フィボナッチ数列とは?一般項から「黄金比」と呼ばれる理由まで解説!

数学 2018.10.3

フィボナッチ数列は自然界でもよくみかけられます。

数学的にも非常に奥の深いものであり、専門で研究している方もいらっしゃいます。

フィボナッチ数列の数の組み合わせは、芸術的にも意味があり、隣り合うフィボナッチ数列の比は、黄金比に収束します。

この記事では、フィボナッチ数列について紹介していくので、フィボナッチ数列についてよく理解できないといった方や、そもそもフィボナッチ数列を初めて学習する方はぜひ参考にしてください!

1.フィボナッチ数列の定義

フィボナッチ数列とは以下のような数列です。

an=1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89……

法則性がわかるでしょうか。

種明かしをしてしまうと、「前の2項を足したら、次の項になっている」という法則があります。

一度、確認してみてください。

an=1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89……
V  V  V  V  V  V  V   V    V                 

1  2  3  5  8 13 21 34 55                    

確認できたでしょうか。

これを「漸化式」で表してみましょう。なお、この記事では以降nは自然数とします。

an+2 = an+1+an

a1=1, a2=1

 

これが、フィボナッチ数列の定義です。

この式を見ると、フィボナッチ数列が三項間の漸化式になっていることがわかります。

 

2.フィボナッチ数列の解き方:三項間漸化式の特性方程式

フィボナッチ数列の計算をするために、三項間漸化式の特性方程式について押さえておきましょう。

特性方程式という単語は高校数学の教科書では出てきませんが、知っていると便利ですので、授業や参考書では見聞きすることもあるでしょう。

 

特性方程式とは?

特性方程式は式変形のために用いる式です。

特性方程式の成り立ちについては後ほど詳しく説明するので、まずは式変形をざっと見ていきましょう。

三項間漸化式

an+2=ban+1+can

に対する特性方程式は、

an+2←x2, an+1←x, an ←1として

x2=bx+c

です。この解をα, βとすると

an+2-αan+1=β(an+1-αan)

an+2-βan+1=α(an+1-βan)

のように変形できます。

 

特性方程式の成り立ち

ここで、特性方程式が成立する理由を解説しましょう。

x2=bx+c ⇔ x2-bx-c=0

のような二次方程式として考えると、解と係数の関係から

α+β=b

αβ=-c

を満たします。

→解と係数の関係について復習したい方はこちら!

 

これを元の三項間漸化式に代入すると

an+2 = (α+β) an+1-αβan

となりますよね。展開すると

an+2 = αan+1+βan+1-αβan

 αan+1を左辺に移行すれば

an+2-αan+1 = β(an+1-αan)

 βan+1を左辺に移行すれば、

an+2-βan+1 = α(an+1-βan)

というように変形されます。

 

ですので、

an+2=ban+1+can

an+2-αan+1=β(an+1-αan)

an+2-βan+1=α(an+1-βan)

と変形できるのです。

 

このような式変形を行うことで、an+1-αan an+1-βan をひとかたまりに考えて、公比が β,α の等比数列と考えられます。

等比数列の一般項の公式を用いることで、an+1-αan an+1-βan 一般項を求めることができるのです。

 

3.フィボナッチ数列の一般項

フィボナッチ数列の一般項を求めてみましょう。

フィボナッチ数列の一般項は、三項間漸化式を求める方法をそのまま適用すれば、求められます。

ただし、よく出てくる三項間漸化式の問題は、特性方程式の解が整数で求められるのに対して、フィボナッチ数列ではそうではありません。

→漸化式について復習したい方はこちら!

慣れていないと混乱するかもしれませんので、しっかりついてきてください。

 

まず、an+2 = an+1+an から特性方程式をつくります。

x2=x+1

変形して

x2-x-1=0

この二次方程式の解は、整数で表せません。

二次方程式の解の公式を使うことで求められます。この解を α,β とすると

あるいは

です。しばらくは、計算を簡単にするために α,β を使って計算していきましょう。

α,β を使うと、以下のような式が成り立ちます。

an+2-αan+1=β(an+1-αan)………①

an+2-βan+1=α(an+1-βan)………②

①より、an+1-αan は公比が β の等比数列です。

この初項は、n=1 を代入することで求められ、

a2-αa1=1-α

です。よって an+1-αan の一般項が求められ(等比数列の一般項の公式)

an+1-αan=(1-α)βn-1

となります。同様に、②の一般項も求められ(自分で計算してみてください)

an+1-βan=(1-β)αn-1

です。

さて、ここで α,β の値に注目しましょう。

α+β=1

が常に成り立ちますよね。そのため、

1-α=β
1-β=α

ですので、①②の一般項は以下のようになります。

an+1-αan=βn………③
an+1-βan=αn………④

④-③より

(α-β) an=αnn

が求まります。

の値を代入すると、

という、フィボナッチ数列の一般項を導くことができます。

この値は

のときも同様に求めることができます。もちろん同じ値になります。

 

