【単振り子の運動】単振り子・ばね振り子をゼロからわかりやすく解説
高校の物理学において、必須とも言えるのがばね振り子と単振り子の2つです。
中間テストや期末テストだけではなく、受験でも良くでる問題ですから、物理が苦手な人でも学習はしておきましょう。
練習をこなして理解を深めれば、難しくない問題です。
では、ばね振り子と単振り子について紹介していきます。
【目次】
1.単振り子とばね振り子の違いは?
出される問題が良く似ていることから、混同されがちなのが単振り子とばね振り子です。
ただ、良く問題文を見れば、この2つはまったく違うことがわかります。
単振り子とは、天井に伸びないヒモをつけ、その先端に重りをつけて吊したものです。
振り子としては、こちらを思い出す人が多いでしょう。
対してばね振り子とは、伸びないヒモではなく、ばねの先に重りをつけたものを指します。
この時にばねを天井から吊すものと、横向きにしたものの2つの種類があります。
単振り子と異なるのは、ばねが伸び縮みするという点です。
では、それぞれを紹介していきましょう。
2.単振り子の公式を知ろう
基本的に単振り子の問題はシンプルなものが多いです。
振り子を振った時の周期を求めるものです。
この問題には公式がきちんとあります。
Tは周期を、lはヒモの長さを、gは重力加速度を示します。
ここで注意したいのは、単振り子の周期を求める問題においては、吊してある重りの質量は関係ない点です。
では例題で実践をしてみましょう。
長さ19.6mの糸の先に10kgの重りをぶらさげています。この単振り子の周期を求めなさい。
公式に数値を代入していくだけです。
ただ、注意したいのは重りの質量が問題文に入っている点で、ここに惑わされてしまってはいけません。
よって周期は
として計算できました。
この公式はしっかりと覚えておきましょう。
3.【単振り子の関連①】水平ばね振り子を見ていこう
水平ばね振り子は、ばねが横向きに設置されているものです。
一端は壁に固定され、他端には質量m kgの重りがついていて、なめらかな水平面に置かれている、とするのが一般的な問題文の形です。
この時にばね定数kのばねを自然長よりもAm伸ばす、または縮めてから静かに離した時の運動について聞かれます。
この水平ばね振り子のポイントは、自然長の位置を原点Oとして定めてしまうことです。
そこから、ばねが伸びる向きをxとして、正の向きとします。
この場合、重りに働く力はフックの法則から求められるのです。
水平ばね振り子における復元力の公式は
F=-kx
で求められます。
この公式は復元力となっているように、この水平ばね振り子は単振動をします。
変位と力の向きが逆になっていて、比例するからです。
この形の問題がでてきた時は、単振動だと思って間違いありません。
では、さらにこの手の問題で出題されるであろう公式を紹介していきます。
ここで重りの加速度をαとした場合に運動方程式から
F=mα=-kx
とできます。
つまり、
とできるのです。
次に角振動数をωとした場合は、単振動加速度の式を使って
とできます。
ここで先ほどの式に代入してみると
とすることができます。
さらに単振動の周期についても考えましょう。
となるので代入すると
とできます。
この式から重りの質量mが大きくなるほど、ばね定数のkが小さいほど、周期Tが大きくなるのがわかります。
わかりやすく言い換えると、ばねがやわらかいほど、ゆっくり振動するということです。
さらに振幅には関係がないこともわかります。
こちらは大きく伸ばしても、小さく伸ばしても、重りを離した時の振動の速さは、振り幅に関わらず変わらないということです。
4.【単振り子の関連②】鉛直ばね振り子とはなに?
鉛直ばね振り子とは、ばねの一端をつなぐ先が壁ではなく、天井になったものです。
水平ばね振り子と、鉛直ばね振り子の違いは、ばねの本体が水平か垂直かであるか、になります。
ばね定数kのばねを天井に固定し、他端に質量mの重りをつけて吊るします。
重力加速度をgとして、重りを引っ張って離した場合の運動について、問われる問題が一般的です。
鉛直ばね振り子の問題で覚えておきたいのは
と
と
の3つの公式です。
Tは周期、mは質量、kはばね定数、gは重力加速度、fは振動数、ωは角速度を示しています。
では、例題を出して実践してみましょう。
重さが0.5kgのおもりをつけたバネを天井から吊るしています。
バネは最初の長さよりも0.1m伸びて止まりました。
この時に重りを少し引っ張ってバネを振動させた時の、周期と振動数を求めなさい。
こうした形式はとても多いので練習しておきましょう。
公式を使って問題を解いていきます。
質量mが0.5kgで変数xは0.1mです。
公式にあてはめると
k=0.5×9.8/0.1
=49
kの値が出ましたから、次は振動数であるfを求めます。
fの値を求めるには、1/Tという公式がありました。
ですから、先にTの値を求めていきます。
Tの値を求める公式は
ですね。
ここに数値を当てはめていきます。
fの値は1/T
となりますので代入します。
という形になります。
基本的には公式に代入をして、数字をあてはめていくだけです。
公式そのものが複雑ですから、計算ミスをしないようにしておきましょう。
特に根号の有理化は忘れている人も多いかもしれませんので、確認しておくのをお勧めします。
5.【単振り子の関連③】単振動との関係も頭に入れておこう
単振動における周期と振動数は、実はばね振り子と似通っている部分があるのです。
さらには等速円運動にも繋がっています。
本題とは外れますので、簡単に公式のみを紹介しておきましょう。
周期をT、角速度をω、1秒間の振動回数をfとします。
単振動の周期を求める公式は
となります。
さらに単振動の振動数を求める公式は
です。
上でも紹介した公式がでてきました。
このように物理の問題は、一見して関係がないように見えて関連があるものが少なくありません。
例題もあげておきましょう。
重さ0.2kgの重りに30センチのヒモをつけて、周期2秒でヒモを回してみました。
この時の角速度を求めなさい。
この場合は、
の公式を使います。
ω=2π/2となるので、答えはπです。
先端につけた重りの速さを求められた時は v=rω を使って求めます。
v=0.3×π
=0.3π
これが答えになります。
さらに重りの加速度を求めるのなら a=vω で求められます。
a=0.6π×4π
=2.4π2
が答えです。
最後に重りがヒモを引っ張る力も紹介します。
これは張力となるので、F=maで求められます。
F=0.2×2.4π2
=0.48π2
が答えです。
この等速円運動にしても、公式を覚えているかどうかで決まります。
そのため単振り子も、ばね振り子も公式をしっかり把握しておくことが大切です。
6.おわりに
ばね振り子と単振り子を解説しました。
どちらも似たような問題ですが、単振り子よりはばね振り子を使った問題の方が多いです。
大事なことは紹介したように、しっかりと公式を覚えることです。
物理の公式は特に複雑な計算を要するものも多いので、計算ミスはしないようにしてください。
入試でも必須の問題の1つですから、物理を学ぶのなら確実に点を取れるようにしておきましょう。
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