ロピタルの定理はうまく使えば武器になる!証明や問題の解き方を紹介!

数学 2019.12.11

高校数学の極限の問題の中には、実はロピタルの定理を活用すると簡単に解けるものがあります。
ロピタルの定理は、学校ではあまり触れないことが多いですが、知っていれば大幅に計算時間を短縮できる、高校数学の裏技のような定理なのです。

しかし、ロピタルの定理は万能ではなく、使える問題と使えない問題があるため、条件を理解できていないとミスに繋がることがある諸刃の剣です。

この記事ではロピタルの定理の使い方と実際の問題の解き方を解説していきます。
ライバルに差をつける試験のテクニックとして、是非読んでみてください。

1.ロピタルの定理とはなにか?

まず、ロピタルの定理とはどのようなものなのか簡単に説明します。

ロピタルの定理はf(x),g(x) が x=aの近傍で微分可能かつ


のとき

が存在すれば

というものです。

 

一言でいうと、「関数の極限値を求める問題について、条件を満たしていれば、分子、分母それぞれを微分することができる」ということです。

文字だけではピンとこないと思いますので、例題を解いてみます。

 

【例題】


の極限値を求めよ。

 

 

 

 

 

【解説】

ロピタルの定理が使える条件は後に詳しく述べますが、
この定理は不定形(0/0や∞/∞)の極限を求める問題で効果を発揮します。

この定理を用いて分子を微分するとsinx、分母を微分すると 2sinx cosx となります。


つまり、この極限を求めると =1/2 となります。

 

どうでしょうか。
極限値を求める問題がかなり簡単に回答できることが分かるかと思います。

普通に問題を解くと工夫が必要になり、回答に時間がかかってしまいますが、この定理を用いると簡単に求めることができるのです

2.ロピタルの定理の証明

ロピタルの定理について、どのようなものであるか、ざっと説明しましたが、「知らなかった!」という人も多いのではないでしょうか。学校の授業で習わなかったという人もいるかもしれません。

ロピタルの定理は非常に便利ですが、注意事項が1点だけあります。

実はこのロピタルの定理は、高校の教科書にある定義・定理だけを使って証明することができないのです。そのため、証明問題や、記述式の問題等では減点を受ける可能性があります。

ただし、それ以外の答えのみを求める問題や、記述式の問題を解いた後の検算などには非常に有効です。使いどころを間違えなければ、かなり有効な武器になりますので、上手く使い分けて、得点アップを目指しましょう。

 

なお、ロピタルの定理を証明するには、次の3つの段階を経る必要があり、すべてを証明するのには大変な労力がかかります。

ここでは使用する定理の紹介のみに留めておきます。
もし興味のある人はネット検索等で調べてみてください。詳しく紹介したページが沢山ヒットします。

①平均値の定理を証明する
【ロルの定理】
a<bとし、関数y=f(x)はf(a)=f(b)を満たすとすると、
このとき、a<c<bをみたすあるcが存在してf'(c)=0 が成り立つ。

まず、平均値の定理を証明するために、ロルの定理という微分の定理を用います。
ロルの定理から平均値の定理を導きます。

【平均値の定理】
区間 [a,b] で連続,(a,b) で微分可能な関数 f(x) に対し
(f(b)-f(a))/(b-a)=f’ (c) を満たす c が a と b の間に存在する。

 

②平均値の定理を用いて、コーシーの平均値定理を証明する。
①で証明した平均値の定理を用いてコーシー平均値定理を導きます。

【コーシーの平均値定理】
関数 f(x) と g(x) が区間 [a,b] 連続で、区間 (a,b) で微分可能な場合、


を満たす実数 ξ∈(a,b) が存在する。 ただし、区間 (a,b) で g′(x)≠0 とする。

 

③コーシーの平均値定理を用いて、ロピタルの定理を証明する
②を経て、ようやく、ロピタルの定理を導くことができます。

3.ロピタルの定理が使える関数、使えない関数

1項目で少し触れましたが、ロピタルの定理は使える関数と、使えない関数があるため、使用するときは注意が必要です。
ここでは、ロピタルの定理の使える場合と使えない場合について、例題を交え詳しく説明します。

