc
      =a3+3a2b+3a2c+3ab2+6abc+3ac2+b3+3b2c+3bc2+c3

      (a+b+c)3の展開式に現れるすべての項は、3つの( )からそれぞれa,b,cのうちのどれか1つだけを因数として選んで、それらを3つかけ合わせたものとなります。

      多項定理の証明画像

      同じように、(a+b+c)⁵の場合も、(a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)と、5つの( )からそれぞれ1つずつ選んだもののかけ合わせを考えるのです。

      たとえばそのとき、a2b2cの項がいくつ作られるか(係数がいくらか)を考えるとすれば、

      1番目の( )  2番目の( )  3番目の( )  4番目の( ) 5番目の( )↓       ↓       ↓        ↓        ↓

      a                      a                      b                         b                         c          ⇒ aabbc

      b                      c                      a                         b                         a              ⇒ bcaba

      …       …       …        …        …

      と、aを2個、bを2個、cを1個選ぶ方法だけ項があると考えます。

      これは「同じものを含む順列」であり、この場合の総数は

      5! 2!2!1!
      =30

      となり、係数が30であることがわかります。

      この事実を利用すれば、展開したときの特定の項について調べられます。

      当てはめたものを一般化する

      さて、これを一般的にいうと、次のようになります。

      (a+b+c)nの展開式における一般項はn!p!q!r!apbqcr

      これを証明します。

      ここでは、二項定理をもとに証明する方法を紹介します。

      《証明》

      {(a+b)+c}nの展開式の一般項は、二項定理よりn-rCr(a+b)n-rcr
      この式の展開式の中にapbqcrの項が含まれているので、その項について考える
      (a+b)n-rの展開式における一般項はn-q-rCqan-q-rbq
      ここで、p+q+r=nとすると、(a+b+c)nの展開式におけるapbqcr
      n-q-rCqn-rCran-q-rbqcr
      また、
      n-q-rCqn-rCr
      =
      (n-r)!
      p!q!

      n!
      (n-r)!r!

      =
      n!
      p!q!r!

      したがって、(a+b+c)nの展開式における一般項は
      n! p!q!r!
      apbqcrとなる

      多項定理の例題【基礎】

      多項定理を利用した例題を次に紹介します。さまざまな形の問題がありますので、少しでも解法を理解しておきましょう。

      例題1:係数を求める問題

      《例題1-1》

      (a+b+c)6の展開式におけるab3c2の係数を求めよ。

      《解答・解説》

      6! 1!3!2!
      =120
      この問題は、a,b,cの係数がすべて1であり、a,b,cの項が累乗されても係数に影響しないため、その部分は省略しています。a,b,cの係数が1か所でも1でなければ、一般項全体で計算する必要があります。

      《例題1―2》

      (x-2y+4z)5の展開式におけるxy2z2の係数を求めよ。

      《解答・解説》

      一般的には

      5!
      1!2!2!
      x1(-2y)2(4z)2

      5!
      1!2!2!
      x・(-2)2・y2・42・z2
      =30・4・16xy2z2
      =1920xy2z2

      よって係数は1920

      例題2:0!を含む問題

      《例題2》

      (a-2b-3c)7の展開式におけるb5c2の係数を求めよ。

      aを1個も含まない項を調べますが、「aが0個=a0」と考えましょう。

      《解答・解説》

      一般項は

      7!
      0!5!2!
      a0(-2b)5(-3c)2
      =21・1・(-2)5・b5・(-3)2c2
      =21・(-32)・9b5c2
      =-6048b5c2

      求める係数は-6048

      ここで注意したいことは、「0!=1」であるということです。

      これは「0個のものを1列に並べる方法は、「何も並べない」という1通りの方法だけである」ことを意味しています。

        多項定理の例題【応用】

        《応用例題》

        (x2+3x+2)8の展開式におけるx2の項の係数を求めよ。

        《解答・解説》

        一般項は

        8!
        p!q!r!
        (x2)p・(3x)q・2r

        8!
        p!q!r!
        3q・2r・x2p+q
        これがx2の項を表すと考えれば、2p+q=2である
        またp,q,rは、p≧0,q≧0,r≧0,p+q+r=8をみたす整数であることから
        p=0,q=2,r=6
        p=1,q=0,r=7
        の2つの場合がある。
        それらの総和が求める係数である。

        8!
        0!2!6!
        32・26・x2+
        8!1!0!7!
        30・27・x2
        =28・9・64x2+8・1・128x2
        =16128x2+1024x2
        =17152x2

        係数は17152である。

          まとめ

          多項定理は、累乗を使った多項式を展開するときに非常に重要な定理です。

          本記事では、多項定理の公式からその使用方法、さらには公式の証明方法までを詳しく解説しました。特に入試では重要な知識となるため、しっかりと理解して問題に取り組むことが大切です。例題を通じて、多項定理の具体的な使い方を身につけ、確実に得点できるようにしましょう。

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          この記事の執筆者

          ニックネーム:受験のミカタ編集部

          「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。