斜方投射をわかりやすく解説!運動方程式や例題も

物理 2018.10.5

斜方投射とは、物理で頻出の分野です。

受験においては空気抵抗を無視して、自由落下の一種とみなして計算します。

この記事で、しっかりモノにしておきましょう。

1.斜方投射とは?

斜方投射とは、「物体をある初速度をもって空中に投げ出したときの、物体の運動」のことです。

さらに、高校で習う斜方投射とは、自由落下の一種です。

※自由落下について復習したい方はこちら!

 

自由落下について軽く復習しましょう。

自由落下とは、「物体が空気の摩擦や抵抗の影響を受けずに、重力の働きだけによって落下する現象」です。

「自由落下」と聞いてまず思い浮かべるのは、「初速を付けずに、持っていた物体を単に落とす」運動だと思いますが、これは自由落下の一種に過ぎません。

自由落下全体の意味としては、単に「重力のみに従って動くような現象」です。

そのため、どのような初速をつけたとしても、結局は重力以外の力は物体に働いていませんので、「自由落下である」ということができます。

 

最初に申したように、斜方投射は、「物体をある初速度をもって空中に投げ出したときの、物体の運動」ですので、空気抵抗などの影響を考慮することもあります。

しかし、高校物理においては空気抵抗を無視するので、斜方投射と自由落下の違いはあまりありません。

 

2.斜方投射を解くのに重要な運動方程式!

斜方投射の問題を解くうえで大切なのは「運動方程式」です。

 

質量 m の物体について F のを加えたときの物体の加速度を a とすると

F=ma

が成り立ちます。

これを「運動方程式」と言います。

 

物理や数学で重要なのは、「公式を日本語で説明できること」です。
公式だけを必死で覚えても、問題を解くときに使えないので、実際の問題で利用するには「日本語で説明できるくらい」理解することが大切です。

運動方程式を日本語に直すとするなら「物体は力を加えると加速する」になります。
また、逆に言うと「力が加わらないと物体は加速しない」ということを表しています。

斜方投射の問題を解くうえで、この性質が非常に重要になります。

 

3.斜方投射の公式はこれだ!

斜方投射の問題を解くために必要な式は3つだけです。

① x=1/2 at2+v0 t+x0

② v=v0+at

③ v2-v02=2a(x-x0)

ここで、t は時間、a は加速度、x は位置座標、x0 初期の位置座標、v は速度、v0 は初速とします。

これらの公式を等加速度直線運動の公式、落体の公式などと呼ぶことがあります。

三番目の公式は、一番目の公式に二番目の公式を代入したものになっているので、いざとなったら試験会場で作ってしまいましょう。

余裕がなければ、一番目と二番目さえ覚えておけば問題ありません。

三番目の公式の作り方は、二番目の公式を t について整理し、一番目に代入するだけです。

一度計算してみてください。

 

4.斜方投射の例題を解こう

それでは、実際に斜方投射の例題を解いて解法を身に付けていきましょう!

 

斜方投射の問題

地上のある点から、時刻 t=0 において、水平方向と角度 θ をなす向きに小物体を投げる。ただし、小物体の質量を m 、小物体の初速を v0 、重力加速度を g とする。このとき、以下の問いに答えよ。

① 小物体が最高点に達したときの時刻 t1 を求めよ。

② 小物体が最高点に達したときの速さ v1 を求めよ。

③ 最高点の高さ h を求めよ。

④ 小物体が再び地面に達したときの時刻 t2 と衝突する直前の小物体の速さ v2 を求めよ

⑤ 時刻 t2 における水平方向の飛行距離 L を求めよ。

⑥ 0°<θ<90°のとき L を最大にする角度 θ を求めよ。

(↓↓以下に解答と解説↓↓)

 

 

 

 

 

 

解答・解説

一つの小物体の斜方投射については、上の問題が解ければ概ね大丈夫でしょう。

具体的な数字が入る場合や、初期位置の高さが異なる場合などがありますが、基本的には変わりません。

水平方向の動きと、鉛直方向の動きをしっかり把握することが大切です。

より難しい問題のパターンは、小物体が2つ以上になる、などがありますが、考え方は変わりません。

まず、小物体が1つのときについて、しっかり押さえておきましょう。

 

