正弦波とは?波の基本式について簡単に解説!
高校物理でつまずきがちなのが、波についてです。
イメージがつかみにくく、計算も複雑で苦手意識の強い人が多いのではないでしょうか。
この記事では、波についての基本的な用語や公式を、ひとつずつ整理して解説します。
波の概念は色々な問題に出てくるため、理解してしまえば高校物理の試験がもっと楽になります。根気強く取り組みましょう。
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1.【正弦波の前に①】そもそも波とはなにか?
まず、正弦波の説明に入る前に、波とはなにかを解説します。
高校物理での波とは、「ある点から起こった振動が周りに伝わる現象」のことをいい、振動が初めに起こった点を「波源」、振動を周りに伝える物質を「媒質」といいます。
身の回りの現象としては、我々の発する声も波の一種です。
人が声帯を震わせて声を発すると、空気を伝わって周囲に発した声が拡がっていきます。
この場合、波源が声帯、媒質が空気となります。
もう一つ例として挙げるならば、地震も波の一種です。
この場合、波源が震源、媒質が地面となります。
波を伝える媒質はすべて、ばねの性質を持っています。
逆にいえば、ばねの性質が無い物質は波を伝えることができないのです。
ばねは、伸ばされれば伸ばされるほど強い力で引き戻そうとする性質があります。この力を復元力とよび、復元力を持つものは単振動という動きをします。
つまり、波が発生するということは、どのような事象であっても、ばねにおもりを付けて振動させたときと同じ周期的な動き(単振動)が発生するということになります。
このとき、単振動の点の動きをグラフにしてみると、図のような、きれいに整った数学で習う正弦曲線(サインカーブ)と同じ形となります。
この波の振動のことを、正弦波とよぶのです。
2.【正弦波の前に②】波の基本式
では、正弦波がどのようなものか理解できたところで、高校物理で扱う波の基本式を説明していきます。
前の項で、物理での波は「ばねの振動」と同じ、周期的な動きである「単振動」をしていると解説しましたが、ばねの振動は場所によって速さが異なるため、波を公式で表現するためにはもう一工夫必要でした。そこで、単振動の特徴が利用されています。
単振動は、図のように、円周上を一定の速さでぐるぐる回る運動(等速円運動)を真横から見たものと同じ動きであることがわかっています。
等速円運動では、1秒当りに何ラジアン(rad)円周上を進むかと言う意味の「角速度ω(rad/s)」の値で変位や速度を表すことができ、ばねよりも運動が式にしやすいため、物理の波は等速円運動について、次のように表されます。
単振動の変位 x は
x = Asinωt
単振動の速度 v は
v = Aωcosωt
単振動の加速度 a は
a = – Aω2sinωt
あるいは
a = – ω2x
※各基本式の単位は図を参考にしてください。単位の詳細は次の項で解説します。
単振動の1往復する時間:T [s]
1秒当たりの回転角: ω [rad/s]
1秒当たりの往復数:f [Hz]
単振動の振幅:A [m]
3. 正弦波が表していること
ここでは、正弦波のサインカーブが何を表しているのかを説明します。
次の図を見ながら、それぞれの単位を理解していきましょう。
①波における、山の高さや谷の深さを振幅といいます。
振幅の記号は、よく A で表されます。
振動の大きさは減衰(げんすい)が無ければ、波源で起きた振動の大きさと同じです。
②ある山から、次の山までの長さを、波長といいます。
波長は、谷と谷との間の長さでもあります。山と山との間の長さは、谷と谷との間の長さと同じです。
③波形は繰り返されているので、ある位置を1つの山が通過しても、しばらく時間が経過すれば、次の山が到来してきて、同じ形を繰り返します。
同じ波形が現れるまでの時間を周期とよび、記号は、しばしば T [sec]を用いて書かれます。
④1秒間にf回正弦波中の1点が現れることを振動数fとよびます。
T秒間に点が1度現れるため、1秒間には 1/T回の点が現れます。つまり、
の式が成り立ちます。振動数の単位はHzが用いられます。
⑤物質中を振動が伝わる速度を v とよびます。