①ロピタルの定理が使える場合:不定形(0/0や∞/∞)の極限を求めるとき
【例題1】

この関数は、分子(1-cosθ)、分母(θ2)ともに0に収束する0/0の不定形のため、ロピタルの定理を使うことができます。

=1/2 となります。

 

【例題2】

この関数は、分子(log t)、分母( t )共に∞に発散する∞/∞の不定形のため、ロピタルの定理を使うことができます。

=0 となります。

 

②ロピタルの定理が使えない場合:不定形でない関数の極限を求めるとき

こちらは、分子(sinx)が振動し、収束も発散もしません。
0/0、∞/∞の不定形ではないため、ロピタルの定理を使うことができません。

はさみうちの定理により
-1/x≦ sinx/x ≦ 1/x (x>0)であるため、

=0 が正解となります。

 

はさみうちの定理は、数列の場合、数列{an},{bn},{cn}があって常にan≦bn≦cnであるとすると、an→A、cn→Aだとすれば必ずbn→Aが成立するという原理です。

その数列より常に大きい数列と常に小さい数列の極限値が等しいとき、間の数列の極限も等しくなります。これがはさみうちと呼ばれる理由です。

こちらで詳細を説明していますので、もし興味がありましたら活用してください。
→はさみうちの定理について詳しく復習したい人はこちら!

 

ちなみに、無理にロピタルの定理を使おうとすると

となり、「極限なし」という回答になってしまいます。

ロピタルの定理を使う前には、条件に合っているかをまず確認するようにしましょう。

4.【ロピタルの定理】練習問題

練習問題

次の極限値を求めてください。
(1)

(2)

(3)

 

 

 

 

 

 

<<スクロールすると解説>>

 

 

 

 

 

 

 

解説

(1)分子(sin2x)と分母(x+sinx)は0/0 の不定形のため、ロピタルの定理を使うことができます。

=1となります。

 

(2)分子(log(2x+3))と分母(log(3x+1))は∞/∞の不定形のため、ロピタルの定理を使うことができます。

=2/3×3/2
=1 となります。

 

(3)分子(x2+2x+3)と分母(4×2+5x+6)は、0/0、∞/∞の不定形ではないため、ロピタルの定理を使うことができません。

極限値は3/6 =2  となります。

もしロピタルの定理で分子、分母を微分してしまうと、


となり、答えが2/5と異なってしまいます。

ロピタルの定理を使うときは、まず不定形かどうかを確認しましょう。

5.ロピタルの定理まとめ

ロピタルの定理について、実際の問題での活用方法を中心に解説をしてきましたが、いかがでしたか。

この記事で説明した内容は次の通りです。

①ロピタルの定理は、f(x),f(x) が x=aの近傍で微分可能かつ


のとき

が存在すれば

②ロピタルの定理は、高校の教科書にある定義・定理だけを使って証明することができない。
以下の3つが必要となる。
・平均値の定理の証明
・平均値の定理を用いて、コーシーの平均値定理を証明
・コーシーの平均値定理を用いて、ロピタルの定理を証明
記述式の問題等では減点を受ける可能性がある。ただし、それ以外の答えのみを求める問題や検算などには非常に有効。

③ロピタルの定理が使える場合:不定形(0/0や∞/∞)の極限を求めるとき

④ロピタルの定理が使えない場合:不定形でない関数の極限を求めるとき

⑤ロピタルの定理を使うときは、まず不定形かどうかを確認!

 

この記事は、複雑な計算や証明などを極力省き、理解がしやすいよう表現をしてみました。

詳しい証明や計算方法が知りたいネットで検索をしてみてください。証明は大変複雑ですが、理解できた時は大きな充実感が得られることでしょう。
そこまで突っ込みたくないという人も、まずはこの記事を読んで問題集を解いてみて、ロピタルの定理の便利さを実感してみてください。

苦手な問題が少しでも減り、得点アップができることを祈っています。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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