重力加速度の求め方と自由落下・鉛直投射・斜方投射の計算問題

物理 2022.12.14

物体の落下は、私たちの周りで非常によく見られる現象です。

高いところに物体を持っていき、手を放すと、その物体は地面に向かって落下します。

実際の落下運動には空気抵抗があるため、落下速度は一定に近づきますが、高校物理の落下運動で空気抵抗を考慮することはほとんどありません。

そのため、高校物理の落下運動において、落下物の速度は一定の割合で上がっていきます。

この割合のことを「重力加速度」と言います。

この記事では、重力加速度についてまとめます。

		

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1.重力加速度での速度と加速度とは

静止している物体に力が加わることで、その物体は速度をもって動き出します。

物体が速度を持っている状態とは、その物体の位置が移動しているということでもあります。

つまり物体の速度とは、物体の位置が変化する割合のことを言います。

の式は小学生のときに習ったと思います。

ここからも分かるように、速度とは「単位時間あたりにどれだけ物体の位置が変化するか」という単位を表します

速度を持っている物体に全く力が加わらなければ、その物体の速度は変わらず(一定の速度で)、一直線上を無限遠まで移動してゆきます。

この運動を「等速直線運動」と言います。

現実には、空気抵抗や摩擦力が働き、運動している物体はいずれ静止しますが、高校物理の多くの問題は、空気抵抗などを考慮しない理想的な状態として出題されることが多いです。

 

静止している物体に力を加えると物体は動き出しますが、その物体にさらに力を加え続けると、速度が変化します。

同じ方向に力を加え続ければ、速度も増え続けます(加速します)。

この、速度の変化の割合を加速度と言います。

先と同じ言い方をすれば、加速度とは「単位時間当たりにどれだけ物体の速度が変化するか」を示す単位である、ということになります。

速度の単位が

 

であるのに対して、加速度の単位は

です。高校物理では、物体の位置(変位)をx、時間をt、速度をv、加速度をaで表すことが多いです。

 

また、初速度や初期位置は、添え字に0を付けてというように表します。

質量mの物質に、力Fを加えた時に与えられる加速度をaとすると

の関係が成立します。この式をニュートンの運動方程式といいます。

運動方程式は物理学で非常に重要な方程式であり、ざっくりいえば「力を加えると物質は加速する」ということを表しています。

運動する物体の基本中の基本となる方程式です。

 

2.重力加速度とは

前の章をまとめると、物体に同じ方向に力が加えられ続ければ、その物体は加速していく、ということになります。

また、高いところから物体を落下させると、物体は重力という力を受け、加速しながら落下してゆきます。

現実的には空気抵抗の影響を受け、一定の加速度にはなりません。

しかし、高校物理の理想化された状態では、常に一定の重力を受け、空気抵抗を考えないので、加速度は一定になります。

このときの重力による一定の加速度を、重力加速度と言います。

 

重力加速度は、 で表され、その値は

です。

重力加速度の本質は、万有引力の法則です。

万有引力とは互いに引き合おうとして影響し合う力のことであり、万有引力の法則は、この力が質量を持つすべての物体間に働くという法則です。このとき、物体間には質量の積に比例し、距離の2乗に反比例します

万有引力の大きさをF、物体の質量をM, m、物体間の距離をrとすると、

となり、Gは万有引力定数と呼ばれる比例定数です。Gの値は

であり、とても小さいので普通の物体間では基本的に無視されますが、すべての物体の間には万有引力が働いていて、いま机の上にある鉛筆と消しゴムの間にも万有引力が働いています。

地球と物質の間に働く万有引力が、重力です。

重力加速度をg、地球の質量をMとおくと、

 

です。Gは定数、地球の半径は約6400km、地球の質量はMですから、重力加速度を求めることができます。

このことから、物質間の距離を地球の半径として計算していることが分かります。

ですから、地表で物体を落としたとき、重力加速度は

に近くなりますが、非常に高い場所から物体を落とせば、地球と物体間の距離が大きくなりますから、厳密には、重力加速度の値は変化します。

ほとんどの場合、高所による重力加速度の変化は無視します。

 

3.【重力加速度】自由落下と鉛直投射

物体が初速度0で落下する運動を自由落下と言います。

等加速度直線運動の公式として、

 

3つの式が成立します。

ここで、x [ m ] は時刻t [ s ] における物体の位置、v [ m / s ] は同時刻t [ s ] における物体の速度、加速度は です。

 