4.フィボナッチ数列と黄金比

黄金比とは

の値で最も美しい比であるといわれます。

 がフィボナッチ数列の一般項を求める際の、特性方程式の正の解であることにお気づきでしょう。この数を黄金数といい、φ で表すことが多いです。

 

辺の比が黄金比になるような長方形を、黄金長方形といいます。

フィボナッチ数列の隣り合う項の比は、黄金比に近づいていくことが知られています。

例えば、5:8 を計算してみましょう。

5∶8=1∶1.6

次に 8∶13 はどうでしょうか。

8∶13=1∶1.625

黄金比に近づきました。13∶21 では?

13∶21=1∶1.61538……
21∶34=1∶ 1.61904……

というようにどんどん黄金比に近づいてゆきます。

そのため、フィボナッチ数列の隣り合う項を用いて長方形をつくると、黄金長方形に近い長方形をつくることができます。

 

5.フィボナッチ数列の応用:階段の上がり方問題

フィボナッチ数列に関係の深い問題である「階段の上がり方問題」を中学受験で経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

階段の上がり方問題とは、以下のようなものです。


問.7段の階段があります。この階段を一番下から上がる場合の上がり方が何通りあるかを答えよ。
ただし、階段は「1段ずつ上がる」「1段飛ばしで上がる」方法があり、これらを組み合わせて上がっていくこととする。

 

一見、難しそうです。

初めてこの問題を見て、すぐに答えがわかった方は、かなり頭の回転が速い方でしょう。

 

しかし、実はこの問題の答えは、フィボナッチ数列の項と一致しているのです。

つまり、この問題の階段が7段ですので、フィボナッチ数列

an=1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,……

7番目の項である「21」が答えになります。

 

では、なぜフィボナッチ数列が答えになるのでしょうか。

順番に考えていきましょう。

1段目に到達するには何通りの方法があるでしょう。

もちろん、「0段目から『1段ずつ上がる』を選択する」という1通りです。

 

2段目に到達するには何通りの方法があるでしょう。

これは、「1段目から『1段ずつ上がる』を選択する」場合と、「0段目から『1段飛ばしで上がる』を選択する」場合が考えられます。

つまり、2通りです。

 

3段目に到達するには何通りの方法があるでしょう。

「2段目から『1段ずつ上がる』を選択する」場合と、「1段目から『1段飛ばしで上がる』を選択する」場合が考えられますよね。

つまり、<3段目に到達する場合の数> = <2段目に到達する場合の数> + <1段目に到達する場合の数>と考えられます。

 

より一般的に考えます。

段目に到達するにはどのような方法があるかを考えましょう。

「 n段目から『1段ずつ上がる』を選択する」場合と、「 n-2段目から『1段飛ばしで上がる』を選択する」場合が考えられますよね。

先のように表すと、

              < n段目に到達する場合の数>

              = < n-1段目に到達する場合の数>

             + < n-2段目に到達する場合の数>

となりますよね。これを数式で表しましょう。

n段目に到達するような場合の数を an とすると、

an=an-1+an-2

すなわち

an+2=an+1+an

です。これは、フィボナッチ数列の定義式そのものですよね。

このような理屈から、階段の上がり方問題の答えが、フィボナッチ数列の項になるのです。

 

6.フィボナッチ数列の例

フィボナッチ数列は自然界にもよく見られる数列です。

もとは、13世紀初頭に数学者フィボナッチが考えた問題が元になっています。

フィボナッチは兎について考えました。

・1つがい(夫婦)の兎は、生まれてから2か月後から毎月1つがいずつの兎を生む

・兎は死なない

上記の2つの条件を満たすときに、1年の間に兎は何つがいになるか。

この月ごとのつがい数が、フィボナッチ数になるのです。

 

ほかにも、自然界のフィボナッチ数列は

・花びらの数

・ひまわりのらせんの数

・孔雀の羽

・松ぼっくりのらせん

などが例として挙げられます。

 

フィボナッチ数列のまとめ

最後までご覧くださってありがとうございました。

フィボナッチ数は13世紀の数学者フィボナッチ(これは本名ではなく愛称ですが)にちなんでつけられました。

すでに800年以上経っていますが(これ以前にもインドの文献で記述があります)、まだまだ研究途中の数です。
例えば、フィボナッチ数である素数をフィボナッチ素数といいますが、フィボナッチ素数が無限にあるかどうかは、現在数学上の未解決問題となっています。

さまざまな分野で現れるフィボナッチ数、興味を持っていただければ幸いです。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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