斜方投射の問題では、鉛直方向と水平方向の動きを分けて考えます。

斜方投射の水平方向は、力が加わっていないため「等速直線運動」になります。

運動方程式を思い出してください。力が加わっていない物体は加速しないのでした。そのため、等速直線運動です。

斜方投射の鉛直方向は、「小物体を真上に投げたときの運動」と同じです。

鉛直方向には重力が常に加わっていますので、下向きに加速度 g の加速度運動になります。

なのでこれは、「自由落下」です。

物体を上に放り投げたら、最高点で一瞬静止してから落ちてきますよね。

「最高点」という単語が出てきたら、「鉛直方向の速度が0である」ことを意識しましょう。

v=v0+at

の公式を利用して、それぞれの鉛直方向の成分を y、水平方向の成分を x の添え字を用いて表すことにすると、鉛直方向には

vy=vy0-gt1

が成り立ちます。重力加速度が下方向に働いていることに注意してください。

ここで、鉛直方向の速度が0であることから vy=0、初速が v0 であることから、vy0=v0sin⁡θ です。

0=v0 sin⁡θ-gt1

計算して

t1=(v0 sin⁡θ)/g

 

② ①で「最高点における鉛直方向の速度は0である」ことを利用しました。

では、水平方向の速度はどうでしょうか。

水平方向は力が加わっていないため「等速直線運動」です。

その速度は、初速が v0 であるため、v0 cos⁡θ となります。

よって

となります。

 

最高点の高さは、時刻 t1 のときの高さのことです。

x=1/2 at2+v0 t

の公式を用いて、

y=-1/2 gt12+v0 sin⁡θ t1

となります(x←y, a← -g, t←t1, v0←v0 sin⁡θ というように代入します)。

ここでも、重力加速度が下向きに働いていることに注意してください。

①で求めた t1=(v0 sin⁡θ)/g を代入して

が答えです。

 

※別解として

v2-v02=2a(x-x0)

を利用する方法もあります。

この問題のように、「時間の情報が必要ないとき」にはこの公式が利用できます。

vy2-vy02=2ay (y-y0 )

02-(v0 sin⁡θ )2=2(-g)(y-0)

y=(v02 sin2⁡θ)/2g

となり同じ答えが出てきます。

 

小物体が再び地面に戻ってくるときの時刻を求めます。

地面に小物体があるということは、鉛直方向の高さが 0 であるということです。

y=-1/2 gt22+v0 sin⁡θ t2

y=0 となるような t2 を求めます。

0=-1/2 gt22+v0 sin⁡θ t2

=(-1/2 gt2+v0 sin⁡θ)t2

t2=0,(2v0 sin⁡θ)/g

です。t=0 は初期位置にいる時刻ですので、求める t2

t2=(2v0 sin⁡θ)/g

となります。

このときの速度を求めましょう。

水平方向の速度 vx は相変わらず、vx =v0 cos⁡θ です。

鉛直方向の速度 vy を求めましょう。

vy=vy0+ay t2

=v0 sin⁡θ-g (2v0 sin⁡θ)/g

=-v0 sin⁡θ

 

よって

となります。

 

記述問題では、このようにしっかり回答を記述する必要がありますが、センター試験などのマーク問題では、④は計算する必要はありません。

というのは、「物体を投げたときには、投げた速度と同じ速度で返ってくる」からです。

また、「投げてから最高点に到達するのにかかる時間」と「最高点から元の高さに返ってくるのにかかる時間」は同じになります。

そのため、この問題を見た瞬間に

v2=v0

を答えられるはずですし、①で求めた

t1=(v0 sin⁡θ)/g

を二倍して

t2=(2v0 sin⁡θ)/g

が求まります。

 

なんども繰り返しますが、「水平方向は等速直線運動」です。

vx=v0 cos⁡θ で、t2 だけ動きますので、

sin⁡2θ=2 sin⁡θ cos⁡θ より

です。

 

0°<θ<90°から sin⁡2θ の最大値は、θ=45°のときですので、このときにLが最大値をとります。

よって

θ=45°

です。

 

斜方投射のまとめ

斜方投射は出題頻度が非常に高い問題ですが、パターン問題が多く、慣れると得点源になります。

しかも、利用する公式は2つないし3つのみ。

この記事の問題を、自分でしっかり解けるようになるまで、繰り返し解きましょう。

それができるようになれば、斜方投射の問題を見れば解き方が頭に浮かぶようになるはずです。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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