面白いのは、物質の質量が式に含まれていないということです。

つまり、1gの物体と100tの物体を同じ高さから落とすと、全く同じ速度で落ちてゆくということです。

現実的には、空気抵抗や物体の形状の影響で、同時に落下することはほとんどありません。

 

この3つの式に対して、加速度aを重力加速度gに、初速度v0=0 を代入すれば、自由落下の公式の完成です。

つまり、「自由落下とは、初速度0で落下する運動である」ということさえ理解していれば、改めて自由落下の公式を覚える必要はないということです。

 

です。3つ目の式を使うことはほとんどありません。

なぜなら、もともと等加速度直線運動の公式の3つ目は、2つ目の式を1つ目の式に代入して整理したものです。

時間tの文字を消去しただけの式ですから、本来は

2つだけで事足りますが、知っていると便利な式として、

が加えられています。自由落下の公式においては、もとから項が少ないので3つ目の式を利用するメリットはほとんどありません。

 

自由落下に対して、初速が付いたような運動を鉛直投射と言います。

真上に投げ上げるような運動、真下に投げ下ろすような運動のことです。

自由落下が等加速度直線運動の公式によって導かれるように、鉛直投射も等加速度直線運動の公式をそのまま使います。

ですから、まずは

 

をしっかり覚えましょう。鉛直投射においては、鉛直投げ下ろし運動の時に加速度aが重力加速度gに置き換わるだけです。すなわち、

 

となります。

鉛直投げ上げ運動の時は、運動が重力の逆の上むきに行われていることから、加速度aが重力加速度gの反対という意味の-gに置き換わります。すなわち、

 

となります。このことをわかりやすく図で示すと、下図のようになります。

 

4.【重力加速度】例題と練習問題

例題

地上から29.4mの位置からボールを自由落下させた。このボールが地上につくのは、落下させてから何秒後か。また、そのときのボールの速度を求めよ。ただし、重力加速度はとする。

 

解答

等加速度直線運動の公式を利用します。

において、この問では、初速が0、初期位置x29.4m、加速度a9.8です。これらを代入すると、

 

となります。そのときの物体の速度は、

v= v+ at

より、

です。

 

 

 

 

 

. 地上から真上に初速度68.6 m / s でボールを投げ上げた。ボールが最高点に達するのは、投げ上げてから何秒後か。ただし、重力加速度は とする。

 

 

解答・解説

自由落下もそうですが、重力加速度の他に力が加わっていないというのが重要な点です。

ボールを真上に投げ上げると、鉛直下方向に の運動をします。

最初は鉛直上方向に運動しますが、いずれ最高点に達し、その後自由落下運動をします。

最高点に達した瞬間、物体の運動は静止しています。

ですから、速度が0になったときの時刻を求めればよいことになりますから、

v= v+ at

において、  を代入します。ここで重要なのは、重力加速度が働く方向が下方向なのに対して、初速度は上向きである点です。

上向きを正とするなら、重力加速度を-9.8とすべきですし、逆に下向きを正とするなら初速を-68.6としなければなりません。どちらにするかは好みです。

よって、答えは7秒後。

 

 

 応用問題<斜方投射>

斜め方向に物体を投げるような運動を、斜方投射と言います。

斜方投射の問題は、水平方向の運動と、鉛直方向の運動に分けて考えます。

重要なのは、運動方程式で表されているように、「物体が加速するためには、力が加わらなければならない」ということです。

斜めに物体を投げたとき、鉛直方向には常に重力が加わっていますが、水平方向には何の力も加わっていません。

つまり、鉛直方向には等加速度直線運動を、水平方向には等速直線運動をすることになります。

 

例題

水平な地面から、地面に対して角度  をなす斜め上方へ小球を初速 で投げたとき、最高点に達する時刻 と、そのときまでの水平移動距離 を求めよ。ただし、重力加速度は  とする。

 

 

解答・解説

 

水平方向と鉛直方向に分けて考えます。

鉛直方向の初速は、 ですから、鉛直方向で速度が0になる時刻を求めればよいので、

 

水平移動距離 は水平方向の等速直線運動を考えます。

水平方向の初速は、 であり、 だけ進みますから

が答えになります。

 

重力加速度のまとめ

最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事では、重力加速度についてまとめました。

ご参考になれば幸いです。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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