レンツの法則の考え方 基本はあまのじゃくの発想で解ける!
レンツの法則は電磁気分野の中で重要な法則の一つです。
この記事では、レンツの法則の基本事項をまとめて見ました。
テスト前には是非読んで見てください。
レンツの法則解説①.電磁誘導という現象
コイルと豆電球をつないだ図のような回路があります。
このコイルに磁石を素早く近づけたり、あるいは離したりすると、豆電球が一瞬だけ点灯します。
これはコイルに磁石を近づけたり話したりすると、電流が流れるという現象が起きたためです。
このような現象のことを、電磁誘導といいます。
この電磁誘導は発見当時とても注目されました。磁石を連続的に近づけたり離したりすれば電気を得られるため、発電機として利用しようと考えたわけです。
そこで科学者らが研究し、ハインリヒ・レンツと、マイケル・ファラデーという二人が二つの法則を発見しました。(高校物理までは、この2人の法則が紹介されます)
それが、レンツの法則と、ファラデーの法則です。
イメージ的には、レンツの法則は「こんなことをしたら電気はこっち向きこれくらい流れる!」という
アバウトなもので、ファラデーの法則は具体的に数式で起電力や電場を表したものです。(実際にはもっと具体的にいろいろやっていますが、これくらいのイメージでOKです。気になる方は、図書館に行って電磁気学に関する本を読んでみましょう。)
さて、この記事ではレンツの法則に注目して説明していきます。
レンツの法則解説②:コイルの磁界の考え方
レンツの法則の説明では、コイルと電流計をつないだ回路で説明されると思います。
コイルの巻方向によって、流れる電流の向きが変わるので、一概に左向き、右向きと暗記するのは得策ではありません。
そこで、コイルに磁石を近づけたり離した場合、その付近がN極かS極のような状態になり、電流が流れることを利用し、コイルが何極になるか?という風に解釈します。
レンツは実験の結果、コイルを近づけたり離したりすると、その付近のコイルは表のような磁石の極のような状態になることを見つけました。
磁石の極と、近づけるか遠ざけるかの行為を比較すると、コイルはあまのじゃくのような特性があることがわかります。
つまり、N極を近づけようとすると、コイルの端はN極っぽくなり、磁石と反発しようします。
反対に、N極を遠ざけようとすると、今度はコイルの端はS極っぽくなり、磁石を引き付けようとします。
まるでツンデレですね。
誘導電流の流れる向きは右ねじの法則で考える。
コイルの一方が磁気を持つと、コイルはまるで棒磁石のように磁場が発生します。
棒磁石の場合は磁力線を書くとN極から線が出てS極に戻るような磁界になりますが、コイルも全く同じです。
N極になった一端から磁力線が伸び、他方のS極に戻るような磁力線の分布が起きます。
ここで、中学で習う右ねじの法則の登場です。親指の向きがN極の向きで、残りの指がコイルを流れる電流の向きを表します。
磁場を持ったコイルでは、右ねじの法則に従って、コイル内を電流が流れます。
この時に流れる電流のことを、誘導電流と言います。
誘導電流が流れる向きは、コイルの巻き方によって異なりますので、
問題に描かれているコイルの巻方向をよく確認して答えましょう。ここまでを図で整理しておきます。
以上が、レンツが発見した法則で、このようにコイルの端部が近づける磁石の極の向きによって誘導電流が流れる向きが変化するというものでした。
レンツの法則解説③:レンツの法則が意味するものとは
学校の試験対策では、上記で説明した法則をその場で当てはめるだけで十分に求めることができます。ここからは、少し踏み込んだ話をします。
繰り返しますが、レンツの法則はあまのじゃくと覚えてください。
磁石を近づけると必ず磁石を反発するような磁界になり、磁石を遠ざけると必ず磁石を近づけるような磁界が現れます。
・ ・・では、なぜこのような現象が起きるのでしょうか?
力学の法則で電磁気がわかる!
その答えは、ニュートンの第三法則と、エネルギー保存則にあります。
えっ?こんなところでニュートンの法則?となるかもしれませんが、電磁気学は見方によっては電子というとてもとても小さい質量を持った物体の運動です。
(電子の静止質量は9.11×10-31 kg)極めて質量が小さいので普段は無視して考えますが、質量を持った物体の運動であれば、当然ながらニュートンが示した運動の法則が適応されます。
その中で、ニュートンの第三法則に作用反作用の法則があります。
この法則は、物体に力を作用させると、同じ位置から向きが反対で同じ大きさの力が発生するというものです。
また、エネルギー保存則とは、エネルギーの総量は変わらないというものです。
ここではコイルが持つ磁界のエネルギーになります。エネルギーをイメージしにくい人は、方位磁石のN極を動かすエネルギーと考えてください。
さて、話を戻しますと、コイルに磁石を近づけるという行為は、コイルの中の磁場を変化させる行為に相当します。
磁場とは、簡単に説明すると棒磁石のN極が向く方向と、N極を向かせるのに必要な力を示しています。
磁石のS極に、方位磁石を近づけると、方位磁石のN極はすばやくS極を向きます。向かせる力は強いですね。
ちょっと横に動かしても、ビシッとS極を向いたままです。
一方、N極をS極から遠い場所に置くと、方位磁石は磁針を行ったり来たりしながらやがてS極の方向を向きます。これは向かせる力が弱いことを示しています。
(あまりにも遠い場合はより磁界が強い地球の磁場に従い、北を向きます。)
磁石を近づけると、コイルの周りの磁界が変化しますので、N極を新しい方向に振り向かせようという力が発生します。
しかし、その力に対して作用反作用の法則が働き、コイルは元の磁界に戻るように力を働きかけます。
その結果、コイルの周りには、棒磁石の磁界を相殺するような磁界が生成されます。
磁界が生成されると、コイルの導線の周りにも磁界が生成し、右ねじの法則に従って電流が流れます。
エネルギーの観点から見ても同じようなことが言えます。
磁石をコイルに近づけると、磁界を変えようとするエネルギーが加えられます。
※磁界のエネルギーは(真空の透磁率×磁場ベクトルの2乗)で表されます
これに対し、コイルはこの磁界を打ち消すような磁界を生成します。
磁界の大きさは同じで、方位磁石を動かす向きだけが反対の磁界になりますので、エネルギーの量としては同じ量になります。
結局、コイルに対して磁界を変えようとしたエネルギーと、磁界を打ち消すような磁界を生成しようとしたエネルギーは等しく、エネルギー保存則が成り立ちます。
以上から、電磁誘導現象が電磁気に特有の現象ではなく、力学で有名なニュートンの法則やエネルギー保存則といった力学でおなじみの物理法則に従うことがわかりました。
レンツの法則をあまのじゃくと考えるのは偶然ではなく、ちゃんと物理法則に従っているわけです。
中学や高校の範囲では、この現象を数式で説明しようとするのは大変です。
しかし、大学に進んで電磁気学の講義を勉強し、数学の積分という手法を身につけると、
今以上にすっきりした形で説明する事ができます。
興味がある方は、自身で調べてみましょう!
レンツの法則のまとめ
いかがでしたでしょうか。レンツの法則はとても簡単な法則です。常に磁界を打ち消すような働きをすることさえ覚えておけば、試験の際にその場で導くことができます。
高校範囲では、これに絡めてファラデーの電磁誘導の法則も登場しますが、コイルの巻き数や磁界の強さを代入して計算するだけですので、練習問題を解くことで
すぐに得点源になります。しっかりと対策をして試験に臨みましょう。