vは物質の性質によって異なる定数であり、振動の性質にはよりません。
波が伝わる速度と波の周期から、波が1周期のうちに進む距離を計算することができます。この距離を波の波長λとよびます。
波長λは振動が1周期内に進む距離なので、波の速度vと周期Tを用いて次のような
式で表せます。
4. 正弦波の式
ここでは、正弦波はどのように式で表すのかの説明に入ります。
正弦波の式とは、単振動の考え方を用いて、この式を、図のような波の時間(t)、場所(x)、高さ(y)の関係を表す式のことです。
なお、この形の曲線を正弦波の形と同じ、正弦曲線といいます。
先ほどの通り、単振動の変位(位置)は
x=Asinωt
と表せていました。
この式を、波の周期の中の位置を求めるために変形していきます。
yを単純に代入すると、時刻tにおける原点の高さが表せます。
y=Asinωt
では、今度は一般的に位置xにある点の高さを求めます。
式を変形して、図のようにxにある点を原点に戻します。
原点から位置xまで進むのにかかる時間は、
x/vです。
時刻tにおける位置xの点の高さは、公式にこの時間を反映すればよいのです。
方法は、先ほどの式のtをt–x/vに置き換えるだけです。
これが正弦波の式です。
なお、 公式のω(t–x/v)のことを位相とよび、原点からのずれを位相差とよびます。
5. 【正弦波をさらに知りたい人向け】正弦波が登場する例(交流回路)
正弦波は、音やばねなど、高校物理の様々な分野で登場します。
ここでは、難しいと感じる人の多い、交流電気回路にも正弦波が登場していることをご紹介します。
交流回路とは、電圧や電流の振幅が時間と共にプラスとマイナスを行ったり来たりする波形を出力する回路です。
高校物理では、正弦波の交流回路についての問題が出題されます。
交流回路の基礎について説明すると、さきほどと同様の式が現れます。
交流回路でも、角速度:ω 、振幅: A 、時間:tの正弦波の式: Asin(ωt)が成立するのです。
交流回路では、電源の他に様々な素子は抵抗に加えて、容量(コンデンサ)やインダクタ(コイル)といった素子が登場します。
なにやら複雑なことになってきた、と思うかもしれませんが、安心してください。
これらの素子で構成された回路は、正弦波交流の入力 Asin(ωt)に対して振幅と位相のみが変化するというのが特徴なのです。
交流回路は、図のように出力の振幅の変化と位相のずれを把握し、入力と出力の関係を求める、ということが出題されます。
今回の記事では、例ということで詳細には触れませんが、これまで解説してきた用語や式で理解ができてしまうのです。
ちなみに角速度 :ω (単位:rad/s)、周波数: f (単位:Hz)の関係も同じで、次のように表されます。
また、周期: T (単位:s)は、周波数: f の逆数であるため、こちらも同じように次のように表されます。
このように、波は一見難しい概念ですが、マスターしてしまえば高校物理の多くの場面で活躍できるのです。
6. まとめ
波について、細かく解説をしてきましたが、まとめると以下のようになります。
①高校物理での波とは、「ある点から起こった振動が周りに伝わる現象」のことをいう。
②波が発生するということは、どのような事象であっても、ばねにおもりを付けて振動させたときと同じ周期的な動き(単振動)が発生している。
③単振動の点の動きをグラフにしてみると、きれいに整った正弦曲線(サインカーブ)と同じ形となり、この波の動きを正弦波とよぶ。
④単振動は等速円運動の式で表される。
⑤単振動の点の動きをグラフにしてみると、きれいに整った数学で習う正弦曲線(サインカーブ)と同じ形となる。
⑥正弦波の式とは、単振動の考え方を用いて、波の時間(t)、場所(x)、高さ(y)の関係を表す式のこと。
⑦正弦波についての考え方は、音やばね、電気回路など様々な分野で活用できる。
この記事は、計算など数学的な要素を省いて、できるだけ言葉でかみ砕いた表現を使っています。
授業前にざっと予習したいときや、全体像を復習したいときなどに活用して、より理解を深めてください!
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