期待値を計算するには?計算方法や公式をわかりやすく解説!

場合の数・確率の問題を解いていると、「期待値を計算せよ」という小問に出会います。
「期待値」について触れているのは、数学Bの「確率分布と統計」という分野です。
しかし、数学Aで場合の数・確率を学習した時に、「期待値」について詳しく扱ってはいないのではないでしょうか。
この記事では、そんな「期待値」の計算についてまとめます。
1. 期待値の意味
ここでは期待値とは何かについて解説していきます。
期待値とは、試行を行った際に出てくる値について、予測できる平均値のことを指します。もう少し突っ込んだ言い方をすると、全ての得られる値とその確率の積の和のことです。
言葉だけでは理解しにくいので、具体的な例を見ていきましょう。
次のようなくじがあったとします。
このくじの中から1本を引き、そのくじの種類によって、見合った金額がもらえるとします。
では、このくじがいくらで売られていると、購入するとき得になるでしょうか。
このような問題を考えるときに利用するのが、「期待値」です。
この問題の場合、「くじ1本あたりの価値は、平均するといくらになるか」を考えます。
もちろん1等を引くことができれば、その価値は10000円ですが、そのくじを引くことができるのは、1000回に1回の確率です。
0円の価値であるはずれくじは887本あります。
これらを平均すると、1本当たりの価値がどれくらいになるかを考えることができます。
1本当たりの価値を考えるには、このくじを全て買い占めたときの価値を考えます。
このくじを1000本すべて買ったときには、
となります。
1000本のくじを買って40000円もらえることになりますから、平均的には1本当たり
の価値があることになります。
ですから、このくじが例えば1本50円で販売されていた場合には、「1本40円の価値しかないものを50円で買う」わけですから、損をしていることになります。
1本50円ですべてのくじを買い占めると、50円×1000本=50000円かかりますが、もらえる額は総額40000円です。
ここからも損をしていることがわかりますね。
一方、このくじが1本30円で販売されていた場合は、「1本40円の価値があるものを30円で買える」わけですから、得をしていることになります。
ところで、このくじの1本当たりの価値は、
という式で計算しました。
つまり、くじ1本当たりの価値は
という式で計算できることになります。
この式は、
このように変形できます。つまり、
くじの価値×そのくじが出る確率
をすべて足し合わせていることになります。これが期待値です。
このくじを1本買うと、40円分のリターンが期待できるといえます。
一般に、ある数量Xのとりうる値がそれぞれ、
であり、その値をとるときの確率がそれぞれ
であるとき、数量Xの期待値E( X ) は
で求めることができます。
上のくじの例で言えば、
となります。
2. 期待値の性質
くじの例で申し上げた数量Xのことを、「確率変数」と言います。
確率分布Xに対して、Y=a X + b で与えられる新たな確率変数Yを考えたときに、確率変数Yの期待値(平均)はどうなるでしょうか。
やや強引な例ですが、上のくじの例で言えば、次のようになります。
あるくじを引いたら以下のようなポイントがもらえます(数値は変えていません)。
この1ポイントにつき、2円で換金できます。このくじを1本100円で購入するときの利益の平均を考えましょう。
このくじを購入するのは得でしょうか、損でしょうか。
この利益が確率変数Yです。
つまり、ポイント(=確率変数X)を2倍して、購入するのにかかる100円を引いた金額が利益になりますから、確率変数Yは
で求められます。このYの平均E ( Y ) が正の値になれば、買うと得でしょうし、マイナスになれば買うと損をするくじであることになります。
その期待値を求めるには、
として、先と同様に
と計算すればよいでしょう。
この数字が示すのは「1本購入するにつき20円ずつ損をする計算である」ということですから、このくじは買わない方が正解です。
感の良い人は気が付いたでしょうか。
始めの確率変数Xの期待値は40でした。この-20という値は
という値と一致します。
ですから、先に確率変数Xの期待値がわかっているのであれば、確率変数Yの値をそれぞれ計算して期待値を求めるよりも、確率変数Xの期待値から直接、確率変数Yの期待値を求める方が楽です。
上の式を手計算で行うのは、それなりに骨が折れますね。
一般に、確率変数Xの期待値(平均)がE ( X ) であり、確率変数Yが Y = a X + b で表されるとき、確率変数Yの期待値(平均)は
という公式で求めることができます。
3. 反復試行での期待値と確率
↓以下に解答と解説
3の倍数の目が出る回数を、確率変数Xとします。
4回さいころを振ったときに、Xの値としては0回、1回、2回、3回、4回という可能性がありますね。
ですから、それぞれに対して考えてゆきましょう。
期待値の基本は
確率変数Xの値×確率
ですから、それぞれの回数に対する確率を求めてゆくことになります。
同じさいころを、反復して振っていますから、反復試行の確率です。
1回の試行で3の倍数の目が出るような確率は
ですから、k回の試行で3の倍数の目が出るような確率は
となります。k = 0, 1, 2, 3, 4 でそれぞれ計算すると、
です。ここから、期待値を計算すると
となります。つまり、この試行において3の倍数が出る回数の期待値は
であることになります。
4. おわりに
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、期待値の定義と計算についてまとめました。
期待値は数学Aや数学Bの確率統計の分野で扱います。
高校の教科書には載っていないこともありますが(あるいはコラムとして掲載されている場合が多いです)、大学入試の問題ではしばしば登場します。
とはいえ、難しく考える必要はありません。
基本的には「確率変数Xの値×その確率」をすべて足せば、求めることができます。
ご参考になれば幸いです。