期待値を計算するには?計算方法や公式をわかりやすく解説!

数学 2023.3.12
期待値を計算するには?計算方法や公式をわかりやすく解説!

場合の数・確率の問題を解いていると、「期待値を計算せよ」という小問に出会います。

「期待値」について触れているのは、数学Bの「確率分布と統計」という分野です。

しかし、数学Aで場合の数・確率を学習した時に、「期待値」について詳しく扱ってはいないのではないでしょうか。

この記事では、そんな「期待値」の計算についてまとめます。

    1.  期待値の意味

    ここでは期待値とは何かについて解説していきます。

     

    期待値とは、試行を行った際に出てくる値について、予測できる平均値のことを指します。もう少し突っ込んだ言い方をすると、全ての得られる値とその確率の積の和のことです。

    言葉だけでは理解しにくいので、具体的な例を見ていきましょう。

    次のようなくじがあったとします。

     

    確率の積の和 期待値

     

     

    このくじの中から1本を引き、そのくじの種類によって、見合った金額がもらえるとします。

     

    では、このくじがいくらで売られていると、購入するとき得になるでしょうか。

    このような問題を考えるときに利用するのが、「期待値」です。

     

     

    この問題の場合、「くじ1本あたりの価値は、平均するといくらになるか」を考えます。

    もちろん1等を引くことができれば、その価値は10000円ですが、そのくじを引くことができるのは、1000回に1回の確率です。

    0円の価値であるはずれくじは887本あります。

    これらを平均すると、1本当たりの価値がどれくらいになるかを考えることができます。

    1本当たりの価値を考えるには、このくじを全て買い占めたときの価値を考えます。

    このくじを1000本すべて買ったときには、

     

    期待値の例の式

     

    となります。

    1000本のくじを買って40000円もらえることになりますから、平均的には1本当たり

     

    期待値の例での一本当たりのくじの価値

     

    の価値があることになります。

     

    ですから、このくじが例えば1本50円で販売されていた場合には、「1本40円の価値しかないものを50円で買う」わけですから、損をしていることになります。

    150円ですべてのくじを買い占めると、50円×1000本=50000円かかりますが、もらえる額は総額40000円です。

    ここからも損をしていることがわかりますね。

     

    一方、このくじが130円で販売されていた場合は、「140円の価値があるものを30円で買える」わけですから、得をしていることになります。

    ところで、このくじの1本当たりの価値は、

     

    期待値の例での一本当たりのくじの価値

     

    という式で計算しました。

    つまり、くじ1本当たりの価値は

     

    期待値 くじのでる確率

     

    という式で計算できることになります。

    この式は、

     

    期待値 くじのでる確率の式

     

    このように変形できます。つまり、

     

                  くじの価値×そのくじが出る確率

     

    をすべて足し合わせていることになります。これが期待値です。

     

    このくじを1本買うと、40円分のリターンが期待できるといえます。

    一般に、ある数量Xのとりうる値がそれぞれ、

     

    期待値x

     

    であり、その値をとるときの確率がそれぞれ

     

    期待値p

     

    であるとき、数量Xの期待値E( X )

     

    期待値xの式

     

    で求めることができます。

     

    上のくじの例で言えば、

     

    期待値のくじの例

     

    となります。

     

     

      2.  期待値の性質

      くじの例で申し上げた数量Xのことを、「確率変数」と言います。

       

      確率分布Xに対して、Ya X + b で与えられる新たな確率変数Yを考えたときに、確率変数Yの期待値(平均)はどうなるでしょうか。

      やや強引な例ですが、上のくじの例で言えば、次のようになります。

      あるくじを引いたら以下のようなポイントがもらえます(数値は変えていません)。

      期待値の特性の例

       

      この1ポイントにつき、2円で換金できます。このくじを1100円で購入するときの利益の平均を考えましょう。

      このくじを購入するのは得でしょうか、損でしょうか。

       

      この利益が確率変数Yです。

       

      つまり、ポイント(=確率変数X)を2倍して、購入するのにかかる100円を引いた金額が利益になりますから、確率変数Yは

       

      確率変数Y

       

      で求められます。このYの平均E ( Y ) が正の値になれば、買うと得でしょうし、マイナスになれば買うと損をするくじであることになります。

      その期待値を求めるには、

       

      期待値の確率変数の例

       

      として、先と同様に

       

      確率変数Yの求め方の式

       

      と計算すればよいでしょう。

      この数字が示すのは「1本購入するにつき20円ずつ損をする計算である」ということですから、このくじは買わない方が正解です。

      感の良い人は気が付いたでしょうか。

      始めの確率変数Xの期待値は40でした。この-20という値は

       

      確率変数Xと確率変数Yの関係

       

      という値と一致します。

      ですから、先に確率変数Xの期待値がわかっているのであれば、確率変数Yの値をそれぞれ計算して期待値を求めるよりも、確率変数Xの期待値から直接、確率変数Yの期待値を求める方が楽です

       

      確率変数Xの期待値から確率変数Yの期待値の求め方

       

      上の式を手計算で行うのは、それなりに骨が折れますね。

      一般に、確率変数Xの期待値(平均)がE ( X ) であり、確率変数Y Y = a X + b で表されるとき、確率変数Yの期待値(平均)は

       

      確率変数Yの期待値の求め方

       

      という公式で求めることができます。

       

      証明 証明

       

      3.  反復試行での期待値と確率

      問. さいころを4回投げるとき、3の倍数が出る回数の期待値を求めよ。

       

       

      ↓以下に解答と解説

       

      3の倍数の目が出る回数を、確率変数Xとします。

      4回さいころを振ったときに、Xの値としては0回、1回、2回、3回、4回という可能性がありますね。

      ですから、それぞれに対して考えてゆきましょう。

      期待値の基本は

       

                    確率変数Xの値×確率

       

      ですから、それぞれの回数に対する確率を求めてゆくことになります。

      同じさいころを、反復して振っていますから、反復試行の確率です。

      1回の試行で3の倍数の目が出るような確率は

       

      期待値の例 確率

       

      ですから、k回の試行で3の倍数の目が出るような確率は

       

      確率の式

       

      となります。k = 0, 1, 2, 3, 4 でそれぞれ計算すると、

       

      期待値の例 それぞれの確率

       

      です。ここから、期待値を計算すると

       

      期待値の例の式

       

      となります。つまり、この試行において3の倍数が出る回数の期待値は

       

      期待値の値

       

      であることになります。

       

       

        4.  おわりに

        最後までご覧くださってありがとうございました。

        この記事では、期待値の定義と計算についてまとめました。

        期待値は数学Aや数学Bの確率統計の分野で扱います。

        高校の教科書には載っていないこともありますが(あるいはコラムとして掲載されている場合が多いです)、大学入試の問題ではしばしば登場します。

        とはいえ、難しく考える必要はありません。

        基本的には「確率変数Xの値×その確率」をすべて足せば、求めることができます。

        ご参考になれば幸いです。

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        この記事の執筆者

        ニックネーム:受験のミカタ編集部

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